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専門家の先生による、英語教育に関する記事

英語が、世界共通語になった理由(わけ)【英語教育コンサルタント・光藤京子先生】

今日のグローバル社会においては、英語が「世界共通語」であることを誰もが認識しています。

では、ここでみなさんに質問です。なぜ他の言語ではなく、英語なのでしょう?英語だけがなぜ、世界のコミュニケーション・ツールとして活用されているのでしょうか。

理由として、私は次の3点をあげたいと思います。

第一に、英語は文法がやさしく、誰もが学習しやすいこと。
第二に、英語は文の構造が明確なため、情報が伝わりやすいこと。
第三に、ロジックや効率を重視する英語の発信スタイルがグロバール・コミュニケーションに適していること。

今回は、そのような英語の特徴を具体的に解説していきます。さらに、それらの特色が英語を学ぶお子さんの将来にどのような影響を与えるかについても考えてみましょう。

文法がシンプル――誰でも学びやすい

歴史を辿ると、英語は現在のイギリスがあるブリテン島で誕生し、もともとは平民の言葉として発展しました。ですから当時、「文法がシンプルで、わかりやすいこと」がもっとも重要だったのです。その後、イギリスからアメリカへ英語が伝わる過程においても、また現在においても、その特徴は維持されています。

ひとつの例として、英語と同じ西洋語で、語順や発想が似ているフランス語と比較してみましょう。

(英)I have a green dress.
(仏)J'ai une robe verte.

上記の文は2つとも、「私は緑のドレス(ワンピース)を1枚もっています」という意味です。一見、文の長さや語数は同じようですが、文法的には大きな違いがあります。

まず、英語には名詞に性別がありません。名詞につく不定冠詞はいつもa(an)、定冠詞はtheです。一方のフランス語はすべての名詞に性別があり、不定冠詞、定冠詞もそれにより変化します。

形容詞も、修飾する名詞の性別によって形が変わります。英語のgreenは男女の別なく使えますが、フランス語ではrobeが女性名詞なので、形容詞はvert(男性)ではなく、verte(女性)。(このように、初心者がすべての名詞について性別を覚えるのは結構大変です!)

動詞では、英語はhave(三人称単数のときだけhas)という動詞ひとつで事足りるのに対し、フランス語では6種類の人称主語に対して6種類の動詞変化があります。

もちろん上記の例のみで単純比較はできませんが、英語は名詞に男女の区別がないうえ、動詞変化も少なく、初心者にとっては比較的楽に学べる言語です。はじめて外国語を習う人にとって、文法がシンプルで学びやすいことはとても重要です。

「誰が」「誰の」などが明確――情報が伝わりやすい

文法のやさしさとは別に、もうひとつ英語が好かれる理由があります。英語は文の構造が明確で、主語や述語はもちろん、主語との関係性を表す所有格の代名詞なども省くことがありません。なかでも主語はとても重要です。

たとえば、日本人の幼児が水を飲みたい場合、母親に「お水が飲みたい」と言うだけで意思は伝わります。一方の英語では、"I want some water."となり、主語の「I」ははずせません。(あくまでも飲みたいのは「I=私」であり、ほかの人ではない、とあたかも主張しているがごとく...)

英語と日本語をさらに比較するために、次の例を見てみましょう。

(英)I saw Tom on the street yesterday. He was with his girlfriend.
(日)(私は)昨日、道でトムを見かけた。(彼は)(彼の)ガールフレンドといっしょだった。

すぐにお気づきになったと思いますが、英語では下線を引いた主語(I/He)や所有格の代名詞(his)によって、「誰が」「誰の」が明確です。対して日本語では、それら(括弧内の言葉)がないほうが逆に自然に聞こえませんか?日本語では文脈から明らかなことは、あえて省く傾向があります。

このような差は、どこから来ているのでしょうか。英語が人間を中心とするキリスト教文化の中で発展してきたことに関係があるという人もいますが、明白な答えはありません。英語は何でもきっちり言葉で明確に表すことを好む、というほうがしっくりくるでしょうか。

いずれにしても、さまざまなルーツをもつ人がコミュニケーションするグローバル社会においては、「明確さ」はとても重要です。そのような理由で英語が世界共通言語として使われるのは、しごく当然と思います。

ロジックや効率を重視――コミュニケーションがスムーズ

ロジックや効率を重視――コミュニケーションがスムーズ

長く英語ネイティブの人たちと仕事をしてきて、私がよく感じるのは、日本人と比べ、彼らが少しだけ理屈っぽく、せっかちだということです。

彼らは「なぜ、どうしてこうするのか」というロジックがはっきりしていないと、なかなか行動しません。ましてや、納得せずに黙って人の指示に従うこともありません。指示や連絡は明確で単刀直入であること、仕事のやり方では何よりも効率を重視します。

実は、そのような傾向は言語構造にも表れています。主語の直後にすぐ動詞が来る英語では、言いたいことを相手に早く伝えることができます。一方の日本語は、文の最後に動詞が来るため、意思伝達に時間がかかってしまうのです。

この文構造の違いは、日本語のスピーチを英語に同時通訳するときによく問題になります。英語では結論(動詞)を先に述べる必要があるのに、日本語では肝心の動詞が最後の最後に現れ、そこではじめてスピーカーの意図がわかることもあるからです。

この傾向は、まとまったテキスト(スピーチ全体やメールなどの文書)でも同じです。日本語では一般的に丁寧な挨拶ではじまり、たっぷり状況説明をしてから本題に入ります。ところが、そのスタイルをそのまま英語にもちこむと、英語ネイティブの人たちは「こいつはいったい何を言いたいのかさっぱりわからない」となり、イライラしてしまうのです。

このような違いは子供の頃から知っておくべきです。日本の英語教育はスキルを強調しがちですが、文化や考え方の違いを理解しておくことは、今後グローバル社会に生きるお子さんたちにとって、とても重要なことだと思います。

子供の頃から、主体性をもつ教育を!

今回は、英語が世界共通語になった理由をいくつか述べました。文法のやさしさ、言語構造の明確さ、ロジカルで効率的な伝え方など、英語には世界の人々が学習しやすく、コミュニケーション・ツールとして使いやすい特徴が備わっています。

そこで私がもうひとつ加えたいのは、「主体性を育てる教育」です。英語話者の家庭や学校では、ルールやマナーを守るなど、いわゆる躾に関しては日本より厳しい面がありますが、自分の意見をもつ、物おじせずに積極的に発言し、行動するなどの主体性をもつことは、子供が幼い頃から奨励されています。

一方、集団の規律や協調を重んじる日本の文化では、自分(=I)を前面にだすのが難しい雰囲気があります。私はかつて大学生を指導していましたが、彼らはとても優秀だけれども、積極性や主体的に取り組む態度が足りない、といつも感じていました。そのような考え方や態度は幼い頃から育てないと、なかなか難しいのかなという印象をもっています。

ですから、みなさんのお子さんが幼い頃から英語の学習を通じて、少しでも主体性を身につけていくことができれば、それは素晴らしいことです。それは将来、お子さんの大きな自己肯定感にもつながっていく、と私は考えています。

今、日本の教育は岐路に立たされています。日本人としてのルーツや文化を大切にしながら、世界に通用する、主体性をもった人間を育てていく――それは大変なことにも思えますが、すべては幼い頃からの積み重ねです。親御さんも教育者のみなさんも頑張ってください!


光藤 京子(みつふじ きょうこ)先生

執筆家、異文化コミュニケーション・英語教育コンサルタント。会議通訳、翻訳ビジネス、東京外国語大学などでの指導経験を生かした書籍、記事ブログを多数執筆。代表作の『働く女性の英語術』(ジャパンタイムズ)、ベストセラーになった『何でも英語で言ってみる! シンプル英語フレーズ2000』(高橋書店)のほか、『英語を話せる人 勉強しても話せない人 たった1つの違い』(青春出版社)、『英語だって日本語みたいに楽しくしゃべりたい リアルライフ英会話 for Women』(大和書房)、『伝わる英語 5つの鉄則』(コスモピア)など。最新作に『する英語 感じる英語 毎日を楽しく表現する』(ジャパンタイムズ)がある。

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