子供・幼児英語教材 ディズニーの英語システム Top > 乳児・幼児からの英語 > 英語教育関連ニュース > 子育ては環境づくりが大切(後編)~開成中学・高校 柳沢幸雄校長先生インタビュー~

英語教育に関するニュース

柳沢幸雄校長先生インタビュー後編1

前編に続き、開成中学・高校の柳沢幸雄校長先生に、英語に関するご自身の経験をうかがいました。
柳沢先生をはじめとする同校の卒業生たちが切り拓いた海外の大学への道に、後輩の生徒たちが高い関心を寄せ、後に続いていく流れが生まれているようです。


6.就職後、必要にかられて毎日通った英会話スクール

7.研究の場を求めて、国際学会で猛アピール

8.気軽に英語を使える環境づくり

9.世界を身近に引き寄せる、良き先輩のアドバイス

10.熱い思いを持ち続けて欲しい大学生活


6.就職後、必要にかられて毎日通った英会話スクール

――柳沢先生はハーバード大学で長年教えてこられましたが、学生のころから英語は得意科目だったのでしょうか?

中高のころは、英語は大の苦手でした。まず、単語を覚えることに抵抗がありました。
辞書に書いてあるような、すでに他の人が見つけたものを覚えるのは頭の無駄遣いだ、と思っていたほどです。それが間違いだと後になって知るのですが......。

そんなわけで、英語に真剣に取り組んだのは大学を卒業してからです。
大学卒業後、システムエンジニアとして働きはじめたとき、英語で書かれた分厚い技術情報を読み込まなければソフトを組むことができませんでした。
懸命に読んでいるうちに、英語のリーディング力がつきました。

あるとき、最新の機械を大手企業に納入したものの、思うように動かず、ソフトウェア担当として、米国から来たハードウェアの担当者と一緒に問題解決にあたりました。
日本語が通じない米国の担当者に「問題はハードウェアにある」ということをつたない英語で説明しなければならず、大変苦労しました。
このトラブル解決のために地方に出張していたのですが、われわれ日本の担当者が泊まっているのはビジネスホテルなのに、米国の担当者は立派なシティホテルを使っていたことも悔しさを増しました。

この悔しさを忘れず、東京に戻った後は、英会話学校に入学することを決めます。
非常に厳しい学校で、月曜から金曜まで、夕方6時から9時までみっちり勉強しました。
英語学校の後は会社にもどって残業し、夜中にマシーンの当番もあるという大変な生活を1年続け、英語力を獲得したのです。

英語が使えるようになると、「この仕事を頼む」と、英語を使う機会がより増えていきました。使えばさらに上手になる、そういう良いスパイラルに入っていきました。

柳沢幸雄校長先生インタビュー後編2

7.研究の場を求めて、国際学会で猛アピール

――社会人となって英語を勉強し直した後、どのような経緯で研究者の道に進まれたのでしょうか?

システムエンジニアとして3年間働きましたが、どうしても公害問題の研究がしたくて会社を辞めて大学院に行きました。
私が大学時代に専攻した化学工学とは、化学者が実験室で発見した新しい物質を、具体的に製品にするための製造装置を設計し、作るところを担います。
そのため、エネルギー効率などとともに環境保全も考慮しなければなりません。ところが、過去には公害対策が組み込まれていなかったために水俣病などの問題が発生しました。この問題を解決するのは化学工学者の役割だと考えたのです。

当時の日本では一旦社会に出て、また研究に戻るという例はほとんどありませんでした。
職を失うというのは収入を失うことでもあります。それでも、公害の研究をどうしてもしたかったのです。

東京大学の大学院で修士課程、博士課程と進む中、私が作った測定器が大きなインパクトを与えることができました。
しかし、経済成長のど真ん中だった日本では、公害防止の研究や研究組織はありません。

そこで、論文を英訳し、国際学会でアピールしました。そうしてハーバード大学で研究する道を得ることができたのです。
会社員時代に懸命に英語の技術情報を読み、英会話スクールに通ったことが役に立ちました。
日本で公害の研究を続けることができたら、ハーバードに行くことはなかったかもしれません。「日本で研究を続けられない」という逆境が道を拓いてくれました。

柳沢幸雄校長先生インタビュー後編3

8.気軽に英語を使える環境づくり

――開成中学校・高校ではどのような英語教育を行っていますか?

本校ではどの科目でも、先生一人一人がベストの方法を選んで授業を進めます。
英語教育においても、何か特別なことをしているわけではありません。

一般的に日本人は英語に対する心理的なハードルが高いように感じます。
漢字の読み書きができる人を教養がある人と言うし、数学ができる人を頭のいい人とする。
そして、英語ができる人をスマートな人と日本人は評します。

勉強に関して、このような心理的な評価を持っているために、英語を難しいものにしているのではないでしょうか。
しかし、言葉という観点から考えると、日本人のほとんどが故郷の方言と標準語をイントネーションも含めて上手に使いわけており、バイリンガルといえます。

英語もそれぐらい気軽に捉えたらいいと思います。
文法など気にせず、遊び言葉のように英語を使う。気軽に話す場に身を置く。
そういう環境にいれば、英語に対するハードルがあがることはないでしょう。

柳沢幸雄校長先生インタビュー後編3

9.世界を身近に引き寄せる、良き先輩のアドバイス

――最近では開成高校から海外の大学への進学も多いですね。

私が校長になったころからコンスタントに海外の大学へ進学する生徒が出ています。それにはある卒業生が大きく影響しています。
私が校長になった2011年の初夏に、その年優秀な成績で本校を卒業し、東大文1に進んだ卒業生がやってきました。
「東大を退学して、ハーバードを受け直したい」というのです。

話を聞いてみると、彼は英語の勉強のために、ハーバードのメインキャンパスのすぐ近くにある英会話学校に行ったのだそうです。
そこでハーバードの学生とも仲良くなり、彼らの生き生きとした様子や勢いに圧倒され、自分もハーバードで彼らのような学生生活を送りたいと思うようになったのです。
そんな彼は私がハーバードで教えていたことを知り、「ハーバードについて知りたい」と私のもとを訪れたのでした。

私は彼に次のようにアドバイスをしました。
「君はもう大学1年生となり、時計の歯車がひとつ進んでいる。
今から東大をやめてハーバードに行ったとしても2年近く遅れてしまう。
これは君の人生にとって決して得策ではない。
それより、ハーバードの学生と同じような生活を東大で送り、大学院から海外に行ってはどうか。」

ハーバードと同じというのは、週60時間勉強をする生活です。
その生徒はアドバイス通りに勉強を続け、学部生のときにアメリカの大学に交換留学しました。現在はプリンストン大学で政治学の博士課程にいます。

この生徒がおそらく後輩たちに「俺は間に合わなかったけれど、君たちはまだ高校生だから海外の大学に行く道がある」と話をしたのでしょう。
「僕らは海外大学に行きたい!」と生徒が大挙して校長室にやってきました。
生徒からリクエストがあれば、それを支えるのが開成の教育の伝統ですから、そこで国際交流の委員会を作り、海外の大学に進学したい生徒の支援をしています。海外だろうと臆せず挑戦する姿に、本校らしさを感じます。
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10.熱い思いを持ち続けて欲しい大学生活

――最後に子どもたちにメッセージをお願いします。

私は模擬授業やアクティブラーニングの体験授業のためにさまざまな高校の生徒を教えてきましたが、日本の高校生は知識でも成熟度でも世界一です。
ところが、大学に入ってからも世界一を維持できているかというと、そうとは言い切れません。

東大で教えていて、学生には3つの種類があると感じます。

ひとつは熱い思いを持ったグループ。地方から上京してきた学生に多いのですが、最初は孤立感があるけれどそれを乗り越えると強い。卒論の時期になるとグーンと伸びるのがこのタイプです。

ふたつ目は燃え尽きタイプ。子どものころから東大を目指してやってきた学生たちに多く見られる特徴です。
効率の良い勉強の仕方を教わってきたけれど、大学では勉強の仕方を教えてくれないので、自分の伸ばし方がわからない。
ましてや、東大合格の目標を達成したあとなので、燃え尽きてしまっているのです。

最後は冷めているグループ。東大に多くの生徒を送り込む首都圏の進学校に多く、大学に入っても実家から通っていて生活が大きく変わらない。
先輩や同級生にも知り合いが多い。なおかつ自分の勉強方法を確立しているから、大学の授業も簡単に単位が取れ、冷めたまま終わってしまうのです。本校も例外ではありません。

しかし、それではいけない。例えば、リベラル・アーツ教育を重視する大学では、1、2年次は教養学部に在籍し、その後の学問体系の基礎を身につけます。
ですから、大学に入ってからも、「あの授業はAをくれるから」と易きに流れるのではなく、自分の素質や個性、希望にあった科目を選択をし、自分の世界を大いに広げてください。そのためにはアドバイスを求めて教授室の扉を叩いてみてください。教育者として優れた学問の先輩は、どのような科目をどのような順番で学べばよいかアドバイスをくれるはずです。その交流が出来ない相手は、あなたの「師」になる人ではありません。
世界に冠する中等教育を受けたことを忘れず、熱い気持ちを持って学びの多い大学生活を過ごしてほしいですね。

後編まとめ

社会人になってから苦労して英語を学び直された柳沢先生がハーバード大学での研究の道を切り拓けたのは、「公害の研究をしたい」という熱い思いがあったからでした。
また、英語学習では、英語に対する心理的ハードルを下げ、気軽に英語を使う環境に身を置くことが大切だと述べられています。
開成高校では海外に進学した卒業生の存在が、同校の在校生たちの進路に影響を与え、挑戦を恐れない校風を生んでいるようです。


柳沢幸雄校長先生近影2

プロフィール:柳沢 幸雄(やなぎさわ ゆきお)

学校法人開成学園開成高等学校・開成中学校校長。東京大学名誉教授。
1947年生まれ。開成高校から東京大学へ。東京大学大学院工学系研究科修了。工学博士。
ハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科では数回ベストティーチャーに選ばれる。
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2011年から現職。
『ほめ力:子どもをその気にさせるプロになる』(主婦と生活社、2014年)、『母親が知らないとヤバイ「男の子」の育て方』(秀和システム、2017年)など、教育や育児に関する著書多数。

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