リーパー・すみ子(著)
『アメリカの小学校では絵本で英語を教えている
英語が話せない子どものための英語習得プログラム
ガイデッド・リーディング編』
径書房
英語を母語としない子どもに英語を教えるための手法
書籍『アメリカの小学校では絵本で英語を教えている』の著者は、アメリカに渡って結婚したのち、移民の子どもたちに長年英語を教えてきたリーパー・すみ子氏です。
著者が勤める学校で、絵本を使って英語を身につけるガイデッド・リーディング(Guided Reading)の手法を採り入れたところ、英語を母語としない移民の子どもたちの全国試験の点数がかなり上がった、と著者はいいます。
日本人の子どもが英語学習に取り組む際にも大いに参考になるガイデッド・リーディングについて、本書の内容を元に紹介します!
ガイデッド・リーディングの10ステップ
ガイデッド・リーディングとは、英語が読めない子どもたちが英語を「読めるように導いていく」ための指導法。
少人数のグループで話し合いながら、1つの絵本をじっくり繰り返し読み込んでいきます。
標準的なガイデッド・リーディングは以下の10ステップで行われます。
1.プライオア・ナレッジ(Prior Knowledge)―経験を語り合う
本のテーマを、子どもたちがどの程度の生活の中で体験しているかを読む前にチェックします。
例えば、なかなか眠れないうさぎが主人公の絵本なら、子どもが眠る前の習慣などをたずねてみます。
2.ストーリー・イントロダクション(Story Introduction)―物語の紹介
まず、本の表紙を子どもにじっくり見せ、どんな物語が始まるのかを推測させます。
本のタイトルを一文字一文字指でなぞって読み、タイトルと表紙絵の関係も探るように子どもにうながします。
作者の名前や経歴についても簡単に説明し、本を開いてすぐのところにあるタイトル・ページの絵と表紙を見比べたりもします。
謝辞・まえがき・奥付がある場合はその内容にもふれます。
3.ピクチャー・ウォーク(Picture Walk)―絵本の散歩
本の絵を始めから順番にみせます。
このとき、物語の中のキーワードや、何度も登場するフレーズも紹介しておきます。
4.リード・アラウド(Read Aloud)―1回目のリーディングは先生がリードして
先生が読み聞かせるこのステップは、モデルド・リーディング(Modeled Reading)ということもあります。
物語の重要なポイントを子どもがつかめるように、時には質問したり、声の大きさやスピードを工夫することが大切です。
例えば、イラストから物語を推測させるように「このページの絵はずいぶん暗いねえ。どうしてこんなに暗いのかな?」などと質問を投げかけてみましょう。
5.ボキャブラリー(New Vocabulary)―新しい単語の紹介
単語を知っているとストーリーの理解も深まるといわれていますが、単語の教え方には下記のようなコツがあるそうです。
・ジェスチャーを取り入れて教える。
・読みにくい単語は切りやすいところで区切って読む。
・机やいすなどのあらゆる備品に英語で書いた紙を貼っておく。
・意味を予測してから辞書を引き、言葉の解釈を絵に描いて表現してみる。
6.コーラル・リーディング(Choral Reading)―2回目のリーディングは全員で
1ページごとに、もしくはパラグラフごとに、先生が音読した後につづいて子どもたち全員で音読します。
みんなで声を出して読むときに、他の子も間違える場合があることがわかるので、子どもたちの間違えることへの不安感が取り除けるそうです。
7.5W1H―3回目のリーディングは質問をしながら
3回目のリーディングでは、本の内容を深く読み込み、子どもが批判力のある読み手になれるような質問を挟みながら読んでいきます。
5Wと1Hをいわれる"Who?"(だれが?)、"What?"(なにを?)、"When?"(いつ?)、"Where?"(どこで?)、"Why?"(なぜ?)、"How?"(どのように?)という基本的な質問パターンで、本の内容理解を問いかけることができます。
8.ストーリー・マップ(Story Map)とリテリング(Retelling)―物語を簡単に整理
3回目のリーディングが終わったら、以下のような質問を投げかけて表にまとめれば、ストーリー・マップと呼ばれるものができ、読んだことを視覚的に整理できます。
・この物語のタイトルは?
・この物語はどこで起こった?
・この物語にはどんな人が出てきた?
・なにが起こった?
・それでどうした? どんな方法で解決した?
・終わりはハッピーエンド? それともがっかりしたり、悲しかったりで終わった? どうしたらハッピーエンドになったんだろう?
・作者が伝えたかったことはなんだろう? 作者はどうしてこの本を書いたのかな?
また、子どもたち自身にストーリーについて語り直してもらうリテリングという方法でも物語を整理することができます。
その際は、「この本のお話をまとめてくれる?」「物語は最初、どんなふうにして始まった?」などの質問で、子どもたち自身に語ってもらえるように促します。
9.インディペンデント・リーディング(Independent Reading)―4回目のリーディングは1人で
ガイデッド・リーディングの最終目標は自分一人で読めるようになるインディペンデント・リーディングです。難しい単語は何度も子どもにおさらいさせて、すらすらと読めるように導きます。
10.エンリッチメント・プログラム(Enrichment Program)―応用と拡張プログラム
このステップでは習ったことをさらに自分のものとして会得し、強化させます。
下記のような拡張プログラムを考えて、実践することで新しい知識をしっかり身につけていきます。
・新しく習った言い回しを使って会話をしたり、短い文章をつくる
・絵本のテーマを絵で表現する
・お話をお芝居にして演じる
・カードを使ってゲーム遊びをする
大人からの質問で子どもの思考を手助けできる
いかがでしたか? 本書では上記の10ステップ別に具体的な事例や質問を紹介しながら、子どもたちの興味を引き出し、英語を身につけるための手法がじっくり説明されていますので、興味が湧いた方はぜひ一度手に取ってみてください。
読み聞かせの中で子どもに適切な質問を投げかけていくガイデッド・リーディングの手法には、ご家庭での英語学習にも取り入れられる部分がたくさんあります。
ママやパパが子どもとしっかりコミュニケーションをとりながら、英語の絵本を読み込んでいくことで、知識の理解と定着がより期待できそうですね!