専門家の先生による、英語教育に関する記事

意味のある言葉をインプットすること

神奈川大学名誉教授 伊藤克敏 先生にお話を伺いました

英語をインプットする方法はいろいろとあります。 ご両親が学生のころ、テスト前に英単語を丸暗記したのも、インプットのひとつ。でも、その英単語いまでも覚えているという方は多くないのではないでしょうか。それはなぜでしょう?

場面や状況と関連づいた言葉ほど、理解しやすい

言葉を覚えるためには、場面や状況を伴った"意味のある言葉"を理解しながら、できるだけたくさんインプットすることが大切なのですが、丸暗記のような方法ではそれができないからです。特に小さなお子さんは、目の前で起きていることと関連する言葉がセットになって初めて、理解、吸収していくことができると言われています。例えば赤ちゃんは食事のとき、お母さんに「おいしいね」と話しかけられて、「おいしい」という言葉を覚えますね。しかし、食べものがないところで「おいしい」という言葉の意味を教えても、理解することはできません。赤ちゃんや小さなお子さんの興味は"here and now(この場所と現在) "だけに集中していますから、目の前で起きていないことないことについて話されても理解が難しいのです。

左脳が発達する前の6歳ごろまでは、言葉と意味を機械的に覚えさせるのではなく、言葉と場面や状況、感情や動作などが結び付いた"意味のある言葉"すなわち"理解できる言葉"をインプットするほうが、早く確実に言葉を身につけることができます。「着替えましょうね」などと言いながら、実際にその動作を行うというように、いつも親といっしょにする動作に言葉がついてくる。それがいいのです。そして親は、お子さんの成長とともに変わっていく興味や能力に合った、理解、吸収しやすい言葉にふれられる環境をつくってあげることが大切です。赤ちゃんのころは、食事やお昼寝など本人の身のまわりのこと、幼稚園に入ってからは毎日のお出かけ時や帰宅時の会話、小学校からは興味のある科目や遊びなどについて話すのもよいでしょう。

言葉+アクションの組み合わせで学習効果をアップ

"意味のある言葉"のインプットに欠かせない要素のひとつ、アクション(動作)について、アメリカの著名な心理学者であるジェームズ・J・アッシャー博士は、言葉とアクションをセットにして教える全身反応法(TPR=Total Physical Response)という教授法を提唱しています。以前、ある大学でアッシャー氏によるデモンストレーションを見たことがあります。まず先生が「座る」「立つ」などの言葉を発しながら動作をして、それを生徒たちが真似して行う。これをわずか15分ほど繰り返しただけで、生徒のほとんどが、それまでなじみのなかったスペイン語の単語を20〜30も記憶し、先生の指示を聞いただけで正しく反応できるようになったことに驚きました。言葉だけを教えるのではなく、アクションを組み合わせたことで、たくさんの言葉を覚えさせることができたのです。

日本にも、『むすんでひらいて』のようにアクションと言葉がセットになった遊び歌がありますが、全身反応法というのはまさに遊び歌と同じ仕組みです。最初は歌詞の意味もわからずポーズを真似しているだけなのに、何度も繰り返すうち、だんだん言葉の意味がわかっていき、脳に吸収されていく。実際に体を動かしながら言葉を覚えることは、早くたくさん吸収できるだけでなく、一度吸収したら忘れにくいという点でも非常に効果的といえるでしょう。

「楽しい!」という感情が、記憶のスピードと定着性を高める

"意味のある言葉"には、さまざまな感情がつきものです。そして、この感情も、お子さんの言語習得の過程において重要な役割を果たします。なぜなら、「楽しい!」「おもしろい!」「感動した!」など、その人にとってよい感情とともにインプットされた情報は、すぐに記憶に刻み込まれ、時間が経っても忘れにくい長期記憶としてずっと残るからです。

そういう意味で、DVや絵本などの教材は「登場人物と感情を共有する」「(家族と)いっしょに見て楽しむ」などを意識して使うといいでしょう。物語や歌の場面とともに、「あのときはお母さんといっしょにおしゃべりしながら見て、楽しかった」という記憶が言葉の定着を支えてくれます。"Let's enjoy English together!"をモットーにしたいですね。

またイベントなどに参加するのもいいでしょう。ストーリーに感情移入して楽しめるのはもちろんですが、自分で行うアクションもたっぷりで、お子さんはたくさんの英語を吸収できます。さらに先生たちと英語でコミュ二ケーションをすれば、よりー層自分の言葉として、定着することでしょう。
お子さんからなかなか英語が出てこなくても、あせる必要はありません。声に出す前にも、お子さんはちゃんと英語を聞いています。大切なのは、発話の前に"意味 のある言葉"、"理解できる言葉"をたっぷり聞かせてあげること。そしていっしょに楽しむこと。「楽しい」という感情とともに、英語が脳の中にどんどん蓄積されて、いつかわき出すようにお子さんの口から英語が出てくる日が来るはずです。

ご自分もいっしょに楽しみながら、気長に英語にふれていきましょう。

「ディズニーの英語システム」は、場面や状況と関連づけた"意味のある言葉"を提示することに細心の注意を払って制作された教材であり、伊藤先生がおっしゃっている、子どもが言葉を習得する仕組みを丸ごと英語習得システムとして与えることができるユニークな構造になっています。そのため、通常の教材でも覚えられるような名詞や動画だけでなく、比較的習得の難しい形容詞や副詞、その他の品詞や文法の使い分けまでも、母国語と同様に自然に覚えることができのです。

伊藤克敏先生近影

伊藤 克敏 先生

神奈川大学名誉教授
日本児童英語教育学会(JASTEC)顧問
英国国際教育研究所(IIEL)顧問
国際外国語教育研究会会長

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