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日本人が国際人になるためには、何が必要? ~東洋英和女学院大学国際社会学部・竹下裕子教授インタビュー~

グローバル化が進む中、海外の人々とスムーズにコミュニケーションがとれる"国際人"としての意識が、いま求められています。

日本人が国際人になるためには、いったい何が必要なのでしょうか?東洋英和女学院大学国際社会学部で、「社会言語学」と「国際コミュニケーション」を専門に研究されている竹下裕子教授に、お話を伺いました。


Q1. 具体的にどのような研究をされているのでしょうか?

Q2. 文化的な背景が違う外国人と日本人がコミュニケーションをとるためには、どのような点に気をつける必要がありますか?

Q3. 日本人が外国人とコミュニケーションをとる上で、最も大切なことを教えてください。

Q4. 異文化コミュニケーションは、幼少期の子供にも必要だと思われますか?

Q5. 竹下先生はお子さんをディズニー英語システムで育てられたそうですが、やはりそのようなお考えがあったからでしょうか?


Q1.具体的にどのような研究をされているのでしょうか?

社会言語学にはさまざまな研究分野がありますが、私は英語の教員でもありますので、英語を使った諸外国とのコミュニケーションに関心をもっております。フィールドとしてはアジアが中心で、特に日本人とタイ人のコミュニケーションについては、かなり長い間データを取りながら研究をしてきました。

現在私が責任者をしている日本アジア英語学会では、アジアのいろいろな国の言語政策や英語教育、英語を使った諸外国とのコミュニケーションといったことを研究テーマにしています。

Q2. 文化的な背景が違う外国人と日本人がコミュニケーションをとるためには、どのような点に気をつける必要がありますか?

Q2. 文化的な背景が違う外国人と日本人がコミュニケーションをとるためには、どのような点に気をつける必要がありますか?

「言わなくてもわかる」日本人、「言わなければわからない」外国人

日本人同士がコミュニケーションをとるときは、当たり前のように日本語を使い、「これはわざわざ言わなくてもわかるよね」「これは当然知っているよね」といった前提のもとに会話をします。

ところが、外国人とコミュニケーションをとるときに、それは通用しません。使用する言語もひとつではなく、自分の気持ちをはっきりと伝えなければ、理解してもらえない場面は数多くあります。
そのため、「言わなくてもわかり合える」ことに慣れている日本人が、背景を共有していないことは「言わなければわからない」人たちとどうコミュニケーションをとるかというのが、実はとても難しいのです。

文化の違いを前提に会話をすることが、スムーズなコミュニケーションにつながる

日本人が外国人とスムーズにコミュニケーションをとるためには、「外国には日本とは違う文化があるのだ」「日本人と違うコミュニケーションスタイルをもっている人たちがいるのだ」ということを前提に、会話をすることが大切です。

「これは当たり前だよね」ではなく、「これは本当に当たり前だろうか?」と立ち止まって考える習慣がつくと、外国人とのコミュニケーションもスムーズにとれるようになると思います。

外国の文化やコミュニケーションについての関心・知識をもつ

ただし、その際に外国の文化やコミュニケーションについて関心と知識をもつことも、とても大切です。外国には日本とは違う歴史や習慣があり、そのことを知らずに交流しようとすると、うまくいかないことがあるからです。

たとえば、タイ人とコミュニケーションをとる場合、可愛いタイ人の子供を見たときに「可愛いわね」と頭をなでたくなりますが、それは絶対にしてはいけません。足の裏を相手に見せることもできません。

タイでは、人の頭には精霊が宿ると考えられていて、身体の中で最も神聖な場所とみなされています。相手が子供であったとしても、むやみに頭に触れることは避けなければなりません。
一方、頭と反対に、足は不浄な場所と考えられているため、他人に足を向けたり、人をまたいだりといった動作は、相手に対して失礼にあたるのです。

それを「なぜなのだろう?」と思い、知ろうとすることが、文化の学びにつながっていきます。

外国の文化は、日本人が簡単に理解できないことも多い

国の文化をよく氷山にたとえることがあるのですが、「どの言を話すのか?」「どういう挨拶をするのか?」といったように、氷山のうち海の上に見えている部分は、旅行者が1~2日滞在しただけでも理解することができます。

ところが氷山の大部分は海の中に隠れていて、外からは見えません。「なぜ子供の頭をなでてはいけないのか?」といったように、簡単に理解できない文化は、時間をかけて勉強をしないとわからないのです。

外国の文化というのは、そう簡単にわかるものではないということを、いつも頭においておかなければいけません。

Q3. 日本人が外国人とコミュニケーションをとる上で、最も大切なことを教えてください。

Q3. 日本人が外国人とコミュニケーションをとる上で、最も大切なことを教えてください。
日本のことを説明できる日本人になることが大切

日本人が国際人になるためには、日本のことを説明できる日本人になることが大切です。
たとえば外国人が日本で何か間違ったことをしたときに、「それはだめですよ」と叱るだけでなく、なぜそれがだめなのかという理由をよくわかっていて、きちんと説明できる言語力をもっていることが大切です。

英語を話せる人同士なら英語で会話をすればいいでしょうし、日本語を話せる外国人と会話をするときは、日本語を使ってもいいでしょう。ただし、そのときに使う日本語は、日本人同士で普通に使う日本語ではなくて、外国人とのコミュニケーションのために使う"やさしい日本語"です。

なぜかというと、日本人同士が話す日本語というのは、外国人にとって必ずしも親切ではないからです。

"やさしい日本語"を使えるようになると、日本語も国際言語になる

たとえば、「水曜日の午前中に予定されていた会議は、金曜日の午後に延期になりました」という言い方は、日本人ならすぐに通じますが、英語に訳すと関係代名詞を使って後ろからかけてくる、非常に複雑な文章になります。

それをやさしい日本語で伝えると、「会議の予定の話です。水曜日の午前中はなくなりました。金曜日の午後に開催します」というような言い方になります。何の話なのかというのを先に言ってあげて、後で必要な内容を続けていくという方法です。

そういう"やさしい日本語"を日本人が使えるようになると、日本語も国際言語になるのではないでしょうか。

Q4. 異文化コミュニケーションは、幼少期の子供にも必要だと思われますか?

Q4. 異文化コミュニケーションは、幼少期の子供にも必要だと思われますか?

ええ。幼少期に異文化や異言語を経験できる機会があれば、積極的に経験させてあげればよいのではないでしょうか。「日本語が完璧でないときに、外国語を学ばせるのはよくない」というご意見もあるのですが、環境の中に自然に異文化を取り入れていくことは、何の弊害にもならないでしょう。

外国人と実際に関わるのが無理なら、音や映像だけでもいいと思います。日本語だって、子供たちにしてみれば全然知らない単語を含んいますし、日本語と同じように英語が聞こえてきても、子供はそれを自然に受け入れるでしょう。「英語が聞こえてきたから、これはお勉強」などとは思いませんからね。

子供が興味をもつような形で異文化・異言語に触れ合う機会を作るのは、非常にいいことだと思います。

Q5. 竹下先生はお子さんをディズニー英語システムで育てられたそうですが、やはりそのようなお考えがあったからでしょうか?

子供が観たがるビデオを一緒に観て、親子で楽しむ

そうですね。生活の中で自然に英語に触れ合う環境を作りたかったので、長男が4歳、次男が2歳のときに、ディズニー英語システム(DWE)を使い始めました。

息子たちはディズニーのアニメが好きでしたので、子供たちの手の届く場所にビデオ教材を置いておいて、息子が「これを観たい」と持ってきたビデオを一緒に観るというような形で、親子で楽しんでいました。お勉強というよりは、遊びのような感じでしたね。

中学生になって、突然DWEで覚えた英語の歌を歌い出す

驚いたのは、長男が中学生になって学校の授業が始まったときに、突然就学前にDWEのビデオで聴い英語の歌を歌い出したことです。そういうこともあるのだと思って、そのときはとても嬉しかったです。

小さい頃はただ親子で楽しんでいるだけでも、大人になったときに「あ!これ、DWEのあそこで言っていたのと同じだ」というように、点と点がいつか線で結ばれるときもくるのですね。

DWEの歌を一緒に歌うことが、親子のコミュニケーションに

現在息子たちは、二人とも仕事のなかで英語を使っています。英語を使う仕事に抵抗なく入っていけたのは、DWEがいい刺激になったのではと思っています。

私自身は働きながら子育てをしていたので、親子で触れ合えるわずかな時間にDWEの歌を一緒に歌うことで、息子たちとコミュニケーションをとることができてよかったです。

インタビューを終えて

言語学に関する深い知識をもちながら、外国人とのコミュニケーションの方法を、とてもわかりやすく説明してくださった竹下先生。息子さんが小さい頃、一緒に英語の歌を歌っていた姿が目に浮かぶような、優しさの滲み出たお人柄が印象的でした。

国際人になるということは、外国の文化やマナーに自分を合わせることではなく、「違いを理解し、認め合うこと」が、最も大切なのですね。


プロフィール:竹下裕子(たけした ゆうこ)先生

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東洋英和女学院大学 国際社会学部国際コミュニケーション学科教授。カリフォルニア大学デイビス校大学院にて教育学専攻。英語および異文化間コミュニケーション関連科目を担当。日本「アジア英語」学会会長・理事長、一般社団法人グローバル・ビジネスコミュニケーション協会理事。主な著書に、『世界は英語をどう使っているか』(編著、新曜社)、『多文化と自文化―国際コミュニケーションの時代』(共編著、森話社)、『スピーチ・プレゼン・ディベートに使える英語表現集』(共著、ナツメ社)、『The Extremely Short Story Competition(ESSC)の魅力』(共著、アルクコミュニケーションズ)、『企業・大学はグローバル人材をどう育てるか ―国際コミュニケーションマネジメントのすすめ』(共編著、アスク出版)、『世界の英語・私の英語― 多文化共生社会をめざして』(共編著、桐原書店)、『新アジア英語辞典』(共編著、三修社)、『広がり続ける英語の世界』(編著、アスク出版)などがある。

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