ディズニー英語システム TOP > 乳児・幼児からの英語 > 英語教育に関するニュース > 『Happiness Creator(ハピネスクリエイター)』の育成を目指して、理想の「学び」をデザイン~新渡戸文化小学校の英語教育を取材しました~

英語教育に関するニュース

『Happiness Creator(ハピネスクリエイター)』の育成を目指して、理想の「学び」をデザイン~新渡戸文化小学校の英語教育を取材しました~

明治時代に日本人の精神性を英語で紹介し、世界的なベストセラーとなった『武士道』の著者であり、教育家の新渡戸稲造が初代校長を務めた「新渡戸文化学園」。
小中高の一貫した伝統の学びを礎に、2019年より新学習指導要領でも掲げられている「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」を実践し、学校改革のモデル校として雑誌やテレビなどでも数多く紹介されています。
学校教育のさらなる可能性に向かって進化を続ける同校の英語教育について、総括校長補佐・遠藤崇之先生と英語科教諭・加藤千尋先生にお話を伺いました。


Q1. 新渡戸文化小学校の英語教育の歴史についてお聞かせください。

Q2. 小学1年生から取り組んでいる英語の授業内容について教えてください。

Q3. 海外とのオンライン共同授業とはどのような取り組みですか?

Q4. 小学校の英語学習でとくに大切にしていることは何ですか?

Q5. 新渡戸文化学園が新たに掲げる「Happiness Creator(ハピネスクリエター)」の育成とはどのような理念ですか?

Q6. 自宅学習期間中のオンライン授業の内容について教えてください。

Q7. これから新渡戸文化小学校が目指す英語教育とは?



Q1. 新渡戸文化小学校の英語教育の歴史についてお聞かせください。

Q1. 新渡戸文化小学校の英語教育の歴史についてお聞かせください。

本格的な英語の習得や国際理解を深めるための伝統教育

遠藤先生:新渡戸稲造は、日本人初の国際連盟事務次長を務めるなど、世界平和に貢献したことでも知られています。
一方で女性の教育にも力を注ぎ、1927年、新渡戸文化学園の前身である「女子経済専門学校」の初代校長に就任しました。当時から英語の必要性を強く感じ、英語教育を推し進めたのです。

当時、同校はキリスト教系の学校でもあり、外国人宣教師たちによる英語の授業をいち早く取り入れ、本格的な英語の習得や国際理解を深めるための教育を行いました。その伝統と志が現在もしっかりと受け継がれています。


Q2. 小学1年生から取り組んでいる英語の授業内容について教えてください。

Q2. 小学1年生から取り組んでいる英語の授業内容について教えてください。

英語講師と担任・専科によるチームティーチングを各学年で実施

加藤先生:ネイティブとバイリンガルの2名の講師が中心となり、全学年の英語の授業を担当しています。
1年生は週1コマ45分を2分割し、約20分の授業を週2回行っています。最初は短時間でも学習の機会を増やすことで英語が定着しやすくなり、子供たちも集中して学べるというメリットがあります。
2~4年生は週1コマに隔週1コマを加えた授業に取り組み、5~6年生では週2コマのオールイングリッシュの授業を展開しています。

どの学年も2人の英語講師が交互に授業を担当し、学年によってクラス担任または日本人の専科教員とのチームティーチングを行いながら一人ひとりに目が届く体制を整えています。

高学年ではオンラインで海外とつながる授業がスタート

加藤先生:カリキュラムでは成長段階に合わせて独自にセレクトした教材を使っています。低学年では、たくさんの自然な英語にふれることを大切にした活動に加え、英語の「発音」と「文字(つづり)」の関係性を学ぶフォニックスを取り入れています。

また3年生では歌ったりダンスしたりしながら五感で英語を習得するプログラムにも取り組みます。
4年生以上になると、食べもの、生きもの、天気などテーマから、子供たちが思わず興味をもつようなエピソードを用いて長い英文慣れていき徐々にアウトプットの機会を増やしていきます。

学年が上がるごとにゆるやかにレベルがアップし、高学年では今までに覚えた単語やフレーズを読んだり書いたりしながら、聞く・話す・読む・書くの4技能を強化していきます。

2020年度の2学期から5~6年生では1人1台のiPadを活用し、オンラインで海外とつないだ共同授業もスタートしました。


Q3. 海外とのオンライン共同授業とはどのような取り組みですか?

Q3. 海外とのオンライン共同授業とはどのような取り組みですか?

ベトナムの子供たちと交流するプロジェクト型の授業

加藤先生:5~6年生では、同世代のベトナムの小学校の子供たちとオンラインで交流する共同授業が2020年度からはじまりました。授業で学んだ"I can...""I like..."表現を使って自己紹介のスクリプトを作成し、自己紹介動画をiPadで撮影して編集まで一人ひとり行いました。

6年生は3~4人がグループになって日本の伝統を紹介し、できあがった動画をオンラインでベトナムに送る予定です。最初は不安を感じていた児童たちも、お互いに第二外国語として英語を学んでいることを伝えると「じゃ、やってみる!」とモチベーションを高めていました。英語をコミュニケーションに必要な「道具」として使うことで、英語を学ぶ本当の目的に気づく良い機会になっています。

遠藤先生:中学校の英語授業でも、1年生からインターネットのビデオ会議システムを使い、海外とリアルタイムでつないだ共同授業を行なっています。

最初は何も言えない生徒も多く、相手の言っていることがわからないという体験もします。でも、そこから子供たちに「どうしたい?」と問いかけると「自己紹介ができるようになりたい!」という返事が返ってきて、自分から教科書の巻末にある単語帳や辞書を開いて調べはじめるんですね。

「やってみたい」という目的を明確にもつことは、自律した英語学習のスタート地点だと考えています。小学校の授業でも「相手のことをもっと知りたい」「相手に自分をわかってもらいたい」という好奇心を入り口に、「英語を使ってやりたいこと」が増えるような授業を行っていきたいと考えています。


Q4. 小学校の英語学習でとくに大切にしていることは何ですか?

Q4. 小学校の英語学習でとくに大切にしていることは何ですか?

安心して失敗できる雰囲気づくりで"英語嫌い"をつくらない

加藤先生:小学校の英語学習において常に思うのは、子供たちに英語を嫌いになってほしくないということです。中には「書けないからイヤ」とか「言えないからつまらない」など、どうしても苦手意識をもってしまう子供もいます。

たとえば先日、英語講師による授業中にノートを開かない児童がいたので「今日はノートに書かないの?」とたずねると、「今日は聞く」と答えたのです。「そうなんだ。じゃあ今日は聞こうね、聞くだけでもわかるよ」と声をかけました。

誰1人として英語嫌いになってほしくないからこそ、教室は子供たちが安心して授業に参加できる空間にしたと考えています。わからなくても安心して失敗できるような雰囲気があると、子供たちは積極的にチャレンジすることができます。

英語にはじめてふれる小学生にはとくに大切なことだと思います。そしてみんなが自己肯定感をもち、できたことを友達同士で認め合えるような雰囲気を、学校全体でつくるようにしています。


Q5. 新渡戸文化学園が新たに掲げる「Happiness Creator(ハピネスクリエター)」の育成とはどのような理念ですか?

Q5. 新渡戸文化学園が新たに掲げる「Happiness Creator(ハピネスクリエイター)」の育成とはどのような理念ですか?

社会の役に立ち、しあわせをつくHappiness Creatorを育成

遠藤先生:本校では2019年度から新たな教育活動の目標を「Happiness Creator(ハピネスクリエター)」と定めました。
「この世に生まれた大きな目標は、人のために尽くすことある。周囲人が少しも良くれば、それで生まれた甲斐あり」という新渡戸稲造の教えをもとに生まれた理念です。より多くの人のしあわせを"つくりだす"意志をもち、誰かのために行動できる人間を育てたいと考え、"クリエター"ています。

「非認知能力」を重視した英語学習

遠藤先生:Happiness Creator」という大きなテーマの中には自律型学習者の育成という下位目標があります。この目標に向かっていくために、本校では「非認知能力」を育む教育に取り組んでいます。

テストの点数や偏差値、IQといった数値化できる「認知能力」に対し、非認知能力とは、目標に向かってやり抜く力、感情をコントロールする力、コミュニケーション能力など、数値では見えにく能力のことをいいます。英語ぶこと自体がコミュニケーションですので、非認知能力はとても重要です。

わゆる座的な学びけでなく、実社会とつながる体験や活動多く取り入れることで、非認知能力の土台をしっかりと身につけ、最終的には認知能力(偏差値・成績・受験)も同じようにのびていくと考えています。

将来、どのような時代においても自分の進むべき道を切り拓いていくことができる人を育てること。それが自律型学習者の目的であり、「Happiness Creator」としてのあるべき姿と考えています。


Q6. 自宅学習期間中のオンライン授業の内容について教えてください。

Q6. 自宅学習期間中のオンライン授業の内容について教えてください。

小学校教育を次のステップに昇華させるオンライン授業の可能性

遠藤先生:2020年春のステイホーム期間は、子供たちが自宅学習できる環境を整えることが求められました。そこで、教員それぞれが知識と知恵をもち寄って、「新渡戸オンラインスクール」という特別サイトを急きょ立ち上げ、先生からのメッセージや課題を配信できる環境を整備しました。

その中で、時間がある今だからこそ「学びの目的を探す時間」をつくろうという思いで開講したのが、「世界一受けたいオンライン特別授業(セカイチオンライン)」です。

デジタルクリエイターや映画のナレーター、パティシエの方など、子供たちが憧れる職業の方や、オンラインだからこそ会える海外の方々と直接対話する機会をつくりました。「セカイチオンライン」は、1~6年生まで興味があれば誰でも自由に参加できるようにしました。自分で参加を決めているのでとても意欲が高く、会話の質も上がりました。

事後アンケートには「プログラミングをやってみたい」「声優さんの仕事を体験したい」「海外の人と話したい」「英語をもっと勉強してフィンランドに行きたい」といった具体的な"やってみたい"の声が数多くあがりました。社会に開かれた本校ならではの強みとオンライン学習を融合させた今回の試みを通し、小学校教育の新たな可能性を感じました。

そのときの経験を生かし、いつどんな状況になっても良いように、10月には1人一台iPadを導入し、授業のさまざまな場面で活用して学びの幅を広げています。


Q7. これから新渡戸文化小学校が目指す英語教育とは?

Q7. これから新渡戸文化小学校が目指す英語教育とは?

楽しみながら"英語で何をしたいのか"に気づくきっかけをつくる

加藤先生:小学生が自ら英語を学習する意味を見いだすことは、そう簡単なことではありません。そのためにも、テストで良い点数を取ることだけを目的とした詰め込み型の教育ではなく、海外とインターネットでつなぐ授業やネイティブ講師とのリアルなコミュニケーション、そしてタブレット端末を活用した学習などを積極的に実施し、子供たちが楽しみながら"英語で何をしたいのか"に気づくきっかけをたくさん散りばめたいと考えています。

わくわくしながら英語にふれ、率先して単語や文法を覚えたいと思ったとき、子供たちの英語力はしっかりと定着し、著しく成長すると信じています。

子供たちが希望する多様な進路に寄り添った英語教育

遠藤先生:子供たちには「将来自分が社会の役に立てるかもしれない」という期待感をもった大人に育ってほしいと思っています。ですから英語の学習においても、子供主体の授業展開を心がけています。「学ばせる」、「覚えさせる」など「◯◯させる」というよう、教員が一方的に指導するような授業なく、私たち全員が彼らと対等なパートナーとして伴走することを大切にしています。

英語教育は受験のためだけのものでは決してありませんが、この先む中・高校で英語好きで得意であということは、その後の豊かな進路選択可能にしてくれると思います。そういう意味でも、当校では1年生から英語に慣れ親しんで好きにることで、可能性を広げようとしています。

新渡戸文化学園の100年近い伝統と教育実績を土台に、学び方改革の大きな柱である「Happiness Creatorをさらに昇華させ、我々も児童生徒とともに学びを深めながら子供たちの幸せな未来のために、1歩ずつ先へと進んで行きたいと思っています。

取材を終えて

東京都中野区の閑静な住宅街に位置する新渡戸文化小学校は、2027年に創立100年を迎える伝統校。一人ひとりの個性と学力、人間性をのびのびと育む教育環境を提供しています。

また、社会人としての多彩な経歴をもつ魅力的な先生方が在籍していることも、学び方改革の大きな推進力になっています。国際社会で活躍した偉人の教えを受け継ぎ、「いつか誰かを笑顔にするために英語を学ぶ」という"Happiness Creator"たちが、次の100年に向かって切り拓く教育の新しい未来に期待せずにはいられません。


遠藤崇之先生、加藤千尋先生

プロフィール:
遠藤 崇之(えんどう たかゆき)先生(写真 右)
総括校長補佐。大手IT企業でシステム営業、人材育成コンサルタントを験するなかでコーチングに出会い、アドラー心理学式コーチングを習得。その後、認定NPO法人 Teach For Japan フェローとして埼玉県戸田市教諭として5年生の担任を経験。コーチング理論と教員経験を融合させた自己肯定感を引きだす指導にも携わる。2020年2月より現職。

加藤 千尋(かとう ちひろ)先生(写真 左)
英語科教諭。学生の頃、バックパッカーで各地を旅したときの英語体験がもととなり、英語を話すことの楽しさを子供たちに伝える仕事を目指す。学習塾の講師として子供たちとの外国訪問プログラムなどの経験を経て教員に。5年生の担任と英語専科として2020年4月より現職。

英語教育に関するニュース