ディズニー英語システム TOP > 乳児・幼児からの英語 > 英語教育に関するニュース > 乳幼児からの楽しい基礎英語「チャンク学習」って何?〜拓殖大学准教授・居村啓子先生インタビュー〜

英語教育に関するニュース

乳幼児からの楽しい基礎英語「チャンク学習」って何?〜拓殖大学准教授・居村啓子先生インタビュー〜

NHKラジオ『小学生の基礎英語』講師を務め、児童英語教育のスペシャリストとして活躍中の居村啓子先生。
早期に英語を習得する際に有効な「チャンク学習」などをテーマに、子供の第二言語習得のメカニズムを研究されています。子供のコミュニケーション力を高め、自然な会話力が身につくというチャンクの学び方について、お話を伺いました。


Q1. そもそも「チャンク」とは?チャンクで英語を学ぶメリットについて教えてください。

Q2. チャンク学習は乳幼児からはじまるのでしょうか?

Q3.「英語教育は早ければ早いほど良い」といわれる理由は何ですか?

Q4. 子供の英語教育において「親がやって良いこと・いけないこと」は何ですか?

Q5. 最近フォニックスという学習法が話題ですが、先生は幼少期にアメリカで英語をフォニックスで学んだそうですね。ご意見をお聞かせください。

Q6.「バイリンガル子育て」のための学習アドバイスをお願いします。


Q1. そもそも「チャンク」とは?チャンクで英語を学ぶメリットについて教えてください。

Q1. そもそも「チャンク」とは?チャンクで英語を学ぶメリットについて教えてください。

英語で「チャンク(chunk)」は「かたまり」を意味しますが子供の言語獲得の世界でもよく使われ、「人間が一度に記憶できる情報の集合」という意味があります。
複数の情報を1つのかたまりに変えることを「チャンク化」すると呼び、英語を効率よく覚えるための学習法として、近年世界中で研究が進められています。
ある有名な研究者は「チャンクとは、かたまりのまま記憶の中から取りだされて使われるもの」と定義しており、英語への活用が期待されています。

英語のネイティブスピーカーたちは、日常的にたくさんのチャンクを使って会話をしています。たとえば、

"How's it going?"
(元気?)

"I'm good."
(元気だよ。)

"What's the matter?"
(どうしたの?)

"Nothing. Never mind."
(なんでもないよ、気にしないで。)

また、"Why don't we〜"(〜しない?)というチャンクを覚えたら、"Why don't we have a lunch together?"(一緒にランチしない?)とか"Why don't we go to the park? "(公園に行かない?)という具合に、チャンクの中の単語やフレーズを部分的に入れ替えるだけでいろいろな表現が可能なので、応用がききます。他にも下記のような例があります。

例)

"It's〜time."(~の時間です。)

"It's show time."
(ショータイムだよ。)/

"It's lunch time."
(お昼ご飯の時間だよ。)

"My favorite〜is 〜."(~が大好き。)

"M y favorite animal is giraffe."
(好きな動物はキリンだよ。)/

"My favorite food is sushi."
(好きな食べ物はお寿司だよ。)

"I'm afraid of〜."(~が怖い。)

"I'm afraid of ghosts."
(お化けは怖い。) /

"I'm afraid of sharks."
(サメが怖い。)

なかには入替のきかない定型のチャンクもあります。

"How do you do?"
(はじめまして。)

"Not bad."
(悪くないね。)

などは、そのままの形で使われるチャンクの一例です。

文法と単語を組み合わせて学ぶ従来の英語学習とは異なり、最初からチャンク=フレーズを覚えることで、すぐに簡単な英会話が楽しめるようになり、実践的な英語力が身につくメリットもあります。

チャンクを認識することで、今後の英語習得にさまざまな良い効果をもたらすと期待されているのです。

Q2. チャンク学習は乳幼児からはじまるのでしょうか?

Q2. チャンク学習は乳幼児からはじまるのでしょうか?

その通りです。そもそも子供の言語習得は、すべてチャンクからはじまるといっても過言ではありません。生まれたばかりの赤ちゃんは、周囲の大人たちが話す日本語の会話をチャンクとして捉えながら言語を理解していきます。

英語を覚える場合も同じことがいえるのです。子供の母語が確立する前の幼い時期は外国語を母国語と同じように、無意識のうちに吸収することができると考えられています。

この頃までに、できるだけたくさんの英語をインプットしてあげてください。早期からチャンクによる十分な英語のインプットを確保できれば、場面に応じた自然な表現方法を脳に蓄積することができ、流ちょうな会話力の素地となるでしょう。

また小さな子供には、体験を伴う英語学習が大切だと私は考えています。かつて幼稚園における英語のカリキュラム開発に携わり、4~5歳の園児たちに英語を教えていたことがあります。この時期の子供たちのチャンクの習得力はめざましく、あっという間にフレーズを覚え、耳から聞こえたチャンクをすぐに使おうとします。

「Show And Tell」(※)という英語圏ではおなじみのアクティビティを行なったとき、紹介したいものを袋の中から取りだしながら、私は園児たち次のチャンクを紹介しました。

"I will show you what there is in my bag."
(バッグの中にあるものをお見せしましょう。)

単語が10個も連なった複雑なフレーズですが、目の前で実践してみせると、園児たちはその意味をすぐに理解してくれました。チャンクの長さや単語の難しさなどにかかわらず、実際に見たり聞いたりふれたりしながら、体験的に英語を覚える能力が子供には備わっています。チャンクを自然に記憶する天才といえるかもしれません。

※Show And Tell:自分にとって大切なものやトピックをみんなの前で説明すること。子供が学校などで行う簡単なプレゼンテーション。

Q3.「英語教育は早ければ早いほど良い」といわれる理由は何ですか?

Q3.「英語教育は早ければ早いほど良い」といわれる理由は何ですか?

早期英語教育のメリットは大きく3つあると考えます。
まず最初に音に対する感覚が敏感な乳幼児の時期に英語にふれることで、聞き取りや発音の力をのばしやすいということ。
LとRなど、日本人が苦手な発音も正しく聞き分けて発話しやすくなったり、英語を日本語に変換せずに英語のままインプットやアウトプットすることで英語耳・英語脳が育つと考えられています。

2つめは、先ほどお話ししたように英語を母国語と同じような方略で習得できる可能性があるということ。言語習得の臨界期(※)に関しては諸説ありますが、子供の吸収力は大人とは比べものになりません。また、小さなときは間違えることに恥ずかしさを感じないため、上達も早いでしょう。

3つめに「曖昧さ耐性」が高まることが挙げられます。曖昧さ耐性とは、対処できないことを突き詰め過ぎずに次へ進んでいく力をいいます。曖昧さ耐性が強い学習者は、知らない単語や表現があっても大まかな意味を推測して先に進むことができます。最近の小学校英語でも、英語の推測力を育むことが重要視されています。リスニングやスピーキング力が向上し、結果的にコミュニケーションも豊かになるでしょう。

英語をはじめる年齢にはさまざまな見解があり一概にはいえませんが、早期英語は子供の脳が柔軟なうちに英語力を養うことができ、ひいては多様性や異文化理解にもつながります。これからを生きる子供たちが国際社会で活躍するためにも、発達段階に合わせた英語教育が必要だと考えます。

※言語習得の臨界期:言語のスムーズな習得には年齢の限界(臨界期)があるとする仮説。

Q4. 子供の英語教育において「親がやって良いこと・いけないこと」は何ですか?

Q4. 子供の英語教育において「親がやって良いこと・いけないこと」は何ですか?

就学前の幼児期には、読み書きを急いだり、最初から単語を詰め込んだりする学習はオススメできません。
無理に覚えさせるのではなく、小さな頃には遊び感覚で英語の音をたくさん聞かせることからはじめましょう。心地良い英語のリズムにふれさせたり、英語のCDや映像を流したり絵本の読み聞かせをするのも効果的です。

その際、ただ音楽や映像を流したままにするのではなく、周囲の大人が「会話」につなげられると良いと思います。お子さまといっしょに歌を口ずさんだり、ストーリーの中に出てきたセリフをまねしたりして、聞かせてあげるのも1つの方法です。
英語は一方的に見聞きするものではなく、コミュニケーションの道具であるということが伝われば、子供はやがて自分でも英語を使って話してみたくなるでしょう。

英語教育は「英語を聞く→慣れ親しむ→コミュニケーションとして使う」という3段階のプロセスを意識しながら進めると良いと思います。お子さまのペースに合わせながら、英語とふれ合える環境を用意してあげてください。

Q5. 最近フォニックスという学習法が話題ですが、先生は幼少期にアメリカで英語をフォニックスで学んだそうですね。ご意見をお聞かせください。

Q5. 最近フォニックスという学習法が話題ですが、先生は幼少期にアメリカで英語をフォニックスで学んだそうですね。ご意見をお聞かせください。

父の仕事の都合で8歳のときから4年間、アメリカ・ニューヨークで過ごしました。それまでほとんど英語にふれることがなかった私は、英語力ゼロのまま現地の小学校に送り込まれたのです。

まさに"Sink or swim"(やるしかない)という状態の中で、なんとか英語を身につけました。幸い私が通った小学校にはさまざまな国籍の子供たちが集まっており、英語を母国語としない生徒もたくさんいました。授業中、先生から呼ばれて別室で学んだのがフォニックス(※)で、発音を徹底的に教え込まれたことを覚えています。

実はフォニックスにもいろいろな段階があります。最初に学ぶ音素の認識は、小学校低学年くらいから遊び感覚で覚えられますが、フォニックスは基本的にはルールを駆使して自力で英語を理解していくための学習法です。あまり早いうちから学ぶには無理があるので、小学3年生以降にはじめるのがベストだと思います。

フォニックスは英語を学ぶためのきっかけづくりに向いている学習法です。私自身、英語の講師となってからは中学校でフォニックスを教えたこともあります。本格的に文法を学びはじめるようになってからでも十分有効な学習法だと思います。

※フォニックス:英語の「文字(綴り)」と「発音」の間にある法則を学び、英語の読み方を身につける学習法。

Q6.「バイリンガル子育て」のための学習アドバイスをお願いします。

Q6.「バイリンガル子育て」のための学習アドバイスをお願いします。

ご家庭では、お子さまができるだけ自然な形で英語に親しむ環境をつくってあげましょう。簡単な英語で語りかけたり、お気に入りの歌を歌ったり、日常で実践できることはたくさんあると思います。

英語に自信がないという親御さんもいらっしゃいますが、親が指導者になる必要はありません。CDや映像などを活用すれば、正しい英語の発音にふれさせることができますし、ときにはプロの力を借りるのも良いでしょう。

あまり難しく考える必要はありません。お子さまと過ごす時間が長いママやパパが、失敗を恐れずに英語を使うことが大切です。実生活にたくさんのチャンクを取り入れて、親子で英語のコミュニケーションを楽しんでほしいと思います。

取材を終えて

赤ちゃんが母国語を習得するときも、言葉のかたまりである「チャンク」を覚えることからはじまるという居村先生。外国語習得のカギとなるヒントがたくさんありそうですね。お子さまに自然な英会話力を身につけたい方は、今回ご紹介したチャンク学習をご家庭で気軽に実践にしてみてはいかがでしょう。


居村啓子先生

プロフィール:居村 啓子(いむら けいこ)先生
拓殖大学外国語学部 准教授。児童英語教育、第二言語習得、子供の第二言語習得ストラテジーについて研究。子供がどのようにチャンクを捉え、言語を習得し、新しい表現をつくろうとするのかというテーマに取り組み、大人の学習者がよりナチュラルな表現を習得するために必要な語彙チャンクについても研究。NHKラジオ『小学生の基礎英語』講師。『英語で日本を紹介しよう!』(ポプラ社)ほか著書多数。

英語教育に関するニュース