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- 更新日:2024年7月25日
- 公開日:2022年3月22日
【小児科医監修】ハンドリガードはいつから?成長過程での意味やしぐさの種類
赤ちゃんの成長過程でみられる「ハンドリガード」をご存知ですか?自分の手を目の前にもってきてじっと見つめたり、こぶしをしゃぶったり、指をなめたりする赤ちゃん特有のしぐさをいいます。生後2カ月~5カ月の間に見られることが多いそうです。
ハンドリガードはいつから?また、なぜ見られるのでしょう。
ここでは赤ちゃんの発育と深く関係すると考えられているハンドリガードについて、はじまる時期や成長過程での意味、しぐさの種類、しない場合の問題、この時期に赤ちゃんと楽しみたい手遊び歌などをご紹介します。
監修:藤田秀樹先生(目黒通りこどもクリニック院長)
目次
ハンドリガードとは?指しゃぶりとはどう違うの?
手を見つめ、動かす行為は赤ちゃんの発達を示すサイン
ハンドリガード(Hand regard)とは、赤ちゃんが自分の手を目の前にもってきて、じっと見つめながら手を動かしたりする動作をいいます。生後数カ月の赤ちゃん特有のしぐさで、“regard”は「じっと見る」「注視する」を意味します。
一般的に、赤ちゃんは生後1カ月頃に目の前のものをじっと見つめる「注視」ができるようになり、その後、動いたものを目で追う「追視」がはじまります。この頃から、赤ちゃんは視界の中にはじめて現れた自分の手の存在に気づき、「これはなんだろう?」という興味から、見つめながら動かしたり、口に入れて確かめたりするようになります。
ハンドリガードは赤ちゃんが自分の手を道具として使う最初の行為であり、発達のサインと考えられています。手を見る→動かす→唇や舌を使って手をなめる、といった一見なんでもないように思える一連の動作を通し、赤ちゃんの脳の中では大きな変化が起こっています。視覚をつかさどる「後頭葉」、運動機能や認知機能と深く関わる「前頭葉」をいっしょに働かせ、ハンドリガードを通して手が自分の体の一部であることを認識しはじめているのです。
このように、ハンドリガードは赤ちゃんの「視力の発達」や「筋肉の発達」などにともなって行えるようになります。加えて、自分で手足を動かしていることを理解する「認知機能の発達」や、体の動きを観察しようとする「好奇心の発達」などとも関係し、脳や体が順調に発達していることを示す行為と考えられています。
指しゃぶりやこぶししゃぶりもハンドリガードの1つ
指しゃぶりはハンドリガードの1つで、生理的な現象です。握ったこぶしを口の中に入れようとする「こぶししゃぶり」が見られることもありますが、無理にやめさせる必要はありません。
手の感触や視覚が未発達な赤ちゃんは、もっとも敏感な器官である舌や唇を使って手や指を刺激しながら多くのことを学んでいます。なかでも指しゃぶりは赤ちゃんが胎児の頃から母乳を飲むための練習として行っている生理的な現象でもあり、ハンドリガードがはじまった後も無意識のまま続ける赤ちゃんが多いようです。
頻繁に指しゃぶりをすると、衛生面や歯並びが気になるという方もいますが、現在は無理にやめさせないでも良いという考え方が主流です(※)。一日中指しゃぶりしている、指にタコができるほど強く吸っているなどの行動がなければ、3歳くらいまでは見守ってあげましょう。
※参考:
「東京都こども医療ガイド/指しゃぶりについての考え方」小児科と小児歯科の保健検討委員会
かわいいしぐさがいろいろ!ハンドリガードの種類を知る
よく見られる7種類のハンドリガード
赤ちゃんのかわいいしぐさは、見ているだけでママやパパに喜びを与えてくれるもの。ハンドリガードの種類はいろいろあります。なかでもよく見られる7つの動作を下記にご紹介しましょう。
よく見られるハンドリガード7種類
1. 自分の手をじっと見つめる
2. 手を上げたり下ろしたりする
3. ゆらゆらと手を揺らす
4. ぎこちなくグーパーをくり返す
5. 頻繁に手や指を口に入れてなめる
6. 髪の毛をむしるようにして手のひらを見つめる
7. ハイハイの頃にはフットリガードのかわいいしぐさも
1. 自分の手をじっと見つめる
自分の手を目の前にもっていき、不思議そうな顔でじっと見つめるようなしぐさをする赤ちゃん。指を動かしながら「これはなんだろう」と考えているような表情を見せてくれます。
2. 手を上げたり下ろしたりする
目の前にもっていった手を上げたり下ろしたりする動作。腕と手が自由に動かせるようになるとよく見られるしぐさです。赤ちゃんが自分の手を道具として意識しているのかもしれません。
3. ゆらゆらと手を揺らす
手を見つめながら、ゆっくりゆらゆら動かすような動作。ときには両手を組むように交差させるなど、成長するにつれて複雑な動きを見せる赤ちゃんもいます。さりげないしぐさもハンドリガードの1つです。
4. ぎこちなくグーパーをくり返す
手指をゆっくりひらいたり握ったり。グーパーをくり返す赤ちゃんに思わずママ・パパもにっこり。握ったこぶしを口の中に入れようとすることもありますが、慌てずに見守りましょう。
5. 頻繁に手や指を口に入れてなめる
最初のうちはじっと手を見つめるだけだった赤ちゃんも、徐々に手の動きが大きくなったり、しきりに指しゃぶりをしたりするようになります。これらのしぐさにより、目の前にある手が自分の体の一部であることを認識していきます。
6. 髪の毛をむしるようにして手のひらを見つめる
自分の髪の毛をむしり取るようなしぐさ。つかんだ髪をじっと見つめます。興味の対象がどんどん広がっている証拠です。
7. ハイハイの頃にはフットリガードのかわいいしぐさも
手が思うように動かせるようになると、自分の手で足をつかんで持ち上げながら開脚したり、足先を口に入れたりする「フットリガード」をはじめる赤ちゃんもいます。手だけでなく下半身の力もついてくる頃に見られます。ハイハイして動き回る頃(生後5カ月~10カ月頃)に多いようです。
ハンドリガードはいつから?はじまるタイミングと月齢別の手足の成長
生後2カ月頃~5カ月頃までがハンドリガードの期間の目安
赤ちゃんにハンドリガードが見られるのは、一般的には生後2カ月頃~5カ月頃までが多いとされています。スタート時期には個人差があり、生後6カ月頃からはじめる赤ちゃんもいます。まだ寝たり起きたりをくり返している赤ちゃんが起きているわずかな時間のうち、おっぱいやミルクでおなかが満たされているご機嫌なときがハンドリガードのタイミングと考えられています。
ハンドリガードの期間は長くても3カ月程度で、赤ちゃんの成長とともに徐々に見られなくなることが多いようです。
下記に月齢別の発達の目安をまとめました。あくまでも目安ですので、この通りでない場合もあります。
ハンドリガードをしてからの月齢別・赤ちゃんの発達
生後2カ月頃
最初はほとんど動きのなかった赤ちゃんも徐々に活発に動くようになり、手や指をしゃぶるなど、この頃からハンドリガードが見られるようになる子が多いようです。
また赤ちゃんの手のひらにママやパパが指をおくと、ぎゅっと握り返すような反応(※)を示すこともあります。自分の手の動きを自分の目で確認できるようになり、動くものを目で追う追視がはじまります。
※乳幼児期に見られる生まれつき備わっている原始反射の1つ「把握(はあく)反射」のこと。
生後3カ月頃
ベッドに仰向けに寝ている状態で、両手を胸の前において遊ぶようなしぐさをするなど、ハンドリガードが頻繁に見られる赤ちゃんもいます。身近なおもちゃを口に運んでしゃぶったりすることもあるでしょう。
触感の発達により、ざらざらしたものやふわふわの感触を手のひらで感じるようになるのもこの頃からといわれています。
生後4カ月~5カ月頃
目で見たものに興味を示し、手をのばしてつかんだり、おもちゃを握ったりするのが上手になる頃。
徐々に五感が発達し、手のひらを握ったり、指を広げたりすることもできるようになります。あやすと笑うだけでなく、手足をバタバタさせて体全体で感情を表すようになります。
生後6カ月~7カ月頃
この頃になると手の指の機能が発達し、手指が開けるようになったり、左右別々に手を動かしたりすることができるようになります。お気に入りのおもちゃを手に取り、さわったり頻繁に口に入れてなめたりすることも。
両手で支えれば、少しだけ1人でおすわりができるようになり、徐々に手を離しておすわりができるようになる子もいます。
生後8カ月~9カ月頃
右手と左手に別々のおもちゃをもったり、持ち替えたりしながら両手で遊べるようになります。おすわりが安定し、ハイハイをしはじめる子も多くなる時期です。距離感がつかめるようになり、興味のあるものを自分の意思で取ったり手放したりするなど好奇心も旺盛に。
なかには手足の筋力もアップすることで、つかまり立ちをはじめる赤ちゃんもいます。
生後10カ月〜12カ月頃
多くの赤ちゃんがつかまり立ちをするようになり、指先の細かな動作や左右連動させて動かすことができるようになります。興味のあるものを手や指でさすようになったり、食事を手づかみで食べようとしたりすることもあるでしょう。
11カ月頃になると手指がさらに器用になり、蓋の開け閉めができるようになる子もいます。
すべての赤ちゃんがハンドリガードをするとは限りませんし、ママやパパが気づかないうちに終わってしまったというケースも多くあります。赤ちゃんの身体機能の発達には個人差があり、ハンドリガードを飛ばしてハイハイやお座りへと進む赤ちゃんもいます。
赤ちゃんの発育で気になることがあれば、専門医に相談すると良いでしょう。
※参考:
「就学前教育カリキュラム 改訂版 <参考>0歳児から2歳児の発達過程」東京都教育委員会
ハンドリガードで「利き手」が決まるってホント?
指しゃぶりをする方が利き手になりやすい?
利き手は3歳~4歳頃に決まることが多く、赤ちゃんがハンドリガードをするときにはまだ利き手は決まっていません。どちらの手でハンドリガードをするかについても、赤ちゃんの気分やそのときの姿勢などによって変わるようです。
いつも同じ方の手ばかり目で追ったり、なめたりする場合、「そっちが利き手かな?」と気になってしまうかもしれません。ハンドリガードと利き手の関係は明らかではありませんが、よく指しゃぶりをする方の手が利き手になる可能性があるといわれることもあります。ただし、これはあくまで可能性の話です。
なお利き手については、妊娠10週〜12週の間にママの胎内で指しゃぶりをしている手が関連している、という説もあります。
ハンドリガードをしない・遅いのは問題?
心配ごとや不安があれば定期検診や専門医に相談を
「ウチの子はハンドリガードをしないけれど・・・」と心配する声をよく耳にします。なかには「発達障害では?」と悩むママやパパも。ハンドリガードが見られないとしても、一概に発達に問題があるとはいえません。
赤ちゃんの成長は個人差が大きく、ハンドリガードが生後2カ月~3カ月より遅れる場合もありますし、自分の手の存在を認識するしぐさは赤ちゃんによっても異なります。自分の手より他のものに興味をひかれていることもあれば、ママ・パパがハンドリガードに気づいていないこともあります。
遅い・しないといった場合でも、あまり神経質にならないようにしましょう。
また、ほとんどの市区町村で3カ月~4カ月児健康診査が行われており、追視をするかどうか、手を見つめたり、ものをつかんだりするかどうかといった検査が診察の内容に含まれています。赤ちゃんの発育に関して心配なことや不安があれば、健診の際に質問したり、専門医に相談してください。
※参照:
「乳幼児健康診査 身体診察マニュアル」国立研究開発法人 国立成育医療研究センター
ハンドリガードの時期は赤ちゃんと「手遊び歌」をはじめるチャンス!
手遊び歌やマッサージによるスキンシップが成長を促す
ハンドリガードが見られるようになったら、手遊び歌やマッサージなどで赤ちゃんとのスキンシップを楽しんでみてはいかがでしょう。視覚・聴覚・触覚が刺激を受けることで脳と体の発達が促され、赤ちゃんの発育にも良い効果が期待できそうです。
ハンドリガードがあまり見られないという赤ちゃんにとって、手遊び歌やマッサージが自分で体を動かすきっかけや意欲につながることもあります。リズムに合わせて赤ちゃんの手や足を優しくタッチしながら親子のコミュニケーションも育んでくださいね。
赤ちゃんと手遊び歌を楽しむための注意点
手や指を動かす振りがたくさん含まれている手遊び歌を上手に取り入れるコツは、ママやパパが楽しみながら歌を聞かせてあげることです。「楽しいね」「面白いね」と語りながら遊んでくれる姿を見ると、赤ちゃんも歌や手の動きに興味をもってくれるかもしれません。
また一度にたくさんの歌を聞かせるより、同じ動作を何度もくり返す方が良いでしょう。遊びながら自然に好きな歌や動作を覚えてくれますよ。赤ちゃんが歌のメロディを聞き取りやすいように、はっきり発音してあげると良いでしょう。
手遊び歌にはさほど激しい動きはありませんが、赤ちゃんを大きく揺すったりしないように注意してください。とくに首が座る前の新生児の赤ちゃんを激しく揺さぶると、遠心力が頭部に直接伝わり、強い衝撃となってしまう場合があります。
赤ちゃんの体の負担にならないよう、様子を見ながら優しく行ってください。
編集部がオススメする手遊び歌5選
赤ちゃんと楽しむのにぴったりの手遊び歌を、編集部がセレクトしてご紹介します。ここでは乳児期の英語学習にもオススメの英語の手遊び歌をピックアップ。スキンシップを通して英語の歌を聞いたり口ずさんだりすれば、英語を聞き取る力を身につけることにも役立ちそうです。
ハンドリガードが見られた赤ちゃんとの絆を、リズミカルな手遊び歌によってさらに深めてくださいね。
Peek-a-boo!
生後間もない赤ちゃんにもオススメの手遊び歌。歌に合わせて隠れたり、見つめ合って微笑んだり。まだおしゃべりのできない赤ちゃんとも親子のスキンシップが楽しめますよ。
Row Row Row Your Boat
おすわりができるようになった赤ちゃんといっしょに歌いたい1曲。座った姿勢でボートをこいだり、川の流れに合わせて優しく体を揺らしたり。さまざまな動きを楽しみましょう。
Eyes, Nose, Cheeky, Cheeky, Chin
歌いながら、”eyes”で目、”nose”で鼻、”cheeky”で頬、”chin”であごをそっとさわりましょう。お互いの顔がわかるように、向かい合いながら歌うと良いですよ。
Wind the Bobbin Up
「いとまきまき、いとまきまき、ひいてひいて、トントントン」というお馴染みの手遊び歌の英語版。日本語のトントントンを”clap, clap, clap”とリズミカルに歌って聞かせてみましょう。最後の”Put your hands up on your knee.”では手を膝の上に置きます。
Grand Old Duke of York
赤ちゃんを抱っこしながら、軽快なリズムに合わせて赤ちゃんの手を上げたり下げたりしてみましょう。慣れてきたら、優しく体を上下させてみても良いですよ。歌詞に出てくる“Up”や“Down”に合わせ、赤ちゃんの様子を見ながら楽しみましょう。
いかがでしたか?ふっくらとした赤ちゃんの手は、それだけでかわいさいっぱい!赤ちゃんの発達の過程で見られるというハンドリガードの愛らしいしぐさは成長の証。手を見つめたりなめたりする動作を通し、赤ちゃんはさまざまなことを学んでいるのです。あっという間に過ぎ去る短く貴重なハンドリガードの期間を、家族みんなで優しく見守ってあげたいですね。
さて、上にご紹介したもの以外にもこの時期の赤ちゃんにオススメしたい手遊び歌はたくさんあります。以下の記事では、赤ちゃんとスキンシップをはかりながら英語学習にも役立てられる手遊び歌の数々をご紹介していますので、ぜひご覧になってくださいね!
監修:藤田 秀樹(ふじたひでき)先生
目黒通りこどもクリニック院長。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程終了後、小児科勤務を経て、2014年より現職。子供の心と体の健康を目指す保育所「みんなのおうち」を併設。
目黒通りこどもクリニック
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