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専門家の先生による、英語教育に関する記事

発音の良い子を育てるために、親ができること(前編)【英語教育コンサルタント・光藤京子先生】

最近、乳幼児から英語をはじめるご家庭が増えています。少しでも早くはじめることによって、お子さんが英語らしい発音を身につけることを願う親御さんが多いのだと思います。

実際、生まれてから3歳くらいまでの子供は、音を聞き分ける能力がとくに高いことが研究でわかっています。ゆえに、日本でも早期の発音教育の重要さが注目されているのです。

今回と次回の記事では、発音に焦点を当てます。子供の言語発達のプロセスに加え、発音の良い子を育てるためには、どのような素材を与えるべきか、親御さん側にどのような努力や工夫が必要かについても、お話ししたいと思います。

赤ちゃんは、すべての音を聞き分ける?

みなさんのまわりに赤ちゃんはいますか?もしいたら、ぜひその赤ちゃんをよく観察してみてください。

赤ちゃんは全身全霊で、母親やその他の人間が放つ言葉に耳を傾けています。生まれたばかりの赤ちゃんは、おなかの中で聞いていたお母さんの声と他の声を区別でき、多数の言語の音の違いを識別する能力もあるそうです。すごいですね。

その不思議な能力は月齢とともに低下しますが、一方で、毎日聞き続ける母語は、短い間に驚くべき発展を遂げます。生後8カ月の頃には単語を1つの言語単位として認識できるようになり、1歳を迎える頃には単語の意味も理解するようになります。
そのどれも、誰かが教えるわけではなく、日常の言語体験を通して赤ちゃんは自然に学んでいくのです。

また、ある時期になると、こちらも誰に教わることもなく、自分から言葉を発するようになります。通常、生後6カ月くらいで、ほとんどのお子さんが意味のない音を発しはじめます(英語ではbabble and cooといいます)。

そして1歳に近づく頃には、身近な単語(食べ物とか、体の一部とか)などが言えるようになり、その後の発達についてはご存じの方も多いでしょう。1語文から2語文へ、3歳になる頃には多くのお子さんがうるさいほどに(!)お喋りするようになります。

耳が良く、発音を学ぶのに適している乳幼児期

耳が良く、発音を学ぶのに適している乳幼児期

英語を含む外国語についても同じことが言えます。外国語も最初はモノマネから入りますよね。お手本をよく聞いて、同じように発音してみる、段々慣れて話せるようになる......。私もみなさんも経験していることです。

とくに聞き取る力が優れている乳幼児期は、外国語の音に慣れる絶好のチャンスです。幸い、今の世の中には良いお手本がたくさんあります。あとはどのようにして選ぶか、親御さんが的確に判断することになります。

子供の教育を目的に作られた教材は間違いない

間違いないのは、子供の教育を目的として作られている教材です。子供が好きなキャラクターを使った英語音声つきおもちゃや、オールイングリッシュのCDやDVDつきの英語教材など、さまざまな種類があります。少し年齢が高くなれば、オーディオブック、ディズニーのアニメ映画や挿入歌、動画配信サービスの絵本動画、テレビの子供向け英語番組なども良いでしょう。

はじめは聞いているだけ、または軽く反応するだけだったお子さんが、あるときを境に言葉をまねして言うようになりますが、まだ幼いお子さんが初めて「アポ―(apple)」とか「バナーナ(banana)」とかを言えるようになったとき、親御さんの喜びも大きいですよね。

少しくらい間違っていても心の底から褒める

3歳以上になると、複雑な英語の歌をまねするお子さんもいます。ディズニー映画などの挿入歌をお子さんがそれらしく歌っているのを耳にしたことはないでしょうか。よく耳を澄ますと、内容はデタラメでも、英語の発音やリズムの特徴を見事に捉えています。
そのくらい子供の耳は良いのです。

この時期は、お子さんが英語の音に興味をもちはじめ、自信を得る大切な時期でもあります。少しくらい発音が間違っていても、言っていることがデタラメでも良いと思います。心の底から「すごいね!」「英語うまいね!」と褒めてあげましょう。

発音の苦手な子には、ちょっとした工夫を!

発音の苦手な子には、ちょっとした工夫を!

しかし、みながみな英語に興味を示すとは限りません。ほかのことに夢中になって英語に関心を示さない、口にするのを恥ずかしがる、強制されるのをいやがるお子さんもいることでしょう。

私たち大人はつい、理論的には英語の音を素直に吸収できる年齢だし、聞いたとおりに発音できるだろうと思いがちです。しかし母語が優位になってくるにつれ、正確に音を聞き取れない子や、日本語に慣れた口や舌の使い方では英語の発音に対応できない子供が出てきます。

ここで無理強いするのは禁物。お子さんが英語嫌いになってしまう可能性があります。そうならないためには、親御さんがほんの少し工夫すると良いでしょう。

たとえば、英語と日本語では明らかに口の動きや舌の使い方が違います。その違いを利用するのです。ここでは、日本人がとくに苦手とする「l」と「r」の音を取り上げてみましょう。

英語の「l」は舌がしっかりと上顎の裏側につきます。逆に、「r」は舌が上顎の裏側にまったくふれません。日本語の「らりるれろ」はいわばこの中間の音です。試しに「ら行」の音が入った単語を、最初は「l」の音で、次は「r」音を使って読んでみてください。

「ラッパ、りんご、くり(栗)、リス、れいぞうこ」

「l」の音は比較的日本語の「らりるれろ」に近いですが、「r」の音は強調して読むと、日本語とはかなり異なって聞こえます。そのときお子さんが興味を示したら、そのときは「r」の音を教える絶好のチャンスです。

「r」については、ほかにもお子さんの興味をひく教え方があります。最初に口を軽くおちょぼ口にしてから「r」を発音すると、驚くほど楽に言えることをご存じでしょうか。 はじめに「ウー」と唇を突きだしてから(少し変顔になります)、「rain」「right」などと言ってみてください。この方法は子供だけでなく、「r」の苦手な大人にも有効です。ぜひ試してみてください。

発音の良い子を育てるために、親ができること

まとめとして、発音の良い子供を育てるためには良質な素材を選ぶこと、同時に親の見守りや協力が大切です。

子供といっしょに英語を楽しもう!

お子さんをいつも教材に任せたまま、親御さんはパソコンや家事に勤しむ、というのはあまり感心しません。小さなお子さんにとって、親御さんがいっしょに楽しんでくれることはとても励みになるでしょう。1人では気が散ってしまうことも、いっしょなら楽しめます。

時間に余裕があるときには、ぜひ発音もいっしょにやってみましょう。「その音は違うよ、こうだよ」とお子さんが言い出したら、しめたもの。それは発音に興味をもった証拠です。

英語の発音の特徴を知っておこう!

専門知識は必要ありませんが、さきほどの「l」と「r」の教え方のように、親御さんが英語の発音の特徴を知っていると便利です。お子さんが自分で発音しようと努力している最中にむやみに介入するのは良くありませんが、特定の音につまずいたり、興味を失ったりしたときには助けになります。
どうやったらネイティブの発音に近づくか、口や舌を使って親子で追求したら、英語を学ぶ楽しみも増えるのではないでしょうか。

最後になりますが、人間の言語の発達については科学的にまだわからないことが多く、一概にみながこのように発達するのだろうと思うのは危険です。発音が良いと得なことも多いですが、発音が英語学習のすべてではありません。私は、楽しくなくては外国語を学ぶ意味はないと考えています。幼少期は親子ともに楽しめることを第1に考えましょう。

次回は、日本人がとくに苦手とする子音や母音、英語のリズムについて解説する予定です。ぜひ参考になさってください。


光藤 京子(みつふじ きょうこ)先生

執筆家、異文化コミュニケーション・英語教育コンサルタント。会議通訳、翻訳ビジネス、東京外国語大学などでの指導経験を生かした書籍、記事ブログを多数執筆。代表作の『働く女性の英語術』(ジャパンタイムズ)、ベストセラーになった『何でも英語で言ってみる! シンプル英語フレーズ2000』(高橋書店)のほか、『英語を話せる人 勉強しても話せない人 たった1つの違い』(青春出版社)、『英語だって日本語みたいに楽しくしゃべりたい リアルライフ英会話 for Women』(大和書房)、『伝わる英語 5つの鉄則』(コスモピア)など。最新作に『する英語 感じる英語 毎日を楽しく表現する』(ジャパンタイムズ)がある。

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