前編に引き続き、英語にふれることで広がる豊かなコミュニケーションの魅力を、玉川大学の佐藤 久美子 教授にうかがいます 。
佐藤先生の研究によれば、お母さまの発音や英語の語彙力と、子どもの発音や語彙力とを比較したところ、相関関係がなかったそうです。英語が苦手なお母さまにはうれしい結果ですね。「お母さまが英語が得意でも苦手でも、お子さまと一緒に英語を楽しもうとすれば 、お子さまは一緒に楽しみます」と佐藤先生はおっしゃいます。後編では、具体的に英語を楽しむコツをうかがってみます。
佐藤先生インタビュー後編 :
日常生活の中で英語を取り入れるコツと、「英語でつまずかせないための5か条」
Q8.英語絵本の読み聞かせはとても効果があるそうですね
Q9.どんな絵本を選べば良いでしょう?
Q10.小さい赤ちゃん に日本語に訳さず英語のまま読んで良いのでしょうか?
Q11.CDやDVDもお母さまと一緒に楽しむと良いのですね
Q12.どんな英語の歌を歌ってあげれば良いでしょう?
Q13.「子どもを英語でつまずかせないための5か条」とは?
Q14.お母さまが子どもと楽しむことが大切なのですね
Q8.英語絵本の読み聞かせはとても効果があるそうですね。
お母さまが気持ちを込めて絵本を読むことはとても大切です。そして、読み方を工夫されているお母さまのほうが、子どもがよく聞き取れています。お母さまが絵本を読みながら赤ちゃんの目やおへそを指さしたり、ふれながら、`eyes'、`These are eyes'、`belly button' と、はっきり、ゆっくり語りかけたりしてあげると、赤ちゃんの聞き取りに大きな差がでます。また、英語の母語児は、強弱のアクセント・パターンをヒントにして単語を聞き取っていますから、アクセントをしっかりつけて発音することがとても大切です。
Q9.どんな絵本を選べば良いでしょう?
赤ちゃんのうちは、とにかく動物が好きです。色も、赤・緑・青など、カラフルではっきりした色の絵本が大好きです。子どもは絵本を読みながら推測しますから、自分の日常生活に近いもので大好きなママがでてくると喜びます。基本は短い文で繰り返しが多いもので、自分と同じくらいの子どもとパパやママ・お兄ちゃんやお姉ちゃんがでてきて日常生活が描かれているものから、少しずつ異文化の要素が入ってくると楽しいですね。
Q10.小さい赤ちゃんに日本語に訳さず英語のまま読んで良いのでしょうか?
3、4歳になると「日本語で読んで」といわれることが多い英語の絵本も、小さなお子さまの場合は英語のまま理解します。また、音声が出るペンなどの音響教材を利用しながら、絵本の読み聞かせをすると、ネイティブそのままの発音を繰り返すこともできます。
Q11.CDやDVDもお母さまと一緒に楽しむと良いのですね
3歳~5歳のお子さまは、3週間ほどCDを聞いただけで、単語を母語話者に近い正確さで発音できるようになります。映像のフレーズを、お母さまが繰り返し生活の場面に取り入れるとさらに効果的です。出かけるときに「準備できた? Are you ready ?」と声をかけるなど、ひとかたまりのチャンク(意味を成す語群)や文ごと取り入れて話してみましょう。
Q12.どんな英語の歌を歌ってあげれば良いでしょう?
0歳児でも、何曲か歌ってあげると、これが好きというお気に入りの歌が必ずあります。子どもが大好きな手遊びの歌や子守唄などを、生活のシーンに合わせて取り入れ、毎日の習慣にすると、英語を自然に継続することができて楽しめます。英語の歌は日本語の歌とはずいぶん響きが違うので、おうちの中が とても明るくなりますよ。
Q13.「子どもを英語でつまずかせないための5か条」とは?
前編でもお話したように、①お子さまにすぐ応答すること、話すときは、②短く話してお子さまが話す時間をつくること、③ゆっくり話すこと、はとても大切です。
この3つのほかに、④強要しないこと。英語の絵本を読もうとしたときに、お子さまが「いやだ、日本語のほうがいい」といったら、日本語の絵本に切り替えましょう。
⑤お子さまの興味があるものを見つけてあげて、気持ちによりそうこと、も大切です。
お子さまが好きなことは、お母さまが好きなこととはちがう場合もあります。英語の歌やダンス、ABCのお絵かき、積み木など、お子さまの好きなことに英語を取り入れて一緒に楽しみましょう。
Q14.お母さまが子どもと楽しむことが大切なのですね
お子さまが小さいうちはお母さまもとても忙しいので大変なことが多いのですが、ふりかえると、この時期が密で一番楽しい時間です。お母さまと楽しく英語にふれたという記憶は、お子さまの中でいつまでも続き、将来の英語好きを育てます。この時期にお母さまとすごした楽しい時間は、お子さまのコミュニケーションの土台になります。お母さまはぜひ楽しい気持ちでこの時期を過ごしてください。
後編まとめ
佐藤先生は、「コミュニケーションの土台には、相手の気持ちを理解しようとする気持ち ・自分の意思を伝えようとする気持ちがあるので、その素地を養うためには 、小学校までの子どもには、情報を伝えるよりも、情感を伝えることが大切」だと指摘されています。親子のこころのふれあいを大切にしながら、毎日の生活の中に楽しく英語を取り入れたいですね。
プロフィール:佐藤 久美子(さとう くみこ)
津田塾大学大学院文学研究科博士課程修了。ロンドン大学大学院博士課程留学。2007年度より町田市や稲城市の教育委員会の委託を受け、カリキュラムや教材作成の他、教員対象の小学校英語活動トレーニング講座を多数開講。東京都の外国語教員研修も担当。小学校英語指導者認定協議会理事。
『こうすれば教えられる小学生の英語』(朝日出版、2010年)、『小学校英語「小学校英語」指導法ハンドブック』(共著 玉川大学出版部、2005年)など著書、英語教材を多数執筆。