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小1の英語授業は週9回。クリル(CLIL)を取り入れたユニークな教育を行う~東京三育小学校・平田理校長先生、英語担当の根本愛子先生にインタビュー~

東京都練馬区にある東京三育小学校では、1919年の開校以来100年以上にわたって、英語教育に力を入れています。全学年で毎日英語の授業を行い、2~6年生は週5回、1年生に関しては週9回も授業があるそうです。

また、CLIL(※)を取り入れたユニークな英語教育も行っているとのこと。一体どのような英語授業なのか、平田理校長先生と、英語担当の根本愛子先生にインタビューしました。

※CLIL:Content and Language Integrated Learning(内容言語統合型学習)の略語。社会や理科など教科の学習と、外国語の学習を組み合わせた言語習得法のことで、「英語を学ぶ」のではなく、「英語で学ぶ」教育法として注目されている。


Q1.英語授業に力を入れる理由について教えてください。

Q2.英語授業は全学年で毎日行っているそうですね。

Q3.CLILを取り入れたユニークな教育を行っているそうですが?

Q4.1回の授業を20分に区切っているのは、意味があるのですか?

Q5.1年生の英語の授業数が9回と、他の学年に比べて多い理由は何ですか?

Q6.1学年1クラスとのことですが、少人数教育に徹しているのですか?

Q7.校長先生の英語教育に対する思いを教えてください。



Q1.英語授業に力を入れる理由について教えてください。

Q1.英語授業に力を入れる理由について教えてください。

平田校長:英語授業というと、「英語=勉強」というイメージがある方もいるかもしれませんが、本校は宣教師が設立した小学校ですので、「英語=聖書」という考え方が根本にあります。テキストありきではなく、文化ありきの授業として、英語の学びがスタートしました。

三育小学校の「三育」という名称は、霊性教育・身体教育・知性教育の3つが、バランスよく育つようにという意味があります。全人教育を理念とし、多文化の融合を目指しておりますので、そのためには英語が必要だということで、100年以上にわたって英語教育に力を入れています。

生徒が世界共通の言語である英語を使うことができれば、より多くの人に奉仕をし、お助けすることができます。そのための技術や知識を習得するという意味で、英語の授業があります。


Q2.英語授業は全学年で毎日行っているそうですね。

根本先生:1回20分の授業を、1年生は週9回、2年生から6年生までは週5回行っています。低学年は歌やアクティビティをふんだんに取り入れ、「聞く」「話す」能力を中心に育てます。高学年になると「読みたい」「書きたい」という欲求が生まれてくるので、フォニックス(※)取り入れてアルファベットを学ぶなど、各学年の発達段階に合わせてオリジナルのプログラムを組んでいます。

授業のやり方はさまざまで、たとえばアクティビティとしては、ハエタタキを使ったゲームを行うこともあります。ボードにアルファベットのカードを貼って、クラスの生徒を2つのグループに分け、私が発音する音を聞いて、その音のアルファベットをハエタタキで叩くというゲームです。

平田校長:子供は先生の話をじっと聞いているよりも、スピーディに時間が流れる方が好きですよね。パッパッとリズミカルに場面が切り替わっていくと、子供たちも楽しいので、そういう取り組みは英語の授業に沢山取り入れています。

聖書の言葉を覚えるときでも、子供たちはブツブツと切れた単語をひとつずつ覚えるのではなく、なだらかにつながる音の山で捉え、フレーズごとに自然に覚えていきます。

聖書の言葉や讃美歌には、通常小学生レベルでは扱わない単語や語法が含まれているのですが、卒業生が中学・高校に進学して英語授業を受けたときに、「あ、これは暗唱した聖句に出てきたから知っている!」と思うことがあるようです。

※フォニックス:英語圏の子供たちが英語を学ぶときに活用する学習法。英語の綴りと発音との間にある法則を、歌や映像などを通して学ぶ。


Q3.CLILを取り入れたユニークな教育を行っているそうですが?

Q3.CLILを取り入れたユニークな教育を行っているそうですが?

根本先生:本校がCLILを取り入れたというよりは、本校で以前からやっていた授業の方法が、実はCLILだったというのが、実際のところです。もともと聖書を教えること自体がCLILなのですが、それ以外にも英語授業の中に、他の教科の内容を少しずつ取り入れています。

たとえば動物の名前を英語で覚えたり、動物が哺乳類であることを英語で学んだりといった形です。他にも楽器の名前や、食べ物の種類、数の読み方など、さまざまな教科に関連した英語授業を行っています。

平田校長:CLILと言っても、けっして特別なことをしているわけではなく、英語で別の教科の知識を少しずつ学ぶという形です。すべての教科の内容が英語授業の対象ですから、他の教科を外して考えることはできないでしょう。


Q4.1回の授業を20分に区切っているのは、意味があるのですか?

平田校長:20分というのは、子供たちの集中力の限界だと思っています。本校の英語教師は、「1年生だからゆっくり話す」ことはしていません。自分の子供に話しかけるように、速いスピードで容赦なく語りかけます。

その授業に、子供たちは「スーッ」と巻き込まれていき、20分集中して授業を受けています。終わったときは「ハーッ」という感じなので、それ以上やると生徒の集中力がもちません。

もし授業時間が40分あったとしたら、ついだらけてしまうこともあるでしょうが、20分という時間は実に濃密です。そうやって毎日少しずつ、生徒の体の中に英語を染み込ませていくというのが、本校のやり方です。

ラジオ体操も、毎日続けていると、音楽が鳴り出したとたんに体が自然と動くようになりますよね。英語の授業もそれと同じで、英語の先生が毎日教室に入る瞬間から、子供たちの英語のエンジンが回り始めるのです。この"毎日"というのが、実は英語教育にとってはとても大切なことです。


Q5.1年生の英語の授業数が9回と、他の学年に比べて多い理由は何ですか?

Q5.1年生の英語の授業数が9回と、他の学年に比べて多い理由は何ですか?

根本先生:1年生の9回ある授業のうち、5回は他の学年と同じ授業の流れで、あとの4回は英語の発音をチェックする時間にあてています。生徒一人ひとりの発音を確認することで、1年生のうちにネイティブな発音の基礎を作っておこうというものです。

実はこの時間は、他の学年の生徒が掃除をしている時間なのです。1年生が全員掃除に加わると人数が余ってしまうので、「それなら1年生をいくつかのグループに分けて、一人ひとりの発音をチェックする時間にあてては?」ということになり、始めました。

ところが実際にやってみると、思った以上の効果が出ているようです。本校を見学される方々が「こちらの生徒さんは、英語の発音が流暢なお子さんが多いですね」と言ってくださるので、一定の成果は出ているのかなと思います。


Q6.1学年1クラスとのことですが、少人数教育に徹しているのですか?

平田校長:本校は1学年1クラス(およそ27名)で、全校生徒164名の小規模校なのですが、人数を増やさないのは、お互いのパーソナリティを理解するのにそれがギリギリの人数と考えているからです。

とりわけ言語習得に関しては、少人数のメリットがとても大きいですね。一人ひとりの発言の機会が多いので、細かく定着を確認できますし、全体の習熟度も高まります。生徒と教員の距離が近いので、聞き取り・アクションなどの相互間の反応も早いです。

英語教師は根本の他に、ネイティブの教師が1名いますが、2人とも生徒全員のパーソナリティを理解しています。たとえば「〇〇君は野球は得意だけれど、音楽は苦手」「〇〇さんは優しい性格だけれど、ちょっと気分屋」といったように、一人ひとりの生徒のことを把握しています。

その上で英語の授業を行い、生徒に効果的に発言の機会を与えながら、さまざまな工夫を凝らした授業を行っています。教師も生徒も、お互いをよく理解しているということが、英語を学ぶにあたってとても重要なことではないかと思っています。


Q7.校長先生の英語教育に対する思いを教えてください。

Q7.校長先生の英語教育に対する思いを教えてください。

平田校長:本校は豊かな心と健やかな体、高い知性をバランス良く伸ばすことに重きをおいて、教育を行っています。神様から与えられた命は、もともとバランス良く作られているはずなので、本来の姿に戻してあげることが大切だと考えています。

英語教育も同じで、私共にとって英語というのは、受検に合格するためのツールではありません。子供たちが大人になったときに、一人でも多くの人を理解し、奉仕できる人になるためには、英語が必要だということです。

本校の100年の歴史の中には、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の医学部教授や、スイスに本部のある国際看護師協会のスタッフなど、何らかの形で英語を活かした道に進んだ卒業生も多数います。「英語を使って人々に奉仕したい」という気持ちが、進路へとつながったのではないでしょうか。

もちろん英語を流暢に話せたり、英文を自在にこなせる能力があることは、素晴らしいことだと思います。でも、けっしてその力に溺れることなく、英語力を使って人をお助けできるような人間に育ってほしいですね。それが結局は、私たちに与えられた命を大切にすることに、つながるのではないかと思います

インタビューを終えて

英語教育に力を入れている小学校ということで、「どのような教え方をしているのか?」という"HOW"の部分に興味をもって伺いましたが、実は「何のために学ぶのか?」という"WHY"の部分が最も大切なのだということを、つくづく感じさせられました。

同校はまた、生徒に英語を教えるだけでなく、保護者が英語を勉強するための機会も積極的に設けています。たとえば聖書を原文で読む会や、讃美歌を英語で歌う会、絵本を英語で読む会などを、保護者を集めて定期的に開催しています。形だけの勉強会ではなく、教師と保護者が真剣に向き合って、英語を学んでいるそうです。

英語の読み聞かせを学んだお母様が、食時に教室子供たちに絵本の読み聞かせをすることもあるとか。「親が自ら英語を楽しむことが、英語好きの子供を育てることにつながる」とのことでした。英語の好きな子供を育てるには、やはり親子で一緒に楽しむことが、とても大切なのですね。


平田理校長先生(写真 左)、根本愛子先生(写真 右)

プロフィール:
平田 理(ひらた まこと)校長(写真 左)
米国・西ミシガン大学を経て、アンドリュース大学(ミシガン州)大学院教育学(MA)修了。系列中学校・高等学校の教頭・校長を経て、2015年より現職。

根本 愛子(ねもと あいこ)先生(写真 右)
神戸女学院大学文学部英文科言語学専攻を卒業後、米国・ラシエラ大学ESL教授法専攻を卒業し、英国・チチェスター大学MA TESOL修了。本校英語講師として20年の経験をもつ。

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