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子供たちの意欲を引き出す英語教育とは? ~岩手大学准教授・ジェームズ・ホール先生インタビュー~

岩手大学教育学部 准教授のジェームズ・ホール先生に、子供たちの意欲を引きだす英語教育についてお話を伺いました。
アメリカ・ボストン出身のジェームズ先生は、2003年に日本の外国語教員の指導に携わって以来、日本人の英語教育に関するさまざまな取り組みにチャレンジされています。
私生活では日本人の奥さまと共に、3人のお子さまを日本語と英語の両方で育てられているとのこと。
英語を話せるようになることで、どんなメリットがあるかについても、お聞きしました。


Q1. 日本の英語教育に携わるようになったきっかけは?

Q2. 小学校では子供たちの意欲を引きだすためにどのような授業を実践されていますか?

Q3. 幼児や小学生が英語に親しめるように、親が家庭でできることはありますか?

Q4. 英語を話せるようになることで得られるメリットは?

Q5. 今後の英語教育に対する目標を教えてください。



Q1. 日本の英語教育に携わるようになったきっかけは?

Q1. 日本の英語教育に携わるようになったきっかけは?

学生時代から「教育に関わる仕事がしたい」と思っていて、大学卒業と同時にJETプログラム(※)に参加したことがきっかけで、2年間、北海道の中学校と小学校の英語教育を験しました。
その後、ハーバード大学教育大学院に進むために一旦アメリカに戻ったのですが、「日本の英語教育に研究者として貢献したい」という強い思いをもつようになり、大学院修了後に再び来日しました。

ALT(※)として2年間、北海道の学校で英語を教え、2003年からは岩手大学で「外国語教員成長論」「外国語教師教育」「外国語教育」という3つの領域を研究しています。教員養成に深く関われば関わるほど、英語教育における教師の力の重要性を実感し、豊かな能力をもつ教師を育てるための研究を重点的に行ってきました。

効果的な英語教育を行うために、さまざまな学習方法を研究していますが、生徒がどのように反応するかは、実際にやってみなければわかりません。新たな授業を計画するときはとても緊張しますが、教員一人ひとりがオリジナルの授業を計画し、新しいことに自らチャレンジしていけるように、指導していきたいと思っています。

※JETプログラム:The Japan Exchange and Teaching Programmeの略。語学指導などを行う外国青年招致事業のこと。外国の青年を招致して地方自治体などで任用し、外国語教育の充実と、地域の国際交流の推進を図ることが目的。

※ALT:Assistant Language Teacherの略。各学校の英語科担当教諭と協働し、生徒の英語学習をサポートする英語を母語とする外国語指導助手のこと。


Q2. 小学校では子供たちの意欲を引きだすために、どのような授業を実践されていますか?

Q2. 小学校では子供たちの意欲を引き出すために、どのような授業を実践されていますか?

絵本やCLIL、タスクを取り入れた英語授業を実践

絵本やCLIL(クリル)、タスク(課題)を取り入れた授業を行っています。
CLILとは「英語を」学ぶのではなく、「英語で」学ぶ学習方法のことで、理科や社会・算数などの授業と英語学習を組み合わせて、効果的に言語を習得できる方法を考案しています。
たとえば健康的な食生活について学び、自分がどんな食生活をしているかを英語で発表し、友達から英語でアドバイスをもらうといった授業を、小学校の先生といっしょに考えました。

タスクとは「課題」のことで、生徒に何か課題を与えて、英語を目的ではなく「課題達成に必要な道具」として使う学習方法です。

たとえば、クラスの生徒を6人ずつのグループに分け、犬の写真が刷られた1枚のカードを生徒全員に配ります。
ひとつのグループの中で、2人だけが同じ犬の写真を持っていて、それ以外の生徒はすべて違う犬の写真を持っています。生徒は自分以外の人にカードを見せないで英語で話し合い、同じカードを持つ人を推測するといった課題です。
生徒は何とかして同じカードを持つ人を見つけたいので、積極的に英語を使って話そうとします。「同じカードを持つ人を探す」という目的があるので、ただ英語を覚えるための授業と違い、皆が熱心に授業に取り組んでいます。

「何かの目標を達成するために英語を覚える」教育法を開発

小学生はいろいろなことに興味があり、話したいこともたくさんあるのですが、それを伝えるための英語力はまだありません。

その子供たちに「I like pizza.は、"私はピザが好きです"という意味ですよ」というような授業を行っても、子供たちはつまらなくなってしまいますよね。
そのため、英語を覚えるために英語を使うのではなくて、「何かの目標を達成するために英語を覚える」という教育法を開発しています。

絵本を通してストーリーに興味をもち、自然に英語の言葉を習得

英語授業の中で私が一番興味をもっているのは、絵本を取り入れた授業です。小学校の先生が教室で英語の絵本を読むと、子供たちは絵本の中の絵や、物語の流れ、先生の表情、口調、ありとあらゆる手がかりをつかんで、内容を理解しようとします。
これは、外国語を覚えるのに不可欠な要素です。

中学生ぐらいになると、言葉がわからないとあきらめしまう生徒も出てくるのですが、小学生はまだそのような傾向がそれほど強くありません。たとえ先生が英語で何を話しているのかわからなくても、物語についていけたら、自然に英語の言葉を習得することができます。

英語の絵本のみ聞かせを聞いた子供たちの心には、「英語の本なのに、自分は理解できた」という喜びが生まれますし、ストーリーにも興味をもちます。ストーリーに興味があるので、その中に出てきた単語も、自然と頭の中に残るのです。


Q3. 幼児や小学生が英語に親しめるように、親が家庭でできることは?

子供といっしょに英語の歌や絵本で遊びながら、楽しく過ごすことが大切

子供といっしょに遊びながら、英語の歌を歌ったり、英語の絵本の読み聞かせをしたりして、とにかく「親子で楽しく過ごすこと」が大切ではないでしょうか。

英語のドラマや映画を見るのも良いことですが、その場合も歌や絵本と同じように、親がいっしょに関わってあげることが大切です。子供は親との関わりの中で言語を身につけていくので、ただ映像だけを見せていても、英語の習得にはつながりません。

親自身が英語を話そうとする姿勢も大切

また、「子供が英語を話せるようになってほしい」と考えるなら、親自身も英語に取り組む姿勢が必要かと思います。

親が英語を話せないのに、子供だけに「英語を話しなさい」と言っても、なかなか話せるようにはなりません。子供の英語教育を考える場合は、親も子供たちといっしょに、英語に取り組む努力をした方が良いでしょう。

親が英語環境をつくったら、あとは子供が自分自身で決めていく

私には日本人の妻との間に3人の子供がいますが、私が子供たちと会話をするときは英語で話し、妻が子供たちと会話をするときは日本語で話しています。

そういう意味で、子供たちは生まれたときからずっと英語に親しんでいますが、やはり日本で暮らして日本の教育を受けているので、子供たちにとっての第一言語は日本語です。

16歳の長男は、いまアメリカの高校で学んでいますが、それは彼が自分自身で選びました。私たちは英語の環境をつくっただけで、その後で英語を勉強するかどうかは、子供自身が決めれば良いと思っています。


Q4. 英語を話せるようになることで得られるメリットは?

Q4. 英語を話せるようになることで得られるメリットは?

英語を話せるようになることで得られるメリットは、いろいろあると思います。たとえば英語が話せることによって、他の国の文化を理解することができますし、他の国の文化を理解できれば、自分の国の文化を理解することもできます。

世界の公用語が英語なので、研究論文も8割ほどは英語で書かれていますし、英語圏でスポーツのトレーニングを受けたいと思っても、スムーズにトレーニングを受けるには英語力が必要です。

また、英語でコミュニケーションがとれることによって、接触できる人の範囲が増えるので、自分のネットワークを広げることもできるでしょう。が活性化されるなど、脳にも良い影響があると思います。たとえばモノリンガルとバイリンガルの脳を比較すると、バイリンガルの人の方が脳のたんぱく質が多いという研究結果もあります。

私は日本でよく、「学校で英語をもっと勉強すれば良かった」という、20〜40代の方の話を聞くことがあります。多くの人が、学生の頃は英語の重要性がわからず、社会人になってから必要性を実感するようです。

小学校や中学校で英語を勉強している頃は、まだ多くの子供たちが明確な将来の目標をもっていません。でも、自分の将来の目的を達成するためには、英語が使えることが大きなメリットになるということに気づいてもらって、積極的に英語に親しんでもらえたらと思っています。


Q5. 今後の英語教育に対する目標を教えてください。

Q5. 今後の英語教育に対する目標を教えてください。

これからも教師教育に尽力し、現場の先生や英語の教員を目指す学生たちといっしょに、良い教育法や教材を開発していきたいと思っています。

また、今後の大きな課題として、小学5・6年生の英語授業が教科化されたことによって、「評価をどうするか?」ということもあります。

今までは外国語活動だったので、楽しめれば良かったのですが、今後はそうはいきません。たとえばスピーキングでも、話したことをそのまま評価するのではなく、子供の思考力や表現力を評価する「パフォーマンス評価」といったことも必要ではないかと考えています。

評価にとって大切なのは、優劣をつけることではなく、アドバイスをすることです。子供たちの意欲を高める評価の仕方や、英語嫌いにならないような業務指導法について、今後は積極的に取り組みたいと考えています。

インタビューを終えて

日本での生活が20年以上になるという、ジェームズ先生。これからも岩手の子供たちの英語教育に、新しい風を吹かせてくれることを期待しています。


ジェームズ・ホール先生

プロフィール:ジェームズ・ホール先生
1974年、アメリカ・ボストン生まれ。1997~1999年にJETプログラムのALTとして北海道栗山町に赴任。その後アメリカに戻り、2000年にハーバード大学教育大学院の修士号を取得。2003年から岩手大学教育学部で英語科教育法の授業を担当。2014~2020年ミャンマー初等教育カリキュラム改訂プロジェクト英語開発チームメンバー。2017年スターリング大学応用言語学博士号取得。研究分野は外国語教育、教材・カリキュラム開発。趣味はテニス、読書、旅行、ICT。

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