専門家の先生による、英語教育に関する記事

リズムとイントネーションの大切さ

イントネーションは言葉の枠のようなもの

イントネーションは"言葉の枠"と言われています。どの言語でも、言葉を身につけるとき、個々の単語の意味や発音より先に、リズムやイントネーションが脳に入ってきます。喃語(※)を話し始める生後6カ月くらいのころには、言葉のイントネーション・ パターンをとらえているとさえ考えられています。
例えば、街でご両親に喃語で話しているお子さんを見かけることがありますね。ご両親は何を話しているかわからない様子ですが、よく聞いていると、その音は日本語的なもので、日本語を言っているとわかります。日本語のイントネーション(枠)をしっかりと身につけているのです。
もうひとつ、私自身の体験ですが、研究のために渡米して6カ月経ったころのこと。当時2歳だった娘が、友だちと喃語で話をしていました。アメリカで育った友だちは、会話のなかに英単語が少しは入っているのですが、それ以外はすべて喃語。 けれども、まるでネイティブ・スピーカーのふたりの子どもが英語で話をしているように聞こえたのです。娘は、わずか半年のうちに、英語的な音やイントネーションを身につけていたので、会話が英語的な音に聞こえてきたというわけです。
喃語の時期を過ぎ、発話を始めたときに、しっかりとした言葉を発しているわけではないのに、子どもの言っていることがなんとなくわかる、ということがあります。それは、言葉のイントネーションをしっかりとつかまえ、それを音にしているからなのです。
アメリカの言語学者フリーズ (Charles C. Fries) 氏の著書に、個々の音の正確さよりも、ピッチやイントネーションのほうがコミュニケーションをとるうえで大事だということが記されています。

アクセントは言語によって違う

英語は強弱アクセント、日本語は高低アクセントと言われているとおり、言語によって、アクセントやイントネーションは違います。英語は大切なポイントを強く言い、残りの部分は短くクシャっと縮めて言います。それに対して日本語は言葉の強弱はあまりなく、ペースの急な変化もほとんどありません。
子どもは、リズムやイントネーションを聞くなかで、アクセントにもふれていきます。ですから、英語をイントネーションを含む文の形で聞くこと、またふれ続けることが、アクセントを無理なく身につけていくうえで、大事になってくるのです。特に、言葉をカメラのように、枠ごとパッととらえる右脳の活発な時期のお子さんは、自然なリズムやイン トネーションを吸収するのにとてもよいタイミングにあるといえます。

歌やチャンツを繰り返し聞くことでイントネーションが脳に浸透する

右脳の活発な8歳くらいまでのお子さんは、恥ずかしがらずに外国語のリズムやイントネーションを実践します。それも、早期英語教育をすすめる理由のひとつです。小さいお子さんは、何回も何回も飽きずに聞き、楽しんで発音を繰り返します。
DWEのTalkalong Cardsや、歌で構成されているSing Along!のDVDやCDも、とても効果的です。センテンスごとに聞けるため、それが枠として残り、繰り返し聞くことで、英語が子どもの脳に自然としみ込んでいきます。それらが脳に蓄積され、左脳で規則化されていくのです。子どものひとり言も、じつは、こういった言語習得過程のひとつ。繰り返し言葉で遊びながら、正しい話し方を身につけているのです。
歌やチャンツ(言語をリズムで覚える学習法)は、 リズミカルにフレーズを繰り返したりするので、とても有益で、楽しい英語習得には欠かせないものといえます。

英語を親子でいっしょに楽しむ

力ナダのバイリンガル教育の研究によると、保護者が子どもの第2言語(外国語)習得に理解があり、積極的に関わっている家庭と、そうでない家庭では、子どもの習得に対する姿勢と効果に大きな差があったという結果が出ています。英語学習を押しつけるような態度は禁物ですが、いっしょに"英語を遊びながら覚えること"に興味を示し、積極的に関わってあげればお子さんによい影響を及ぼすでしょう。
言葉の習得は漢字や数式のように、"覚える(暗記する)"ものではなく、時間をかけて脳に蓄積された後、徐々に、自然に出てくるもの。母語の習得と同じで、少しずつ英語らしい形が整ってくるのです。
場合によっては、英語と日本語が混ざることもあるでしようが、心配はいりません。言葉を習得する過程では、声に出して発する能力よりも、聞いて理解する能力の方が先にでき上がります。
「あれ持ってきて」とか「そちらへ行って」といった 英語の指示にちゃんと反応できるお子さんに感心された方もいらっしゃると思います。私の子どももアメリカにいたころ、パーティなどで、"How old are you?" と聞かれると、「フィー」 (Three) と答えていました。リズムやイントネーションが身についているからこそ、言われた言葉の意味を理解できたのですね。
言葉の習得プロセスを理解して、お子さんと英語を楽しむ時間を少しずつ楽しんでいきましよう。

※喃語:生後6カ月ごろになると、子音と母音の反復音として発する"パパ"、"バブ"のような音連続のこと

DWEは、ネイティブ・スピーカーが話す自然で正しい英語、また状況に合わせた映像と音声を同時に提供することを大切にしています。そのなかのひとつ、Sing Along!は、英語の自然なリズム、イントネーションや強勢を崩さずにメロディをつけてあり、たくさんの歌を楽しく聞いているうちに、英語独特の音の特長だけでなくリズムやイントネーション、文法の枠組みも身につくようにつくられています。

伊藤克敏先生近影

伊藤 克敏 先生

神奈川大学名誉教授
日本児童英語教育学会(JASTEC)顧問
英国国際教育研究所(IIEL)顧問
国際外国語教育研究会会長

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