専門家の先生による、英語教育に関する記事

リスニングの力は少しずつ、確実に身につく.jpg

今回の玉川大学 佐藤 久美子先生のエッセイでは、英語のリスニング力はどのように身についていくのかご説明いただきました。
また、『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』コーナーでは、「発音の間違いは直したほうがいいの?」というご質問にお答えしています。子供への接し方の参考に、ぜひチェックしてください!

前回、私の息子が海外のデイキャンプに参加した経験についてお話しました。
たった3週間のデイキャンプでも、翌年になっても英語のリスニング力が残っていることに気づかされましたが、リスニング力は知らず知らずのうちに確実に身についていくものです。
0歳から3年くらい英語教材にふれ続けている子供は、英語の単語や指示がいつのまにか聞き取れるようになっていたりします。

今回は、ディズニー英語システム(DWE)の教材を使って、子供のリスニング力の成長を促す遊び方をご紹介しましょう。

アクティビティ・カードで遊んでみよう

DWEには、アクティビティ・カードという教材があります。
例えば、Let's play house!(家で遊ぼう)というアクティビティで使えるアクティビティ・カードは、bedroom(寝室)・bathroom(お風呂)・living room(居間)・dining room(食堂)・kitchen(台所)の5枚あり、子供に親しみのある場所を表しています。

これらのアクティビティ・カードは付属のポスターに配置してパズルとしても遊べますし、カードをマジックペンでタッチすると英語の音声や音楽も鳴ります。
また、このアクティビティ・カードには家具が置かれていない各部屋の絵が描かれていて、ソファや冷蔵庫などの家具のシールを貼って遊べます。

これらのアクティビティ・カードを使うと、次のような遊びを楽しむことができます。

【遊び方】

  1. アクティビティ・カードの「?」が書かれたボタンをマジックペンでタッチする。
  2. 「冷蔵庫を○○においてね」のような指示が英語で流れる。
  3. 英語の指示に従ってカードに家具のシールを貼る。
  4. 正解が英語で流れる。
  5. 家具のシールは繰り返し貼ったりはがしたりできるので、間違っていた場合は再度シールを貼りなおす。

アクティビティ・カードで聞くことができる英文には、次のようなものがあります。

■In the dining room(食堂で)

Listen and play!(聞いて遊んで!)
Oh, dear! (あら、まあ!)
I want to make my sandwich in the dining room, but it's empty. (ダイニング・ルームでサンドイッチを作りたいんだけど、お部屋が空っぽだわ。)
Where is everything?(みんな、どこにあるの?)
Where are the curtains?(カーテンはどこ?)
Please find the curtains for Minnie.(ミニーのために、カーテンを探してね。)
―マジックペンでカーテンのシールをタッチする―
Yes, those are the curtains.(そうよ。それがカーテンよ。)
ーカーテンが引かれる音がするー
Please put them in the dining room. They go on the window.(ダイニング・ルームに入れてね。窓につけてね。)
ー音楽が鳴る。カーテンのシールを、ワークシートの窓の位置に貼るー
Thank you!(ありがとう!)

*     *     *

Oh, where is the picture of Donald?(あら、ドナルドの絵はどこ?)
Please find the picture of Donald.(ドナルドの絵を探してね。)
―マジックペンでドナルドの絵のシールをタッチする―
Right! That's the picture of Donald.(その通り!それがドナルドの絵よ。)
Please put it in the dining room. It goes on the wall.(ダイニング・ルームに置いてね。壁にかけます。)

■In the bathroom(お風呂)

This is the bathroom, but there's nothing here.(これはお風呂だよ。でもここには何もないね。)
Where is everything?(みんなどこにあるの?)
Please find the bathroom sink for Goofy.(グーフィーのために洗面台を探してね)
―マジックペンで洗面台のシールをタッチする―
Yes, that's the bathroom sink.(そうだよ、それが洗面台だよ)
ー水の出る音が流れるー
Please put it in the bathroom.(浴室に置いてね。)
ーここで音楽が鳴る。シールを貼るー
Thank you!

*     *     *

Where's the mirror?(鏡はどこ?)
Find the mirror.(鏡を探してね)
―マジックペンで鏡をタッチする―
Yes, that's the mirror.(そう、それが鏡だよ)
Please put it in the bathroom.(鏡を浴室に置いてね)
ーここで音楽が鳴る。シールを貼るー
Thank you!

いかがですか?
指示通りに貼るためには、なかなか高度なリスニング力が求められます。
居間のワークシートでは、Please put the lamp on the closet. (クローゼットの上にランプをおいてね。)など、前置詞の問題も含まれているので、しっかり聞いていないと間違ってしまいます。

しかし、このアクティビティには次のような特徴があるので、単語の意味と表現を覚えると自然と聞き取れるようになります。

  1. イラストと結びつければ、単語の意味を理解できる。 
  2. 限られた数の表現が繰り返し使われているので、反復して聞いていくと聞き取れるようになる。
  3. 家の中の部屋という身近なテーマなので、おおよそ何があり、どこに置かれるのか見当がつく。

2歳10ヵ月にして、親も驚くほどのリスニング力獲得!

上記のように英語教材を活用すれば、自然に子供のリスニング力を伸ばせます。
例えば、0歳の頃からDWEで遊んでいたIちゃんという女の子は、アクティビティ・カードを次のように楽しんでいました。

  • 最初はマジックペンでカードをタッチして音楽を鳴らすのが大好き。
  • 成長するに従って音楽に合わせて体を動かしたり、ダンスをしたりするようになる。
  • 1歳半ばくらいからアクティビティ・カードを使ったパズルが気に入り、パズルのおもちゃとして遊びはじめる。
  • 2歳を過ぎてから、ママが家具のシールをIちゃんに渡す。カードから流れる英語の質問に対して、シールをタッチすると正解かどうかわかるとIちゃんに教える。
  • 単語の音声を聞き取り、家具のシールを選び、配置できるようになる。
  • 2歳10ヵ月の頃には、ほぼ間違えることなくシールを貼れるようになる。1枚のワークシート(=1つの部屋)が終わると満足そうにして、次のシールに取りかかる。

Iちゃんのママは、この様子に驚いています。
大人でも聞き取りが難しい英語の質問なのに、2歳10ヵ月の子供が、知らない間に聞き取れるようになっていたからです。

リスニング力を獲得した2歳児のママがしていたことは?

では、Iちゃんのリスニング力はなぜこんなにも伸びたのでしょうか?
Iちゃんのママは、特に教えるわけではなく、隣でいつも見ていました。
そして、Iちゃんが正解できた時には、「できたね!できたね!」と、ひたすら褒めたそうです。
英語を学んでいる時は、"Good job!"(よくできたね!)、 "Great!"(すごい!)、 "You did it!"(やったね!) など、なるべく英語で褒めるようにもしたそうです。

また、Iちゃんがわからない様子の時は、何度もペンで音声を聞いたり、ママもリピートして発音したり、一緒に考えたりしていたといいます。
つまり、「教える」という態度ではなく、「見守る」、「一緒に考える」、「一緒にリピートする」といったスタンスで付き合ったのです。
こうした環境の中で、Iちゃんは自然にリスニング力が獲得できたようです。

現在3歳3ヵ月のIちゃんは、DWEのストレート・プレイDVD3がお気に入りとのこと。
このDVDは"This is Daisy's house." (これはDaisyの家です。)、"Which room is Daisy in?"(どの部屋にDaisyはいるかな?)というフレーズではじまります。
アクティビティ・カードで既に覚えたフレーズが出てくるのです。
DVDの映像では、絵がわかりやすい英語で説明されているので、Iちゃんは自然と意味も理解しているようです。

このように、DWEは同じフレーズが繰り返し使われており、また、いろいろな教材の中で同じフレーズ使われているので、自然と覚えた英語が定着します。

Iちゃんがこのまま成長すれば、聞き取れた英語の表現を、発話できるようになると思います。また、英語の表現が使える状況に出会うと、とっさに覚えたフレーズが出てくるでしょう。
英語のチャンク(表現のかたまり)を繰り返し聞いていると、リスニング力がアップし、発話にもつながるからです。

高校生でも英語の質問を聞き取ってすぐに答えるのは難しい

先日、高校1年生に英語の質問を尋ねてみたことがあります。
"What are you going to do this summer vacation?"(この夏休み、何をするつもり?)、"Where do you want to go? And why?"(どこへ行きたいの?その理由は?)といった簡単な質問でしたが、高校生たちはすぐに答えることができませんでした。

会話は言葉のやりとりから成り立っていますが、簡単な英文のやりとりでも、すぐに応答する訓練をしていないと出てきません。

逆に、本日ご紹介したIちゃんのように同じパターンの質問を繰り返し聞いていれば、すぐに反応できるようになります。
そして、リスニング力が身につき、応答できる状況が与えられれば、今度はすぐに答えることができるはずです。

リスニング力は、保護者が気づかないうちに、少しずつ、しかし確実に身についていきます。
お子さまと一緒に遊びながら、英語にふれることを楽しんでみてください。


『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』第24回:発音の間違いは直したほうがいいの?

英語教育お悩み解消Q&A第24回.jpg

◆DWEユーザーの方からのご質問◆

現在3歳の息子がおります。英語育児は、息子が生まれてすぐにスタートしました。
今は日本語と英語の発語が半々の割合ですが、どちらかといえば日本語を上手に発音します。

英語の場合だと"dog"は「ドッ」、"cat"は「キャッ」という感じの発音になり、語尾まで発音できません。
"cars"なのどの複数形も「カー」となります。
私が指摘して"Cars."と語尾を強めに言って聞かせると、途端に「かあず」という日本語っぽい発音になってしまいます。

このような発音は、成長と共に正しく発音できるようになるのでしょうか?
子供の英語の発音が間違っている時は、どのように対応すれば良いでしょうか?

◆佐藤先生のご回答◆

子供は、日本語でも英語でも聞こえた通りに発音します。

また、ネイティブ・スピーカーの語尾は、私たち大人でも聞き取りにくいものです。
私自身、NHKラジオの「基礎英語3」の講師をしていた時、パートナーのアメリカ人の方が、"hell"と盛んに言うので、「なぜ地獄?」と思ってしまったことがあります。"health"(健康)の聞き誤りでした。

子供の英語の発音が間違っている時は、子供の発音を訂正するのではなく、保護者の方で正しい発音をして聞かせましょう。例えば、次のように会話を進めます。

ママ:Do you like cats?(あなたはネコが好き?)
子供:No. I like dog.(いいえ、私はイヌが好き。)
ママ:Oh, you like dogs!(へぇ、あなたはイヌが好きなんだね!)

こうしたやりとりを重ねる内に、子供は自然に状況を理解して、訂正するようになります。

ただし、すぐには直らないので気長に待ってあげてください。
こうした間違いは英語ネイティブの子供でもなかなか訂正できないようです。
ネイティブの親子の会話でも、次のようなやりとりがよくあります。

ママ:Your teacher held the rabbit tightly?(あなたの先生はウサギをぎゅっと抱えたの?)
子供:No, my teacher holded the rabbit softly.(いいえ、私の先生はウサギをやさしく抱えたよ。)

こういう時の子供は、"hold"の過去形が"holded"だと信じているので、ママの"held"の意味を理解できてはいても、すぐには発音を直せないのです。

それでも、こうした発音の誤りは、正しい英語にふれていれば自然に直っていきます。
あせらず楽しみに待っていてください!


佐藤先生近影

佐藤 久美子先生

玉川大学大学院 教育学研究科(教職専攻) 脳科学研究所 教授。
長年、子供の言語獲得・発達の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。
2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの「えいごであそぼ」、「えいごであそぼwith Orton」の総合指導を担当。

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