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専門家の先生による、英語教育に関する記事

小学校英語ではどうやって成績がつくの?【玉川大学大学院 名誉教授・佐藤久美子先生】

前回の「3年生から小学校英語がスタート!どんな授業をするの?準備できることは?」においては、
1. 必修化された英語ではどんな授業をするの?
2. 小学校の英語授業でどんな力が身につくの?
3. 入学前に保護者が準備できることは?
4. 英語が好きになるコツは?
という4つのポイントからお話ししました。

2020年4月から新学習指導要領が導入され、5、6年生は英語が教科になり、国語や算数、理科、社会などと同様に、3、2、1などの評価がつきます。お子さまにとっては、初めての経験になると思います。

他の科目のようにペーパーテストがあるのかしら?発音もチェックされるのだろうか?成績がついたら英語が嫌いにならないだろうか?など、お子さまのみならず、保護者の方にとっても不安があるかと思います。

そこで今回は、特に5、6年生に焦点を当てて、小学校英語における評価規準についてお話致します。
資料としては、2020年3月末に文科省から出された、『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料』(文部科学省国立教育政策研究所 教育課程研究センター)を参照致します。

1. 教師にも改善が求められる?
2. 具体的な評価方法は?
3. 教科横断型の英語学習とは?
4. 「聞く・話す(やりとり)」など領域ごとの評価もされる?
5. 多角的に評価され、成績がつけられる


1. 教師にも改善が求められる?

評価というと、児童が教師から与えられる学習到達度を記入したもの、と考えるのが一般的だと思いますが、実は今回の趣旨は、教師も「子供たちにどのような力が身についたか」という学習成果から、授業の改善を図ることが求められています。そこで、「指導と評価の一体化」が期待されているわけです。

例えば、児童に話す力(教師や友達とやりとりする力)が身についていないと判断されれば、教師は、「授業中に児童に英語を話させる機会が不足していたのではないか」「説明を減らして、もっと自由に話す時間を取るべきだった」と反省し、話す力を伸ばすための改善方法を考える必要があります。

新学習指導要領では、特に、児童の主体的・対話的で深い学びが求められているので、教師は児童の学びを振り返り、こうした視点からの授業改善・学習改善を図ることになります。

学習評価は、新学習指導要領の3つの目標に準拠し、以下の通りになります。

小学校5・6年生のための学習評価

①観点別学習状況の評価

評価の3観点(以下の3つの目標に沿って評価)
【知識・技能】
【思考・判断・表現】
【主体的に学習に取り組む態度】
※これまではペーパーテストなどの【知識・技能】の評価が中心。今後は評価の場面や方法を工夫し、学習の過程や成果を評価することが求められる。

②評定

上記を相対的に捉えた、いわゆる3、2、1などの成績を指す。

③個人内評価

観点別学習状況の評価や評定には示しきれない児童の良い点、可能性、進捗状況が記される。


2. 具体的な評価方法は?

2. 具体的な評価方法は?

具体的には、ペーパーテストで知識を問う以外に、どんな方法を用いて評価するのでしょうか?以下は、外国語に限らず、小学校で求められる学習評価の場面や方法を表しています。

●【知識・技能】
ペーパーテストで知識の習得を問うほかにも、文章による説明や、観察・実験、式やグラフで表現など、多様な方法をバランスよく取り入れることが求められています。

●【思考(力)・判断(力)・表現(力)】

ペーパーテスト、レポート作成、発表、グループでの話し合い、作品の制作や表現、ポートフォリオの活用などが求められます。すなわち、児童が思考・判断・表現する場面を効果的に設計するのです。

●【主体的に学習に取り組む態度】

主体的に学習に取り組む態度、と聞くと、授業中に積極的に発言する姿を思い浮かべますが、決して、そうした発言や行動だけで評価はしません。ノートの記述、発言、行動観察、自己・相互評価などが含まれます。


さらに、意思的な側面を評価することが大切だと述べられています。

①知識・技能の獲得、思考・判断・表現力を身につけようとする粘り強い取り組みを行おうとしているか。

②そうした取り組みを行う中で、自らの学習を調整しようとする側面。

観察や式、作品の制作と言うと、理科、算数、図工には当てはまりますが、外国語にもこんな学習場面はあるのだろうか、と疑問に思う方もいらっしゃると思います。
実は近年、教科横断型学習という方法が求められています。それは、他教科で学習する内容を使って、英語学習を進める方法です。


3. 教科横断型の英語学習とは?

具体的な学習方法の例を挙げます。

他教科とのコラボ

図画工作(2年生)
色の組み合わせを色水で調べてみよう

Step 1:英語の色を学習。
red, yellow, blue, purple, orange, green, white, pink, brown, black, gray

Step 2:Touch Gameを行う。
"Touch something blue."(青いものにタッチして。)
と教師が言ったら、児童は教室にある青いものにタッチする。

Step 3:色の足し算を行う。
"Blue plus red is...?" と教師が質問したら、"Purple. It's purple."と、児童が答えます。(青+赤は紫)
さらに児童が色水の足し算を発表します。
実際に色水を使って実験することもあります。

算数(3年生)
算数の足し算・引き算を英語で伝え合う

Step 1:数字の1~10を復習。

Step 2:Number Gameを行う。
教師:Let's do the number game. We use the fingers. When I say "One," show me one finger. When I say "Five," show me five fingers.
(数ゲームをしよう。指を使うよ。1と言ったら1本の指を、5と言ったら5本の指を見せてね。)

Step 3:Lucky Seven Gameを行う。
教師:Make pairs. Show me your fingers. Try to make the numbers of seven with your partner, saying "Lucky seven."
(ペアになって、互いに指を見せ合うよ。パートナーと7の数を作り、ラッキー7と言うよ。)

Step 4:足し算をしよう。
Question:□+□=8となるように数を入れて発表しよう。
Answer:1+7=8("One plus seven equals eight."
2+6=8、3+5=8 などと英語で発表する。

いかがですか?こんな授業が、小学校ではどんどん増えてくるでしょう。

字の画数やその意味を英語で伝えて、習字で書いた漢字を当てるゲームや、植物のどの部分を食べるのか、leaves(葉)、stem(茎)、root(根)、fruit(実)に分類して植物を英語で紹介したり、ヒントを英語で紹介したり、以下のように県を当てるゲームもあります。

県当てゲームの例

教師:It' famous for oranges.
(みかんで有名です。)

教師:It's famous for tea.
(お茶で有名です。)

教師:It's famous for a very high mountain.
(とても高い山で有名です。)

教師:What's this prefecture?
(この県はどこでしょう?)

児童:The answer is Shizuoka Prefecture.
(答えは静岡県です。)

これは、社会と英語の教科横断型学習になります。児童の主体的な深い学びに基づいた授業と言えます。グループで、どんどんこのような県当てゲームを作ります。

このときの、評価はどのようにつけられるのでしょうか。例を紹介します。

●【知識・技能】の観点から
例えば、It's famous for~.という文がきちんと言えていれば、A、B、Cの3段階のうち「よくできました」のB評価。さらに、3つのヒントがうまく作れていれば、「大変よくできました」のAが付きます。目標表現のIt's famous for ~.も言えなければC評価。

●【思考(力)・判断(力)・表現(力)】の観点から
例えば、ヒントがいくつか考えられていればB評価、さらに、ヒント3つを良く調べ、考えられていれば「大変よくできました」のA評価。ヒントが1つ程度で不十分にしか考えられなければC評価。

●【主体的に学習に取り組む態度】
タブレットを使い、ネットでヒントを調べたり、図書館で県について調べたり、グループで協力しながらためになる面白いクイズを作ろうとしていればA評価。積極的に調べようとしていない、グループで話し合おうとする態度が欠けていれば、その程度に従い、BあるいはC評価がつきます。
ただし、こうした評価は、小学校や学年によって、教師が相談して決めます。


4. 「聞く・話す(やりとり)」など領域ごとの評価もされる?

評価は、3つの観点に沿って行われるほかに、「聞く・話す(やりとり)・話す(発表)・読む・書く」といった内容のまとまりごとにもつけられます。以下に、その一例をご紹介します。

小学校5・6年生のための学習評価

聞くこと・話すこと(やりとり)

A:When is your birthday?
(誕生日はいつ?)

B:My birthday is May 25.
(5月25日よ。)

A:What do you want for your birthday?
(誕生日には何が欲しい?)

B:I want a bike.
(自転車が欲しいわ。)

※誕生日や欲しいものを聞き取っている、相手のことをよく知るために具体的な情報を聞き取ろうとしている、と言った観点から評価がつけられます。さらに、自由に対話を広げてやりとりができれば、良い評価が期待できます。

A:Oh, your birthday is May 25. My birthday is May 23.
(あなたのお誕生日は5月25日なのね。私は5月23日よ。)

B:Really? (本当?)
 You want a bike. I want a watch.
(あなたは自転車が欲しいのね。私は時計が欲しいわ。)

読むこと・話すこと(発表)

"This is my town! Sakura is nice. We have a big station. We don't have a park. I want a big park. "
(これが私の町です!桜は素敵です。大きな駅がありますが、公園はありません。大きな公園が欲しい)

※こんな英語文が書かれたミニポスターを作り、読んだり、発表したりできればA評価です。

読むこと・書くこと

アルファベットの文字が読める、簡単な単語が読めたり書いたりできることが評価の観点です。
例えば、クロスワードパズルが解けたり、だんだん自分たちでパズルを作れるようになったりなども、評価の参考になります。
以下は、5つのnose(鼻)を探すクイズです。nose


5. 多角的に評価され、成績がつけられる

・観点別学習状況・内容のまとまりごとの基準
「十分満足できる」A
「おおむね満足できる」B
「努力を要する」C

・評定(5年生以上)
「十分満足できる」3
「おおむね満足できる」2
「努力を要する」1

授業の中のいろいろな場面で学習状況A、B、Cがつけられ、最終的には平均化した1~3の評定が、5年生以上につけられます。3、4年生の外国語活動では、これまで通り、児童の学習状況に顕著な事項がある場合は、どのような力が身についたかを端的に文章で記述されます。

いかがでしたか?こうした学習評価の方針は、事前に児童生徒に共有する場面を設けること、また、保護者にも理解を図ることと書かれています。児童も、評価の方針が明らかになれば、これを目指して頑張る動機づけにつながります。

そして、発表にも慣れてきたら、発音やイントネーションにも気をつけるように促すとありますので、発音などをあまり心配する必要はありません。

評価は、教師の授業改善にもつながるので、ぜひ多くの場面で、多くのやり方を用いて行って欲しいと願っています。ペーパーテストだけの時代は終わったのですから。


佐藤 久美子先生

玉川大学大学院 教育学研究科(教職専攻)名誉教授・特任教授。
長年、子供の言語獲得・発達の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。
2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの『えいごであそぼ』、『えいごであそぼ With Oton』の総合指導、NHK eテレ『エイゴビート』番組委員を担当。また、全国の小学校や教育委員会で、研修や講演を行い、小学校英語教育の推進に努める。

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