子供・幼児英語教材 ディズニーの英語システム Top > 乳児・幼児からの英語 > 英語教育に関するニュース > 日本人はどんな英語を身につけるべき? ~上智大学言語教育研究センター長・吉田研作先生インタビュー~

英語教育に関するニュース

吉田研作先生インタビュー1

文部科学省の「英語教育の在り方に関する有識者会議」で座長を務めている上智大学言語教育研究センター長・吉田 研作先生に、日本人の英語学習についてお話を伺いました。
吉田先生はTEAP(※1)の開発者でもあり、小学校から大学までの日本の英語教育すべてに関わってきた言語教育のスペシャリストです!

※1 TEAP(Test of English for Academic Purposes):
アカデミック英語能力判定試験。上智大学と公益財団法人 日本英語検定協会が共同で開発した、大学で学習・研究する際に必要とされるアカデミックな場面での英語運用力(英語で資料や文献を読む、英語で講義を受ける、英語で意見を述べる、英語で文章を書くなど)をより正確に測定するテスト。


Q1.小学校の英語教育はどうなっていくのでしょうか?

Q2.学校での英語教育のさらなる低学年化は進むでしょうか?

Q3.母語が固まらないうちに英語を教えても問題ないでしょうか?

Q4.幼児期に英語にふれることのメリットは何ですか?

Q5.子供が英語を身につけるために、大人は何をすればよいのでしょうか?

Q6.英語が苦手な大人は、どのように教えればよいのでしょうか?

Q7.「プルリリンガル」という考え方について教えてください。


Q1:小学校の英語教育はどうなっていくのでしょうか?

現在、小学5・6年生は、「外国語活動」が必修となっています。これが、2020年度施行の新学習指導要領では、小学3・4年生で「外国語活動」、小学5・6年生で教科として「外国語(英語)」を学ぶことになります。
教科ではない「外国語活動」を通じて英語に接することで、知識のみで理解を深めるのではなく、体験的に理解を深め、言葉の大切さや豊かさに「気づかせる」という考えに基づいた活動です。

この「気づく」ということが、学習にとって大変重要です。気づきのないところで知識を得たところで、子供たちはなんのために学んでいるか分からず、すぐ忘れてしまったり、おもしろくないと感じてしまったりします。小学3・4年生で気づきを得たうえで、中学以降の英語学習に向けた助走となる小学5・6年生の教科としての英語が始まることになります。

2020年度以降は学校教育で求められる英語力が大きく変わりますが、知識偏重ではない英語教育のあり方が浸透していくことを期待しています。

吉田研作先生インタビュー2


Q2:学校での英語教育のさらなる低学年化は進むでしょうか?

現在、そういう話はありません。韓国、中国、台湾などアジア諸国を見ても、小学3年生から英語を学び始める国がほとんどです。韓国では1年生から学ばせようという動きもあるようですが、今のところ、3年生からが一つの基準となっています。
英語学習は、本人のモチベーションさえあれば効果はありますので、何歳から始めてもよいと思います。
もちろん、日本にいるなら0歳などの早い時期から英語にふれる環境を整えてあげることは、好影響はあっても悪影響はないですよ。

吉田研作先生インタビュー3



Q3:母語が固まらないうちに英語を教えても問題ないでしょうか?

日本で生活している限り、何も問題ありません。生活のほとんどを日本語で過ごしているのだから、母語=日本語の獲得に影響が及ぶはずはないのです。
逆に、幼少期からさまざまな言語や音、文化にふれることで、子供の成長にとってよい影響を及ぼすと思います。

言語学習は、まずは音から始めることがポイントです。良質な英語を聞かせてあげることから始めましょう。子供はリズム感があるものが大好きなので、決まったリズムに英語を乗せて発音する「チャンツ」などを使って英語にふれるのもおすすめです。

大人のなかには、これまでの学校教育で読むことから英語学習を始めてしまったため、英語に苦手意識を持っている方もいらっしゃいます。でも、子供と一緒に音から英語にふれ直せば、苦手意識が薄れるかもしれませんよ。

吉田研作先生インタビュー4


Q4:幼児期に英語にふれることのメリットは何ですか?

英語に限ったことではありませんが、小さい頃から外国語にふれる機会や外国の人たちと接する機会をつくってあげることは、非常に大事なことだと思います。
子供たちは楽しいことに対する感受性が高いです。例えば、絵本の読み聞かせなどで物語を聞くことも大好きです。日本語を身につけるとき、お父さんやお母さんからの読み聞かせなど、周りとのコミュニケーションを通して、子供たちは言葉を覚えたり、広い世界を知ったりします。
英語でも同様の体験をすることは、子供たちにとっても楽しいことです。英語を通して世界の広がりを体験させてあげましょう。
ただし、大人が無理強いをした途端に、子供たちは英語に対して拒否反応を示します。だからこそ、大人も一緒に楽しむというスタンスが大切です。

吉田研作先生インタビュー5

Q5:子供が英語を身につけるために、大人は何をすればよいのでしょうか? 

マレーシアやシンガポール、フィリピンなどの国々では、日常生活で英語が使われているので、子供たちが英語を自然に身につけられる環境があります。
一方、日本では日常生活で英語が使われることはほとんどありません。そこで、聞き取りやすい発音の英語をたくさん聞かせてあげるとよいと思います。

新学習指導要領には、「標準的な英語」という言葉があります。「標準的な英語」とは、アメリカ英語でもなければ、イギリス英語でもない、世界のどこへ行っても共通に理解できる英語(インターナショナル・イングリッシュ)という意味です。たとえば、ネイティブスピーカーが日本人と英語で喋るとき、ゆっくり綺麗な発音でより分かりやすく話してくれますね。日本人と喋っているときの、アメリカ人とイギリス人とオーストラリア人の英語を聞いていると、それぞれの特徴が消えて、国際共通語の英語の模範的な形になっているんです。英語を学ぶときは、これをモデルすると実際のコミュニケーションに役立つと思います。

また、普段は日本語を話している身近な大人が、外国人と英語でコミュニケーションをとる姿を子供に見せてあげて欲しいです。日本人のお父さんやお母さん、先生などが英語を喋っている姿を見ると、子供は「カッコイイ」「ああなりたい」と思うでしょう。

吉田研作先生インタビュー6

Q6:英語が苦手な大人は、どのように教えればよいのでしょうか?

小学校3年生くらいまでの子供と比べれば、大体の大人は子供よりも英語力はあります。それを信じて、子供に、英語を使ってコミュニケーションをとる大人の姿を見せてあげることが大切です。
特に小学校の先生は、新しい学習指導要領が出来たばかりの現現段階で、どのように指導すればよいのか不安を抱えている方も多いと思います。しかし、ALT(※2)とコミュニケーションをとりながら授業を進めるなど、方法はいくらでもあります。正しい発音はALTや教材から学べるので、神経質になる必要はありません。先生方自身の英語で積極的にコミュニケーションをとっている姿を見せてほしいと思います。

幼児期に家庭で英語学習する場合は、英語教材のDVDや絵本を子供に与えるだけではなく、お父さんやお母さんも一緒に楽しむとよいですね。ときどき内容について会話をするだけで、英語学習が楽しい体験になります。お父さんやお母さんと一緒に体験しているという安心感が、子供の自信につながるのです。

※2 ALT(Assistant Language Teacher):
外国語を母国語とする外国語指導助手。小中高校などの英語授業で日本人教師を補助する。

吉田研作先生インタビュー7

Q7:「プルリリンガル」という考え方について教えてください。

日本語と英語など2言語を使える人のことをバイリンガル、3言語以上使える人のことをマルチリンガルと言います。プルリリンガルとは、複言語を使える人のことで、ヨーロッパで浸透している複言語主義(※3)の考え方に基づいた言葉です。世界中で英語を使っている人は十数億人と言われていますが、そのうちネイティブスピーカーは3億5000万人程度。残りの7億人以上は、英語を第二言語または外国語として使っている人たちです。

バイリンガルというと、2言語のネイティブスピーカーが1人の人間の中に入っているようなイメージが湧きますが、プルリリンガルは、1人の人間がいて、その人が複数の言語を使って話すというイメージです。
たとえて言うなら、「英語を喋る私がいて、日本語を喋る私がいる」のではなく「日本人である私が英語も喋るし、フランス語も喋るし、ドイツ語も喋る」という考え方です。
個々人が必要に応じて言語を使い分けるというプルリリンガル。日本人には、この考え方が合っているように思いますよ。

※3 複言語主義:
1人の人間が複数の言語を相手や場合によって使い分けて活用していくことを目指す考え方。
ネイティブスピーカーを目標とするのではなく、部分的な言語能力も積極的に認めて、コミュニケーションに活用することを重視する。

吉田研作先生インタビュー10


インタビューを終えて

2020年以降の小学校の英語授業では、教科としての英語学習が始まる前の「外国語活動」の段階で子供たち自身が言葉について気づきを得ることが重要なんですね。
成績の評価が伴う学習がスタートする小学5・6年生よりも前に、ご家庭でも英語にたくさんふれておけば、子供が主体的に英語学習に取り組む動機になる気づきを得られるかもしれません。

さらに、言語学習は音にふれることから始めるのが自然な流れであることも伺いました。国際共通語として使われている「標準的な英語」に近い形で音をインプットすることが望ましいようです。一方で、子供の身近にいる大人が、いっしょに英語学習を楽しんだり、発音などを気にせずに英語でコミュニケーションを取っている姿を見せることも、子供のモチベーションアップに非常に効果的とのことでした。

また、英語のネイティブとも非ネイティブともコミュニケーションを取っていく必要がある国際社会の中で、「プルリリンガル」を目指すというスタンスが実践的な英語力を身につけるための大きなヒントになりそうです。


吉田研作先生インタビュー9

プロフィール:吉田 研作(よしだ けんさく)

上智大学言語教育研究センター長。
上智大学外国語学部英語学科卒業、同大学大学院言語学専攻修士課程修了。
ミシガン大学大学院博士課程修了。
文部科学省「英語教育の在り方に関する有識者会議」座長、小学校英語指導者認定協議会会長なども務める。
著書に、『平成29年版 小学校新学習指導要領の展開 外国語編 』(明治図書出版)、『完全改訂版 起きてから寝るまで子育て英語表現600』(アルク)などがある。



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