ディズニー英語システム TOP > 乳児・幼児からの英語 > 英語教育に関するニュース > 英語を学ぶではなく、英語で学ぶ!久米川東小学校のクリル学習の授業を取材!

英語教育に関するニュース

久米川東小01

東京郊外の東村山市にある久米川東小学校は、のどかな田園地帯にたたずむ公立小学校です。門を入るとすぐに樹齢300年のけやきの木が出迎えてくれます。この自然豊かな学校では、「いきいきとコミュニケーションを図ろうとする児童の育成」という研究主題を掲げ、英語教育に力を入れています。

平成29年~平成30年の2年間、「東村山市教育委員会研究奨励校」として「すすんで表現する児童の育成」をテーマに、外国語及び外国語活動において、新たな授業作りに取り組んできた久米川東小学校。
さらに令和元年度からは「研究開発学校」(※1)の1つに選定され、今後4年間かけて、クリル学習(※2)(教科横断型授業)を進めていくことになりました。

クリル学習をふまえた2年生の英語の授業を取材しました。

※1 文部科学省で、新しい教育課程(カリキュラム)や指導方法を開発するため、学習指導要領等の国の基準によらない教育課程の編成・実施を認める「研究開発学校制度」を実施しており、令和元年度には新規・延長指定校として33校を決定している。
※2 Content and Language Integrated Learning(内容言語統合型学習)の略。理科や社会などの科目(内容)や時事問題などと、言語(主に英語)の両方を学ぶ教育法。中身のある内容により学習のモチベーションが高まり、記憶定着もよく、より深い学びが実現できるとされている。

この日の授業内容、授業目標

授業内容「世界の国の天気を英語でリポートしよう」

関連教材
学級活動「世界の人々と仲良くしよう」(オリンピック・パラリンピック教育学習読本)

授業目標 
•国や天気を英語で伝え合う活動を通じて、すすんで友だちと関わろうとする。
•天気や国名の言い方や、天気をたずねたり答えたりする表現に慣れ親しむ。
•国や地域によって天気が異なることや、天気や国名の言い方から英語の音の特徴に気づく。

言語材料
◎今日の授業で学ぶ表現 
A:How is the weather?
B:It's 〜(天気の表現). This is 〜(名前・国名).
◎語彙
天気、国名を表す語句

授業の冒頭から、いきいきと英語で反応する子供たち

チャイムが鳴り日直があいさつをした瞬間から、"Hello!"のかけ声で授業を始めた先生にしっかりみんなの注目が集まります。
授業を進める野澤直貴先生は、黒板に貼った国の絵(America、China、Brazil、Italy、Australia、India、Egypt)と、さまざまな天気(sunny、cloudy、rainy、windy、stormy、snowy、foggy)を、リズムにのって子供と一緒にどんどん読み上げていきます。

This is Japan. How is the weather? It's sunny.
This is India. How is the weather? It's cloudy.
This is Italy. How is the weather? It's snowy.
This is Brazil. How is the weather? It's sunny.

子供たちは、とても大きく元気な声を出し、英語のイントネーションも実に自然です。日本の国旗のところで、"Mt.Fuji!"と声を上げる子もいて、みんな絵の内容にもしっかり集中しています。"It's stormy."というフレーズが出てくると、野澤先生は、「わ〜!」とくるくる回って、おどけてみたりして子供たちを笑わせます。

みんなでリポーターに挑戦!

この日の授業目標は「世界の国の天気を英語でリポートしよう」です。
「リポ―トって何だかわかる?」と子供たちに問いかける野澤先生。
先生がリポーターになりきった手作りの映像を見せて、「リポートって、伝えることだよ」「みんなもこのリポーターと同じことをするよ」と、今日の授業目標を再確認します。

<映像で流れた文章>
Hello. This is Naoki. This is Japan. It's raining. Bye!

子供たちはこの英語表現を、今日の授業で学びます。
野澤先生は、今までの英語の授業でやってきた以下の4点を、子供たちに再確認します。

・Big voice(大きな声)
・Eye contact(アイコンタクト)
・Smile(笑顔)
・Try(挑戦)

役割を決めて、練習スタート

手拍子のリズムにのって、今日の英語表現に慣れてきた子供たち。そのタイミングで、窓側と廊下側のグループに分かれて、「天気を伝える人(リポーター役)」「天気をたずねる人」になりきって、先生の合図にしたがって、クラス全員で練習を始めます。

さらに、4人1組の班に分かれて、前の列に座る子供たちがリポーター役、後ろの列に座る子供たちが「聞きとりシート」に書き込む役になり、練習していきます。

リポーター役は、自分たちの国と、その国の天気を相談して決めます。あらかじめ答えが決まっているわけではないので、子供たちは「国」と「天気」とを関連づけて、考えないといけません。
「ブラジルだから、sunnyかな?」「砂漠は雨、降らないよね?」といった声も聞こえてきたりします。友だちといろいろ相談している様子です。一方で、じゃんけんで決めるグループもあったりと、決める過程がさまざまなのが面白いです。

「聞きとりシート」には、それぞれの国名の欄に天気が記載されており、該当する天気のイラストに○印をつけます。
また先生からは、気分が盛り上がるように、手作りのマイクと、国名(国旗)が貼付されたテレビの枠も渡されました。

久米川東小02

大きな声と笑顔が印象的

グループでアクティヴィティーに取り組む年齢として、小学2年生くらいはまだちょっと早いかもしれませんが、子供たちはみんな、とても積極的に英語を話しています。
参観に来ていた校長先生も参加すると、ますますテンションが上がり、先生と一緒にテレビの枠にぐいっと顔を突っ込んで"This is Japan!"とおどけて言ったりする子もいれば、はにかみ笑いでマイクを手にする子もいます。

そして最後に先生が、"I'm looking for a better reporter!"(いいリポーターはいないかな?)と呼びかけて、2組(2人で1組)の子供たちを選び、みんなの前で発表をしてもらいました。

発表者の子供たち:Hello. This is Kanta. This is Misaki. This is Brazil.
聞いている子供たち:How is the weather?
発表者の子供たち:It's sunny.(声を合わせて)Bye!

「このリポーターたちのどういうところがよかった?」と、野澤先生がたずねると、「声が大きかった!」「笑顔が素敵だった!」「ちゃんと目を見ていた!」「発音がよかった!」と子供たちから次々に感想が飛び出しました。英語を発表するときの大事な約束事「B(大きな声)E(アイコンタクト)S(笑顔)T(挑戦)」を、子供たちもしっかり理解していることがうかがえます。

そして、発表者の子供たちに、"Kanta, Misaki, good job!"の言葉をかけて、しめくくります。

こうして、リポーター役と「聞きとりシート」に書き込む役を入れ替えて、もう一度、このアクティヴィティーを繰り返します。

久米川東小03

授業の最後はふりかえりの時間

「聞きとりシート」の裏面には、「ふりかえりシート」があります。
アクティヴィティーを終えると、

① えいごでたずねたり、こたえたりすることができましたか。
② いろいろなともだちと、えいごをつかってやりとりができましたか。
③ ともだちのよいところを見つけましたか。
④ じぶんやともだちのよかったところを書きましょう。

などの質問にこたえていきます。
「○○ちゃんの声がよかった」「ゆっくり話していた」など、個々に感想を言う子供たちもいました。

先生たちの反省会

子供たちの積極的な授業態度にとても好意的な意見が多くありました。とくに手作りの教材(絵本)に関して「国名の背景に、時間(時差)や天候(地理的な情報)が盛り込まれていて、他教科との関連性があり、今後いろんな教科の授業でも再活用できそう」という意見が寄せられました。

その他の感想については、〈よい点〉〈改善点〉で下記のようなコメントがありました。
〈よい点〉
①友だちのよさを見つけていた
②チャンツ(※)を単語からセンテンスへと変えていた
③ペアで助け合っていた
④1年間の積み重ねがあったので、2年生でも力が発揮されていた

〈改善点〉
① 映像でアクティヴィティーのやり方を見せるより、授業者が1回実演したほうがいいのでは?
② アクティヴィティーのとき、机の配置をもっと点在させたらよかったのでは?
③ 最後の発表は全員にさせたらいいのでは? 

※チャンツ:英語の文章を一定のリズムにのせて、声に出したり歌ったりするもの。リズミカルに口ずさむことで、話し言葉のリズムを効果的に習得できるとされており、児童向けの英語教育で取り入れられている。

久米川東小04

玉川大学大学院教育学研究科教授の佐藤久美子先生のコメント

最後に、同校の英語実践研究を指導している玉川大学佐藤久美子教授に、授業を総括していただきました。
2年生で、これだけできるのはすごいことです。今日の授業なら5、6年生レベルですね。とくに手作り絵本の教材がすばらしかったです。絵もかわいいですし、時間や時差などとの関連性を示唆する情報が盛り込まれていたので、高学年でも使えます。
国名と天気を決めるときに、子供たちがしっかりアクティブラーニング(※)をしていましたね。「砂漠だから雨は降らないかな?」とか、自分たちで考えていることがすばらしいと思います。この絵の内容から発展させて、各国の料理や食材にも触れられたら、異文化がどんどん学べて、クリル学習も深められます。
授業は、"Hello, class! How are you? Let's start our English class."で始まり、最後に、"That's all for today. Thank you, Mr. Nozawa."で終えられたら理想的ですね。

※アクティブラーニング:生徒が受け身ではなく、自ら能動的に学びに向かうよう設計された教授・学習法のこと

取材を終えて

小学2年生くらいだと、英語に対して消極的だったり、警戒心があるのではないかと想像していましたが、誰も恥ずかしがることなく、堂々ときれいな発音で英語を話していたのが驚きでした。
「『英語を学ぶ』ではなく、『英語で学ぶ』にこだわりたい」とおっしゃっていた校長の桑名淳先生。
久米川東小学校では、令和2年度から、年間35時間のクリル学習と、それに関わる20時間のショートのクリル学習(帯の学習)を考えており、合計55時間をクリル学習にあてていくのだそうです。
今の2年生たちの英語の学びが、今後どのように他教科とつながり、広がっていくのか、とても楽しみです。

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