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- 公開日:2020年8月18日
【専門家に聞く】『1日3分!頭がよくなる子どもとの遊びかた』 小川大介先生インタビュー
子供ともっと遊んであげたいけれど、何をしたらいいかわからない、時間もない・・・。そんなときどうすればいいのでしょうか?
『1日3分!頭がよくなる子どもとの遊びかた』(大和書房)の著者、小川大介先生に、親が子供との遊びを楽しむための心得、具体的な遊び方などについて伺いました。
目次
親が子供と遊ぶときに大事なことは、何でしょうか?
遊び=目的をもたない時間
まず、遊びとは何か?その本質的なところがわからなくなっている親御さんがいます。何をして遊ぶか以前に、遊ぶときの心持ちが実はとても大事なのですが、そのことに気づいていない親御さんも多いのではないでしょうか。
大人にとってもそうであるように、子供にとっての遊びはよりいっそう「その場にいるその瞬間が、何よりも楽しい」という、目的をもたない時間を意味します。だから、「うまく遊ぼう」なんて思った時点で楽しめなくなってしまうものなんです。
遊びは子供に教えてもらおう
何かわからないことがあったら、わかる人に教えてもらう。遊びも同じです。
遊びの楽しみ方がわからなかったら、その遊びを楽しんでいる人に習えばいいんです。
何かの遊びに関して、大人の自分より子供のほうがはるかに楽しんでいるようなら、親のほうが習う側だという感覚をもつことですね。
たとえば、「息子は電車が大好きだけど、私はぜんぜんついていけない・・・」とこぼすお母さんがいます。興味がわかないなら、無理に好きになる必要はないんです。その代わり、自分よりはるかに電車の魅力を伝えられる人やモノに、どんどん頼りましょう。
YouTubeでプラレールがひたすら走る動画を見せてあげて、「電車に関してはYouTubeに任せよう!」と割り切ってもいいと思います。ときおり停止し、紙と鉛筆を渡して「○○ちゃんなら、どんな線路を作る?」と、描かせてみてもいいですよね。そうすれば見せっぱなしにはなりません。
親発信の発想をやめよう
あれもこれもと頑張っている親御さんは、わからないことを誰かに「教えて」と聞けないことが多い印象を受けます。自分で情報収集してきて、「今流行っているから、これがいい!」と子供に買い与えたり、やらせたりするのは得意なのですが、子供をよく観察し、子供が何に没頭しているかを見極めることは苦手。
こういう親御さんには、子供に「それ面白そうだね、教えて」と尋ねるという発想が出てこないんですね。
子供の遊びは、すべて「子供発信」であり、「親発信ではない」ということに気づくだけでも、遊びの本質にぐっと近づけるような気がします。
「時間も余裕もないのに、子供に『遊んで』とせがまれると辛い」という声もあります。そんなときはどうしたらいいでしょうか?
無理に遊ぼうと思わなくていい
遊びの時間は、子供のためだけじゃなく、大人の自分も元気をもらうための時間なんですね。だから、「今は気になることや他に集中したいことがあって、確実に楽しめない」と確信をもって言える時間なら、無理に遊ぼうと思わないことです。
たとえば、日々の生活の中でよくあるシーンだと思いますが、「3時間後に仕事の締め切りが迫っている」「夕ごはんの材料を買い足さなくちゃいけない」「下の子のお迎えの時間ももうすぐだ」こんな待ったナシの状態で「ママ、遊ぼう!」なんて言われても、絶対に無理ですよね。
「もっと〜すべき」という言葉から卒業しよう
実は、最近お母さん方から受ける相談に「もっと子供と遊ぶべきだと思うんですけど、なかなかやってあげられなくて。どうしたらいいですか?」というものが非常に多いんです。
ここで気になるのが「もっと子供と遊ぶべきだと思う」というところ。
まず、「『もっと〜すべき』という言葉からは、卒業しましょう」と僕は提案しています。
自分が遊べない、楽しめないときは、無理しなくてもいいんです。子供だって、無理しているママ・パパと一緒に遊んでいて楽しいはずがないですから!
「時間を選ぶ」という発想をもとう
1日の中で親の自分が楽しく遊べる時間帯はどこか、一度考えてみるといいと思います。そのときに大事なことが、「時間を選ぶ」という観点をもつことです。
親だからといって、四六時中子供と楽しく遊ぶのは、不可能です。だとしたら、自分の1日の流れの中で、子供と楽しく遊べる時間はどこか、自分の時間を一度棚卸ししてみましょう。
たとえば、午前9〜11時までは、どうしても集中してやりたいことがある。でも、昼ごはんとそのお片づけは子供と一緒に楽しめそうだ。食後は少し眠くなるから午後2時頃までは休憩も兼ねて子供と遊ぶ時間にしてもいい・・・というふうに。
自分の持ち時間を考えて、遊びに心を向けられる範囲の中で、子供と楽しめばいいんです。それが、子供と何をして遊ぶか以前の、親のマインドで重要な部分だと思います。
家遊びのベストアイテムを3つ教えてください。
どんな家庭にも必ずあるもので十分遊べる
「家の中で遊ぶ」というと、おもちゃやゲームなど「何かが必要」と考えてしまう人もいるかもしれません。
でも、先ほどもお話ししたように、遊びはすべて子供が教えてくれるんです。それをふまえた上で、以下の3アイテムと、それぞれを活用した具体的な遊び方の例をご紹介します。
アイテム1:紙と鉛筆・色鉛筆→ビジュアル的に楽しめる遊び
遊び方① 線引き遊び
*オススメの年齢:お絵描きや書くこと、鉛筆に興味を示す子なら1歳くらい〜
親が線を引いて、子供にあとをついてきてもらうだけ。紙に鉛筆でもいいし、外遊びに応用するなら、小枝で地面に線を書いてもOK。「(鉛筆で)ママ(パパ)のあとについてきて、追いかけっこだよ〜!」の声がけで、盛り上がります。
遊び方② 折り紙ぐしゃぐしゃ遊び
*オススメの年齢:1歳半くらい〜
折り紙をぐしゃぐしゃに丸めて開き、折り目の中から、○、△、□などの形を見つけてなぞるだけ。1歳半くらいの子供にとっては、折り紙以前に“紙をぐしゃぐしゃにする”その感覚こそが、楽しい遊びなのですね。
そこから少し発展させて、2歳半くらいのお子さんとなら、折り紙を対角線で2、3回折ってから広げて「この中に△や□はいくつあるかな?」と形探しごっこをするのもオススメです。図形を見たときに、実際には書かれていない補助線を想像する感覚が、遊びながら身につきます。発見の喜びがあり、図形感覚も自然と身につきます。
遊び方③ 絵を描く
*オススメの年齢:お絵描きや書くこと、鉛筆に興味を示す子なら1歳くらい〜
いわゆる「らくがき」です。特に子供のお絵描きは、「これがヘビで・・・」と説明しているうちに、絵がどんどん変わっていくことも多いですね。それは、子供の頭の中で世界がどんどん広がり、変化していることの現れです。子供の頭の中が親の側にもビジュアルとして伝わってくるから、実はとても面白い遊びなんですね。
ここで大事にしてもらいたいのが「寄り道」を楽しんであげること。最初ぐねぐねのヘビを描いていたと思ったら、いつのまにかそれが道になり、電車になり・・・と、果てしない変化を楽しみたいですね。
「次は何になるのかな?」「あれ?さっきのヘビはどこいった?」「これからどうなるのかな?」と、子供の描くものに合いの手を入れて、親御さんはぜひ、寄り道のよき伴走者となってください。
アイテム2:積み木・ブロック→動き、数の感覚、形を楽しめる遊び
遊び方① ひたすら直線並べ遊び
*オススメの年齢:1歳半くらい〜
積み木やブロックを並べたり積み上げたりしながら、「壁のここからここまで、積み木何個分かな?」「こっちの壁と、そっちの壁、どっちが長い?」などを比べます。
家中を遊び場にできますし、長さ、広さ、高さの感覚が養えます。
遊び方② ひたすら高く積み上げ遊び
*オススメの年齢:1歳半くらい〜
まずは、壊れないようにそっと積み上げて、ガシャンと崩す。この繰り返しで「静」と「動」の移り変わりを体感でき、崩してもまた作り直せるということで遊び心も刺激されます。
少し年齢が上がってきたら、いかに崩れないように作るかということにも注目すると遊びの幅が広がります。
遊び方③ 物語の場面を創る見立て遊び
*オススメの年齢:2歳半くらい〜
その日見たものや絵本で読んだシーンなどを再現するツールとして、積み木やブロックを使います。頭に思い描いたことを具体的にすることで、イメージ力が高まります。
「○○ちゃんの好きな電車を作ってみて」「絵本で読んだあのお城、どんなのだったかな?」などと話しかけてあげるといいですね。
アイテム3:図鑑・辞書→知的欲求を満たしてくれる遊び
遊び方① 辞書使い放題しりとり
*オススメの年齢:5歳くらい〜
子供には辞書を無制限に使えるアドバンテージがあります。辞書の魅力は、調べた言葉のすぐ隣に想像もしないような面白い言葉がいくつも並んでいるところ。
しりとりに飽きたら、「青いもの」「冷たいもの」などテーマを決めて言葉をどんどんリレーしていく古今東西山手線ゲームに発展させてもいいですね。最近の辞書はビジュアルにも配慮して子供も楽しめる工夫が満載です。
でも、自発的に子供が1人で辞書を開くのは難しいため、最初のうちは「まずは親が引いて見せる」ことを心がけてくださいね。
遊び方② 図鑑を使っていろいろクイズ
*オススメの年齢:5歳くらい〜
図鑑を見ながら、子供に自由にクイズを出してもらいます。テレビで見たばかりの動物がいたら、親のほうから「ラクダのことについて、何かクイズを出してみて!」とリクエストしてもいいですね。子供の日常生活で見たり聞いたりしたこととつながりをもたせるような声がけができると、会話も深まります。
図鑑に親しむ最初のステップは、とにかく「慣れる」こと。まずは一緒に開いて眺め、「この蝶々、きれいね」「新幹線って、かっこいいね」「○○ちゃんなら、どの動物が好き?」「○○君なら、どの国に行ってみたい?」と、思ったことを口にするだけでもいいです。図鑑は専門性が高くてちょっと・・・と抵抗感のある親御さんもいますが、ビジュアルを楽しむだけでも十分です。
この3アイテムを使った遊びの魅力は、何ですか?
親子のおしゃべりが広がりやすい
子供の世界が広がりやすいだけでなく、これらのアイテムを使った遊びは、親子のおしゃべりが始めやすいんです。図鑑を見ながら「あ、この馬、動物園でこの前見たね!」とか、お絵描きなら、「何描いてるの?」「かわいいね、ちょっとお母さんにも見せて」と尋ねることもできます。
あらゆる感覚を養える
形、数、言葉について、遊びながら感度が磨かれていくのも、これらのアイテムを使った遊びの魅力です。
たとえば、しりとり遊びなら、自分の中にある言葉を引き出そうとすることで、言葉の感度が磨かれて、耳から入ってくる言葉がよりいっそう聞こえやすくなります。要するに、遊びを通して、自分と対話しているんですね。遊べば遊ぶほど言葉の感度は磨かれていきますし、自分のものになっていきます。
遊び方の展開が無限大
同じブロック遊びでも、僕の息子の場合はひたすら直線並べ遊びに夢中で、ブロックで何かを想像して創るというモチーフ創りには興味がありませんでした。お子さんによって、きっとその逆もあるのでしょうね。
ブロック1つとっても、その遊び方は子供の数だけあります。「ブロックだからこう遊ぶべき」という発想にとらわれないようにしたいですね。
特に紹介した3アイテムを使った遊びは「自由な展開」があるところが魅力です。加えて、電池やバッテリーの充電も必要ありませんから、いつでもどこでも、気楽に始められます。
子供と「もっと遊んであげなくちゃ」と思っているすべての親御さんへ、メッセージをお願いします。
家族の会話をあきらめない
家の中で遊びを楽しむには、親に心の余裕がないとできません。心の余裕は、自分の時間をもてているかがカギですよね。親にも大事にしたい時間があって、それがあるからこそ、子供とも向き合えるのですから。
夫婦間で「明日はどんなふうに過ごすの?・・・なら、子供のお風呂は任せるね」とか、子供に「今日は何をして遊びたい?」「見たいテレビ番組何かな?全部はダメだけど、2つ選んだら一緒に見るよ」とか。
こうした会話のやりとりがあって、初めて、家庭の中で親が自分の時間をもつことができるんです。「お互いがお互いの話に耳を傾ける」ということがない限り、遊び心なんて生まれてこないですから。
「ありがとう」を倍にしよう
では、どうしたら心に余裕が生まれるか。日常会話の中で「ありがとう」を倍にすることを、僕はすすめています。意識的に増やすことで、なんとなく和やかないい雰囲気になっていくはずです。すると気持ちにも少し余裕ができて、お互いの話を「聞く」ということも自然とできるようになります。
パパに自分の話を聞いてもらえたら、ママは子供の話を聞く余裕が生まれます。子供も自分の話を聞いてもらえたら、ママに「ちょっと待っててね」と言われても待てるようになります。お互いのことを大事にすることと、家の中で遊びが自然に湧いてくることはセットです。それなりに心が穏やかで、気持ちに余裕があるから、楽しく遊べるんですね。
1人で頑張ろうとせず、家族との会話をあきらめない。そして、自分がわからないことはわかる人やモノに頼る。そういう柔軟さもぜひ、忘れないでほしいと思います。
インタビューを終えて
「遊び上手な親御さんは、楽しみ上手な方ですね」という先生のお言葉が印象的でした。子供と遊ぶときは、遊びの内容以上に親の心の状態が何よりも大事であることが、とてもよくわかりました。そこを見落としている親御さんは、決して少なくないのではないでしょうか。時間や目的意識から解放されたときこそ、子供ととことん遊べるチャンスです。子供と向き合う時間も自分の時間も、大切にできたらいいですね。
プロフィール:小川大介(おがわ だいすけ)
教育家。1973年生まれ。京都大学法学部卒業。
学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として活躍後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設。子供それぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動している。受験学習はもとより、幼児期からの子供の能力の伸ばし方や親子関係の築き方に関するアドバイスに定評があり、各メディアで活躍中。そのノウハウは自らの子育てにも活かされ、一人息子は中学受験で灘、開成、筑駒すべてに合格。『1日3分!頭がよくなる子どもとの遊びかた』(大和書房)のほか、頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)、『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)など著書多数。
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