子供の英語学習が盛んになる中、英語の検定試験を受けるお子さまが増えています。でも、いざ受検するとなると、どんな試験があるの?試験を受ける目的は?など、わからないことも多いのではないでしょうか。
今回は、小学校入学前の早い段階からチャレンジできる「JET(Junior English Test)」についてご紹介します。試験内容や年齢の目安、受検のメリットなど、JETの特徴を、JET委員会事務局長の西條 良さんに伺いました。
Q1. JETとはどんな試験ですか?
Q2. テストの構成と特徴について教えてください。
Q3. 受検に適した年齢の目安はありますか?
Q4. 他の英語試験とJETの違いは何ですか?
Q5. JETを受けるメリットとその先の目標は何ですか?
Q6. これからJETを受ける方へのメッセージをお願いします。
Q1. JETとはどんな試験ですか?
子供の「英語の運用能力」を測るTOEIC®につながる国際標準のテスト
JETはJunior English Test(ジュニア・イングリッシュ・テスト)の略で、英語学習の初期段階にある幼稚園生や小学生、中学生をメインターゲットに、英語教育が盛んな韓国などでも行われている国際標準の英語検定試験です。
もともと米国の教育研究機関IMET(Institute for Measurement in Education and Training)によって開発されました。日本では2010年秋から運用がはじまり、現在年4回、国内各地でテストが開催されています。
JETの目的は「英語を使って何ができるか、どう活用できるか」という英語の運用能力を測定することを目標に設定されています。また、TOEIC®の問題をモデルに作成されていて、TOEIC®のジュニア版という位置づけの検定試験といえます。
Q2. テストの構成と特徴について教えてください。
リスニングとリーディングの2パートを5レベル・10段階で細かく判定
JETでは、英語4技能の中でも子供が最初に習得する「聞く」「読む」力の測定に重点をおき、基本的にリスニングとリーディングの2パートによるテスト構成になっています。
英語の習得レベルを、初級者の"Starter"から上級者の"Advanced"までの5レベルに分け、各レベルをさらに2つの級に分類して10段階の「級」で学習者の能力を判定します。学習者は「英語学習期間」を目安に、各自に合ったレベルを受検できるように設定されています。
参考:受検級の目安
5レベルのテスト問題で10段階の合格判定
Starter(9-10級):
英語学習期間:6ヶ月~1年6ヶ月
日常生活でよく使われる基礎的な語彙を聞き、理解できる。
Starter Plus(7-8級):
英語学習期間:1~2年(3年)
日常生活でよく使われる簡単な文章を聞いて理解し、基礎的な語彙が理解できる。
Basic(5-6級):
英語学習期間:1~3年
基本的な語彙、短文で構成された対話を聞いて内容を理解し、簡単な語彙や句、短文を読んで意味が把握できる。
Intermediate(3-4級):
英語学習期間:2~4年
簡単な対話を聞いて理解し、多様なテーマの短文を読んで要旨が把握できる。
Advanced(1-2級):
英語学習期間:4~6年
日常生活で接する多様な対話を聞いて理解し、色々なテーマの長文を読んで要旨が把握できる。
※ 「英語学習期間」は、毎週2時間程度の学習を目安に計算
Q3. 受検に適した年齢の目安はありますか?
(JET9-10級問題より)
【英語(英単語または英文)にぴったり合う絵を1つ選ぶ問題】
The girl is brushing the dog.
(1)
(2)
(3)
答え:(3)
【絵にぴったり合う英語(英単語または英文)を1つ選ぶ問題】
(1)The man is carrying a box.
(2)The man is driving a car.
(3)The man is running in a park.
答え:(1)
イラストを見ながら日常生活でよく使われる文章や語彙の理解度を測る「Starter」レベルの問題例
親近感のあるシーンを題材に幼稚園児からチャレンジできるテスト内容
実際には幼稚園の年長さんくらいから受検可能な内容となっています。初級者レベルの "Starter(9-10級)"はリスニングのみのテストで、全25問を30分かけて解いていきます。
アルファベットを覚えたばかりという英語学習歴1年未満のお子さまでも気軽にチャレンジできる構成なので、幼稚園や幼児教室、小さなお子さまが通う英語塾などからの団体受検も多く、「読み書きが完璧ではない幼稚園児でも受検できるよう作られている」「苦手意識が芽生える前から自然にたくさんの英語にふれることができる」といった体験談が寄せられています。
7-8級以上はリスニングとリーディングの問題が出題されますが、基本的には学校生活や買い物シーン、誕生日パーティーなど、子供にも理解しやすい親近感のあるシチュエーションが題材になっています。またすべての聞き取り問題は2回ずつ音声を流し、小さな子供でも聞き逃さないように配慮しています。
英語教育の低年齢化を受けて小学校3年生以下の受検者が増加の傾向
小学校からの英語教科化の影響もあり、最近は受検者の低年齢化が進んでいます。昨年の国内実績では、受検者全体の40%弱が小学校3年生以下となっています。
英語教育に熱心な韓国など海外でも、早い時期からJETに取り組み、ステップアップを目指す傾向が見られます。
Q4. 他の英語試験とJETの違いは何ですか?
JETは英語のコミュニケーション能力を測る「習熟度テスト」
現在、日本国内にも複数の子供向け検定試験があり、何を受けたらいいかわからないという声をよく聞きます。
たとえば同じターゲットに向けた試験として「英検®Jr.」があります。こちらはリスニングに特化した試験で、学校の定期テストや入試と同様に、指定のカリキュラムなどに沿った内容です。単語や文法など、学習したことを確認するための「到達度テスト」といえるでしょう。
一方JETは、特定の教科書などに準拠した内容ではなく、英語のコミュニケーション能力を測る「習熟度テスト」ですので、試験の目的そのものに違いがあります。
また、より実生活に密着した単語や表現をもとに、ネイティブが日常的に使う言葉が出題される傾向があります。
子供向け英語検定試験といっても、測ろうとする能力や判定方法はさまざまです。まずは英語学習の目的やお子さまのレベルに合わせ、受検するテストを選択することをオススメします。
※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。
〜JETの出題サンプル〜
「親子でチャレンジ!英語でいくつ言えるかな?」
答え
1. Slide (JET 9-10級レベル)
2. Swing(JET 9-10級レベル)
3. Ladder(JET 7-8級レベル)
4. Pot (JET 5-6級レベル)
5. Broom(JET 3-4級レベル)
6. Cashier(JET 3-4級レベル)
7. tying (JET 9-10級レベル)
8. blowing bubbles(JET 9-10級レベル)
9. pouring (JET 9-10級レベル)
10. waving(JET 7-8級レベル)
11. feeding(JET 7-8級レベル)
12.folding(JET 7-8級レベル)
Q5. JETを受けるメリットとその先の目標は何ですか?
きめ細やかな「レベル判定」で子供の英語力を可視化する
日本の一部の私立中学校などで、英語入試の受験資格基準の中にJETの一定級以上を取得することで優遇措置を取る学校もあり、それをひとつの到達目標に受検されるご家庭もあります。
一方で、継続して受検することで日頃の英語学習の成果を定期的に確認し、子供に次のレベルへの向上心をもってもらうためにJETを活用されている方も多くいらっしゃいます。
試験の後には、合否だけでなく「評価メッセージ」を含め、多角的な分析を加えた成績分析表をお渡しします。過去3回分の得点が表示される「成績の推移」では、前回と比べてどれぐらい英語力が伸びたかを具体的に確認することができ、保護者や先生、また子供たち自身が主体的に英語の勉強法を見直すきっかけにもなります。
入試に有利なことに加え、その先にあるTOEIC Bridge®、さらにはTOEIC®への動機づけになるように設計されたテストです。
Q6. これからJETを受ける方へのメッセージをお願いします。
英語のコミュニケーションを楽しみながら「活きた英語」を身につける
小学校の英語教育が前倒しになり、日本でも英語が使えることがスタンダードになりつつあると感じます。英語によるコミュニケーションの機会も圧倒的に増え、英語はますます欠かせないツールになるでしょう。
そんな中、これからの子供たちには、英語で相手に自分の考えをきちんと伝え、相手の意見も正しく受け止められるコミュニケーション能力が必要になると考えます。そのためには英語の「聞く」「読む」力を含め、早い段階から実生活の中で使える「活きた英語」にふれることが大切です。
2020年度からの新学習指導要領では、小学校5・6年で600~700語、中学校では1,600~1,800語もの語彙を学ぶことになります。毎日の暮らしに必要な語彙をしっかりと身につけ、英語によるコミュニケーションの楽しさを発見してください。JETがその一助になることを願っています。
取材を終えて
「英語学習はハイキングや登山と同じで、斜面に沿ったなだらかな道のりを、カーブしながら無理せず登っていくようなもの」と定義するJET。
大切なのは、周囲の様子や自分の位置を確認しながら、急がず着実に目的地を目指すこと。子供の英語力も、寄り道をしながらゆっくりと時間をかけることで定着し、それこそが理想的な教育のあり方といえるのではないでしょうか。目に見えにくい英語のコミュニケーション能力を、世界標準の検定試験で測ってみてはいかがでしょう。
プロフィール:西條 良(さいじょう りょう)
JET委員会事務局長。2012年、株式会社EVAN(現 株式会社FREEMIND)入社。
子供英語教室のフランチャイズ事業に従事し、2015年より現職。2020年より、同社セールス&マーケティング本部にてFC営業部部長を兼任。検定事業だけでなく、子供向け英語教育全般に関わる新規需要開拓に携わる。