専門家の先生による、英語教育に関する記事

反復の大切さ(後編)
今回の玉川大学 佐藤 久美子先生のエッセイでは、子どもの発話力を伸ばすために有効な保護者の話しかけ方について解説いただきます。
また、『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』コーナーでは、子どもが教材に興味を示さないときにできる工夫をご提案していますので、ぜひチェックしてくださいね!

ことばの反復上手、まねっこ上手は2歳に始まっている

前編、中編では、わずか6歳でも語彙力に大きな差が大きく出ること、また、初めて聞いた英単語を反復する力は、実は日本語の単語を反復する力と関係が深いことをお話ししました。
英単語をうまく反復するには、まずは日ごろから日本語でも親子でコミュニケーションを取ることが必要で、お子さんとたくさんお話をしているとお子さんの日本語語彙力が上がり、日本語語彙力のある子は日本語のまねっこが上手なだけでなく、英単語も上手に反復できるのです。

では、何歳くらいからこうした反復力は身につくのでしょうか?
これを調べるために、2歳児の親子27組に赤ちゃんラボに来ていただき、2つの調査を行いました。

1つは、「ぎもぎも」「てずてず」と言った、聞いたことのない音(すなわち未知語)を反復してもらいます。
もう1つの調査では、おもちゃがいろいろと置かれている部屋で、15分間いつものようにお母さんとお子さんで遊んでもらいました。

2歳児なので、母親の発話をまねる子どもも多く見られますが、同じ年齢でも話しかけが出ないお子さんもいました。

その結果、以下の3つのことが明らかになりました。
・4~6歳児と同様に、日本語の語彙力のあるお子さんは、「ぎもぎも」と言った初めて聞く単語の反復力が高く、うまくまねができる。
・未知語をうまく反復できるお子さんは、自由な遊びの場面でも、母親の言葉をまねしている様子が多々見られる。
・まねっこ上手なお子さんを持つお母さんは、実はお子さんのまねをよくしていました。


【お子さんのまねをする会話の例】
子:イスに乗るの。
母:イスに乗るの?
子:乗るの。
母:一人で乗るの? 乗れる?
子:乗れる。

こんな会話が続きます。すなわち、2歳の頃は母親の発話をまねする傾向があるのですが、母親も子どもの発話のまねをする傾向があります。
こうした親子の場合、子どもの発話量が多くなり、語彙力も高いのです。

一方で、まねっこしあわない親子の子どもは発話量が低く、語彙力も低くなることがわかりました。

こどもの発話力を伸ばす保護者の話しかけの特徴とは?

生後わずか2歳でもこうした反復力や語彙力に差が出るのは、子どもを取り巻く環境が影響しているからです。
保護者の発話特徴が子どもに影響していることがわかる調査をご紹介します。

15分間親子で遊んでいる時の、子と親の発話数と保護者の発話特徴を調べたところ、発話数について言えば、母親が話しすぎも無口すぎても、子どもの発話数が伸びないことがわかりました。
さらに、母親の発話特徴を、次の3つの視点から調べました。

① お子さんが話しかけた時に応答する速度
② お子さんに話しかけるときの発話の時間(どのくらいの間話しかけているか)
③ お子さんに話しかけるときの速度

この調査の結果、次のようなことがわかりました。

① 応答する速度が速い、すなわち、お子さんが話しかけてきたら直ぐに答えてあげる母親の子どもは、発話量が多い。
② お子さんに話しかけるときは一方的に話さず、短く話しかけて聞き役に回ってあげた方が、子どもが話す機会が増えるため、子どもの発話量が伸びる。
③ ゆっくりと明瞭に話すと、お子さんが聞き取りやすく、発話量も増える。

何気なくお子さんと会話している時でも、保護者の方の発話の特徴が、自然に子どもの発話を促していることがわかります。
お子さんが話しかけてきたらすぐに応える、短く話す、ゆっくりと明瞭に話しかける、是非この3つの特徴を意識して、お子さんと日本語でいっぱいお話をしてください。それが、英語の力を伸ばす秘訣にもつながります!

『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』第3回:CDやDVDをかけていても子どもが興味を示さないとき、このまま続けて大丈夫でしょうか?

お悩み解消QA第3回

今回の質問コーナーでは、佐藤先生が2つの質問に回答しながら、お子さんのアウトプットを引き出す具体的な方法をレクチャーします。

◆DWEユーザーの方からのご質問◆

CDやDVDをかけていても子どもが興味を示しているように思えません。このまま続けて大丈夫でしょうか?

◆佐藤先生のご回答◆

まず、以下のことをチェックしてみましょう!

□CDやDVDをかけっぱなしにしていませんか?
□保護者の方も一緒に興味を持って聞いたり、観たりしていますか?
□お子さんが見ている時に声をかけたり、一緒に歌を歌ったりしていますか?
□お子さんの興味のあるCDやDVDをかけてあげていますか?
□DVDなどを見ている時に、他のおもちゃが周りに散乱していませんか?

特に初めてCDを聞いたりDVDを観るときは、保護者の方もご一緒に聞いたり、観たりしてあげてください。親が興味を持つと、子どもも興味を持ちます。
家事をしながらでも、一緒に歌ったり、易しい英語を一緒に言ったりすると、子どももDVDのまねをして踊ったり、動作をしたり、歌を歌ったりするようになります。
すべての教材を使おうとせずに、まずはお子さんの興味のあるものをかけてあげます。同じものを毎回観たがったら、毎回同じものをかければよいのです。
他のおもちゃが散乱していると、気が散ってしまいます。おもちゃの数を制限する、あるいは、DVDをかけるときは、DVDで扱っているおもちゃだけを出してあげると、まねをしながら遊ぶようになりますよ。

ぜひ、いろいろな工夫をしてみましょう!
子どもはいったん興味を持つと、自分からDVDやCDをかけて欲しいとせがむようになります。
子どもの興味・好奇心を引き出すために、是非保護者の方もご一緒に楽しんでくださいね。



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佐藤久美子先生近影

佐藤 久美子先生

玉川大学大学院 教育学研究科(教職専攻) 脳科学研究所 教授。
長年、子どもの言語獲得・発達の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。
2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの「えいごであそぼ」、「えいごであそぼwith Orton」の総合指導を担当。

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