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「国際バカロレア」(IB)とは? ~国際バカロレア機構・星野あゆみ氏インタビュー~

写真提供:国際バカロレア機構

いま、「国際バカロレア」(IB:International Baccalaureate)の認定校となる小・中・高校が、少しずつ増えています。
国際バカロレアが認定した高校などで所定のプログラムを修了すると、国内外の大学受験に役立つなど、グローバル社会の中で有利な資格としても注目を浴びています。
そんな国際バカロレアとは、一体どのような資格なのでしょうか?
国際バカロレア機構アジア太平洋地域日本担当地域開発マネージャーであり、玉川大学大学院 教育研究科の教授でもある星野あゆみ先生に、お話を伺いました。


Q1. 国際バカロレアとは、どのような資格なのですか?

Q2. 学校が国際バカロレアの認定を受けるための基準について、教えてください。

Q3. 国際バカロレアの認定校を目指すことで、学校全体がレベルアップできるということですね。

Q4. 国際バカロレア導入によって、教育にどのような効果をもたらせますか?

Q5. 学生が国際バカロレアのディプロマ(卒業証明書)をもつことで得られるメリットを教えてください。



Q1. 国際バカロレアとは、どのような資格なのですか?

Q1. 国際バカロレアとは、どのような資格なのですか?

世界に貢献できる若者を育てるために誕生した、国際的な教育プログラム

国際バカロレア(以下、IB)は、1968年に「より良い世界、より平和な世界に貢献できる若者を育てたい」という理念のもとに誕生した、非営利組織である国際バカロレア機構(IBO)が認定する国際的な教育プログラムです。本部はスイスのジュネーブにあります。

IBO自体が学校を運営しているわけではなく、あくまで学校を認定する団体なので、IBの理念に共感していただける学校といっしょに仕事をして、認定をとっていただくというシステムになっています。

よくIBのことを、英語教育のプログラムだと思っている人がいるのですが、そうではありません。IBの公用言語は英語、フランス語、スペイン語ですが、言語を学ぶことが目的ではなく、あくまでIBの理念に沿った若者を育てることが目的です。

世界のIB認定校は5403校、日本国内では80校

いま世界では、5403(2020年8月時点)の学校がIBの認定を受けています。日本はこれまでインターナショナルスクールが認定校になるケースが多かったのですが、2013年に文部科学省が学校の教育改革の一環としてIBを推進するようになり、一部の科目(※1)の試験が日本語で受けられるようになってからは、日本の一条校(※2)も積極的にIBの認定を受けるようになりました。

IBが提供するプログラムには、次の4種類があります。
PYP(Primary Years Programme):主に幼稚園や小学校が対象
MYP(Middle Years Programme):主に中学校が対象
DP(Diploma Programme)、IBCP(Career-related Programme):主に高校が対象

国際バカロレア機構4つのプログラム

現在日本でIBの認定を受けている学校は80校(一条校41校、それ以外39校)で、PYPが41校、MYPが20校、DPが51校、IBCPが0校です(2020年8月時点。複数のプログラムに認定された学校あり。IBCPは2012年から導入されたため、現時点では0校)。文部科学省としては、まず国内に200校のIB認定校を作ることを目標にしています。

※1 一部の科目:かつてのDPでは「経済」「歴史」「生物」「課題論文」「知識の理論」「CAS(創造性・活動・奉仕)」の6科目のみ日本語による教育が認められていたが、文部科学省が日本のIB普及拡大に取り組み、2016年以降は「数学(SH/HL)」「物理」の2科目も日本語による教育が可能となった。

※2 一条校:学校教育法の第一条に定められた学校の総称。つまり「正規の学校」のことで、インターナショナルスクールなどはこれに含まれない。

※IB認定幼稚園の取材記事はこちら
東京都内で唯一の国際バカロレア認定幼稚園~町田こばと幼稚園・神蔵かおる副園長インタビュー~


Q2. 学校が国際バカロレアの認定を受けるための基準について、教えてください。

Q2. 学校が国際バカロレアの認定を受けるための基準について、教えてください。

写真提供:国際バカロレア機構

IBの要件を学校が満たすことで認定が取れる

IBには「理念」「組織」「カリキュラム」という3つの大きな柱があり、この3つの柱に対してそれぞれ100程度の要件があります。

全部で300ほどある要件の一つひとつに対して、学校がどの程度満たしているかを、エビデンスをもって示していくことで、認定が取れる仕組みになっています。

※参照:「プログラムの基準と実践要項」

候補校がIBの要件を満たすための準備期間は、約2年間

たとえば、幼稚園や小学校が対象となるPYPの要件のひとつに、「スケジュールや時間割は、教科の枠をこえた探究学習および教科内での探究学習に深く取り組めるよう設定すること」という要件があります。

この要件に対して、「うちの学校は、こういう風に満たしています」ということを、IBに対して具体的に示さなければなりません。そのための体制を作っていく期間が、「候補校」といわれる期間です。候補校の期間は、おおよそ2年ほどあります。

「これから学校をどうしたいのか?」というポリシーが問われる

認定を得るまでの期間に、「これから学校をどうしたいのか?」「どの方向に向けていきたいのか?」といったポリシーを問われるので、学校としてかなり考えていくことが要求されます。

日本の学校は認定を取得する作業に慣れていないので、沢山ある要件をひとつずつ満たしていく作業は、大変な部分もあるかもしれません。学習指導要領上の授業時数の縛りと、IBの求めている授業時数の縛りを工夫しないと、要件を満たせないという難しさもあるでしょう。

でも、そうしたことを一つひとつクリアしていくことで、学校の理念と教師の理念をひとつにすることができます。


Q3. 国際バカロレア認定校を目指すことで、学校全体がレベルアップできるということですね。

Q3. 国際バカロレア認定校を目指すことで、学校全体がレベルアップできるということですね。

写真提供:国際バカロレア機構

教師全員が学校の理念を理解し、同じ目標に向かっていくことができる

そうですね。IBは「学校が何を目指しているのか?」「その目指すものを実現するために、どんな手段を使っていけば良いのか?」ということを真剣に考えないと、認定がもらえない仕組みになっています。

そのため、IB認定を取ることで教師一人ひとりが学校の理念を理解し、同じ目標に向かって進むことができるようになります。これは学校がIB認定を目指す、大きなメリットといえるでしょう。

たとえば、小学校の黒板に「みんななかよし 強い子よい子」というようなスローガンが書かれていることがありますよね。でも、それを全員の教師が理解して、授業に活かしているかというと、必ずしもそうではないと思います。

それをただのスローガンで終わらせずに、日々の授業や行事・活動の中にしっかりと盛り込んでいけるかどうかが、IBでは問われるのです。

学校が何を目指していて、どんな子供たちを育てたいのか。そのときにどんな授業をするのかを、IBの候補校となっている期間に問い直されることになると思います。教師もまた、教育を根本的なところから考え直す機会になるでしょう。


Q4. 国際バカロレア導入によって、教育にどのような効果をもたらせますか?

Q4. 国際バカロレアを導入によって、教育にどのような効果をもたらせますか?

写真提供:国際バカロレア機構

生徒たちが自らする学習の機会を増やすことができる

今までの日本の授業は、どちらかというと講義型・詰め込み型の授業が多かったと思います。でもIBを導入することによって、生徒たちが自らいろいろなことを探究する学習の機会を、増やすことができます。

机を一列に並べて黙々と授業を受けるのではなくグループを組んで協働学習をしたり、知識を詰め込むのではなく「なぜそうなるのか?」を考えられるような子供たちを育てたりする方向に、転換していけるのではないでしょうか。

知識を覚えるよりも、情報を取捨選択する力を養うことが大切

いま学校では、生徒たちにさまざまな知識を教えていると思います。でも今の時代、知識は覚えなくても、ワンクリックすればインターネットでたくさん出てきますよね。それよりもむしろ大事なのは、クリックして出てきた情報が、どのぐらい自分が欲しい情報なのかといったことを取捨選択する力だと思うのです。

今の子供たちが20年後、30年後に社会で活躍するときには、おそらく社会はかなり変化しているでしょう。今の社会をベースにした教育では、おそらくあまり役に立たないのではいかと思われます。

だから今の教育にとって大切なことは、知識を詰め込んで覚えさせることではなくて、課題を分析して自分なりに解決できる力をつけることではないかと、IBでは考えています。それを可能にするために、学習や協働学習などを進めています。


Q5. が国際バカロレアのディプロマ(卒業証明書)をもつことで得られるメリットを教えてください。

Q5. 学生が国際バカロレアのディプロマ(卒業証明書)をもつことで得られるメリットを教えてください。

写真提供:国際バカロレア機構

国際的に認められた大学入学資格が得られる

主に高校生を対象としたIBのディプロマプログラム(DP/Diploma Programme)を2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)であるディプロマを取得することができます。

日本のすべての大学でも、IBのディプロマをもっていれば高校卒業と同等の扱いになり、大学の受験資格が得られます。

ディプロマの資格を活かして大学入試を行う方法もある

IBのディプロマ資格を活かして大学入試を受ける方法もあり、カナダやオーストラリアでは、IBの点数が大学入試に大きく影響します。

アメリカの場合、大学を受験するにはディプロマの他にSAT(※3)の資格が必要ですが、アイビー・リーグ(※4)に行くような子供たちは、SATはほぼ満点なんですよね。それにディプロマの資格をプラスして受験するような形です。

※3 SAT:アメリカの大学進学希望者を対象とした共通試験のこと。大学進学を希望するアメリカ国内の高校生の多くが受験する。

※4 アイビー・リーグ:アメリカ北東部にある8つの名門私立大学(ハーバード大学、イェール大学、ペンシルバニア大学、プリンストン大学、コロンビア大学、ブラウン大学、ダートマス大学、コーネル大学)の総称。

日本の一部の大学も、ディプロマの資格を活かせる入試を実施

日本の一部の大学でも、ディプロマの資格を活かせる入試を実施しています。

東京大学や京都大学の推薦入試では、ディプロマの資格を数学オリンピックなどの業績と同等に扱ってくれますし、北海道大学や筑波大学、お茶の水女子、東京芸術大学、慶應義塾大学、立命館大学などもIBに門戸を開いてくれています。こういった動きは、これから少しずつ広まってくるでしょう。

ただ、日本の大学はいまだに100人・200人の大教室で授業をしていたりして、海外の大学とはかなり学習環境が違います。IBの教育を経験してきた学生にとって、それはあまり魅力的な学習方法ではないので、学生たちが日本の大学を希望するかどうかはまた別問題です。

2020年の教育改革後の授業を受けた子供たちが成長した頃に、日本の大学もIBの学生たちが望む方向に変わってくれていることを、期待したいですね。

インタビューを終えて

IBの理念や認定基準、IBを導入するメリットなどについて、星野先生にとてもわかりやすく教えていただきました。

単に「知識」を深めるだけでなく、「心」や「思いやり」といった、人を育てる上で最も重要な教育が、IBのプログラムには組み込まれているようです。

また、IBのディプロマをもつことによって、国内外での進学・就職に役立つなど、将来に向けてグローバルに活躍できる可能性も開けるでしょう。

星野先生は現在、玉川大学で教員養成の指導にあたっておられます。IBを普及させるには、IBを熟知した教員を養成することも不可欠であり、今後の星野先生のますますの活躍を期待しております。

星野あゆみ先生

プロフィール:星野 あゆみ(ほしの あゆみ)先生
国際バカロレア機構(IBO)日本担当地域開発マネージャー。玉川大学大学院教育学研究科教授。2007年より国公立初の日本の国際バカロレア(IB)認定である東京学芸大学附属国際中等教育学校にて、IBプログラムのMYPとDPの導入および実施に教員、コーディネータ、副校長として携わった後、2017年4月より現職。現在は玉川大学でIB教員養成関連授業を担当しながら、新たに認定校を目指す学校を支援している。

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