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専門家の先生による、英語教育に関する記事

小学校英語で求められている「言語活動」って何?家庭でできることは?

2020年4月から、小学校では新学習指導要領に基づく英語活動・英語教育がスタートしましたが、実は英語教育は小学校から高校まで共通点がとても多いことをご存じでしょうか。
特に2020年度から改定が行われた学習指導要領では、「言語活動」が小中高校共通で最も重視されています。
なぜ、言語活動が大切なのか、そして、家庭で何ができるのかについて、お話ししたいと思います。

小学校・中学校の外国語科の目標

改定された新学習指導要領では、外国語科の目標が次のように掲げられています。
今回の改定のポイントとしては、

①小学校・中学校・高等学校の各段階の学びを接続させる。

②「外国語を使って何ができるようになるか」を明確にする。

ことが盛り込まれました。

小学校から高等学校までの外国語科の目標を、より詳しく見てみましょう。

外国語科の目標
「言語活動」の設定・「言語活動を通して」

1. 外国語活動(小学校3~4年生)
外国語によりコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、話すことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

2. 小学校外国語科(小学校5~6年生)
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

3. 中学校外国語科
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動を通して、簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

4. 高等学校外国語科
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動及びこれらを結びつけた統合的な言語活動を通して、情報や考えなどを的確に理解したり適切に表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

小学校から高等学校まで共通の「外国語科の目標のおけるポイント」として、「言語活動を通して」というフレーズが見受けられます。

「言語活動」とは、どういった活動を指すのかというと、「小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック」(2017年 文部科学省)に、次のように書かれています。

「言語活動」とは

・「実際に英語を使用して互いの考えや気持ちを伝え合う」活動

・「情報を整理しながら考えなどを形成するといった『思考力、判断力、表現力等』が活用されると同時に、英語に関する『知識及び技能』が活用される」

つまり、英語を用いてはいるが、単に歌を歌ったり、単語や表現を反復練習したり、機械的に文字を書くのは「練習」であり、「言語活動」とは言いません。さらに、詳しい内容については、次のように書かれています。

・児童が進んでコミュニケーションを図りたいと思うような、興味・関心のある題材や活動を扱う

・決められた表現を使った単なる反復練習のようなやり取りではなく、伝え合う目的は必然性のある場面でのコミュニケーションを大切にしたい

つまり、単語や表現を単に暗記するのではなく、自分の考えや言いたいことを伝えること、相手の言っていることを聞こうとすることが、言語活動と言えるのです。
そこで、例えば小学校では単元の終わりに、自分の調べたことについて英文に起こし、内容を整理し、みんなの前で発表したりします。

中学校でも、言語活動を中心とした授業がだんだん行われるようになってきて、単元の終わりには、スピーチ・パフォーマンステストと呼ばれる、スピーチのテストが行われます。場面を設定して、その場面にふさわしい人物になりきって英語でやり取りをして見せたり、読み物について、自分なりの考えや意見や感想を発表したりします。

外国語科の授業内容や学習指導

また、新学習指導要領で改定された授業の内容や学習指導についても、より詳しくご説明します。

対話的な言語活動をより重視
小学校では、「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」の4技能が5~6年生から導入されましたが、「話すこと」には「やり取り」と「発表」の2領域が設定されています。ここからも、友達や教師と英語で「やり取り」をすることの大切さが強調されているのがわかります。

語彙数の増加
昨年までは小学校では260~280語程度、中学校では1200語が必修学習語彙でしたが、小学校では600~700語、中学校では1600~1800語程度に学習語彙が増加しました。

文、文構造の項目追加
小学校では
"I went to my grandmother's house. I ate oshiruko. It was delicious."
(おばあちゃんの家に行きました。お汁粉を食べておいしかった。)

のようなスピーチが行われ、went, ate, had, sawなどのよく使われる不規則の過去形が使われるようになりました。主語としてHeやSheも導入され、"He can dance well." "She can write a lot of kanji."のように、canと共に使われます。

小学校では、3・4年生で学習した表現を5・6年生では定着させるために、いろいろな場面でくり返し活用するように明記され、中学校でも、語彙や表現などを異なる場面の中で繰り返し活用することにより、生徒が自分の考えなどを表現する力を高めることが明記されています。
中学校では、授業は英語で行うことを基本とすることが、新たに規定されました。教員にも英語力、特に「話す力」と「やり取りする力」が一層求められることになっているのです。

保護者がサポートできることは?

保護者がサポートできることは?

では、小学校で行われる言語活動を中心とした英語活動・教育の準備をするためにも、親ができることは何か、考えていきましょう。

1. CDや映像教材を活用し、正確な発音や表現に慣れる

まずは、ディズニー英語システム(DWE)などの教材を活用し、単語やフレーズをよく聞き、正確な発音や言い回しに慣れます。未就学児は特に耳が良いので、良いインプットを与えられると、そのままの音やフレーズを自然に覚えることができます。基礎力がつきます。反復力は、最終的には日常的な場面における自然な発話の発生につながります。

2. 不足している語彙をどのように獲得させるのか

"What' your name?"
"My name is ○○."

(名前は何? ○○よ。)

"What color do you like?"
"I like pink."

(何色が好き? ピンクが好き。)

"What animal do you like?"
"I like monkeys."

(どんな動物が好き? サルが好き。)

"What time do you get up?"
"I get up at seven."

(何時に起きるの? 7時よ。)

"What do you have for your lunch?"
"I have sandwiches, an apple and milk."

(ランチには何を食べるの? サンドイッチとリンゴと牛乳だよ。)

例えば、上記のような目標表現(言語材料)が教材で提示されていたとします。
下線が施された色、動物、1日のスケジュール、食べ物などについて、さらに教材に示された単語を学びます。そして、その単語に入れ替えた表現を言えるようにします。
ここまでが、通常のレッスンの流れになります。

しかし、これはすべていわゆる「練習」に当たり、「言語活動」ではありません。自分が本当に伝えたいことを話したり、お友達に聞いてみたいことをたずねたりできたときに、コミュニケーションのやりとり、すなわち言語活動と認められるのです。

そこで、もしお子さまが本当に伝えたい色や動物や食べ物などが教材に載っていなかったときは、すぐに辞書などで調べたりする必要があります。そこで、今後はぜひご家庭に英和・和英が合体されているような辞書を置くことをオススメします。

お子さまに「トカゲは英語でなんて言うの?」と聞かれたときに、すぐに辞書を調べて「lizardよ!」と答えてあげることが大切です。子供は、自分が本当に伝えたいことを英語で話したいのです。小学校でも、最近英語の辞書を教室に置くところが増えてきました。辞書で行きたい場所やほしいものなどを調べられるので、子供たちの話したいという気持ち、動機づけが強くなったと小学校の先生方が話されています。

3. どんな辞書がオススメ?

和英と英和の両方が載っている、合本版の辞書をオススメします。和英・英和が別冊になっていると、子供たちが和英辞典しか引かないことが多いからです。
単語のふさわしい使い方を示している英和辞典を引くことが大切です。

例えば6年生で、移動教室(修学旅行)の内容を表すスピーチを行う際に、

"I went to Nikko. I saw a shrine."
(日光に行きました。神社を見ました。)

という文を、教室で習いました。しかし、その子は神社ではなく、お寺に行ったことを伝えたいと思いました。

和英辞典で「寺」を調べます。

てら 寺 temple[テンプル]

と載っています。次に、再度、英和辞典でtempleを調べます。

temple [templ テンプル]
temples 神殿;寺、寺院
Todaiji Temple 東大寺

参考:佐藤久美子(監修)『新レインボー 小学英語辞典』(2019,学研)

すなわち、英和辞典を引いて初めて、○○寺と言いたいときは、神社の名前と寺の部分の最初のTは、大文字を使って書くことがわかります。

このように、英和辞典は、特に使い方がわかる例文が載っている辞典をオススメします。単語の意味を書いているだけでは、役立ちません。

さらに、こうした紙の辞書はカタカナで読み方が表記されていますが、正確な発音を再現するのは難しいのです。CDなどが付随している辞書もありますが、実は電子辞書もオススメです。例えば小学生向きの電子辞書にはリズムに合わせて単語練習ができる機能や小学生用の百科事典などが搭載されているものもあり、教科横断型英語学習(社会や理科で習ったことを英語で学習したり発表したりする学習方法)を行うときには、内容も調べることができるのでオススメです。

4. 子供の興味・関心のある話題で、日頃から話す訓練をしよう!

英語で話す前に、日本語でも日頃から話す練習が必要なのです。保護者といっぱい話している子供は、言いたいことを整理したり、相手の身になって話す順序を考えたりと、うまくコミュニケーションをする訓練をしていることになります。ただし、保護者の方も、子供が興味・関心のある話題に乗ってあげることが必要だと思います。

小学校では、夏休み明けにはどんなことをしたか、日本語でも英語でも発表する機会があります。そんなとき、日本語でも具体的に話すことができる子供は、辞書などの助けがあれば、英語でもうまく発表できます。日頃から、ぜひお子さまと楽しく話す機会を多くもっていただけることが、英語で言語活動をする力にもつながると思います。


佐藤 久美子先生

玉川大学大学院 教育学研究科(教職専攻) 名誉教授。
長年、子供の言語獲得・発達の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。
2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの『えいごであそぼ』、『えいごであそぼwith Orton』の総合指導、2017年からNHK eテレ『エイゴビート』の番組委員を担当。教育委員会や小中学校でも、多数講演を行っている。

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