専門家の先生による、英語教育に関する記事

脳の発達と年齢ごとの学び方について

神奈川大学名誉教授 伊藤克敏 先生にお話を伺いました

今回は、子どもの脳の発達と英語習得の関係について考えてみたいと思います。
最近、脳に対する関心が高まっていることもあり、私たち人間の脳が右脳と左脳に分かれていることや、それぞれの脳が異なる機能を担っていることは、みなさんもよくご存知でしょう。一般的に、右脳は感情的、直感的、音楽的、全体的なものを司り、左脳は理性的、分析的、論理的、記号的なものを司るといわれていますが、近年の研究により、子どもの成長過程において、右脳と左脳では発達のスピードに差があることがわかってきました。

敏感期を過ぎたら、達成感を心の励みに

イントネーションなど音に対する感受性は年齢が上がるにつれて低下し、音に対する敏感期(センシティブ・ピリオド)は6歳ごろまで、というのが現在の定説です。そもそも子どもの聴覚は妊娠6ヶ月ぐらいの胎児の段階ですでにできあがっているといわれており、英語的な音への感受性を身につけるには、開始年齢は低ければ低いほどよい(the younger, the better)と言われています。6歳より4歳、4歳より2歳でその音にふれ始めるのが望ましいといえるでしょう。もちろん、10歳だから、もう英語は習得できない、ということではありません。左脳が活発になった年齢のお子さんでも、敏感期のお子さんと同じく歌やDVDなどを利用して何度も何度も正しい発音を繰り返し聞くことによって、英語的なイントネーションや音に対する感受性を養うことができます。兄弟姉妹やお友だちといっしょに、楽しみながら、ときに競い合って学べる環境をつくってあげましょう。年齢の違うお子さん同士で学ぶことは、双方にとっていい刺激になり、とても効果的です。また、達成感を得る喜びをしっかり感じられる年齢のお子さんだからこそ、心の励みになるようなもの、例えばごほうびなどでモチベーションをもたせてあげるのも、いい方法だと思います。

英語とのふれ合いが子どもの好奇心を育てる

英語に限らず、脳が柔軟な小さいときから外国語にふれたお子さんには、日本語のみのお子さんに比べて好奇心旺盛な人間に育つ土壌があります。ある外交官の言葉に、「外国語は世界への窓」というものがあります。英語という外国語にふれることによって、お子さんは、世界には日本語以外の言葉を話すさまざまな人たちがいることや、彼らがそれぞれ異なった文化をもっていることを自然に理解していくのです。そして、自分とは異なる外見や文化、考え方などに対して寛容になり、偏見のない、柔軟な心をもった大人へと成長することでしょう。以前、中学生約1,000人を対象にアンケート調査を行ったのですが、小さいときから外国語にふれていた子どもたちは、そうでない子どもに比べて、外国に行ってみたいとか、もっといろいろな言葉を知りたいという欲求が強い、という結果が出ました。外国語という窓を開いてあげることで好奇心が刺激され、"学びたい"という意欲が強まるのだと言われています。
英語やほかの外国語を学ぶことは、単に語学の習得だけにとどまらず、お子さんの心の成長や人格形成にも大きな影響をもたらします。小さなころから親子で楽しく英語にふれ、世界に対する広い心をもった、好奇心いっぱいのお子さんを育てましょう。

伊藤克敏先生近影

伊藤 克敏 先生

神奈川大学名誉教授
日本児童英語教育学会(JASTEC)顧問
英国国際教育研究所(IIEL)顧問
国際外国語教育研究会会長

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