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専門家の先生による、英語教育に関する記事

発音の良い子を育てるために、親ができること(後編)【英語教育コンサルタント・光藤京子先生】

前回の記事「発音の良い子を育てるために、親ができること(前編)」では、子供の乳幼児期における言語の吸収能力がいかに高いかについてお話ししました。
みなさんのお子さんが小さいときから英語にふれることには大きな意味があります。母語が確立していない幼い頃だからこそ、英語の音やリズムを自然に、素直に吸収できるのです。

世界で何十億人がさまざまな英語を話す時代、ある程度の、フランス人ならフランス語訛り、中国人なら中国語訛り、日本人なら日本語訛りがあって当然です。それ自体は少しもおかしいことではありません。

ただし、ここで重要なことが1つ。どんな発音でも良いといっても、相手に通じない英語はやはりNGなのです。

では、「多少の訛りがあっても通じる英語」とはどのようなものでしょうか?
私は長年、日本人の英語の発音を観察してきました。その結果、日本人の英語を通じにくくする、または聞きづらくする要因として、次のような特徴があることがわかりました。

それは、「1. あいまいな母音」「2. ぼんやりした子音」「3. 日本語的リズム」の3つです。

1.「あいまいな母音」って?

日本人が早口で英語を話すと、母音の発音があいまいになり、何を言っているか不明瞭になりやすいという問題があります。

どうして母音があいまいになるのか。それは日本語と英語では口の開き方、喉の使い方、息の出し方が異なるからです。日本語にも「あ・い・う・え・お」という5つの母音がありますが、英語ほど口や喉をしっかり使わなくても音は出せます。

試しに、hat(帽子)、hut(小屋)、hot(熱い)3つの単語を比較してみましょう。

hatの「a」[æ]は口を左右に大きく広げ、顎を下げながら「アー」というように発音しないと英語らしく聞こえません。
対してhutの「u」[ʌ]は、ほとんど口を開けず、日本語の「あっ!」のように軽く発音します。この違いを頭ではわかっていても、みなさんが口の開き方に十分注意しないと、外国人には2つとも同じような音に聞こえます。
そして3つめのhotですが、この単語に含まれる「o」[ɑ]を正しく発音するためには、喉の奥を縦に大きく開くようにします。腹式呼吸の要領でおなかに力を入れながら、喉の奥からhotと発音してみてください。

口先だけで「ホット」のように発音したときと比べ、随分と違う音に聞こえませんか?

短母音はもちろん、英語には長母音、二重母音など母音がたくさんあります。それぞれの特徴をつかみ、しっかり区別して発音しないと、誤解を招くことにもなりかねません。

2.「ぼんやりした子音」って?

2.「ぼんやりした子音」って?

以前、通訳を目指す学生の発音指導をしたときに、英語が聞きづらいと感じた学生たちには、いくつかの共通点がありました。母音があいまいであることに加え、特定の子音の歯切れが悪く、すなわち単語全体がぼんやりと聞こえるため、何を言っているのかがわかりづらかったのです。

英語は母音と子音の組み合わせでできており、多くの単語が子音ではじまっています。
とくに「単語の頭に来て母音と結合する子音」、たとえばsee、fan、van、waterなどの単語は、歯や唇を使わず適当に発音すると、めりはりのない、ぼんやりとした英語に聞こえます。
seeは日本語の「シー」、fanやvanは「ハン」や「バン」のように聞こえてしまうのです。

そして、なかでも日本人にとってもっとも難しいのが「w」です。この子音は唇を大きく前のほうに突きだして発音しないと、英語らしく聞こえません。
日本人が海外に行ってお水を注文すると、まったく別のものが出てくるとよく聞きますが、その多くは「w」の唇の突きだし方が足りないためです。外国人には「オーター」のように聞こえるのかもしれません。

what/which/whereなどの疑問詞や、water/whale/wig/wolfなどの名詞は、最初の「w」を(思い切って!)唇を十分突きだしながら発音すると、かなり英語らしく聞こえます。

3.「日本語的リズム」が、実は一番やっかい?

最後にもう1つ、日本人にとって最大の難関なのですが、注意しなければならないことがあります。英語はストレス(強勢)やピッチ(高低)が非常に豊かな言語で、母音と子音の組み合わせにより独特のリズムができています。

たとえば、street(通り)という単語は、はじめの3音「str」と最後の1音「t」はすべて子音です。それらと真ん中の長母音「ee」[iː]が組み合わさって、英語らしい音ができあがっているのです。

一方、日本語はどの音も「あ・い・う・え・お」の母音で終わります。その癖をひきずり、英語でも「す(su)・と(to)・りー(ri)・と(to)」のように、すべての音を同じ強さと長さで、しかも最後の子音に母音をつけて発音する人は多かれ少なかれいるかもしれませんね(いわゆる「カタカナ英語」です)。これでは英語独特のリズムが再現できず、外国人には異なる単語に聞こえてしまうでしょう。

お子さまがなめらかな英語を話すために

ここまで、英語の発音やリズムについていくつか注意点を述べてきました。

日本語を話すときの口や舌、喉の使い方をそのまま英語に適用すると、母音や子音があいまいでぼんやり聞こえ、相手には通じにくいこと。
英語の強弱のリズムを無視したり、単語のお尻に来る子音に母音を付着させる癖があったりすると、英語らしいリズムが失われること。
結果、相手にとって聞きづらくなってしまうということでした。

そういった意味で、素直に音を吸収できる幼いうちに、お子さんが英語の発音とリズムを身につけることはとても大切です。親御さんはなるべくそのような機会を見つけ、お子さんにネイティブの話す綺麗な英語をたっぷりと聞かせてあげてください。
ディズニー英語システムの教材はもちろん、児童向けの動画やオーディオブックなども大いに活用されると良いでしょう。

最後に、くり返しにはなりますが、親御さんも正しい知識をもつことが大切です。今までそのような機会がなかったのであれば、時間のあるときにお子さんといっしょに学習するのはいかがでしょうか。色々と新しい発見があって、きっと楽しいと思います。そのときに、前回と今回の記事でご紹介した発音のアドバイスが、少しでもお役に立てばうれしいです。


光藤 京子(みつふじ きょうこ)先生

執筆家、異文化コミュニケーション・英語教育コンサルタント。会議通訳、翻訳ビジネス、東京外国語大学などでの指導経験を生かした書籍、記事ブログを多数執筆。代表作の『働く女性の英語術』(ジャパンタイムズ)、ベストセラーになった『何でも英語で言ってみる! シンプル英語フレーズ2000』(高橋書店)のほか、『英語を話せる人 勉強しても話せない人 たった1つの違い』(青春出版社)、『英語だって日本語みたいに楽しくしゃべりたい リアルライフ英会話 for Women』(大和書房)、『伝わる英語 5つの鉄則』(コスモピア)など。最新作に『する英語 感じる英語 毎日を楽しく表現する』(ジャパンタイムズ)がある。

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