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国際人を育てる基礎となるのは「人間愛」 ~文教大学付属小学校・島野歩校長先生インタビュー~

いまさまざまな小学校で盛んに英語教育が行われていますが、そもそも子供たちが「英語を学びたい」と思う原動力は、いったいどこから生まれるのでしょうか?

「子供たちの英語への意欲を引き出すためには、教育の原点に"人間愛"があることが大切です」と語るのは、文教大学付属小学校の島野歩校長先生です。
1クラス25~28人で1学年2クラス、全12学級という少人数制の小学校で、子供たち一人ひとりの思いを大切にした教育を行っています。

英語への意欲を引き出すために、同校がどのような教育を行っているのか、島野校長先生に詳しくお聞きすることができました。


Q1. 貴校の英語教育の特徴を教えてください。

Q2. 具体的にどのような英語の授業を行っていますか?

Q3. 「イングリッシュタイム」とは、どのような内容ですか?

Q4. オーストラリア短期留学についても教えてください。

Q5. 人と人との信頼を育てることが、英語を話す意欲につながっていくのですね。

Q6. 国際人に成長された卒業生の事例があれば、教えていただけますか?


Q1. 貴校の英語教育の特徴を教えてください。

Q1. 貴校の英語教育の特徴を教えてください。

英語を話す相手と心がつながることで、はじめて英語が使いたくなる

当校は、建学の精神である"人間愛"に基づく英語教育を行っています。小学生にとって"人間愛"とは何かというと、「人って良いな」ということを実感できることだと思うのです。

英語は自分自身の考えを表現し、かつ英語を母国語とする人の考えを理解するための大切なコミュニケーションツールですが、うわべだけのコミュニケーションでは意味がありません。

英語を話す相手と心がつながり、「この人に伝えたい」「この人のことをもっと知りたい」「この人のために何かをしたい」という思いがわいたときに、はじめて英語が使いたくなるのではないでしょうか。

国際的な感覚は、「人とつながりたい」という思いから育まれる

たとえば、当校では毎年オーストラリアへ短期留学するプログラムを実施しています。子供たちは、そこで出会った人たちと、最後の日には泣いて別れを惜しむほど深い関係を築きます。

すると子供たちは、日本に帰ってきた後で「またオーストラリアに行きたい!」と言うんですよね。単に外国に行きたいわけではなく、オーストラリアで出会った人々の素晴らしい人間性にふれて、その人たちとまた会いたいから行きたいと言うのです。

国際的な感覚というのは、このように子供たちが「この人とつながりたい」と感じたときに、言葉や目の色や皮膚の色を超えて生まれる感覚ではないかと思っています。

Q2. 具体的にどのような英語の授業を行っていますか?

Q2. 具体的にどのような英語授業を行っていますか?

子供たちが英語を使いたくなるようなモチベーションづくりに力を入れており、「話す」機会や「聞く」機会をできるだけ多く作るために、各教室に英会話ロボットを置いています。

子供たちがロボットに話しかけると英語で返事が返ってくるので、子供たちは遊びながら日常的に英語とふれ合っています。

人型ロボットのペッパーくんもいて、2日ずつ各クラスを回っています。子供たちはペッパーくんが大好きで、朝教室に入ってきたときに"Good morning, Pepper."と声をかけると、ペッパーくんも"Let's talk to me."と返してきます。ペッパーくんがいることで、子供たちは友達と話すような感覚で、いつも英語を話しています。

このように、英語授業ではできるだけ英語で会話をする機会を多く作ることを、心がけています。授業にはネイティブの講師のほかに、日本人の英語教師、担任の教師の3人がいて、それぞれの立場から授業を進めていきます。

また、通常の英語授業のほかにも1日2回「イングリッシュタイム」というプログラムがあり、さらに年に3回「TOKYO GLOBAL GATEWAY」という体験型英語学習施設に出かけ、夏休みにはオーストラリア短期留学にも行っています。

Q3. 「イングリッシュタイム」とは、どのような内容ですか?

Q3. 「イングリッシュタイム」とは、どのような内容ですか?

全校生徒が聞く中で、英語の自己紹介やトークショーを行う

「イングリッシュタイム」は1日に2回、中休みと昼休みに10分ほど行っています。
子供たちが順番にマイクの前に立ち、1人で英語の自己紹介をしたり、2人組のトークショーを披露したりし、それが校内すべてに放送されるというものです。

全校児童は326人なので、年に1~2回は必ず自分のスピーチの順番が回ってきます。全校生徒が聞く中で話すのですから、子供たちにとっては、一世一代のチャンスのようなものでしょう。

この「イングリッシュタイム」のために、子供たちは1カ月ほど前から原稿を書きはじめたり、先生の指導を受けたりして、準備を進めます。

何をやるかはまったく自由なので、子供たちは自分なりにいろいろとアイデアを練り、満を持して当日に臨みます。そのことが、自分で考えて英語を表現する力や、ライティングの力にもつながっていきます。

友達の応援や励ましが、モチベーションアップにつながる

そしていざ放送となると、子供たちは緊張しながらも、一生懸命スピーチをします。当校は人数が少ないこともあって、全校生徒がすべての生徒の顔と名前を知っているので、子供たちは皆耳を澄まして聞いているんですよね。

英語の堪能な先生のスピーチよりも、仲間の賢明なスピーチの方が、子供たちは感動し、エールを送りたいと思うのでしょう。生徒がマイクに向かうときは「〇〇くん、がんばれ!」と皆で応援し、放送が終わると「今日はすごく良かったよ!」と声をかけてくれます。

このように人から褒められる、承認されるという経験をすることは、子供たちにとってとても重要なことではないでしょうか? 何かをやったときに「すごいね」と言ってもらえることで、子供たちは「承認されている」という自覚をもち、どんどんプラスのスパイラルに入っていきます

英語も同じで、たとえどんなにしどろもどろな英語でも、一生懸命話したことを「すごい!」と言ってもらえると、「もっと話せるようになりたい」と思えるようになるんですよね。

Q4. オーストラリア短期留学についても教えてください。

Q4. オーストラリア短期留学についても教えてください。

英語しか通じない日々を過ごし、挫折しそうになる子供たち

オーストラリア短期留学は、毎年4年生以上の希望者が参加し、現地の牧場主やホスト、カレッジの先生といったさまざまな人たちと出会います。牧場体験をしたり、「ノースレイクス ステイト カレッジ」という現地校で同じ学年の子供たちといっしょに学んだりします。
スクールでは1つのクラスに当校の生徒がたった1人で入るので、まさに英語漬けの日々になります。

全8日間のプログラムのうち、最初の3日間は宿泊施設に皆で泊まるのですが、後半の4日間はホストファミリーのお宅にホームステイをします。そこでいよいよ、英語しか通じない生活がはじまります。

もちろん、留学に参加する生徒は、英語の堪能な子ばかりではありません。そのため、自分の英語力の稚拙さに打ちのめされ、挫折しそうになる子もたくさんいます。
でも、ホームステイをしている以上、自分で何とかしなくてはならないので、子供たちはホストの言葉を理解しようと"Once more please."と何度もくり返すのです。

最後の日は、泣きじゃくってホストとの別れを惜しむ

ホストは、そんな子供たちに何度でも根気よく対応してくれるので、次第にホストと子供たちの間に信頼関係が育まれていきます。そして、最後の日のフェアウェルパーティのときには、皆泣いて泣いて、泣きじゃくるぐらいホストとの別れを惜しむんですよね。

このような体験をすることで、子供たちは「またオーストラリアに行って、ホストと話がしたい。だからもっと英語を話せるようになりたい!」と思い、英語を学ぶことに積極的になっていくのです。

Q5. 人と人との信頼を育てることが、英語を話す意欲につながっていくのですね。

Q5. 人と人との信頼を育てることが、英語を話す意欲につながっていくのですね。

はい。人と人をつなぐ一歩は、決して言葉だけではありません。言葉を超えたハートこそが、人と人とをつなげるのだと、毎年オーストラリアの留学体験を通してひしひしと感じています。

子供たちがこれから活躍するステージは、もはや日本だけではなく、全世界へと広がっています。国際人として生きるために、英語力をつけることは重要ですが、そのためには「英語を話したい」と思える環境づくりが大切ではないでしょうか?

Q6. 国際人に成長された卒業生の事例があれば、教えていただけますか?

Q6. 国際人に成長された卒業生の事例があれば、教えていただけますか?

当校で6年間を過ごし、現在保育士を目指して大学の初等教育課に通う女子学生がいるのですが、彼女はまさに人間愛豊かに成長した国際人の1人です。

小学生の頃からすでに「保育士になりたい」という夢をもっていたのですが、海外の人々と関わるようになって、日本の保育士さんの労働条件が非常に厳しい状況にあることを知りました。

そこで彼女は、「自分に何かできることはないか?」と考え、クラウドファンディングで資金を募り、フィンランドの保育を学ぶために3カ月の留学に踏み切ったのです。さらに現在はアメリカに渡って、より広い見地で保育を学んでいます。

いま日本が抱えている課題をしっかりと見つめて、何かを変えていきたいという彼女の強さは、私たちにとっても大きな刺激になっています。

小学校時代から彼女は、「自分の力を誰かのために役立てたい」という気持ちをもち、夢を追いかける子供でした。この先近い将来、彼女が過酷な保育士の勤務状況に、何らかの光を差してくれることを期待しています。

インタビューを終えて

図書室

取材の間中、満面の笑みでお話しくださった島野校長先生。まさに"人間愛"そのもののような、素敵な校長先生でした。心豊かな国際人を育てるために、周囲の大人がしっかりと愛情をかけて見守ることがいかに大切かを、深く実感したインタビューでした。

文教大学付属小学校の校舎はとてもユニークな造りになっていて、校舎の中央には広い図書スペースが設けられ、各クラスはその図書室を取り囲むように建てられています。そのため、どのクラスの生徒も、教室を出るとすぐに本を手に取ることができるようになっています。

英語の絵本も、1冊ずつ丁寧に選び抜いて、置いているとのこと。英語の本を読むときは、わからない単語も出てきますが、そのために学年にはローマ字表記の電子辞書、低学年にはひらがな表記の電子辞書を用意して、英単語を調べやすくしているそうです。

子供たちの「やりたい」「知りたい」「伝えたい」という思いを引き出せるよう、授業の内容から教室の配置まで、さまざまな点で考え抜かれた小学校でした。


島野歩校長先生
プロフィール:島野 歩(しまの あゆみ)校長先生
1988年に文教大学教育学部中等教育課程家庭専攻を卒業後、東京都江東区特別支援学校中学部教諭に着任。1991年から公立小学校4校に勤務し、2012年に東京都北区教育委会の指導主事となる。2014年から現職。

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