ディズニー英語システム TOP > 乳児・幼児からの英語 > 英語教育に関するニュース > 素直な好奇心がマルチリンガルへの道に通じていた~大東文化大学・山口 謠司准教授インタビュー~

英語教育に関するニュース

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文献学や書誌学を専門とする大東文化大学・山口 謠司准教授は、『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』『心とカラダを整える おとなのための1分音読』などのベストセラーの著者としても有名です。

実は山口先生はマルチリンガルで、英語はもちろんのこと、フランス語、中国語、ドイツ語、サンスクリット語、古代ギリシャ語などの多言語に通じています。先生がこれだけ多岐にわたる言語を身につけられたのはなぜなのでしょうか?

山口先生がどのように外国語と出会い、学んできたのか伺いながら、言葉を通じて世界を広げていく方法を探ります。


Q1.外国語を学び始めたきっかけは何ですか?

Q2.アメリカンスクールには、すんなりと馴染めましたか?

Q3.たくさんの言語を身につけるモチベーションはどのようにして生まれたのでしょうか?

Q4.英語の習得における、ブレイクスルーのような瞬間はありましたか?

Q5.日本の子供たちが英語を学習する方法を教えてください。

Q6.著書の中で音読のメリットについて書かれていますが、小さな子供の音読に向いた教材はありますか?

Q7.子供の英語教育に取り組む保護者の方へのメッセージをお願いします。



Q1. 外国語を学び始めたきっかけは何ですか?

小学校4年生から佐世保のアメリカンスクールに

僕は長崎県の佐世保市出身なのですが、実家が謡()をやっている家でした。そのため、小さい頃から歌の稽古はもちろんのこと、書や絵や和歌など、いろんなことをさせられました。いやいややらされていることもたくさんあったんですが、絵を描くことは大好きでした。
ただ、僕は絵を描くことが大好きすぎて、いつでもどこでも、小学校の授業中まで、落書きばかりしていました。
そうしたら、親が小学校に呼び出され「勉強もしないで絵ばかり描いて、どんな教育をしているんですか?」と問いつめられてしまったんです。
そのことがきっかけで、佐世保のアメリカンスクールに6年間通うことになりました。
このアメリカンスクールでたっぷり英語にふれていくことになります。

※謡(うたい):
能の声楽(言葉・台詞)にあたる部分のこと。また、それのみを謡うこともいう。

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Q2.アメリカンスクールには、すんなりと馴染めましたか?

英語を学ぶというより、楽しく遊んだ毎日

当時の佐世保のアメリカンスクールは、幼稚園から中学生まで様々な年齢の子供が12~13人くらいしかませんでした。
日本の公立小学校から編入していきなりオールイングリッシュの授業になりましたけれど、遊びながら自然と英語に慣れ親しんだので、言葉で苦労したということはありませんでした。
アメリカンスクールの先生は、僕が落書きしても何にも言いませんでした。壁に落書きをしたときも、塗り直せばればいいという感じでしたから、日本の学校に比べたらはるかに大らかです。
算数の授業では拾ってきた葉っぱを数えたり、本当にのんびりしていましたね。
アメリカンスクールに通っていた頃は、FEN(※)の放送で英語を毎日聞いていましたけど、町内のローカルなニュースばかりで、校内放送みたいでした。

※FEN (Far East Network):
1945年7月に沖縄にできたラジオ局が、1950年代の始め頃にFENと改称され、駐留米軍により運用を続けられていたもの。現在のAFN (American Forces Network) の前身となるラジオ局。極東放送などとも呼ばれ、英語と日本語による2ヵ国語で放送されていた。


Q3. たくさんの言語を身につけるモチベーションはどのようにして生まれたのでしょうか?

世界の人とつながることへの好奇心

英語以外の言語に興味をもつきっかけの1つは、アマチュア無線でした。
10歳のときにアマチュア無線の免許を取得してから、会話もそうですが、モールス信号を使って、当時のソ連、オーストラリア、ヨルダン、フランスなど、様々な国の人たちとよく話していました。アマチュア無線のモールス信号は一種の世界共通語ともいえるかもしれません。
世界中の人たちともっと話せて、つながることができたら楽しいだろうなと、想像の世界がふくらみました。

好きなことをとことんやり続けた

大学卒業後は、家を継ぐのがいやだったので、大学院に進んで勉強を続けることにしました。
大学院で最初にやりたかったことが、サンスクリット語で書かれたオリジナルの仏典が、どんなふうに漢訳(翻訳)されているのかを調べることでした。
サンスクリット語を読むには、ドイツ語ができないといけません。サンスクリット語を訳した英語の辞書は、当時はありませんでしたから。
サンスクリット語ができると、ラテン語はそんなに難しくなくなりますし、そうすると、古代ギリシャ語も学ぶ範疇に入ってくるんです。サンスクリット語の辞書には、ドイツ語、フランス語、ラテン語ではこう言う......というのがたくさん書いてあります。先に触れたアマチュア無線のモールス信号のように、サンスクリット語には共通言語のような色合いがありますね。

こうして学問を掘り下げていけばいくほど、僕の研究分野に限らず、多言語話者との出会いは増えていきます。留学したケンブリッジ大学にも、マルチリンガルはたくさんいましたし、僕の恩師も5ヵ国語を話す人でした。研究分野での学びが多言語につながり、僕の日常になっていきました。
僕は研究活動の中で、苦労を感じたことはありません。面白いことがあったら、すぐにあちこち覗いてみたくなる、そういう性分なんですね。世の中に知らないことはいっぱいありますが、新しいことを知るという学びは、僕にとって遊びでもあり、ライフワークなんです。

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Q4. 英語の習得における、ブレイクスルーのような瞬間はありましたか?

生きた英語を教えてくれた初恋の女の子

中学生の頃、4〜5年間くらい英語で女の子と文通していたことがあります。
彼女が来日中に滞在先のホテルのロビーで話したのがきっかけで、文通が始まりました。とてもかわいらしくて素敵な女の子でしたから、一生懸命英語で手紙を書きました。
その子は後にハリウッドの女優になりましたが、幼い頃からショービジネスの世界で経験を積んできている子でした。スクリプト(台本)を読み込んでいるから、言葉への感覚が研ぎすまされていたのでしょうね。彼女との文通を通じて、辞書には出ていない、生きた英語をいっぱい教わりました。

日本語を英語にするのではなく、英語を英語的な発想のまま表現するコツは、文通を通して彼女から教わったと思います。
何気ない会話とか、文章の中に、ふわっと光るような言葉に触れる瞬間がありますが、そういう言葉に触れたときに、彼女の英文を思い出すことがあります。


Q5. 日本の子供たちが英語を学習する方法を教えてください。

英語を読む力をつけられる環境を活かそう

日本では英語をしゃべる機会は少ないかもしれませんが、読む機会はいくらでも作れます。
例えば、KindleやiBooksなどのタブレット端末には、辞書機能や、Word Runnerのような自分の黙読の速度設定ができる便利な機能があります。そういうものを利用すれば、英語を読む機会は格段に増えていきますよ。

英語を読むことによって得られた情報から、国による価値観の違いとか、国際関係などの感覚をつかんでいけると思います。
読んで得た情報を咀嚼して、自分の知識することで、何かを判断する材料になります。英語を話すことも大切ですが、大きな問題をとらえるときには、やはり読む力が必要です。

ディクテーションで英語を聞く力・書く力が伸びる

聞き取った英文を書き取る、ディクテーションも有効です。
外国語を聞く力・書く力をつけるには、ディクテーションを1日5分、1ヵ月続ければ、かなり上達します。

ディクテーションの素材としては、CNN10のサイトなどがおすすめです。午前中に配信されたニュースのスクリプトが午後には読めるので、ディクテーションに最適なんです。中学3年生〜高校1年生くらいの英語のレベルで理解できる内容です。

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Q6. 著書の中で音読のメリットについて書かれていますが、小さな子供の音読に向いた教材はありますか?

多言語で訳されている物語は後々の勉強にも役立つ

"Winnie-the-Pooh"(くまのプーさん)の英語はすばらしいです。
少し上流階級よりの家庭の英語ではありますが、いい英語だと思います。人の哀しみや苦しみを優しく包み込んでいるような、イギリス社会はこういう言葉で支えられているのだなあというのが感じられるような英語です。

また、宇宙やアフリカの奥地を旅したりする冒険物語・"Les Aventures de Tintin"(タンタンの冒険)シリーズもおすすめです。こうした物語は、いろんな世界を知りたいという子供の好奇心をふくらませます。

どちらの作品も世界中の言語に訳されていますから、小さい頃に慣れ親しんでおくと、大人になって他の言語の勉強をするときに役立ちます。


Q7. 子供の英語教育に取り組む保護者の方へのメッセージをお願いします。

どんなことも難しいと思わないこと

英語の学習に限らず、「難しい」と思わないでください。
「難しい」と思いすぎるとできなくなります。自分ができないことで他人を恨めしく思ったりもしてしまいます。それはよくありません。
2,500年前に書かれた『論語』で、既に孔子がそのようなことを言っているのですから。

失敗を恐れずたくさん英語を話そう

親が子供の失敗を恐れ過ぎると、子供が色々な体験をする機会を奪ってしまうことになるし、自立もできません。失敗をおそれずに、子供をどんどん外に出して、いろんなものに触れさせるのが親の役目だと思います。

例えば、英語にふれさせたいなら、日本にいる外国人に話しかけてみればいいんです。今日本には、インバウンドの旅行客がたくさんいます。遠くへ行かなくても、コンビニやレストランで外国人を見かけることも増えました。世界を知るきっかけになるし、まさに生きた教材です。僕が中学生の時に未来のハリウッド女優と知り合えたのも、「あの子に話しかけたいな」と思ったことを、即実践したからです。そういう「楽しい」「知りたい」「出会いたい」という素直な気持ちって、すごく大事です。

僕は飛行機に乗ったらいつも誰かと友達になります。この前は、隣り合わせたインド人の、頭のターバンが気になったので「どうやって巻くんだい?」って尋ねたことから会話が始まり、友達になれました。彼は今度東京に遊びに来ます。

親子でたくさん学んで楽しい時間を過ごした先に、子供の幸せもきっとあると思います。

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インタビューを終えて

自分の「好き」をとことん追及し、常に楽しいことを追いかけてきた山口先生のエネルギーに圧倒されてしまいました。
「楽しい」「知りたい」「出会いたい」という素直な気持ちが、先生がマルチリンガルになる原点だったんですね。
日本の環境のいいところに着目した英語学習法も、興味深い視点でした。親子で楽しく学ぶ環境作りに、山口先生の学びの姿勢、人生を楽しむ大らかな心は、とても参考になりそうです。


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プロフィール:山口 謠司(やまぐち ようじ)

1963年、長崎県佐世保市生まれ。
大東文化大学文学部准教授。博士。
大東文化大学大学院、フランス国立社会科学高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員を経て現職。
専門は書誌学、音韻学、文献学。
17万部のベストセラーシリーズ『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)、20万部を突破したベストセラー『心とカラダを整える おとなのための1分音読』(自由国民社)、『日本語の奇跡』『ん』(いずれも新潮新書)、和辻哲郎文化賞を受賞した『日本語を作った男』(集英社インターナショナル)など著書多数。

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