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英語学習年齢の違いは単語の発音力の習得に影響するの?【玉川大学大学院 名誉教授・佐藤久美子先生】

みなさんは、単語の反復力 (単語を真似して言う力)と語彙力(語彙の保有量) には、密接なかかわりがあることをご存じでしょうか?

これまでの研究で、英語を母語とする4歳~8歳に至るまでの反復力のある幼児・ 児童は、そうでない場合と比べ、語彙力が高くなるということが明らかになっています。
これは日本語を母語とする場合も同様で、無意味語 (※)反復能力 の高い3歳~4歳の幼児・児童は、同時に語彙力も高くなることが私共の研究でも明らかになりました。(佐藤&兼築、2007)
これらの研究から、外国語学習においても単語の反復訓練を行うことは、単語の聞き取り力や発音力を伸ばし、その結果として語彙力を高める上で効果的であると考えられています。

※無意味語とは、「かがみ」や「まねきねこ」など意味のある単語を、「みかが」「ねきねこま」といったように、意味を持たない語順に変えたもののこと。どの子供にとっても、平等に初めて聞いた日本語にして、反復力を試すために、このような無意味語を使います。

そこで今回は 、英語学習の第一歩として使われる「英語の歌」に焦点を当て、
① 歌を聞いて自然に反復しながら歌うことが、単語の発音力アップにつながるのか
② どの年齢が発音力向上に効果的なのか
という2点を私の研究を基にお話しし、さらに、歌を使い発音力を向上させる年齢別学習のヒントをご紹介したいと思います。
なお、英語の反復練習としては、チャンツと言って、リズムに乗って楽しく反復する練習も単語や文の定着には効果的ではありますが、歌はご家庭で一番取り組みやすい方法であり、また家族一緒に歌って楽しめるので、今回は歌を使って調査をしています。

(1)研究方法

(1)研究方法

■調査に参加した対象者:2歳~3歳の幼児13名、6歳~11歳の児童57名

■調査方法
①第1回目の調査:幼児・児童を対象に、使用する英語の歌 2曲に含まれる単語と、含まれない単語を合わせて20語(例:bumped, head, whereなど)をスピーカーから流し、それを反復してもらい録音します。幼児・児童の英語を反復する力を計測します。
②ご家庭での調査: Five Little Monkeys Jumping on the BedとWhere is Thumbkin?の2曲を2週間の間、ご家庭で1日2回ずつ聴いてもらい、慣れてきたら歌を真似て歌うようにお願いします。
③第2回目の調査:第1回目の調査と同様に、20語の反復調査を行います。
録音された音声は、「発音が正確、明瞭」を4点、「発音が日本語的であるが明瞭」を3点、「発音が不正確で一部不明瞭」を2点、「発音が不正確で不明瞭」を1点、「無反応または完全に誤り」を0点とし、合計点を単語の反復力として点数をつけます。

(2)研究結果

(2)研究結果

調査の結果、次の2つのことが明らかになりました。

①2歳~3歳では、わずか2週間でも、歌の聴き取りにより英単語の発音向上の効果が得られる
2歳~3歳においては、わずか2週間英語の歌を聴いただけでも、歌に含まれていた単語を聞き取り、偶然の結果とは考えにくいほど上手に発音したりすることができるようになり、さらに、歌に含まれない単語も英語の音に馴染んだ結果、発音力がアップすることが明かになりました。
一方、歌を聴かなかったグループでも、明らかに大きな差が出るほどではありませんでしたが、2回英語を聞いて反復する調査に参加しただけでも、発音力はアップしていました。

②6歳~11歳では、1回目と2回目の間に明らかな差は見られない
2週間にわたり英語の歌の聴き取りを行っても、発音力がアップするなどの効果が著しく現れることはありませんでした。この点は、2歳~3歳児と大きく異なる結果と言えるでしょう。
また、10歳~11歳では、littleを「リットル」のように促音が入り、babyでは「ベービー」のように、カタカナ語の影響が多分に見られるようになりました。

(3)学習のヒント

(3)学習のヒント

調査結果から、英語の歌を反復して歌うことは単語の発音力アップにつながることが明らかになりました。
特に、2歳~3歳ではその差は顕著に表れるため、ご家庭で英語の歌を取り入れる場合、早ければ早いほど効果的といえるでしょう。

歌は簡単にアクセスできて、英語の聞き取り力、発音力、そして語彙力といった様々な英語力の向上につながりますので、是非ご家庭でも気軽に歌に親しんでいただけたらと思います。


佐藤 久美子先生(さとう くみこ)先生

玉川大学大学院 教育学研究科(教職専攻)名誉教授。
長年、子供の言語獲得・発達の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの『えいごであそぼ』の総合指導、2017年からNHK eテレ『エイゴビート』『エイゴビート2』の番組委員を担当、今日に至る。全国の小学校や教育委員会でも多数研修や講演を行い、小学校英語教育の推進に努めている。

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