
新生児に与えるミルクの適切な量は?足りない、飲みすぎのサイン
子育てにスキンシップがいいとはよく聞きますが、なぜいいのか、どういうスキンシップをしたらいいのか、またスキンシップが最も効果的な時期はあるのか、臨床発達心理士で桜美林大学教授の山口創先生にお話を伺いました。
山口先生のご専門は、健康心理学、身体心理学などとなり、幸福に生きるためにはどうしたらいいかという新しい分野の心理学です。『幸せになる脳はだっこで育つ。強いやさしい賢い子にするスキンシップの魔法』や『子供の「脳」は肌にある』など、肌の触れ合いについて多数の著書を出版されていらっしゃいます。
二児の父でもある山口先生に、知られざる皮膚の役割や親子のスキンシップについて教えていただきました。
目次
親が子供に行うスキンシップは子供の成長にいろいろな影響を与えますが、一番大きいのは「愛着の形成」ではないでしょうか。スキンシップをたくさん受けた子供は脳の中で「オキシトシン」というホルモンが出ます。それが安定した愛着を築くためにすごく大事な役割をもつと言われています。
中でも、抱っこをすると一番オキシトシンが出ますので、「愛着の形成」のためにとても大切だと考えられるのです。
最近の研究で、実は皮膚と脳とは「皮脳同根(ひのうどうこん)」と言って、元が同じ所からできていて、似たような機能をもっていることがわかってきました。
脳の機能は、入ってきた情報を処理して出力するという「情報処理」が基本的な機能ですが、皮膚自体にも同様に情報処理をする機能があるようなのです。
また皮膚もホルモンを作っていますので、それが血液中に放出されると脳に届き、脳にまで影響を与えます。これまでは脳から皮膚に指令を伝達するという一方向的な考えだったのですが、逆に皮膚から脳にという因果関係もあることがわかってきたため、皮膚は脳のような役割をもつ「小さい脳」とも言えるのです。
肌に触れるスキンシップは、相手を認めるとか、関心がある、愛情があると伝える行為なので、家庭内でいつも適度にスキンシップをすることで、お互いに気持ちが通じ合えたりわかり合えたりできるのだと思います。
「オキシトシン」が作られやすい「愛着の敏感期」というのが2回あります。
1回目は出産後すぐの数時間です。出産後すぐに新生児を母親の胸で直接抱っこすることは「カンガルーケア」と呼ばれ、愛着の形成にたいへん良く、将来の虐待予防になるとも言われ、さまざまないい効果があることから、日本やアメリカなど多くの国で広がっています。
特にオススメしたいのがお父さんです。やはり父親は自分で産むわけではないので、自分の子供という実感がわきにくいのですね。私もそうでしたが、お父さんも出産後なるべく早く抱っこすることで、ちゃんと自分も育てようという気持ちが出てくると思います。
2回目の敏感期は、生後半年から1歳半の1年間です。この時期の乳児は当然1人では生きていけないので、誰かに頼って生きていこうという動物的な戦略をとります。
ですからその時期にいっぱい触れてあげるのが大切ですし、泣いたらできるだけ応えてあげましょう。抱っこに限らず、お腹が空いたらミルクをあげたり、濡れたオムツを気持ち悪がっている様子ならオムツを替えたり、たくさんケアしてあげてください。そうすることで子供はもちろん、親にもオキシトシンがたくさん出るようになります。
この時期にしっかりケアをしていると、子供の泣き方や表情に敏感になり、なぜ泣いているのか理解しやすくなるとも言われています。また、この敏感期の子供は、泣く度に親が自分のために何かしてくれたという経験を積むことで、親は自分を守ってくれる、愛してくれているという感覚を身に付けるので、安定した愛着の関係が築けるようになるのです。
敏感期はいくら子供をケアしても甘やかしにはならないので、なるべく応えてあげることが大事です。それが不足すると、自分がいくら泣いても親は何もしてくれない、放っておかれたという記憶に繋がってしまうこともあります。
だからこそ、この敏感期のスキンシップがとても大事で、それが過ぎたら徐々にスキンシップの方法を変えていくのがいいと思っています。敏感期後は必要以上にスキンシップをとるのではなく、子供が求めている時にスキンシップを十分にしてあげましょう。
抱っこやスキンシップは子供の行動を制約してしまう面もあり、逆に親の想いを一方的に押しつけているように感じてプレッシャーになってしまうこともあります。子供の方から近寄ってきた時はちゃんと慰めたり励ましたりすることが大事ですが、それ以外はむしろ自由に遊ばせてあげる方がいいですね。
敏感期に抱っこなどのスキンシップが少ない家庭の子供が5歳になった時、遺伝子が変わってしまったという研究(※)がありました。
変化する遺伝子には2種類あるとされ、1つは代謝系を司る遺伝子で、そこがうまく働かなくなると肥満になる傾向が出るなど、さまざまな影響があります。
もう1つは免疫系を司る遺伝子で、身体が弱く風邪をひきやすくなったり、感染症にかかりやすくなったりという影響が出てきてしまいます。そういった身体の面でも遺伝子レベルで悪影響を及ぼす危険性がありますが、心理的に問題が出る可能性もあります。
心理的には、やはり愛着の関係が不安定型になり、人を信頼できない「回避型」になったり、いつも親から愛されていることを確認しないと安心できない、愛着に囚われてしまうタイプ(いつでも何かあると泣いて自分に注目を集める行動をとるといった傾向)になるといわれています。
こういった愛着は一度形成されると生涯ずっと続いてしまうことが多いのです。大人になっても配偶者や恋人との間に、その愛着に囚われた行動を繰り返してしまうこともあります。そのような可能性を低めるためにも、特に敏感期の子供にとっては、スキンシップがとても大事なのです。
発達障害のなかでも特に自閉症の子供は、脳の中の「オキシトシン」の濃度がやや低いとされています。オキシトシンを作る遺伝子に欠損があり、うまく作れないということが、近年わかってきたのです。そこで、スキンシップを行い、オキシトシンを増やすと、実際に自閉症の症状が軽くなったというデータ(※)も出ています。
アトピーの子供は皮膚が痒くて掻き壊してしまうことがよくあります。そのなかには「心理的掻破」と言って、掻き壊すことが、親の注目を浴びたり、愛情をもらったりするための一種の戦略になっている可能性もあるといわれています。
これを止めさせるには、「抱っこ療法」も1つの有効な方法です。お母さんに「毎日寝る前に5分でもいいので抱っこしてください」と指導すると、実行したご家庭のなかにはアトピーが良くなっていく子供もいます。それは心理的な掻破が原因の場合、掻き壊しが減り、症状も改善していくためなのです。
さらに「必ず良くなるよ」と暗示をかけてあげるとより効果的です。お母さんから何度も言われると、子供もそれを信じて安心します。やはりストレスや不安があるとより痒くなるものですから、安心することで痒みも軽減されることがあるのですね。
※ 堀越 詩帆「自閉症スペクトラム障害児に対するタッチセラピーの効果について―内因性オキシトシンに着目して―」(2017年桜美林大学大学院心理学研究科修士論文)
愛情を伝えるという、愛情のコミュニケーションが本来のスキンシップなので、触れる時のポイントとして私は「包み込むような触れ方」を推奨しています。
指先ではなく、手のひらの広い面積で触れると愛情も伝わりやすいですし、触れる方も触れられる方も互いにオキシトシンが出やすいとされているのです。
また、触れるスピードも大事で、ゆっくりした速さで触れると愛情が伝わりやすいと言われていて、だいたい「1秒間に5cm前後」という研究があります。
その速さに反応する身体の神経線維というのがちゃんとあり、それより速すぎても愛情は伝わりにくいとされています。愛情のないものに触れるときは、人はどうしてもスピードが速くなってしまいます。意識してゆっくり触れるようにした方がいいと思いますね。
良くないスキンシップは、相手が触れて欲しくない時に触れることです。「バウンダリー(心の境界線)」と言ったりもしますが、相手の境界線を越えないように反応を見ながら「この辺は嫌そうだからやめておこう」など、一方的ではなく相手を見ながら調節していくことが大切です。共感的に相手の気持ちを汲み取るようにして触れてあげてください。
大切なのは相手を想いながら利他的に行うことです。嫌々だったり、自己中心的だったりするとオキシトシンは出ませんから注意してくださいね。
スキンシップと子供への影響を調べたところ、母性のスキンシップは子供の情緒を安定させる役割があり、父性のスキンシップは子供の社会性を育てるように作用するという違いがあることがわかりました。
母性のスキンシップは日常の世話や遊びのなかでやさしく触れるようなことが多く、それによって情緒が安定していくのに対し、父性のスキンシップは、「高い高い」や「くすぐり遊び」など、身体を動かして遊ぶ刺激的なスキンシップが圧倒的に多いので、社会性に繋がるのだと思います。
スキンシップで双方に出る愛情ホルモン「オキシトシン」には、いい影響がいろいろあります。単に癒しになるだけでなく、アンチエイジングの効果もあり、オキシトシンが血液中に放出されて皮膚の細胞に届くと、幹細胞を活性化し「セラミド」など皮膚に良いとされるいろいろな物質がたくさん出て、皮膚の状態がとても良くなるという研究もあります。
筋肉の細胞も同じで、オキシトシンが届くと筋細胞を活性化させるので、筋肉の若返りになるとされています。
また血圧を下げる効果もあります。これはオキシトシンの直接の作用というよりは、オキシトシンが放出されて心臓の血管の内側の受容体にオキシトシンが付着すると、そこから血液中に一酸化窒素が放出されて血管の内壁を柔らかくするので、血管が広がりやすくなり、血圧が下がるということです。
昔の日本ではおんぶする子育て習慣がありました。今ではあまり見られませんが、実は「おんぶ」がすごく言語の発達にもいいと言われています。
これは子供と親が同じものを見ながら会話できることが影響していて、「あれは〇〇だね」、「鳥が飛んでいるよ」と、同じレベルで同じ景色を見ながら会話することで言語の発達が促せるからです。心理学の研究分野では「ジョイントアテンション」と言ったりします。
言葉の発達は1歳前後が特に目覚ましいと言われているので、まだ歩けない子供をおんぶすることで共感が得られます。子供がおんぶされてお母さんと密着することで、心臓の音や汗をかいているなど、お母さんの身体の変化が伝わってきてお母さんの気持ちまで感じ取れるようになるわけです。
これが共感の土台になると言われ、言語の発達にも繋がっていきますから、ぜひ「おんぶ」をオススメしたいですね。
スキンシップが驚くほどたくさんの良い効果をもたらすことを論理的、科学的に知ることができてたいへん勉強になりました。欧米に比べて日本人は家庭内のスキンシップが著しく少ないと言われていますが、親子はもちろん、夫婦やペットでもたくさんスキンシップをすることで、家族みなが心も身体も健康になるそうです。
それには何より「愛」が大切とのこと。ぜひ愛をもってお子さまを抱っこしたりスキンシップしたりしてたくさん触れてあげてくださいね。
プロフィール:山口 創(やまぐち はじめ)
桜美林大学リベラルアーツ学群教授博士(人間科学)、臨床発達心理士。専攻は、健康心理学、身体心理学。著書に『幸せになる脳はだっこで育つ。強いやさしい賢い子にするスキンシップの魔法』(廣済堂出版)、『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)、『皮膚感覚の不思議』(講談社ブルーバックス)など多数。
※本記事はインタビューをもとに作成しており、医学的な効果を保証するものではありません。
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© Disney. Based on the “Winnie the Pooh” works by A.A. Milne and E.H. Shepard.
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