専門家の先生による、英語教育に関する記事

発話力を高める英単語の覚え方
今回の玉川大学 佐藤 久美子先生のエッセイでは、英単語を覚えるとき、冠詞に注意して英文をアウトプットすることの効果についてご説明いただきました。
また、『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』コーナーでは、「言葉が遅めの子どもにはどんな工夫をしたら良いの?」というご質問などにご回答いただいています。
ぜひチェックしてください!

日本人にとって難しい冠詞

次の名詞に冠詞をつけるとしたら、どんな冠詞をつけますか?あるいは、冠詞は不要でしょうか?

① hill (丘)      
② tree(木)
③ ladder(はしご)
④ stair(階段)

冠詞は疑問文の形式にすると、イメージしやすいかもしれません。
"Can you climb (    )?"という英文の(    )の中に、上の名詞を入れて言ってみましょう!

正解は次のようになります。

【解答】
① Can you climb a hill?(あなたは丘に登ることができますか?)
② Can you climb a tree?(あなたは木に登ることができますか?)
③ Can you climb a ladder?(あなたははしごに上ることができますか?)
④ Can you climb stairs?(あなたは階段を上ることができますか?)

⇒①~③の名詞には"a"をつけますが、stairは複数形を使い冠詞は不要です。

小学校や中学校で私たちが単語を習う時は、フラッシュカードや単語帳を使い、hill, tree, ladder, stairという形で学びます。しかし、この覚え方では、実際に"Can you climb ~?"と文にして言おうとしたときに、どんな冠詞をつけて良いか迷ってしまいます。

そこで、英単語を覚えるときは、日本語にない「冠詞」という概念にも注意しましょう。単語を覚えるときは、冠詞の情報も含めた形で覚えて、単語だけアウトプットするのではなく、文にしてアウトプットする練習をするのです。発話力につながります!

年齢の低いお子さまと練習するときは、丘を登る動作、木に登る動作、はしごを上る動作などをしながら言ってみましょう。子どもは体を使うと楽しく学べますし、記憶によく残ります。その時は、できるだけリズムに乗って言うことが大切です。

なお、「ディズニーの英語システム」(DWE)の教材では、"a hill"のような形で単語が提示されているので、文にしたときにすんなり発話できます!
上記の単語は、Fun With Words 3(p.15)という絵本の教材から引用しましたが、この絵本にはCDがセットになっていて、単語の発音も確認できるようにつくられています。また、マジックペン()でこの絵本をタッチすると音声や音楽が流れ、子どもが遊びながら単語の練習をすることができる教材です。

参考リンク:

ママと子どもの英語タイム

Fun With Words 4(p.21)で紹介されている単語を使って、親子で英単語を学ぶ方法をみてみましょう。

1."What's in the garden?"(庭には何がいるの?)というタイトルのページで、以下の5つの単語を確認。

① a worm(虫)
② a butterfly(蝶)
③ a bee(ミツバチ)
④ flowers(花)
⑤ the gardener(庭師)

2.それぞれの単語の発音をマジックペンやCDを使って反復練習する。

3.親から子に"What' s in the garden?"と質問して、答えを促します。
(虫がいる場合の回答例)
A worm.
A worm is.
A worm's in the garden.(=A worm is in the garden.)

子どもの答え方は3通りありますが、子どもの年齢などに応じて使い分ければ良いと思います。
大切なことは、リズムに乗ってママとお子さまが応答することです。
手拍子をしながら、「1、2、1、2...」とリズムに乗って、次のような会話を練習してみましょう。とても楽しくなりますよ!

【会話の例】
母:What's in the garden?
子:A butterfly's in the garden.(蝶が庭にいます。)

母:What's in the garden?
子:A bee's in the garden.(みつばちが庭にいます。)

母:What's in the garden?

子:Flowers are in the garden.(花が庭にあります。)

母:What's in the garden?
子:The gardener's in the garden.(庭師が庭にいます。)

公園に行ったときは、gardenの部分をparkに変えて話しかけると、状況に合った質問が楽しめるのでおすすめです。動物園に行ったときは、zooに変えることもできます。

学校などの英語のレッスンでは、学習に入る前に、"Warm Up"とか"Ice Breaking"と呼ばれる活動をよくします。これは口ならしの一種で、簡単なアクティビティを行うことで、緊張をほぐし、すらすらと英語を口に出せるようにするための活動です。
上記のようなちょっとした英語のやりとりは、親子で英語学習をする際の口ならしになります。DWEのFun With Wordsを使ってお子さまと楽しくWarm Up(準備運動)してみましょう。
子どももママもパパも英語を話すときによく口が回るようになり、楽しく英語が話せるようになってきますよ。
今後もDWEを使ってお子さまと一緒に英語を学ぶ方法をお伝えしていきますのでお楽しみに!

『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』第10回:言葉が遅めの子どもにはどんな工夫をしたら良いの?

英語教育お悩み解消Q&A第10回

◆DWEユーザーの方からのご質問◆

3歳のわが子は集団生活をしたことがないとはいえ、言葉が遅めです。
歌もあまり好きではないのか、まだ一曲通して歌える歌はなく、日本語・英語ともにほとんど歌いません。
このような子どもが未就学児の頃から英語に触れるには、どういう工夫をしたら良いでしょうか。


◆佐藤先生のご回答◆

まずは、絵本を試してみましょう。言葉のアウトプットは遅くても、保護者が話しかけている内容は十分に理解できます。大人でも、無口な方で本が好きな方をよく見かけますよね。
お子さんが好きな絵本を選んで一緒に読んだり、イラストについて話したりしてみましょう。
絵本に出てくるキャラクターをクレヨンで描いたりしても良いと思います。その横に、そのキャラクターの名前を英語で書いてあげてもいいですね。

また、お子さんは体を動かすことは好きですか?
"Jump."(跳ねて。),"Run."(走って。)、"Walk."(歩いて。)、"Stand up."(立ち上がって。)、"Sit down."(座って。)、"Hop."(跳んで。)など、動作を英語で言いながら、親子で一緒に動いてみましょう。
"Walk, walk, walk, stop!"(歩いて、歩いて、歩いて、止まって!)という風に言いながら、ママやパパと一緒に立ち止まるゲームをすると子どもはとても喜びます。

また、もう少し複雑なジェスチャーを親子でやってみるのも楽しいものです。
"Push."(押して。)、"Pull."(引っ張って。)、"Paint."(絵を描いて。)、 "Play the piano."(ピアノを弾いて。)、"Play baseball."(野球をして。)、"Cook."(料理をして。)、"Watch TV."(テレビを見て。)、"Sleep."(眠って)...などなど、色んな動作を英語で言いながら体で表現してみましょう。

大切なことは、子どもが興味のあるところから始めること。
色々な方法を試して、お子さんに合った方法で英語に触れさせてあげてください!


佐藤久美子先生近影

佐藤 久美子先生

玉川大学大学院 教育学研究科(教職専攻) 脳科学研究所 教授。
長年、子どもの言語獲得・発達の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。
2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの「えいごであそぼ」、「えいごであそぼwith Orton」の総合指導を担当。

専門家の先生による、英語教育に関する記事