ディズニー英語システム TOP > 乳児・幼児からの英語 > 英語教育に関するニュース > 子供の英語教育の実態は?草加市と獨協大学の共同調査が探る!~獨協大学・羽山恵准教授インタビュー~

英語教育に関するニュース

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埼玉県草加市は市内にある獨協大学と共同で、毎年「地域研究プロジェクト」を実施しています。
2017年度は「草加市の子どもと英語教育」がテーマで、幼児・児童の英語教育の実態を調査する研究が行われました。
この研究の代表者である同大学の羽山 恵准教授に、研究結果とそこから見えてくる英語教育の課題などについて伺いました。


Q1.「草加市の子どもと英語教育」の調査が行なわれたきっかけは何ですか?

Q2. 調査の結果何がわかりましたか?

Q3. 英語学習開始年齢と後の英語力はどういう関係がありましたか?

Q4. 家庭ではどのように英語学習に取り組めば良いのでしょうか?

Q5. これからの英語教育の課題は何ですか?



Q1. 「草加市の子どもと英語教育」の調査が行なわれたきっかけは何ですか?

ママ友との会話がきっかけに

私は現在3児の母なのですが、長男が2歳の頃から「もう英語やっているの?」とママ友からよく聞かれるようになりました。当時まだ長男に英語学習はさせていませんでしたが、ママ友は「本当にそうかな?」という目で「だってみんなやっているじゃない」と言うのです。
その「みんな英語をやっている」という言葉が引っかかり、「本当にみんな幼児から英語をやっているのか」「何をやっているのか」が気になりました。

同時に、周囲のお母さんたちがみな英語学習に不安を感じていたり、強い興味をもっていると感じてもいました。
そうした保護者たちの不安や疑問に答えたいという私自身の想いもあり、草加市との「地域研究プロジェクト」の機会に、英語教育の実態を研究することになりました。

「草加市の子どもと英語教育」の調査の目的は次の3つあります。

  1. 草加市における英語教育の実態を調査すること
  2. 草加市に居住する子供達の英語学習状況を把握し、それに対する家庭の影響を調査すること
  3. 英語学習開始年齢と後の英語力との関係を調査すること

ここでいう1.の「英語教育の実態」とは、子供たちの「外国や外国語に対する理解」「英語に対する興味、関心」「英語を使いたいという意欲」のことです。
これらに、家庭の状況がそれぞれどういう影響を強く及ぼしているのかを2.で調べました。

本調査の対象となる子供たちの年齢層は幅広く、幼稚園・保育園の年中~年長、小学2・4・6年生の子供と保護者にアンケートをお願いしました。
また、3.の「英語学習開始年齢と後の英語力との関係」を調査するため、大学生にも協力してもらいアンケートを行っています。

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Q2. 調査の結果何がわかりましたか?

英語教育への保護者の関心は非常に高い

今回のアンケート質問はボリュームが多く、幼稚園・保育園の家庭向けで11ページ、小学生の家庭向けでは実に14ページもありました。
それだけ答えるのが大変なアンケートなので、回収率を30%くらいと見込んでいましたが、なんと76%もの回収率だったのです。5,394件配布して、4,101件の回答を得ることができました。また、9割以上が母親からの回答でした。
保護者、特に母親の英語教育に関する関心度が高いことがここからもわかりました。

英語が話せるようにはなりたいが、使いたくはない子供たち

今回の調査では、子供たちの英語に対する興味・関心は高く、小学4年生をピークに「英語が話せるようになりたい」という回答が多かったです。
しかし、実際に「英語を使用したい」いう回答は子供はかなり少なく、話せるようになりたいが使えないという、今の日本の英語環境の限界を示しているようでした。

子供たちの中に「英語ができればかっこいいな」という漠然とした憧れのようなものはあるけれど、実際にそれを使って何かをする自分を想像できていないようです。
これは、日本の英語教育全体の雰囲気に通じると思います。

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Q3.英語学習開始年齢と後の英語力はどういう関係がありましたか?

英語学習の開始年齢と学習効果に相関性があった!

この調査では、大学の英語学科の学生を中心に、法学部や経済学部の学生にも協力してもらい、以下の3つのグループに分けました。

①英語が得意な英検準1級以上のグループ
②英検2級程度の普通グループ
③英検準2級以下の不得意なグループ

3グループの学生に何歳から英語学習を始めたかを聞いたところ、①の英語が得意なグループは平均して7歳から学習をはじめており、小学校入学前から英語をはじめている割合も一番多かったです。
一方、③の英語が不得意なグループは平均して10歳で、他のグループに比べ、未就学時点で英語学習を始めた割合が最も低いという結果になりました。
この結果から、早くから英語学習を始めることは有効だということがわかりました。

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Q4. 家庭ではどのように英語学習に取り組めば良いのでしょうか?

学校の英語授業が進化していることを知ってほしい

「小学校の英語の授業は効果を生まない」「何をやっているか分からないが、どうせダメに決まっている」とまだまだ不満を感じている保護者の方々は多いようです。
しかし、今の英語の授業は昔とは違い、だいぶ進化しています。子供たちも英語の授業を楽しいと感じていますし、先生と子供たちの気持ちは一致しています。
学校の英語教育が変わっていることを知っていただき、積極的に協力していただけると良いと思います。

親が外国人とのコミュニケーションの姿勢を見せる

子供が英語を使えるようになるためには、家庭の協力が必要不可欠です。学校の授業で行う英語学習は、あくまでバーチャル体験にすぎません。
そこで、親が外国人とコミュニケーションを取っている姿を、子供に見せてあげられるとより良いでしょう。

例えば、困っている外国人の方を見かけた時など、子供の前で積極的に声をかけて欲しいです。
何も完璧な英語でなくても良いですし、「どうしましたか?」と日本語でも聞いても良いのです。大切なのは、親が子供の前で外国人に対してコミュニケーションをとろうとしている姿勢を見せることです。

親が「この英語で相手に通じたかな」「もっとこんなことを言ってあげたかった」などと言えば、子供も、もっと勉強して親より話せるようになろう、と思うものです。

英語は何のために学ぶのか親子で考えてみよう

なお、これから日本は外国人の労働力がますます必要となるだろうといわれています。そんな中で外国の人々と円滑に共同して仕事をしていくために、英語は必要ですよね。このような社会への認識を保護者がもっていると、子供の英語への興味・関心・意欲が高いという結果が今回の調査で出ています。
なぜ英語を学ぶのか、より具体的に親子で考えてみると、子供の英語学習へのモチベーションもアップするかもしれません。

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Q5. これからの英語教育の課題は何ですか?

英語の語彙力が乏しいとフラストレーションがたまる

以前、小学6年生の英語の授業を見学したところ、自分の行ってみたい国について児童が英語でプレゼンテーションを行っていました。
ところが、そこで使われる英単語があまりにも限られていて、子供たちは言いたいことをうまくいえず、フラストレーションを感じているように見えました。
これからの英語の授業では、子供たちがどんどん英語を話すような授業になります。
その際語彙力が少ないと、言いたいことが言えずにフラストレーションがたまり、英語はいやだと感じてしまうのではないかと危惧しています。今までは英語の授業での先生の説明が難しくて、「英語はわからなくてイヤだ」と思ってしまう生徒たちが多かったと思います。ですがこれからは、英語を話そうとするモチベーションが十分高まっていながら、言いたいことを伝えられる語彙・表現がわからなくて、「英語はわからなくてイヤだ」という、気持ちになってしまう子供たちが増えることが心配です。

語彙力を高めるために子供が自由に英語にふれられる環境を

学校でも家庭でも、子供が言いたくなった英単語をすぐにタブレットなどで調べられる環境が良いと思います。
家庭では、身近なものが載っている英語の絵本やDVDなどを常に目につく所に置いて、子供が好きなものを見られる環境を整えておくのが良いでしょうね。
子供に無理やりやらせるのではなく、「見たかったらどうぞ自由に見て」というような環境です。
英語の映像や音を見たり聞いたりする量が多いほど語彙力は伸びますので、子供が進んで英語にふれたくなる環境を作りましょう。



インタビューを終えて

草加市と獨協大学が1年間かけたこの調査は、子供の英語教育環境の改善につながる上記のような知見が多く得られました。この調査は、文部科学省から研究補助金を得て、2019年から3年間の全国調査に移行することになったそうです。

羽山先生はこの調査結果について、英語は他教科に比べて家庭学習の方法が確立されておらず、英語における学校と保護者との連携が希薄なことを憂慮されていました。

保護者の英語教育への興味・関心の高さが子供の英語力にうまくつながるように、子供・保護者・学校が連携できる環境作りが求められていきそうです。
また、小学校の英語授業が2020年からさらに大きく変わろうとしている今、子供の英語の語彙力を育てるためのサポートが、家庭でももっと必要になってくるとみられます。


羽山先生プロフィール

プロフィール:羽山 恵(ハヤマ メグミ)

獨協大学外国語学部英語学科准教授。
専門は英語教育、第2言語習得研究、コーパス言語学。
主な著書に『中学英語いつ卒業?』(共著・三省堂)がある。

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