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ウチの子はどのタイプ?   第二言語習得研究からわかった!英語上達と「性格」の関係

「日本人はシャイだからなかなか英語が上達しない」という話をよく耳にします。「ウチの子は恥ずかしがり屋だから・・・」「我が子は性格で損しているのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、誰とでも積極的に会話ができる元気な性格は英語学習においても有利なように感じます。

実際のところ、言語の上達と性格は関係があるのでしょうか。今回は、この興味深いテーマについて第二言語習得の心理学を研究する明治大学教授・廣森友人先生に伺いました。


子供の性格と語学力は関係があるのでしょうか?

「内向的」VS「外向的」性格別オススメ勉強法とは?

「個性」や「得意分野」を伸ばす教育アプローチとは?



子供の性格と語学力は関係があるのでしょうか?

そもそも一般的に、子供も大人も性格や振る舞いには人によってさまざまな違いが見られます。同じ1枚の絵を見ても個々の解釈の仕方がありますし、好き嫌いも分かれるでしょう。人はそれぞれ生まれながらに独特の感じ方や嗜好をもっているのです。

実はそれと同じように、語学の学習方法にも人ぞれぞれの「好み」があるのです。たとえば、目で見たり読んだりするより耳で聞いた方がうまく学習が進む人もいれば、ペアやグループで勉強するのが苦手でひとり黙々と単語の暗記や発声練習に取り組む方が心地いい、と感じる人もいます。

子供たちの中にも、与えられた教科書やテキストを使いながら、決められた形式に沿って勉強するのが得意なお子さんや、親や先生から言われたことに従うのが嫌いなマイペースタイプもいます。

"学びのスタイル"を見つけることが学習効果を高める秘訣。

第二言語習得の研究では、このような学習方法の好みを「学習スタイル」と呼んでいます。"学び方の個人差"という観点においては、すでに欧米では40年以上も前から盛んに議論が繰り返されてきました。

これまでに膨大な研究結果と仮説が提唱されており、多くの研究者たちは「自分に合った学びのスタイルを見つけることこそが学習効果を最大化する秘訣」という"学習スタイルの理論"を導き出しました。

もちろんこれらの理論は、性格で語学力が決まると言っているわけではありません。性格の違いによって好きな勉強方法にも違いがあり、性格と学習スタイルは深く関連するということなのです。

多種多様な仮説の中でも、第二言語習得の研究に大きな影響を与え、今も注目されているのが「外向性」と「内向性」の違いです。

英語学習において、外向的な人は外国人とも積極的に会話の練習を重ねるため、早く上達しそうに思えます。

一方、内気で内向的な人はなかなか思うように会話が進まず、不利ではないかと想像してしまいますよね。

皆さんは、お子さんをどちらの性格だと思いますか?

内向き?外向き?性格診断テストでセルフチェック。

以前、私の授業を受講していた大学生119人を対象に「内向性--外向性に関する性格診断テスト」に回答してもらったことがあります。

合計点が高いほど(最高得点48)外向的であることを示す12問のテストで、彼らの合計平均は26.7点(標準偏差6.7)でした。

結果の妥当性を検証するために別の成人グループと大学生にもテストを行った結果、成人の平均は25.3点(標準偏差5.8)、大学生の平均は26.0点(標準偏差6.9)と、ほぼ同じ値になりました。

私の場合はどうだったかと言うと、合計が21点(!)で、一般的な成人や大学生より内気なタイプであるようです。

皆さんも下記のテストでぜひ診断してみてください。

性格(外向性--内向性)に関する診断尺度

あなたの性格について、下記の基準で答えてください。なお、当てはまる数字は○で囲んでください。

性格(外向性--内向性)に関する診断尺度

1. 大勢の人と一緒にいるのが好きだ0・1・2・3・4
2. 私はすぐに笑う0・1・2・3・4
3. 特にほがらかな人間ではない0・1・2・3・4
4. 人と話すのがとても楽しい0・1・2・3・4
5. 活気のあるところにいるのが好きだ0・1・2・3・4
6. 何かをする時はひとりでやる方が好きだ0・1・2・3・4
7. 元気があふれて、じっとしていられないことがよくある0・1・2・3・4
8. 元気で、はつらつとした人間だ0・1・2・3・4
9. 楽天家ではない0・1・2・3・4
10. 私はいつも何かをしている0・1・2・3・4
11. 非常に活動的な人間だ0・1・2・3・4
12. 人の先頭に立つよりも、むしろ我が道を行く方がよい0・1・2・3・4

このテストは、基本的には合計点が高いほど外向的であることを示します。
問3、6、9、12は逆転項目で、数値が低いほど外向的であることを示すため、合計点を出す際には反転させて計算してください。
(例<問3>:0→4点、1→3点、2→2点、3→1点、4→0点)

※出典:下仲ら(1999)『NEO FFI人格検査(大学生用)』(東京心理株式会社)をもとに作成


「内向的」VS「外向的」性格別オススメ勉強法とは?

私のような内気(内向的)な性格は、英語学習には不向きなのでしょうか。確かに積極的に会話に参加する外向的な人ほど、言語習得に不可欠なインプットやアウトプットの機会が増えるという点で圧倒的に優位です。

しかし前述の通り、性格で英語の伸びしろが測れるわけではありませんし、内向的な性格は語学に不向きといった研究データも出ていません。

一方で、内向性と外向性では適した勉強法に違いがあるということは言えます。

まず「内向性」は、教科書や洋書を読むなどのリーディングやリスニングといったインプット重視の学習を好み、ペアやグループによるやりとり(インタラクション)には抵抗を感じる傾向が強いことが予測されます。

これはスピーキング学習(アウトプット)にも当てはまり、ライティングのようにひとりで黙々と勉強するような場合はあまり不都合を感じません。

一方「外向性」は、他者とやりとりをしたいという欲求が強いことからインタラクションやスピーキングなど、アウトプットを中心とした学習を好む傾向にあります。しかし時間をかけて継続的に単語や文法を覚えるようなインプット重視の学習が不向きであると考えられます。

どちらが英語習得に向いているかを示す客観的な検証結果は出ていませんが、どちらにも"より適した学び方"があり、それを意識して言語習得に取り組むと成果が上がりやすいと言えます。

参考までに、それぞれの特徴とオススメの勉強法を下記にまとめました。

<内向性の特徴>
狭く深く付き合う。
聞くのが得意。
長時間集中できる。
ものごとをよく考える慎重派。
インプット重視の学習を好む。
1人または1対1での勉強が好き。
スピーキングよりライティングに意欲的。

<アドバイス>
第二言語習得の基本はインプットなので、語彙力や文法の正確さにおいて内向型は有利と言えますがアウトプットが不足しがちな傾向に。無理に会話をしようとする必要はありませんが、オンラインやビデオなどによるスピーキング学習を取り入れながら、自分に合ったアウトプットの機会を見つけることが英語上達のポイントです。

<外向性の特徴>
広く浅く付き合う。
話すのが得意。
気が散りやすい。
多くの情報を直感的に処理するのが得意。
ペアやグループでの学習を好む。
インプットよりアウトプットを中心とした学習を好む。

<アドバイス>
英語を習得するためにはインプットの「量」を増やし「質」を高めることが重要です。日常会話だけでは質も量も不足しがち。外向型はスタートダッシュには優位ですが、地道で長期的な学習には抵抗を感じることも。毎日10分英語の本を読む、英語のニュースを聞くなど日々取り組める具体的な目標を設定し、継続的にインプットの質を上げることを目指しましょう。


「個性」や「得意分野」を伸ばす教育アプローチとは?

「個性」や「得意分野」を伸ばす教育アプローチとは?

英語が苦手な我が子に対して「なぜできないの?」「努力が足りないのでは?」と悲観する親御さんは少なくありません。しかし実際は、お子さんの性格と学習法のミスマッチに原因がある場合も多いのです。

心理学の分野で古くから研究されてきた概念のひとつに「適性処遇交互作用」があります。学習成果は学習者の適性(個性)と処遇(指導法)の相乗効果で決まるという考え方で、個に応じた学習指導の重要性を説いています。

トップアスリートの世界でも、コーチや練習法を変えたとたんに驚異的に記録が伸びたという話はよく聞きます。

子供の勉強も同じで、英語をまったく話したがらないような恥ずかしがり屋さんであっても、個性や能力に目を向けた学習環境や、その子に合った教材を選択すれば英語学習の効果を必ず高めることができるのです。

心理学者・ガードナーのMI理論が解き明かす子供の「潜在能力」。

教育学・心理学の世界的権威としても知られるハーバード大学のハワード・ガードナー教授は、どんな子供も潜在的に多重知能(マルチプル・インテリジェンス=MI)をもつという「MI理論」(1983年)を提唱し、従来の画一的なIQ(知能指数)という概念を大きく前進させました。

ガードナー教授はMI理論で、人にはもともと「8つの知能」(下記参照)が備わっているとしています。それらの中で特に秀でている部分や得意分野を見極め、それに適した方法を学びに取り入れることで才能を大幅に伸ばすことができると明言したのです。

<8つの知能>
言語的知能:話し言葉と書き言葉の感受性が強い。言葉を扱って文字や言語を処理する力

論理数学的知能:問題を論理的に分析したり、数、記号、図形を扱ってものごとを分析する力

音楽的知能:演奏や作曲、鑑賞するスキル。リズムと音のパターンを扱って音を理解する力

身体運動的知能:問題解決や何かを作り出すために体を使う力を伴う。運動能力やコントロールする力

空間的知能:広い空間パターンを認識する能力。イメージや映像を扱って視覚的、空間的に創造する力

対人的知能:他人の動機づけ、欲求を理解し、他者とのコミュニケーションをする能力

内省的知能:自分自身の欲望や能力、必要な情報を効果的に用いる能力。自分と向き合い精神的に内省する力

博物的知能:種を区別し、種の関係を図示する能力。環境や自然を理解し、識別する力

参考:ハワード・ガードナー『MI:個性を生かす多重知能の理論』(2001,新曜社)

子供一人ひとりが持って生まれた「優れた知能」に光を当てる。

子供のなかにはノートに書き写すことで単語を覚える子もいれば、絵や図などにビジュアル化すると理解しやすい子もいます。作文が上手な子もいれば、音楽や運動が得意な子がいるのと同じです。

親としては子供の「苦手」なところに着目して、それを克服させようとしがちです。しかしそうではなく、子供たちそれぞれがもって生まれた優れた知能=「個性」に光を当てたアプローチを行えば、子供は劣等感をもたずにのびのびと能力を伸ばしていくことができるのです。

得意な能力を伸ばしていくと、他の能力も自然に伸びていくとも考えられており、英語の学習でも同じことが言えると私は思っています。

オンライン学習などが身近になった現在では「聞く・読む・話す・書く」といった英語の4技能を音や映像、書籍などさまざまな形で自由に体験することが可能です。子供たちが自分の好きな学び方を見つけやすい環境が整っていると言えるでしょう。

英語学習において、一概にこれがベストという方法はなかなかありませんが、お子さんの得意なスタイルや嗜好に目を向け、性格に寄り添った学習をご家庭でも取り入れてほしいと思います。

まとめ

いかがでしたか?人それぞれに勉強の好みがあり、それに適した英語学習を行うことで「苦手意識」がなくなるかもしれません。その研究も進化を遂げているようです。子供の英語がなかなか上達しないと心配していらっしゃる方も、お子さんが"楽しい!"と感じる学習スタイルを取り入れることでモチベーションを高めてみてはいかがでしょうか。


廣森友人先生

プロフィール:廣森友人(ひろもり ともひと)

1975年北海道生まれ。北海道大学大学院国際広報メディア研究科博士課程修了、明治大学国際日本学部・大学院国際日本学研究科教授。専門分野は応用言語学、心理言語学、第二言語習得研究。『英語学習のメカニズム:第二言語習得研究にもとづく効果的な勉強法』、『「学ぶ・教える・考える」ための実践的英語科教育法』(ともに大修館書店)他、著書・論文多数。

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