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英語教育に関するニュース

英語でのイマージョン教育が本格始動! 〜ぐんま国際アカデミー初等部を取材しました〜

英語のイマージョン教育を推進する小学校が増えつつあります。

イマージョン(immersion)とは「浸す」という意味で、国語など一部の教科を除くすべての授業を英語で行う教育法を言います。

2005年に開校した「ぐんま国際アカデミー(GKA)」は小中高の12年間を通じ、一貫した英語イマージョンを指導の柱に据えています。

さらに、グローバル社会で生き抜くための論理的思考力やコミュニケーション能力などを養う「国際バカロレア」(IB: International Baccalaureate)(※1)認定校にもなっています。

同校のイマージョン教育の特徴とは?今年で15年目を迎えるGKA初等部の副校長・野澤弘道先生にお話を伺いました。

※1 国際バカロレア機構(ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラム。国際的に通用する大学入試資格(IBディプロマ〈国際バカロレア資格〉)を与え、大学進学へのルートを確保することを目的に1968年に設置。認定校に対する共通カリキュラムの作成、世界共通の国際バカロレア試験などを実施する。


Q1.「ぐんま国際アカデミー」のイマージョン教育の特徴とは?

Q2.低学年の児童に言葉の問題はないのでしょうか?

Q3.どうすれば小学生が「英語で考え、英語で自分の意見を述べる」までになるのでしょうか?

Q4.イマージョン教育が子供にもたらすものとは?

Q5.IB認定校として12年間を見据えた教育について教えてください。



Q1.「ぐんま国際アカデミー」のイマージョン教育の特徴とは?

Q1.「ぐんま国際アカデミー」のイマージョン教育の特徴とは?

小学校1年生から英語を「教科」として学ぶ

本校は、文部科学省より日本で初めて「英語特区(※2)に認定され、2005年に初等部が開校しました。当時から英語イマージョンを指導の柱に据えた教育を行ってきました。

算数・理科・社会・芸術など教科の70%を第二言語(英語)で学ぶ、パーシャルイマージョンを採用しています。

基本的なカリキュラムは文科省の学習指導要領に従っていますが、構造改革特別校(※3)として特色ある学校づくりに取り組んできました。

授業内容も柔軟に編成することが可能なことから、開校以来小学校1年生から英語を「教科」として学んでいます。

※2 地域の特色等を生かした特別の教育課程(小学校英語関係)を編成する学校。
※3 学習指導要領等の基準によらない教育課程を編成・実施し、国際性豊かな感性と広い視野を持った人材の育成を目的とする学校。

イマージョン教育の本来の目的は"英語の習得"だけではない

一般的にイマージョン教育というと、英語教育・バイリンガル教育のひとつとして英語が話せるようになるためのプログラムと捉える方が多いかもしれません。

本校の英語イマージョンも、英語を使いこなす機会をできるだけ多く子供たちに提供し、質の高い英語力の育成を目指しています。

しかし、イマージョン教育の本来の目的は"英語を習得する"ことだけではないと考えています。言語は単なるツールに過ぎません。

ネイティブに近い英語力をベースに、それぞれの教科のなかで確かな知識を習得し、最終的には英語と日本語の二言語で自分の意見を発信できる国際人を育てることを到達目標としています。

最初は英語を覚えることに必死だった子供たちも、学年が進むにつれ、英語で学ぶことから得られるものに興味が移っていくようです。

英語は日本語とは違う思考回路を使うわけですから、日本語では思いつかなかったようなアイデアが浮かんだり、英語力が高くなるに従って日本語の読解力が高まるといった相乗効果も実際にあるようです。自分を客観的に見る能力や、世間一般の常識に疑問をもつ力も身に付きます。

本校にはイギリス、アメリカ、オーストラリアをはじめ、フィリピン、インド、ブータンなど世界12ヶ国から様々なバックグラウンドをもつ教師陣が在籍しています。

グローバルな視点で授業を行うなかで、子供たちは多様な文化を理解しながら日々成長していきます。言語習得を超えたところにこそイマージョン教育の本質があるのではないかと私たちは感じています。


Q2.低学年の児童に言葉の問題はないのでしょうか?

Q2.低学年の児童に言葉の問題はないのでしょうか?

音や絵を使って「英語の耳」を育てる授業

1年生の授業には日本語の補助教員が付いて言葉のフォローを行っています。
英語の授業では30~36名までを1クラスとし、2つのグループに分け、フォニックス(※4)を取り入れた少人数制の授業を行っています。もちろん教材もすべて英語です。

とくにインプットが大切になる低学年の授業では目と耳を駆使してたくさんの音に触れさせ、絵や文字を繰り返し見せながら英語を英語として理解できるようにしていきます。

あまり長い活動はせず、時には体や指先を動かして何かを作るような授業も行います。子供たちの興味を引き出すために、できるだけ身の回りにある素材を使う活動も多く取り入れています。

そういった、体感的な課題に取り組むことにより子供たちは英語を身近なものと捉え、自然に習得していくのだと思います。

※4 英語の発音と文字の関係性を学ぶことで単語の正しい読み方や意味を理解する英語の学習法。英語圏の子供たちが英語の読み書きを学ぶ時にも多く用いられる。

低年齢から英語を始めるメリットは計り知れない

廊下には、子供たち一人ひとりが思い思いに書いた作文が10枚ほどファイルに入れて貼ってあります。授業で習った文法や表現の仕方を練習するために、自分の体験や想像に基づいたアウトプットの一環です。

覚えた単語を書く子もいれば、家族や休みの日の出来事について書く子もいます。最初は二言三言だった児童も、日を追うに従ってボキャブラリーを増やし、入学後数ヶ月もすれば、ストーリーのある英語のエッセイが書けるまでに成長してくれます。
万が一、スペルや文法にミスがあったとしても、それを冷やかすような子もいませんし本人も気にしません。

失敗を恐れないという意味では、英語を早いうちから始めるメリットは大きいと実感しています。

また、幼児期から英語に触れることで「英語の耳」を作ることができます。語彙を吸収する力やネイティブの発音をきちんと聞き取って正しく発音する能力においても、早く英語を始めた方が確実に身に付くでしょう。

6~7歳の児童たちが友達とは日本語で笑い合い、外国の先生には英語であいさつを返すなど、当たり前のように言葉を使い分けている姿を見ていると、やはり"子供はことばを覚える天才"なのだと感じます。


Q3.どうすれば小学生が「英語で考え、英語で自分の意見を述べる」までになるのでしょうか?

Q3.どうすれば小学生が「英語で考え、英語で自分の意見を述べる」までになるのでしょうか?

小学6年間での英語学習時間は日本の中高大の4倍以上

まず、本校の子供たちが圧倒的な「英語時間」の中で過ごしていることがあげられます。初等部の6年間だけで英語イマージョンによる授業数は4,846時間(高等部卒業までに1万時間を超える)にも及びます。

ちなみに日本人の中高大を合わせた英語学習時間は、一般的に約1,120時間とされていますので、それをはるかに上回る膨大な英語学習を小学生のうちにこなしているのです。

しかし、ただ単語やフレーズを覚えるだけでは本当の意味で「英語ができる」ことにはならないと考えています。英語でコミュニケーションをとるためには、決まり切った受け答えではなく、論理的に会話をしたり、相手の質問の意図を理解し、自分の考えを自分の言葉で表現する能力を備える必要があります。

論理的に考え、発信する力を育む児童中心の教授法

最近やっと日本でもディスカッションやディベートを含む英語カリキュラムが重視されるようになりましたが、本校では開校とともに"Content Based Instruction"(内容重視の教授法)に取り組み、子供たちを主体としたコミュニケーション型の授業を行ってきました。

たとえば算数の授業では、教師が式と答えを黒板に書いて解説をするといった「チョーク&トーク」の形式ではなく、児童たちが中心になってディスカッションをしながら問題を解いていきます。

「なぜそう考えたの?」「他にどんな方法があるかな?」など、専門性の高い教師たちが学習をサポートします。マルかバツかなどの答え合わせではなく、そこに行きつくまでのプロセスに重点を置いている点も特徴です。

他の授業でもグループによる話し合いを多く取り入れ、子供たち同士が自分の考えを自由に発信し、ともに深め合える機会をたくさん作っています。一人ひとりの個性や意見を尊重する授業のなかで、子供たちは自ら問題を解決していく能力を養い、他人の良さを認める素直な心を育みます。

しかし全員が「英語で考え、英語で意見を述べる」ようになるには、やはり子供たちのやる気と頑張りが不可欠です。小学校のイマージョン教育において子供の伸びしろはまだまだ未知数ですが、学校という集団の中で心を開き、どれだけ人と関わることができるかが、やはりその子の成長のカギになるのではないでしょうか。


Q4.イマージョン教育が子供にもたらすものとは?

Q4.イマージョン教育が子供にもたらすものとは?

豊かな日本語が英語イマージョン教育を支えている

本校は2003年に学校法人として設立いたしましたが、開校当時はイマージョン教育に対しての不安があったことも事実です。

イマージョン教育への3つの不安としてあげられたのが、「フラストレーション」、「学力の問題」、「日本語の乱れ」です。なかでも一番の不安は、英語イマージョンという異言語環境に子供たちがフラストレーションを感じないかということでした。

しかし、授業を開始して1ヶ月ほどすると、多くの子供たちから「先生が何を言っているのか全部わかる」という声が聞かれ、この点においてはあらためて子供たちの柔軟性に驚かされました。
これは低年齢児のヒアリング能力の高さによるところが大きいかもしれません。

次に7割を英語で学ぶイマージョン教育で、学力に問題を生じないかという点です。
これについては文科省の全国学力テストや学習状況調査の結果によっても明らかです。とりわけ算数と国語は点数が高く、全国平均を上回っています。

最後に、母語である日本語の乱れに関しても、国語の結果から判断することができますし、保護者の方々からは「豊かな日本語力を育てるために家庭での努力が必要」という声を多くいただき、ご家庭での協力が子供たちの日本語を下支えしています。

学校では英語で学んでいても、子供たちが自宅に帰れば親子の会話やテレビ、新聞などはほとんどが日本語の環境です。第二言語を学ぶことで母語にも良い影響を与えているのではないかと経験的に感じています。


Q5.IB認定校として12年間を見据えた教育について教えてください

Q5.IB認定校として12年間を見据えた教育について教えてください

多くの生徒がIBコースを選択し3割が海外の大学へ進学

約9割の児童が初等部からそのまま中等部へ進学します。
中学になると英語の実力もかなり高くなり、中1でTOEFL ITP® 600点(日本の高校生の平均点431点/2017年)を超える生徒も少なくありません。中等部の3年生に大学入試センター試験の英語をやってもらうと、ほとんど全員が満点に近い点をとりました。12年生を終える頃には、彼らの英語学習時間は1万時間を超え「英語で考え、英語で自分の意見を言う」という本校の1つの目標をほぼ達成します。

IBコースと一般コースを選択する時期は10年生(高校1年生)になりますが、約60%の生徒がIBコースに進みます。

昨年度は、そのうち3割が海外の大学へ、7割が国内の大学に進学しました。国際的に認められる大学入学資格であるIBディプロマ(国際バカロレア資格)を取得する割合は67%で、過去には43点(45点満点)という高得点をとった生徒もいます。

IBプログラムをやり遂げ、その成績で大学に進学することはとても大変なことです。小さなうちからじっくりと「考える力」を積み重ねていくことが重要になります。

しかし、自分のやりたいことを見つけ、好きな分野にとことん集中できるという魅力がIBのカリキュラムにはあります。
小学校の時の "虫好き"が高じて国立大学で生物学を学んでいる子や、バレエや歌で秀でた才能を開花し、プロとして活躍している子、早々と起業した子もいて、生徒たちの進路は実にユニークです。

自分が潜在的に持っている「好き」や「得意」を伸ばして活かす教育は、これからますます必要になってくるのではないでしょうか。その観点からもイマージョン教育は、たくさんの可能性を秘めた子供たちの未来を見据えたプログラムといえます。

両親と一緒に生活をし、素晴らしい日本の文化と伝統を身近に感じながら国際的な視野を持ったバイリンガルになるために、イマージョン教育は最良の方法ではないでしょうか。

校長先生からのコメント

お子様の将来を考えるのであれば、第二言語習得の重要性はさらに増しているでしょう。本校で実践しているイマージョン教育は、他言語を学習するにあたり非常に有効な学習方法です。

本校は英語イマージョン環境であると同時に、異なる文化を自然に体験できる環境でもあります。さまざまな国出身の教師たちと、伝統や物事の見方、考え方の違いを楽しむ場所でもあるのです。児童生徒たちは、多様性の中で英語で学習することを通して、たくさんの刺激を受けながら世界を捉えていくことになります。

そのような環境で成長した卒業生たちは、ますます国際化が進む現代社会において、様々な方面で柔軟に活躍していってくれることでしょう。


取材を終えて

壁のないオープンスタイルの教室と広々とした校庭。そのなかで過ごす初等部のお子さんたちののびのびとした姿が印象的でした。
個性を尊重し、子供を学びの中心に据えた教育法は、中高へとつながり、そのままIBプログラムへと直結していきます。ICT教育にも力を入れ、幼少の時期から国際社会で活躍できる人材を育成するイマージョン教育は、これからますます増えていくのではないでしょうか。


テレシタ・サルヴェ・トゥビアノサ初等部校長(写真 右)、野澤 弘道初等部副校長(写真 左)
プロフィール:
テレシタ・サルヴェ・トゥビアノサ初等部校長(写真 右)
2011年4月よりGKA初等部三代目校長。カナダ、ブリティッシュコロンビア大学において博士号を取得。

野澤 道(のざわ ひろみち)初等部副校長(写真 左)
GKA初等部副校長。2005年4月開校時より初等部教諭として勤務。2017年4月より初等部副校長に就任。

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