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専門家の先生による、英語教育に関する記事

チャンキングでスラスラ学ぶ英文法【慶應義塾大学名誉教授・田中茂範先生】

突然ですが、みなさんは「英文法」にどんな印象をもっていますか?おそらく多くの人は、「難しい」とか「嫌い」とか、ネガティブな反応をするのではないかと思います。
しかし、文法のない言語は存在しません。

英語に関していえば、「文法力なくして英語力なし」と言えるでしょう。英語を母語とするネイティブの幼児は、5歳頃までに英文法力の基本のほぼ全てを身に付けるといわれています。だとすれば、普段英語にふれる機会に恵まれにくい日本人の子供たちは、より一層英文法力を身に付けていくことが必要ということになります。

そこで生まれる問題が、「英文法力とは何か」そして「どうやって英文法力を身に付ければ良いか」の2つです。

英文法力とは何か

英文法力とは何か

英文法といえば、中高時代に使った「学習英文法」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし実際は、そのあり方が決まったものではないのです。
ただ確実にいえることは、文法は表現するためにある、ということで、文法力とは、文を自在に作り出すことができる力のことだといえるでしょう。

ここで「文法知識」と「文法力」を区別しておく必要があります。
「不定詞」「関係代名詞」「比較級」などの文法の部品について知っていても、それが文法力であるという保証にはなりません。また、文法問題を解くことが文法力でもありません。
繰り返すと、文法力とは「問題を解く」ためのものではなく、表現として文を作り出すために使うものであり、自分の作った英文を自己編集(self-edit)するために使うものなのです。

どうやって英文法力を身に付ければ良いのか

どうやって英文法力を身に付ければ良いのか

では、そうした文法力をどうやって身に付ければ良いのでしょうか。英語圏の幼い子供の場合、英語を自然に使っている中で、知らず知らずのうちに身に付けることができるでしょう。
しかし、英語が日常言語ではない日本のような状況で文法力を身に付ける場合、なかなか「自然に」という具合にはいきません。そこで、英文法を「学ぶ」ということが必要になるのです。文法力をどうやって学べば良いでしょうか。そのヒントは「チャンク」という考え方にあります。

チャンクとチャンキング

ここでいう「チャンク」とは、「意味のかたまり」のことをいいます。Give me a break.(いい加減にしてよ)やas a result.(その結果)はチャンクです。
I don't know when the game began.(いつ試合が始まったか知らない) だと、I don't know.とwhen the game began.の2つのチャンクから構成されていると考えることができます。
会話で、人はチャンクを連鎖させながら表現していきます。ここではチャンクの連鎖のことを「チャンキング」と呼びます。

このチャンクとチャンキングで、いわゆる「不定詞」を自然に学ぶという方法があります。これを「チャンキング学習法」と呼びたいと思います。とても有効かつ、学ぶ側からすればとてもやさしい学習方法です。

チャンキングで学ぶ不定詞の使い方

筆者がオススメするチャンキング学習法は、チャンクを選択してそれをつなげ、英文を作り声に出して表現するというものです。今回はこのチャンキング学習法を使い、英文法の中でもつまずきやすいポイントの1つ、不定詞「to」を例に実践していきましょう。

実践に入る前に、1つ確認しておくべきことがあります。
それは、これから取り上げる英文法「to」には、前置詞としての働きと不定詞としての働きの2つがあるということです。toはいずれの場合も「何かと向き合う」関係を表しますが、以下にまとめたように、前置詞のtoは空間的な物や場所に向き合うことであるのに対し、不定詞のtoは時間的に行為に向き合うことをいいます。

前置詞toと不定詞toには共通点がある

前置詞toと不定詞toには共通点がある
前置詞to:空間的な物や場所に向き合う
    
I went )to(the convenience store.

不定詞to:時間的に行為に向き合う

I want )to(go to the convenience store.

I went to the convenience store.といえば、実際に、コンビニに行ったということです。この前置詞のto はface to face (面と向き合って)、back to back (背中合わせで)、the key to the door (ドアに合うかぎ)などの用例があるように、「何かに向き合う」という意味があります。

一方、不定詞のtoは向き合うといっても、時間的に行為と向き合う関係を表しています。I want to go to the convenience store.の場合、話し手は I wantで何かを望んでいる、それは何かといえばto go to the convenience store(これからコンビニに行くということ)となります。

to do は「これからする何か」

「時間的に行為(すること)と向き合う」ということは、「これからする何か」に当たるということです。例えば、to go to Hawaii だと「これからハワイに行くこと」、to study hardだと「これから頑張って勉強すること」という意味合いになります。実際に子供が不定詞を学ぶ際、このような説明は不要ですが、「これからする何か」ということだけは、理解させたいところです。

ここで2つ、あるいはそれ以上のチャンクをつなげる作業を行いますが、上記の通り、そういう作業のことを「チャンキング」と呼びます。
例えば、話し手の気持ちを表すチャンクAと、これから行うことのチャンクBの表現例を、以下のようにリストで示します。その上で、子供に自由に2つのチャンクをつなげて文を作らせます。

話し手の気持(チャンクA)

I really want ぜひ~したい
I hate 絶対に~したくない
I refuse ~するのを拒否する
I'm planning ~する計画だ
I've decided ~することに決めている

これから行うこと(チャンクB)

to go to Hawaii ハワイに行くこと
to learn real English 生の英語を習うこと
to draw a picture of Mom ママの絵を描くこと
to put away toys おもちゃを片付けること
to buy a new tricycle 新しい三輪車を買うこと
to go to amusement park 遊園地に行くこと
to play store おもちゃ屋さんごっこをすること

これは、最も単純な2つのチャンクをつなぐやり方です。ここで大切なことは、I'm planningもI've decidedもチャンクなので、いちいち文法的な説明(「I've decided は現在完了形だ」などの説明)はせず、まるごとそれぞれの意味を理解することです。それぞれのチャンク表現の読み方と意味は理解させるようにしましょう。あとは、「5つ文を作ろう」とか「15秒で3つの文を作ろう」と指示を出し、チャンクをつないで文を作らせます。そして、What do you really want to do?とかWhat are you planning to do?と子供に質問し、子供が間髪入れず、応答できるようになることが目標となります。
この目標をクリアしたら、次に、to doのもう1つの意味である「~するために、~することを目的に」を次のような形で示します。できればto go to Hawaiiとto learn real Englishのイラストがあるとよいですね。

to do は「これからする何か」

具体的なやり方の例として、I really want to go to Hawaiiと子供がいえば、Why?とか「なんで?」と質問し、例えばto learn real Englishというチャンクを引き出します。ここで、保護者は以下のようなコメントをするといいでしょう。

to do は「これからする何か」

その上で、以下のような選択肢を与えます。チャンクABは、AとBの結合チャンク(より大きなチャンク)です。

チャンクAB

I really want to play soccer ぜひサッカーをしたい
I'm planning to do the dishes 皿を洗う計画だ
I've decided to learn more kanji もっと漢字を学ぶことに決めている
I really have to put away toys 本当におもちゃを片付けなければならない

チャンクC

to be a soccer player サッカー選手になる
to buy a new smartphone 新しいスマートフォンを買う
to please my mother ママを喜ばせる
to read this picture book この絵本を読む

ここでも、どういう組み合わせをするかは子供の自由にまかせます。仮にI really want to play soccer to do the dishes.と表現した場合、「サッカーすることと皿を洗うことが関係あるの?」などとコメントします。選択肢があることで、子供も自分事として表現することができるでしょう。チャンキング的表現を繰り返すことで、文法力の瞬発力を高めることができます。
さらに、次のような情報をチャンクとして足す作業に展開してもよいでしょう。

チャンクX

this summer この夏に
before I enter elementary school 小学校に入学する前に
sometime in the future 将来のいつか
right now 今すぐに
later 後で

そうすると、[I've decided to do dishes] [ right now] [ to please my mother]. のような文を作り出すことができるでしょう。

チャンクA+B             チャンクX              チャンクC

[I've decided to do dishes]       [right now]           [to please my mother].

同じ要領で、他にも

I really have to learn more kanji before I enter elementary school to please my mother.
(お母さんを喜ばせるため、小学校に入学する前にもっと漢字を学ばなくちゃいけない)
I've decided to go to Hawaii in the future to learn real English.
(将来ハワイに行って本物の英語を学ぶことに決めた)

などの文も作れるようになるでしょう。

これがチャンキング学習法です。その可能性はどんどん広がります。上記のように、まず、自分のことを語るということで主語はIで始めるのがよいでしょう。そして、自分を主語にして十分に練習したら、主語をheやsheに変えても良いでしょう。その場合、自分のことではないので、以下のような確信の度合いを表す表現をまた別のチャンクとして示すことができます。

チャンクE

It seems ~のように思える
I think ~と思う
I'm not sure, but 確かじゃないけど~
I'm not sure, but it looks like 確かじゃないけど、~のように思える
Definitely 絶対に~

このチャンクEを利用すると、次のような表現を作り出すことができます。

It seems she's planning to go to Hawaii this summer to practice swimming.
(どうやら彼女は水泳の練習をするためこの夏ハワイに行く計画を立てているようだ)
I'm not sure, but it looks like he has decided to learn piano to be a pianist.
(確かじゃないけど、彼はピアニストになるためピアノを学ぶことに決めたみたいだよ)

こんな文を自由に作ることができるようになると、不定詞の使い方は完璧ですね。これが、表現のために文法を学ぶということです。そして、そのための方法が、チャンキングで学ぶ英文法です。           

おわりに

ここでは、不定詞という用語を使う必要はありません。ただ、to do は「これからする何か」であることは理解しましょう。そしてあとはチャンクを選び、それをつなげて文にしていくというやり方です。筆者が小学生に、この方法で不定詞を指導した際には、ほとんどの生徒が難なく課題をクリアしました。そのことからも、チャンクの有用性は明かだと言えるでしょう。文法をここで提案したようなメソッドで提示すると、表現のための英文法力をお子さんたちが身につけることは間違いないと思います。


田中茂範(たなか しげのり)先生

PEN言語教育サービス所長・慶應義塾大学名誉教授。コロンビア大学大学院博士課程修了(教育学博士を取得)。
NHK教育テレビで『新感覚☆キーワードで英会話』(2006年)、『新感覚☆わかる使える英文法』(2007年)の講師を務める。JICA(独立行政法人 国際協力機構)で海外派遣される専門家に対しての英語研修のアドバイザーを長年担当。
主な著書に『コトバの「意味づけ論」―日常言語の生の営み』(紀伊國屋書店)、『「意味づけ論」の展開―情況編成・コトバ・会話』(紀伊國屋書店)、『幼児から成人まで一貫した英語教育のための枠組み-ECF-』(リーベル出版)、『表現英文法増補改訂2版』(コスモピア出版)、『意外と言えない まいにち使う ふつうの英語 きほんの英語』(NHK出版)他多数。

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