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英語教育に関するニュース

おもてなしって何だろう? 外国から来た人たちと心を通わせるコツは?

近年、世界中からたくさんの人たちが日本にやってくるようになりました。日本への関心はますます高まり、日本にいながらさまざまな国の人と出会う機会は、これからもどんどん増えていきます。
そういった環境の中で、子供たちは何を学べるのでしょうか。どのように外国から来た人たちと心を通わせればいいのでしょうか。
長年日本の大学で教鞭をとり、『リサ・ヴォートのおもてなし英会話』の著書があるリサ・ヴォート先生に伺いました。


Q1.日本にいても外国の方と接する機会が増えました。現在の環境が、子供たちに与えるメリットは何でしょうか?

Q2.外国の方には、どんなふうに話しかけたらいいでしょうか?

Q3.日本人のおもてなしは、海外からも注目されています。どんなところがいいのでしょうか?

Q4.これから英語を学ぶ子供たち、その親御さんたちに、メッセージをお願いします。



Q1.日本にいても外国の方と接する機会が増えました。現在の環境が、子供たちに与えるメリットは何でしょうか?

Q1.日本にいても外国の方と接する機会が増えました。現在の環境が、子供たちに与えるメリットは何でしょうか?

日本の価値観にはないものをプラスしていく

外国文化に触れることで、"or"ではなく"and"の思考になれたらいいですね。日本に暮らす子供が日本の価値観で生きるのは当然ですが、そこに、異文化の価値観もプラスしていけたら、すばらしいです。

たとえて言うなら、"変幻自在なカメレオン"ですね。カメレオンは、周りに合わせて色を変えるのであまりいい例に思わない人もいるかもしれませんが、私がイメージするのは、自分の中にいろんな価値観をもっている、ふところの大きな人です。

賢いカメレオンになる

状況に応じていろんな価値観を出し入れできる子、いろんな自分を打ち出せる子こそ、社会で活躍できる人になれるのではないでしょうか。

医学部の学生に英語を教えていたときのことです。茶髪にピアスでまさに自由奔放な今どきの学生が、実習で医療現場に行き始めたとたん、髪を真っ黒に染め直し、見なりをガラリと変えました。患者さんの中にはご高齢の方もたくさんいるから、あんまり非常識な身なりだと相手を不安にさせてしまうから・・・と。

たとえば、違う価値観の人への配慮からくるこういった感覚も、生きていく上でとても大事です。それは、異なる価値観をもつ外国の方々と接するときにも、活きてくると思います。

親の先入観を押しつけない

小さなお子さんをおもちの親御さんに伝えたいのは、"Don't judge!"(先入観で決めつけないで!)ということ。見たこともないこと、聞いたこともないことに子供が触れるとき、親の先入観でついつい「ダメ!」「危ない!」と言ってしまうこともあります。

たとえば、極端な例かもしれませんが、欧米諸国ではタトゥーをしている人がたくさんいますが、そういう人たちが必ずしも危険人物というわけではありません。子供がそういう人に近づいたら「危険!」「ダメ!」と叫びたくなるときもあるかもしれませんが、未知のものに対して「わあ、何だろう?」と、素直に好奇心をよせるのは、とても素敵な感覚だと思います。そういう好奇心の芽を、親の先入観でつぶさないようにしてほしいですね。


Q2.外国の方には、どんなふうに話しかけたらいいでしょうか?

Q2.外国の方には、どんなふうに話しかけたらいいでしょうか?

まずは日本語で話しかけてみる

私は見た目がこの通りですから、まさか日本語ができるとは思わずに、英語で話しかけられた経験は数えきれないほどあります。
でもね、外国人だからといって、必ず英語を話すわけではありません。私のように、日本に長く住んでいる外国人で日本語を話す人もたくさんいますから!もしかしたら、非英語圏の国から来ている人もいるかもしれませんしね。
だから、もし話しかけるのなら、ここは日本なのだからまず日本語で話しかけてみるのがいいと思います。

でも、もしかしたら急いでいるかもしれないし、いきなり話しかけられたらびっくりするかもしれませんね。だから相手をよく見て、話しかけていいタイミングかどうかは気をつけたいものです。それは見ず知らずの日本人に話しかけるときと同じ、最低限のマナーです。

話しかけられた側の率直な気持ちですが、小さなお子さんが自分に興味をもって声をかけてきてくれたとしたら、まず、その「勇気」を、何よりもすばらしいと感じます。

先入観を抜きにして、興味をもった人(物)に自分からアプローチできる子は、社会人になっても、きっと受け身ではなく能動的に周囲とかかわり、力を発揮できるはずです。

さきほど「親の先入観をおしつけない」という話をしましたが、親がふだんから「知らないものには近づくな!」ではなく「知らないものは面白い!」という姿勢だと、子供のわくわくする心も育まれていくのではないでしょうか。

耳が2つ、口が1つ

一生懸命相手の話を聞くことがすごく大事ですね。話しかけたけど、相手に耳を傾けなかったら、それは会話じゃないです。自分が話しただけで満足しないこと!

英語には"You have two ears and one mouth."(人には耳が2つ、口が1つある)という言葉があります。話す以上に、聞くことが大事ということです。

言葉がダメならジェスチャーで十分!

どうしてもわからない、伝わらないとなったら、言葉だけに頼るのはやめましょう!ジェスチャーでも十分です。言葉で道案内できなかったら"Follow me!"(私についてきて!)と手招きして、目的地まで連れて行けばいいんです。

相手はきっと一生、あなたのことを忘れないはずですよ。そして、そういう状況を心からエンジョイしてほしいです。

言葉以上に大事なこと

「外国人だから、英語で話してみよう」という感覚で話しかけられた経験もたくさんあります。でも、そういうときは、"I'm a human being, not a robot for you to practice English!"(私は人間、英語学習ロボットじゃないですよ!)と、ちょっぴり哀しい気持ちになってしまいます。

「英語を話してみたい!」という気持ちはとてもよいと思うのですが、ただ英会話の練習台として必要とされているだけで、私という人間には興味がないのに話しかけられていると感じるときがあります。

やはり"I like you."(あなたが好き)、"I'm interested in you."(あなたに興味があります)という好意的な気持ちで交流できると心が通じあえるように思います。


Q3.日本人のおもてなしは、海外からも注目されています。どんなところがいいのでしょうか?

Q3.日本人のおもてなしは、海外からも注目されています。どんなところがいいのでしょうか?

先読みをするのが日本流、プライバシーを尊重するのが欧米流

「温かいものと冷たいものを別の袋に入れますか?」とたずねたり、雨の日に紙袋にビニール袋をかけて荷物が濡れないようにしたり、相手の求めていることを先回りして考えて心をつくすのは、日本人らしいおもてなしですね。

でも、欧米の場合は、客の自由やプライバシーを尊重したいがため、あえて放っておくのがよしとされる場合もあります。

どちらがいい悪いではなく、それも価値観の違いなんです。
日本の旅館に泊まると、その日の夕食のお品書きが決まっていて、選択の余地があまりないということがありますね。欧米人にとっては「選べないのか・・・」と、ちょっと戸惑うかもしれません

究極のおもてなしは、"personal touch"

「見返りはいらないから、相手のために心から何かをしてあげたい」という想いこそがおもてなしだと私は思います。getではなくgiveの精神ですね。

たとえば、海外旅行の例ですが、有名な観光名所をたずねた経験や、道に迷って困ったときに現地の人に助けてもらったり、たどたどしい言葉でコミュニケーションをとって事なきを得たという経験があります。あとで振り返ると、より鮮明にその国のことを感じられるのは、後者のほうです。

日本を訪れた外国人も、自分と何かしらの接点をもってくれた日本人のことを、より心に刻んで帰国するはずです。ちょっとした"personal touch"(個人的な触れ合い)が何よりも嬉しいんです。

発音のコンプレックスや伝わらないかもしれないという不安から、「話しかけようか、どうしようか」と迷って結局何もできないままになってしまう人も少なくないようです。

でも、どうしようか迷ったら"Just do it!"(話しかけて!)と私は言いたいです。"No one helped me!"(誰も助けてくれない!)より、"Many people approached me!"(みんなが気にかけてくれる!)のほうが、間違いなくいいのですから。

そして、笑顔を忘れないで!笑顔こそ"universal language"(世界共通語)です。


Q4.これから英語を学ぶ子供たち、その親御さんたちへ、メッセージをお願いします。

Q4.これから英語を学ぶ子供たち、その親御さんたちへ、メッセージをお願いします。

近所の外国人と友達になろう

長年大学で教えていますが、日本で勉強している留学生には、日本人の友達がいないというケースがとても多いんです。少しでも海外経験や留学経験のある日本人の学生なら、留学生という立場に共感して興味を抱くのですが、日本人の学生は忙しい上に、身近なところで異文化に触れたいとあまり思わないようなんですね。

留学生たちは、日本に興味があり、日本が好きだから日本に来ているんです。コンビニやファミレスで働いている留学生たちは、10年後、20年後には、その国の社会を担うリーダーになる可能性だってあります。役所に行けば外国人と交流する場の情報も得られるし、まずは身近なところで、外国の人たちや異文化とつながるチャンスをつかんでください。

"Help Japan."の気持ちを忘れない

日本人が"Help Japan."(自分の国を助ける)という気持ちで国内を見つめることも忘れないでいただきたい、とても大切なことだと思います。異文化交流とか外国人へのおもてなしと言うと、外へ(海外へ)と目を向けがちです。ホームステイする、短期留学をする、発展途上国の援助をする、そういうことももちろん大事です。

でも、外国に行かなくても、日本には既にたくさんの外国人が生活しています。近所でいくらでも、そういう人たちとつながることができるんです。

少し話がそれるかもしれませんが、日本の子供の貧困率の深刻さも、たびたびニュースになります。"help"(助け)を必要としている人たちが自分たちの身近なところにたくさんいるということを忘れないでほしいです。

"Do the right thing."(いつでもどこでも正しいことをする)

おもてなしの心につながりますが、相手に"I love Japan!"と言われるようになるには、まずは"You need to love Japan!"ですね。自分が日本を好きにならないと!

そのために何をしたらいいか・・・?
たとえば、公衆トイレに入ったとき、使っていたトイレットペーパーが切れてしまったとします。そんなときに、あなたは次の人のために予備のトイレットペーパーを補充できるでしょうか?

誰も見ていないときに誰かが困ることを想像して何をするか、何ができるか。それが、その人の「人格」につながるように思います。
誰も見ていなくても、誰かのために役立つことができるかどうか、そういう人間になれるかどうか。誰も見ていなくても行動できることこそが、本当の"love"(愛)であるように感じています。

自分のした小さな行いで、その場が少しよくなります。そうしたら、あなたがそこに存在した理由になります。そうすると、少しずつ、自分の周辺を愛せるようになり、自分に自信がもてるようになります。

自分に自信がもてる人は魅力的ですよね。やましいことがないので、いつも正しいことをしている人たちは堂々としています。
そういう人たちがたくさんいる国は、いいですね。

いろんな国の人たちと心を通わせ合うコツは、まずは自分の国を心から大事にすることだと思うのです。日本にいながらできることはたくさんあります。まずは、お子さんと一緒に、自分たちの足元をしっかり見て、日本にいながらできることに目を向けてほしいです。
そして、日本の子供たちが"世界で活躍できるビッグなカメレオン"に成長してくれたら嬉しいですね。

取材を終えて

リサ先生が教えてくれましたが、英語には"agree to disagree"(意見が合わないことを認める)という言葉があるそうです。日本人は誰かと違う意見を言うのを嫌がりますが、「みんな違ってあたりまえ」と思うことができれば、恐れや不安もなくなります。お子さんと一緒に、今の生活環境の中にどんな異文化があるか、まずはそこに目を向けてみてはどうでしょうか。"diversity"(多様性)を受け入れられる心の大きなカメレオンは、世界のどこでも活躍できるはずです。お子さんのそんな成長を支えられたらいいですね。


リサ・ヴォート先生

プロフィール:リサ・ヴォート

米国・ワシントン州生まれ。メリーランド州立大学にて「A.A.日本研究」「B.S.経営学」を、テンプル大学大学院にて「TESOL修士」を修める。現在、明治大学特任教授・青山学院大学非常勤講師。専攻は英語教育、応用言語学。これまでに世界の6大陸60ヶ国以上を旅し、フォトグラファーとしても活動を続ける。

日本テレビ『世界一受けたい授業』の英語授業の出演、NHK、放送大学のTV・ラジオ英語講座の講師をはじめ、企業や一般を対象に「異文化コミュニケーション」のワークショップや講演・翻訳など、異文化コミュニケーターとして幅広く活躍。

著書に『リサ・ヴォートのおもてなし英会話』『メモで身につく日常英語』(実業之日本社)、『「英語で案内」ができる本』(大和書房)、『神速リスニング』(DHC)など、写真集に『White Gift(ホワイト ギフト)』(木耳社)、『北極シロクマ 南極ペンギン[新装版]』(合同会社メディアイランド)などがある。

現在、静岡県伊東市伊豆高原に拠点を置き、風・光・水・土の自然の恵みの実感とともに生きる生活様式を研究中。日々、感謝とともに原稿に向かいつつ、海と山に囲まれて落ち葉からの堆肥作りで自然農法の畑を営む。

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