英語教育に関するニュース

先進的な小学校

平成32年度から小学校で英語教育が全面的に実施されるのに向けて、各地の小学校で様々な取り組みが進められています。いちはやく英語教育に力を入れている小学校は特徴があり、こうした学校の多くは、楽しく学べ、どんな児童でも積極的に参加しやすいプログラムの導入あるいは開発を行っています。

現在、英語教育に積極的な小学校がどのような方法で英語を行っているのか、その取り組みとして埼玉県春日部市の粕壁小学校の英語教育をご紹介します。

「春日部市立粕壁小学校」の英語学習への取り組み

粕壁小学校は、平成9年度に文部省の研究開発学校の指定を受けて英語教育への取り組みを本格化させる事になりました。まずは「生きる力をはぐくむ国際理解教育の推進と指導法の改善」をテーマに設定し、英語学習をその軸に据えることが決められました。

粕壁小学校では「Enjoy English Everyday!」の基本精神の下、毎日英語学習が行われています。現在では「粕壁小方式」とまで言われる英語教育の方法が確立され、高い評価を得られるようにまでなっています。
その中でも特徴的なのは「E-タイム」と「E-タイムL」の2つの取り組みです。これらがどのようなものなのかを以下、少し紹介したいと思います。

「E-タイム」

これは1年生から6年生まで全学年で行う朝の英語の時間です。毎朝9分間、E-タイムの時間中には英語をシャワーのように浴び、「良い耳、良い口」を育てる教育が行われています。E-タイムは短時間ですが、毎日繰り返し学級担任が指導し、毎月の英語の歌を楽しく歌っています。さらにALT(Assistant Language Teacher。外国語指導助手 - 日本の学校における外国語授業の補助を行う助手)が協力して、自作したスキットビデオを使い、ネイティブな英語を子供たちにインプットし、反復練習する機会となっています。

「E-タイムL」

E-タイムLは、全学年、毎週1回45分、E-タイム等で獲得した英語を実際につかって、ALT(外国語指導助手)との会話や英語で活動することを楽しむアウトプットの時間です。
毎日行っているE-タイムの内容を応用して、歌やゲーム等の楽しい活動を英語で会話するという方法で進められます。担任も英語で話しかけ、児童に指示することが原則ですので基本英語だけでその時間は授業が行われます。こうしてE-タイムLの様々な活動や体験を通して、他者や異文化に心を開き、積極的にふれあいを求める態度を養うことを目標に、互いに英語でコミュニケーションを取りながら授業は進められています。

このように「E-タイム」は児童に英語をインプットすることを目的とし、今度は「E-タイムL」で児童が学んだ英語をアウトプットできる場を提供しています。実際に歌やゲーム等の楽しい活動を英語で会話しながら授業が進められています。
こうした英語学習の進め方によって、子供たちは英語を学ぶというよりは、より実際にコミュニケーションしたり、外国人の英語講師との交流を行ったりすることを楽しみながら参加することが出来ています。こうした積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成する英語学習の方法が、粕壁小学校の大きな特徴となっています。

その他の特徴

「トーキングタイム」

朝の「E-タイム」だけでなく、昼休みには、毎日 5、6年生4人ずつの2グループが交代で「Talking time」を行っています。この学習グループに、ALTが加わり、さらには地域の英会話ボランティアの方々も参加して指導を行っているので、これが更なるコミュニケーション能力の育成につながっています。

「イングリッシュ集会」

全校参加のオールイングリッシュの集会も行っています。集会委員会の児童が企画して 英語のゲームやクイズを行ったり、英語の歌を歌ったりして英語を学びつつ全校児童で楽しむことが出来る楽しい会となっています。
またイングリッシュ集会という行事だけでなく、その他、入学式・運動会・校内音楽会など大きな行事のあるときには必ず英語の歌を歌ったり、踊ったりすることで「英語は"特別"なものではなく"日常"の中にいつもある」という環境づくりを粕壁小学校では行っています。

楽しみながら学ぶことの効果性

粕壁小学校では、小学校1、2年生は英語に「ふれる」、3、4年生は英語に「なれる」、5、6年生は英語に「したしむ」というコンセプトを掲げ、英語を身近に感じて楽しむことで、英語を通して児童が「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度」を育成しようと努めています。こうした英語の基礎を小学生の間に築くことで、その後の中学生以降の英語学習においてもスムーズに取り組めるようにサポートしています。

英語教育の将来

粕壁小学校は平成18-20年度に「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成する英語学習」を研究主題として、文部科学省指定研究開発学校の委嘱を受けています。これは平成9年から行ってきた特有の英語学習への取り組みが評価されていることの表れとなっています。

平成32年度から小学校で英語教育が全面的に実施されるのに向けて文部科学省は、どのような英語教育を行うかに関して大きな関心を持っており、専門家はもちろん、ここで取り上げた粕壁小学校のような、全国各地の英語教育に対して先進的な取り組みをしている小学校と協力しながら将来のカリキュラムを段階的に策定しています。英語教育は今後、小学校においても重要な位置に据えられるようになっていくと思われます。

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