ディズニー英語システム TOP > 乳児・幼児からの英語 > 専門家の先生による、英語教育に関する記事 > AI時代に英語学習は必要か? ~英語を学ぶほんとうの意味とは?~【英語教育コンサルタント・光藤京子先生】

専門家の先生による、英語教育に関する記事

光藤京子先生

近年、AIを活用した自動翻訳(AI翻訳)の性能が飛躍的に進歩しています。技術的な文章であれば、人間の手で何日もかかる翻訳が瞬時にできてしまいます。なんと便利な世の中になったのでしょう!

外国人との簡単な英語のやり取りなら、手のひらサイズの音声翻訳機1台あれば用が足ります。短期の海外旅行、医療やサービス業はもちろん、あらゆる分野で音声翻訳機が活躍する時代はそう遠くないと思います。

それがほんとうなら、「もはや英語を学ぶ必要はなくなるの?」と疑問がわき上がるのは当然です。自分はコツコツと苦労して英語を勉強してきたけれど、ひょっとして未来の子供たちはそんなに英語を頑張る必要がないかも?
親御さんたちは正直、複雑な思いでおられるかもしれません。

AIの時代、英語はほんとうに必要ないのでしょうか?今日はそのあたりをご一緒に探っていきたいと思います。

日本人はなぜ英語を学び始めたのか?

現代に生きる私たちは、誰でも気づいたら学校で英語を習っていたという感じではないでしょうか。国語や算数と同じく必修科目としてそこにあったから、特に疑問も抱かずに勉強したのかもしれません。
「英語を勉強するのは何のため?」とあらためて訊ねられると、ほとんどの日本人が答えに窮しそうです。

江戸末期から明治にかけて、日本は西洋から大量の知識や技術を取り入れました。そのためには外国書物の翻訳が必要であり、学者やエリートは英語を含む西洋語を一生懸命学びました。
つまり外国語を学ぶ最初の目的は―言語そのものではなく―日本の発展のためだったのです。

そして、明治時代に学校教育に英語が取り入れられるようになり、英語はエリートから一般大衆が学ぶものへと変化していきました。その当時は訳読と文法が中心でした。

その後、訳読・文法中心ではいつまでたっても英語が話せるようにならない、と主張する人々が出てきました。
そこで今から30年くらい前に、英語を学ぶ目的がコミュニケーション重視に切り替わったのです。以来、「使える英語」を目指し、今日まで数々の改革がなされてきました。

しかし残念ながら、英語を話せる日本人は多くは育っておらず、英語が聞き取れない、話せない、しかも読むこともままならない生徒が続出し、英語格差が広まりました。

やはり一番の問題は、英語を会話するための単なるツール(道具)と見なし、短期的な成果を求めすぎたことではないかと思います。その結果、英語を学ぶほんとうの意味や楽しさが見失われてしまいました。

つまり、本来なら英語の成り立ちや言語の特徴とか、文化の違いとか、英語を通じて学ぶ文学の面白さとか、そのような学びがもっと大切にされるべきでした。そしてもっと大きな視野で「外国語を学ぶ意味」を考えるべきだったと思います。

幼き日の思い出―異文化との遭遇

ここで少し私自身の経験をお話ししましょう。私は、子供の頃から英語が好きで、大して苦労とも思わず一生懸命英語を勉強し、大学卒業後すぐに会議通訳者になりました。その後もずっと英語関連のお仕事をしています。

私の英語とのはじめての出会いは小学校6年のとき、母と始めたNHKの英語ラジオ番組でした。「英語の音やリズムってなんて素敵なんだろう!」というのが、英語に対する私の最初の印象。つまり、私は「音(耳から)」から英語に入りました。

それまで異文化との接点がまったくなかったかというと、実はそうでもないのです。幼少期は横浜で育ったのですが、近くにアメリカ人の軍人さんが住んでいました。

ある日、友達の家に遊びに行くと、同じ敷地内にそのアメリカ人と恋人が住んでいて、彼らの家の居間には背の高い、丸いテーブルが置かれていました。私はそのテーブルのまわりをダックスフントに追いかけられ、怖くて泣いたことを覚えています。記憶に残る限りでは、それが最初の異文化との遭遇でした。

小学生になってからは、近くにアメリカ人牧師が営むキリスト教の教会があり、日曜学校へ通いました。英語を習っていたわけではありませんが、クリスマスのイベントなどそこではある種の異文化教育を受けていたような気がします。

そして中学生のころは、映画のサウンドトラックが入ったテープを何度も聴きました。言葉はよくわからないけれど、テープから聞こえてくる英語の音とリズムにひたすら魅せられていました。こんな英語を話してみたい、こんな英語を話す人々の生活を見てみたいと心から思ったのです。

当時を振り返ると、私は英語を学ぶ環境において恵まれていました。そう、「環境」とはその人の人生においてとても大切なのです。英語は勉強という感覚ではなく、なにか面白いもの、未知のものとして自然に私のなかに入ってきました。
「音」から始まった英語への興味は、いつしか、異文化や多様性に対する好奇心へと大きく発展していきました。

アメリカ留学で学んだもの―言葉だけではなかった!

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その後、英語をもっと学びたい、英語が話されている国に行きたい、という気持ちが日に日に強くなり、ついに高校時代アメリカの片田舎に一年間、留学することができました。

そこにはそれまで日本で経験したことのない世界が広がっていました。広大な住宅に3台の車、大型の冷蔵庫。当時の日本はすでに発展していて、経済的にも不自由はありませんでしたが、それでもアメリカの豊かさは眩しく、遠いものでした。

1年はあっという間に過ぎましたが、生の英語を使って現地の人と交流するうちに、文化や習慣の違いだけでなく、同じ人間としての共通点がいくつもあることを知りました。また、一人ひとりのアメリカ人の優しさにも触れることができました。

もちろん、まったく嫌な思いをしなかったわけではありません。留学した年の12月8日、イングリッシュ(日本でいう国語)のクラスで先生がパール・ハーバーの話題をもち出したときは正直ショックでした。みなで何かを議論したのですが、私は元敵国の留学生と見なされたと勝手に感傷的になってしまい、議論に集中することができませんでした。

あとになってみれば、立場の異なる人間同士がひとつの歴史的事実について考える、重要な機会を先生は与えてくれたのだと思います。私は気が滅入っていたし、英語の力もまだまだ十分ではなかったので、ほとんど発言しませんでした。
しかしもっとも最悪だったのは、きちんとした意見をそのとき自分がもっていなかったことでした。

この一年を通じて、私は自分の意見をもつことや、相手と同じ言語でコミュニケーションすることの大切さを学びました。相手と同じ言語を使うことにより、相手のことをより深く理解できます。文化の背景が異なるなかで、どのように相手に伝えるのがもっとも効果的かなどについても学べた気がします。

未来の子供たちのために―英語はなんで勉強するの?

未来の子供たちのために―英語はなんで勉強するの?

どんなに優秀なAI翻訳機が登場しても、人間だけがもっている性質は変わりません。われわれは言葉を通じて相手を理解し、気持ちや愛情を確かめ合うことができます。細かい文脈を読み解き、相手によって瞬時に対応を変えられます。それが人間の強みです。

一方のAIもどんどん進化していますが、今のところ、機械は人間をアシストしても、人間の代わりになることはないと思います。

現代はインターネットやSNSを通じて多くの情報が海外から入ってきます。もしも英語が情報を伝達するだけのツールなら、無理に勉強しなくてもよいかもしれません。ただ先ほどから述べているように、英語を学ぶ目的は、言語の習得だけでなく、もっと奥深いものなのです。

幼い時期から英語を学ぶことができるお子さんたちは、とても幸せだと思います。もっとも親御さんにしてみれば、思うようにお子さんが興味を示してくれなかったり、将来ほんとうにためになるのかしらとちょっぴり疑ってみたり、日々悩んでいるかもしれませんね。

言語の習得は、環境によっても、学習の仕方によっても、いつごろ効果として現れるかというのにも、個人差があります。ですから長い目で見ることが大切です。いま与えているインプットは、いつのまにか異文化や多様性に対する興味や理解へとつながり、将来さまざまな形で花開くことでしょう。

いま英語を学んでいるお子さんたちは、英語を通じてその向こうの世界に目を向け始めている大切な時期です。ゆったりとした優しい気持ちで子供たちを見守ってあげてください。


光藤 京子(みつふじ きょうこ)先生

執筆家、異文化・英語教育コンサルタント。会議通訳、翻訳ビジネス、東京外国語大学などでの指導経験を生かした書籍、記事ブログを多数執筆。代表作の『働く女性の英語術』(ジャパンタイムズ)、ベストセラーになった『何でも英語で言ってみる! シンプル英語フレーズ2000』(高橋書店)のほか、『英語を話せる人 勉強しても話せない人 たった1つの違い』(青春出版社)、『英語だって日本語みたいに楽しくしゃべりたい リアルライフ英会話 for Women』(大和書房)、『伝わる英語 5つの鉄則』(コスモピア)など。最新作に『する英語 感じる英語 毎日を楽しく表現する』(ジャパンタイムズ)がある。

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