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第二言語習得研究からわかった!早期英語とバイリンガル育児の秘訣〜言語学者・白井恭弘先生インタビュー〜

長らく日米両国で第二言語教育の現場に関わり、現在はアメリカの大学で言語学・言語習得の研究を続ける白井恭弘先生。
乳幼児期の早い段階から英語と日本語の両方を学ぶことで、子供の認知機能が高まることが最新データからわかってきたといいます。

英語は早ければ早いほど良い理由、またバイリンガル育児のコツなど、早期英語教育のヒントを伺いました。


Q1. 日本語より先に英語を学ぶと「頭の中が混乱する」?

Q2. 0歳児からはじめても良い?英語は早ければ早いほど良い理由とは?

Q3.「バイリンガル育児」のポイントとは?

Q4. 親が「英語力や発音」に自信がなくても大丈夫?

Q5. 学習効果を最大限に上げる「子供の英語教材」の選び方とは?

Q6. これからの子供たちに必要な英語力と「英語が話せる」メリットとは?


Q1. 日本語より先に英語を学ぶと「頭の中が混乱する」?

Q1. 日本語より先に英語を学ぶと「頭の中が混乱する」?

英語を早く学ぶことで子供の頭が混乱することはないと考えています。第二言語習得のさまざまな研究結果からも、早期英語教育が母語に悪影響を与えることはないことが明らかになっています。

アメリカでは小学生を対象に、第二外国語を教えるフレス(FLES/ Foreign Language in the Elementary School)という教育プログラムが導入されています。カンザス州のある小学校で、フレスによる母語への影響を調べる実験(2005年)が行われ、、算数など他教科に悪影響はないという結果が出ました。

その後、テネシー州やニューヨーク州でも同様の調査が行われ、フレスを実践した子供たちは悪影響どころか国語や算数など、他教科の成績も高かったいう結果でした。

1960年代までは、バイリンガル教育は認知的な混乱を招くなど、北米の心理学の教科書にも堂々と書かれていた時代がありました。しかし近年では、逆にバイリンガル児の方が認知能力(創造性・類推能力・情報処理能力など)の面において優れているという考えが、研究者の間でも主流となっています。

最終的には両方の言語を獲得し、二カ国語を使いこなせるようになる

バイリンガル教育を受けている子供は、確かにその発達段階において2つの言語を混ぜて話してしまったり、モノリンガルの子供より語彙力が低かったりする現象がみられることもあります。

しかし、それは単なる通過点に過ぎず、最終的には両方の言語を獲得し、状況に応じて英語・日本語が使いこなせるようになるのです。

もちろん個人差や環境による違いも大きく影響しますが、乳幼児期の早い段階から両方の言語にふれることで、どちらの言語もネイティブスピーカーのように話せるようになる可能性は高まるといえるでしょう。

また、つねに日本語にふれている日本の生活環境の中では、英語の学習が母語の発達に悪影響を与えるということを心配する必要はありません。

Q2. 0歳児からはじめても良い?「英語は早ければ早いほど良い」理由とは?

Q2. 0歳児からはじめても良い?「英語は早ければ早いほど良い」理由とは?

0歳からでも英語をはじめて良いと思います。第二言語習得の研究者たちの間で、英語習得においては年齢要因が重要であることを否定する人はいません。
英語は早ければ早いほど効率良く学べるといえるでしょう。

子供は大人と比べて順応性が高いとか、分析をせずに自然に第二言語環境に溶け込めるなど、開始年齢の影響についてはさまざまな見解があります。

中でも最近注目を集めているのが「母語によるフィルター」という考え方です。

たとえば、日本人はある年齢を過ぎてから英語を学ぶと"R"と"L"の音の違いがわからないとか、"th"がうまく発音できないなど、母語にない音の識別ができなくなるとよくいわれます。
母語がある程度固定してしまうと、日本語のフィルターを通してしか英語を処理できなくなるということなんですね。

ところが1歳くらいまでの赤ちゃんは、世界中の言語のあらゆる音を柔軟に聞き分けられることがわかっています(※)。これは大人にはない乳幼児だけの特権です。

※参考:Werker, J.F., & Tees, R. C."Cross-language speech perception: Evidence for perceptual reorganization during the first year of life."(Infant Behavior and Development. 1984, 7, pp.49-63.)

英語を早く開始した児童ほど文法テストの成績も良い

興味深い研究結果もあります。国立台湾大学の学生を対象に英語音素ミニマルペア)を識別するという実験(Lin, et al., 2004年)が行われました。

これは、 "rock(岩)"と"lock(施錠)"、"right(右)"と"light(光)"など、1つの音素の違いによって、異なった意味なる2つの単語の違いを聞き分ける能力を調べるという調査で、中学入学前から英語をはじめた学生の方が"R"と"L"などの音素の区別の聞き取りに優れているという結果が出ました。

日本の九州大学の実験(Larson-Hall, 2008)でも同様の結果が出ており、さらに3歳から12歳の間にはじめた子供については、英語を早く開始した児童ほど文法テストの成績も良いという結果した

乳幼児から英語にふれることで、"R"と"L"、"th"などの音素を正しく識別する力を獲得できる可能性が高くなります。また、早期英語によってトータルでのインプットの量が増えれば、将来的に英文法の理解向上にも役立つでしょう。

Q3.「バイリンガル育児」のポイントを教えてください。

Q3.「バイリンガル育児」のポイントを教えてください。

子供は「自分の好きなことは自分から学んでいく」という素晴らしい才能をもっています。ご家庭では、お子さまが自分から英語を好きになる環境を用意してあげることが大切です。

たとえば英語メディアの映像などをうまく利用するのも1つの方法です。アニメや料理、旅行などの番組の中から子供の発達段階にあったものを選んで、それをつけっぱなしにしておくだけでも良いと思います。

恐竜とか乗り物、動物などが登場すれば、その中から子供は自分のお気に入りのキャラクターを見つけるでしょう。我が子が何かに興味を示したら、それをシリーズで見せたり、関連するCDや映像を揃えるなどの手助けをしてあげましょう。子供が自ら「英語が聞きたい、見たい」と思う素材をさりげなく提供してあげるのです。

その際ポイントは、親御さんができれば英語で、もしくは日本語でも良いので「どんな話だったか教えて」とか、「誰が好きだった?」など、毎回さりげなく簡単な質問を投げかけてください。

最初は答えられなくても大丈夫です。アウトプットの必要性があることがわかると、子供が番組や映像などを視聴するときの意識も大きく変わります。徐々に「ママやパパとこの話をしたい」と考えながら、集中して英語を聞くようになるでしょう。

子供が積極的に英語をインプットし、自然にアウトプットできるような言語環境を整えることが、バイリンガル育児のコツだと思います。

Q4. 親が「英語力や発音」に自信がなくても大丈夫ですか?

Q4. 親が「英語力や発音」に自信がなくても大丈夫ですか?

「英語に自信がない」「発音が悪いから子供の前では英語を話さない」という話をよく聞きます。結論からいえば、その心配はしなくても大丈夫です。子供はまねすべき発音とそうでない発音を、自然に区別することができるからです。

イギリス英語が良いモデルとされている、香港の例をお話ししましょう。共働きが多い香港では、多く家庭でフィリピン人のメイドを雇うため、子供がフィリピン英語の影響を受けるのではないかと気にする場合があるといいます。

これに関する言語科学会(JSLS/2011研究発表(Leung, 2011)で、フィリピン英語の音素とイギリス英語の音素の両方を聞きながら育った子供は、最終的にはイギリス英語をモデルとすることがわかりました。

英語の番組や視聴覚教材などを通じ、ネイティブスピーカーの英語を耳にする時間が日常的に十分に確保されていれば、子供は正しい英語の発音を身につけることが可能です。

ですから親御さんの英語力や発音が完璧である必要はありません。たとえ英語に自信がなかったとしても、大人が日常的に英語とふれあう姿をお子さまに見せてほしいと思います。

身近な大人が英語を楽しむ姿は学習の動機づけにつながる

僕は幼少期に祖父の影響で英語に興味をもちました。英語がある程度できた祖父とテレビでプロレス中継を見るのが好きで、「ニードロップ」とか、「ブレーンバスター」といった表現の意味を祖父から教わりました。"Knee(ひざ)"、"leg(足)"、"brain(脳)"など、体の部分の英語を覚えて喜んでいたのですね。

「おじいちゃん、かっこいいな」という憧れから、自分も英語ができるようになりたいと思うようになりました。たとえカタコトでも、身近な大人が英語を楽しむ姿は、子供が英語を学ぶときの大切な動機づけにつながるでしょう。

Q5. 学習効果を最大限に上げる「子供の英語教材」の選び方とは?

Q5. 学習効果を最大限に上げる「子供の英語教材」の選び方とは?

一人ひとり個性が違う子供の教材選びは難しい問題ですが、下記に3つポイントを挙げてみました。

・ストーリーなど内容が面白く、先がりたくなるようなもの。

・大量のインプットと適量のアウトプット可能にするもの。

・継続が容易なもの。

いずれも子供に「勉強をさせる」のではなく、生活の中で自然に英語にふれられるような教材が理想的だと思います。

たとえば子供が遊んでいるときにかけ流しておけるCDや映像教材などは、気軽にバイリンガル育児をはじめたい人にもオススメです。音声・映像に加えて文字も連携させることができれば、なお良いでしょう。

目や耳からインプットした英語をおもちゃでアウトプットしたり、聞いた英語を絵本で読んで文字として認識したり...。子供は無意識のうちに「聞く→見る→話す→読む」をくり返しながら英語に親しんでいきます。実はこの「くり返し」が乳幼児期の英語習得にはとても重要なのです。

子供の興味・関心は千差万別で、年齢によっても変化します。我が子と向き合う毎日の育児の中で、一番身近な保護者の方がお子さまにベストな教材を選択してあげると良いのではないでしょうか。

Q6. これからの子供たちに必要な英語力と「英語が話せる」メリットとは?

Q6. これからの子供たちに必要な英語力と「英語が話せる」メリットとは?

高校時代に受験勉強ばかりしていた僕は、大学の授業でネイティブスピーカーの先生が話す英語がさっぱりわからなという苦い経験をしました。

文法や単語の暗記ばかりしてきた結果、英語の意思疎通に不可欠な「聞いて話す」という本質的な活動をしてこなかったことが原因です。

これからの子供たちには、意思が通じる=「使える英語」を身につけてほしいです。日本でも英語で他国の人とビジネスや交流をしなければならない状況が増え、使える英語のニーズはこれまでになく高まっているからです。

大切なのは知識を身につけることではなく英語を「使うこと」

現在アメリカで生活していて気づいたことがあります。それは世界情勢などについて日本語メディアによる報道は、英語メディアが伝える内容と異なる場合が多いということです。
英語もしくは外国語ができると、日本語という言語によって制れた情報の世界から出ることができます。

また英語という世界共通語を手に入れることで世界観が広がり、自分なりの視点をもつことができるようになるでしょう。英語でしか入手できないもの、英語の方が早く入手できる情報も数多くあります。

使える英語力は、海外に行かなくても身につけることができます。大切なのは英語に関する「知識」ではなく英語を「使うこと」です。とくに日本語メインの言語環境の中では意識して英語を使うことが大事です。

まず「英語は通じれば良い」という気持ちで少しずつインプットを積み重ね、失敗を恐れずにアウトプットをくり返すことが大事です

幼少期に育んだ英語力は一生の財産です。ご家庭で気軽にバイリンガル育児を楽しんでほしいと思います。

インタビューを終えて

今や海外に行かなくても、日本にいながら「使える英語」が身につく時代。バイリンガル育児が成功する秘訣は「早期英語と動機づけ、効果的な学習法を継続すること」と白井先生は語ります。たっぷりと時間がある乳幼児期から生活の中に英語を取り入れ、親子で楽しく英語にふれる環境づくりを目指してみてはいかがでしょうか。


白井恭弘先生(写真 右)

プロフィール:白井 恭弘(しらい・やすひろ)先生(写真 右)
ケース・ウェスタン・リザーブ大学認知科学科教授。上智大学外国語学部英語学科卒業後、公立高校英語教諭を経てカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)修士課程(英語教授法専攻)、博士課程(応用言語学専攻)修了。ピッツバーグ大学言語学科教授などを経て現職。言語科学会(JSLS)第3代会長。オンライン英語学校SPTR社外取締役。著書に『外国語学習の科学〜第二言語習得論とは何か』『ことばの力学〜応用言語学への招待』(ともに岩波書)、『英語はもっと科学的に学習しよう』(KADOKAWA)、『英語教師のための第二言語習得論入門』(大修館書店)など多数。

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