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伝わる英語!米国大統領も推奨する「プレイン・イングリッシュ」とは?~ケリー伊藤さんインタビュー~

アメリカの歴代大統領が発信するメッセージは、小学生にも理解できるほど簡単な単語と明快な文章で表現されることをご存知ですか?
今や世界標準の英語として各国で推奨されている「プレイン・イングリッシュ」とはどんな英語なのでしょう。
今回は多くの著書や企業研修、オンライン授業などを通し、日本でプレイン・イングリッシュを提唱するケリー伊藤さんにお話を伺いました。


Q1.「プレイン・イングリッシュ」とは具体的にどのような英語なのですか?

Q2. 日本人の英語が伝わりにくいといわれるのはなぜですか?

Q3. プレイン・イングリッシュの"ルール"とは?

Q4. 日本の子供にオススメの勉強法があれば教えてください。

Q5.「伝わる英語」を身につけることで子供たちの未来はどう変わりますか?



Q1. 「プレイン・イングリッシュ」とは具体的にどのような英語なのですか?

歴代大統領のスピーチは"プレイン・イングリッシュ"の好例

プレイン・イングリッシュ(Plain English)とは一言でいえば、伝えたいことを簡潔かつ明確に表現する英語のことです。英語によるコミュニケーション様式の総称ともいわれ、耳慣れたやさしい単語と短い文で、複雑な情報を誰にでもわかるよう明快に示すことを目標としています。

Plain English(平易な英語)といっても、決して稚拙な英語ではありません。アメリカでは政府公認の英語表現として、政財界でも導入されています。
歴代大統領のスローガンやスピーチなどで使われる英語は、多様な人種と教育格差があるなか、誰にでも大統領のメッセージが伝わるようにわかりやすさを最重視したプレイン・イングリッシュの好例といえます。

子供から大人まで、英語を母語としない移民にも正しく理解できる英語。それがプレイン・イングリッシュです。

米国政府はプレイン・イングリッシュを国策として導入

プレイン・イングリッシュは、英国政府が公共サービス向上のため、1948年に開発した手引書が発端となりました。同じ時期、アメリカでも政府の公文書を一般市民に理解しやすく改善しようという消費者運動がはじまりました。

2010年にはオバマ前大統領が"Plain Writing Act of 2010"(2010年プレインライティング法)に署名し、プレイン・イングリッシュの使用を国策として取り入れたのです。現在では政治や法律の分野だけでなく、新聞、雑誌といったメディア全般へと広く浸透しています。

指標となっているのは、米国証券取引委員会(SEC)が公開している『A Plain English Handbook』です。プレイン・イングリッシュの用例をあげながら全12章にわたり詳しく解説しています。言いたいことを整理して簡潔に表現するヒントがつまっていて、ふだんの英語学習にも役立つ内容です。

『A Plain English Handbook』より抜粋

before
The following summary is intended only to highlight certain information contained elsewhere in this Prospectus.

(次の概要は、「目論見書」のほかのセクションに含まれる特定の情報を強調することのみを目的としています。)

after
This summary highlights some information from this Prospectus.

(この概要は、「目論見書」の一部の情報を強調するものです。)

before
Persons other than the primary beneficiary may not receive these dividends.
(主たる受益者以外の人物が、これらの配当金を受け取ることはありません。)

after
Only the primary beneficiary may receive these dividends.

(主たる受益者だけが、これらの配当金を受け取ります。)

※出典:「A Plain English Handbook: How to Create Clear SEC disclosure documents」P25-27


Q2. 日本人の英語が伝わりにくいといわれるのはなぜですか?

Q2. 日本人の英語が伝わりにくいといわれるのはなぜですか?

「英語のロジック」で論理的に考える習慣を身につける

日本人の英語学習者の方から「長年英語を勉強しているのに相手にうまく伝わらない」、「自分の考えをわかってもらえない」という声をよく聞きます。なぜ伝わらないのでしょう。
その原因として大きく「発想・言語体系の違い」、「構文・語句の使い方」、「日本語の直訳による誤り」の3つが考えられます。

英語を学ぶうえでは、まず英語と日本語のロジックの違いを理解する必要があります。英語と日本語は、そもそも発想も言語体系もまったく異なるからです。
たとえば英語は「結論が先、説明は後」を前提とした言語なので、一番伝えたいことを最初に言ってから理由を述べていきます。日本の作文のように「起承転結」を意識する必要はありません。

次に、ネイティブでも使わないような構文や不要な語句によって文章が冗長になり、言いたいことがぼやけてしまうケースも多くあります。意味が同じなら短いほど伝わりやすい文章になります。

そして何より、日本語を英語に訳すプロセスから脱却することです。直訳することで本来の意味がわからなくなったり、誤解を招く言い回しになったりすることがよくあります。日本語の環境で育ってきた方たちはとくに意識しなければなりません。

日頃から英語のロジックで論理的に考える習慣を身につけることが、伝わる英語習得の近道といえます。


Q3. プレイン・イングリッシュの"ルール"とは?

中学までに習った単語と単純な文法だけで十分伝わる!

プレイン・イングリッシュは中学レベルの単語力(500語程度)があれば十分です。ネイティブのような語彙力がなくても、表現方法のコツを身につけるだけで日常会話からビジネスまで広く応用できます。

私は年、アメリカのラジオ局で究極のプレイン・イングリッシュによるニュースライティングに関わってきました。報道の現場で使われる英語表現をもとに、プレイン・イングリッシュの基本ルールをご紹介しましょう。

ルール1 長い単語より短い単語を

同じ意味をもつ複数の単語があるのなら、できるだけ短い単語を使うように心がけてください。

たとえば「努力する」を意味する"endeavor"なら"try"で十分伝わります。「だいたい」に"approximately"を使うとかっこ良く聞こえるかもしれませんが"about"のほうがすんなり目と耳に飛び込んできます。「示す」を表す"indicate"は"show"や"tell"に置き換えてみましょう。

凝った単語より、慣れ親しんだ短い単語を使うことでリズム感が生まれ、視覚的にも「読んでみよう」と思わせる文になります。

ルール2 抽象的な表現を避けてより具体的に

曖昧な表現が多い日本語に比べると英語はとても直接的な言語です。抽象的な表現は避け、できるだけ具体的に事実を伝えましょう。

たとえば"He is tall."(彼は背が高い)という場合には"He stands six feet four."(彼は身長が6フィート4インチある)とするとより具体的です。

「すばらしい」という意味で"remarkable"がよく使われますが、"She is a remarkable person."(彼女はすばらしい人です)とするより"She speaks five languages."(彼女は5カ国語を話す)など「何がどうすばらしいのか」をメインにするほうが相手に伝わりやすくなります。

ルール3 よけいな単語は使わない

必要のない単語を省いて簡潔化することは、相手に理解されやすい文章の基本です。下記の例をみていきましょう。

end result(最終結果)
mutual cooperation(相互協力)
complete monopoly(完全独占)
general public(一般大衆)
potential risk(潜在的リスク)
true facts(実情)
personal friend(個人的な友人)

一見どれも違和感がないように思えるかもしれませんが、これらはすべて不要な形容詞を含み、同意語が重複しています。

金融や経済の分野でよく使われる"potential risk"も英語としては不自然です。"risk"自体が「先々何か悪いことが起こる」という意味をもち、「潜在的な」を示す"potential"の要素が含まれているからです。

"cooperation(協力)"はそもそも"mutual(相互)"を表し、"general(一般的)"でない"public(大衆)"はありません。いずれもどちらかひとつの単語で事足りるのです。

プレイン・イングリッシュでは修飾語をなるべく避けるのが原則です。

「短い単語」の参考例

前置詞プレイン・イングリッシュ

for the purpose of~
(~の目的で)

for~
from the point of~
~の見地から
for~
in order to~
~のために
to~
in the case of~
~の場合は
if~
in terms of~
~の言葉で
in~
with regard to~
~に関しては
about~
in addition to~
~に加えて
besides~

※出典:ケリー伊藤『書きたいことが書けるライティング術』(2015、研究社)

ルール4 できるだけ能動態を使う

日本人の英作文は「~~される」という受動態が多くなりがちですが、英語は「誰が」「何をする」と簡潔に表す能動態が基本です。できるだけ単純な文法で表現するようにしましょう。

例文1

受動態
"The cake was baked by my friend."
(このケーキは友達によって焼かれた/友達が焼いた。)

能動態
"My friend baked the cake."
(友達がケーキを焼いた。)

2つとも意味は同じですが、能動態では主語が明確で文も短く、よりわかりやすい表現になっています。

例文2

受動態
"It is said that he is the best tennis player in the USA."
(彼はアメリカで一番のテニス選手だといわれている。)

能動態
"People say that he is the best tennis player in the USA."
(人々は彼をアメリカで一番のテニス選手だという。)

"It is said that~"は教科書にもよく出てくる構文ですが"People say that"の方が一般的によく使われます。能動態にすることで、曖昧な表現を回避することができます。

ただし、すべてを能動態にするといっているわけではありません。

例題3

受動態
"The TV was broken."
(テレビがこわれた)

能動態
"I broke the TV."
(私がテレビをこわした)

このように原因がわからない場合や、ものごとをあえてはっきり言いたくないときなどには受動態が使われます。


Q4. 日本の子供にオススメの勉強法があれば教えてください。

Q4. 日本の子供にオススメの勉強法があれば教えてください。

音に敏感な幼児期から英語にふれ「英語を聞く耳」を育てる

英語で簡潔に言いたいことを伝えるために、発音はとても重要です。音に敏感な幼児期の段階から「英語を聞く耳」を育てることをオススメします。日本語には"L"の音がありません。大人になって日本語の発音形式ができあがってしまうと、英語特有のアクセントやイントネーションを正しく認識することが難しくなります。英語をローマ字読みに置き換えようとしてしまうからです。

そのためにも、小さな頃からネイティブの英語にふれさせることが大切です。気軽にはじめられることとして、まずはご家庭でお子さんといっしょに英語のDVDを見たり、歌を聞いたりするのも良いでしょう。勉強としてではなく、楽しみながら英語を"音"としてたくさんインプットしてあげてください。


Q5.「伝わる英語」を身につけることで子供たちの未来はどう変わりますか?

国際化する社会で「コミュニケーションスキル」は賢さの証

「言葉」の第一の目的は、カッコよさや美しさではなく、コミュニケーションにあると私は考えています。これからの国際社会では、高度な単語や文法使いが賢さの証ではありません。

アメリカをはじめイギリス、カナダ、オーストラリアでも政府公認のプレイン・イングリッシュは、各国の共通認識になりつつあります。複雑な情報を整理し、伝えたいことをより具体的に表現することができれば、人間関係はより良好に、強固になります。「伝わる英語」の習得が子供たちのグローバルな思考を育て、世界での活躍の場をさらに広げてくれることは間違いないでしょう。

インタビューを終えて

「なかなか英語が上達しない」と悩む英語学習者の間で注目されているプレイン・イングリッシュ。英語を公用語とする日本企業をはじめ、日常会話のスキルアップのためにプレイン・イングリッシュで英語を学び直そうという学習者も増えているそうです。
子供の頃から日本語と英語の違いを理解する論理的思考を身につけることは、将来の英語力アップにもつながるのではないでしょうか。


ケリー伊藤さん

プロフィール:ケリー伊藤(けりー いとう)
Brown Institute(ミネソタ州)卒業後、ニュース専門局のキャスターとして活躍。日本ではラジオ局の英語放送、キャスターなどを務めるほか、多くの有名企業内教育にてプレイン・イングリッシュの指導にあたる。『プレイン・イングリッシュのすすめ』『分かる英語・通じる英語』(ともに講談社)など、著書多数。Kelly's English Labo主宰。
http://kellyslab.com

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