英語教育に関するニュース

スウェーデン国旗

非英語圏でありながら、高い英語力で知られる北欧諸国。世界の国々の英語力ランキング(※1)では、上位5ヵ国中3ヵ国を北欧の国々(第1位スウェーデン、第4位ノルウェー、第5位デンマーク)が占めています。今回は、スウェーデンとノルウェーに焦点を当て、北欧諸国の英語力の高さの理由を明らかにします。

※1 世界の国々の英語力ランキング:
2018年のEF EPI(英語能力指数)の調査結果。調査対象となった国は88ヵ国。

理由①英語と母語に類似性がある

スウェーデン語やノルウェー語は英語と同じ言語グループ(インド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派)に属するため、アルファベットを使う点や文の構造に類似性があります。
とはいえ、文法や発音などが英語と異なる部分も多く、スウェーデンもノルウェーも一般的な家庭では英語ではなく母語でやりとりしているため、英語を使えるようになるには学習が必要です。

理由②小学校低学年から英語教育を行っている

【小学校の1週間あたり英語授業時間の比較】
学年スウェーデンノルウェー(※2日本(※3
小学1年生 なし 20〜25分 なし
小学2年生 なし 45分 なし
小学3年生 1時間 45分 1時間
小学4年生 1時間 1時間30分 1時間
小学5年生 2時間 1時間30分 2時間
小学6年生 2時間 1時間30分 2時間
小学7年生 1時間30分
【義務教育(小学校~中学校)での合計英語授業時間の比較】
スウェーデンノルウェー(※2日本(※3
480時間 445時間 245時間

※2 ノルウェーの義務教育期間は小学校が7年、中学校が3年になります。
※3 表内の日本の授業時間は、2020年度の改訂後の学習指導要領に基づいています。

スウェーデンでは小学3年生から英語授業

スウェーデンでは初等教育に当たる7~15歳までの9年間が義務教育で、小学3年生から英語が必須科目とされています。早い学校では小学1~2年生から、基礎的な英単語を学び始める場合もあります。
なお、日本の小学校でも、2020年度の学習指導要領改訂以降は、英語の授業開始年齢が小学5年生から3年生に前倒しになり、スウェーデンと同等の英語授業時間数になります。
スウェーデンの小学校での英語教育の歴史は長く、1960年代の後期にはすでに小学3年生からの英語授業をスタートしていますので、日本に相当先んじて小学校の英語教育に力を入れてきたことがわかります。
また、1995年にスウェーデンで導入されたナショナルカリキュラムでは、義務教育の9年間で英語を学ぶ最低保証時間を480時間と設定しています。義務教育中の英語授業時間の合計は日本の2倍近くに達するのです。

ノルウェーでは小学1年生から英語授業

ノルウェーの英語教育開始はさらに早く、小学1年生から始まります。
小学校での7年間(ノルウェーの小学校は7年間制)、段階を踏みながら英語の基礎的な学習を進めていきます。総時間数で見ると、ノルウェーの子供たちは小学1〜4年生の4年間でトータル138コマ(約104時間)、小学5〜7年生の3年間で228コマ(約171時間)もの英語授業を受けることになります。ノルウェーでは中学校3年間で227コマ(約170時間)の英語授業がありますが、初等教育の時点でそれ以上の時間をかけて英語学習を行っているのです。

また、ノルウェーでは英語学習の初期から、アウトプットの要素をバランスよく盛り込んでいます。
さらに、ノルウェーの小学校では、知識を試すためのペーパーテストは一切行われません。簡単なクイズ形式のミニテストは実施されても、成績を大きく左右するペーパーテストは初等教育では行われません。
そのかわり先生たちは、宿題や授業に対する子供たちの取り組み姿勢をもとに成績を決めます。


【ノルウェーの小学校の英語授業の内容】

■小学1~2年生
・簡単なフレーズ(あいさつ、自己紹介など)を扱ったワークブックやビデオなどの教材を通し、英語にふれる。
・4〜5人の少人数グループでシンプルなディベートを行う。
・タブレットを使い、英語の文章を組み立てたり、英単語を選ぶゲームを行う。
・フォニックス学習を通じて英語の発音を学ぶ。

■小学3〜4年生
・リーディングやライティング学習が始まる。
・実践的なコミュニケーションを通じて、英語を読む力・書く力・話す力・聞く力を総合的に伸ばす。例えば、英語圏(イギリスなど)の姉妹校の子供たちと、手紙やメール・オンライン会話などを通じてコミュニケーションをとったりしている。
・プロジェクト学習(※4)を英語で行う。

※4 プロジェクト学習:

あるテーマをひとつの大きなプロジェクトとして扱い、生徒が個人またはグループで「研究議題を見つける・調査する・まとめる・他者に発表する」という工程を踏み学習を進める。

■小学5〜7年生
・より発展的な研究議題のプロジェクト学習に取り組む。
・中学校への進級を前に、ノルウェー語で英語文法や語彙を学ぶ。

理由③日常生活で英語にふれる機会が多い

北欧諸国の英語力を高さのもう一つの理由は、日常生活で英語にふれる機会の多さにもあります。

デジタル機器の言語設定は英語

ノルウェー、スウェーデン、デンマークなどの北欧諸国では、パソコンやタブレット、スマートフォンなどのデジタル機器が、多くの場合、母語ではなく英語で言語設定されています。
各国の人口自体が少ないため、現地語ではなく英語で設定されていることが多いのです。こうしたデジタル機器にふれる度、子供たちは新しい英語表現に出会い、英語の意味を推測し調べる習慣がつくられていきます。

英語のエンターテイメント・コンテンツが豊富

日本では音楽やテレビ番組などのコンテンツのほとんどは日本語です。
しかし、北欧諸国では、英語のエンターテイメント・コンテンツが自然と流入してくる社会が出来上がっています。テレビでも、英語圏の番組や映画が、吹き替えではなく字幕で放映されることが一般的です。それは子供向けの番組であっても同じです。音楽や映画などのエンターテイメントを楽しみながら、自然な英語表現をインプットできる機会が多いのです。

まとめ

北欧諸国の高い英語力を支えているのは、実践的な早期英語教育と日常生活の中でふれる英語の多さです。
英語にふれる時期と量が、高い英語力を身につけるためには重要なんですね。
なお、エンターテイメント・コンテンツを通じて英語にたくさんふれることは、日本に住んでいてもまねできる方法です。英語のアニメなど、子供が楽しめるコンテンツを日常に取り入れると、英語学習の効果がより期待できそうです。

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