ディズニー英語システム TOP > 乳児・幼児からの英語 > 英語教育に関するニュース > AI時代にはどんな英語力が必要?~上智大学・藤田保教授インタビュー~

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ご自身の子供にもバイリンガル教育を行ってきたという上智大学言語教育研究センター教授・藤田 保先生。
そんな藤田先生に、「AI時代にどんな英語教育が求められるのか?」「親や学校の先生は英語学習をどうサポートすべきか?」といった疑問への答を伺いました!


Q1.AI時代に求められる英語力とはどういうものでしょうか?

Q2.学校の授業や入試ではどのように英語力が評価されるようになるのですか?

Q3.小学校の先生は英語の授業でどんな役割が求められるのでしょうか?

Q4.子供が英語力を身につけるために、家庭でできることはありますか?



Q1. AI時代に求められる英語力とはどういうものでしょうか?

AI以上のハイレベルな英語力が求められる時代に

将来、簡単な定型表現の英会話は、AIで問題なくできるようになるでしょう。
今後は、AIには伝えられない微妙なニュアンスを伝えられて初めて「英語ができる」と言えるようになると思います。
また、友人にしてもビジネスにしても、人間関係を構築するのに、いちいち機械を挟んで会話していたのでは成り立ちませんよね。
だからこそ、今までよりも遥かに高い英語力が求められる時代となるでしょう。

さらに、AIにもできる定型表現くらいは、小・中学校の義務教育でできるようになっておく必要性も出てくると思います。
算数でいうところの九九と同じで、計算機を使えば九九を暗記する必要はありませんが、九九のような基本を覚えていないとその先の学習を進められないからです。

英語学習では英単語や構文などを単に覚えるだけなく、どう活用するのかが問われるでしょう。学んだ英語で自分の考えや気持ちをどれだけ表現できるかが重要なのです。
いくらすばらしい考えが頭に浮かんでも、それを周囲の人とシェアしたり、表現したりできなければ意味がありません。

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Q2.学校の授業や入試ではどのように英語力が評価されるようになるのですか?

小学校では英語でタスクがこなせたか「パフォーマンス評価」

2020年からの新しい学習指導要領を見ると、小学3・4年生の英語学習では基本的に文字の読み書きは扱いません。
まず英語を言えるように指導していくという内容になっています。この段階では、きちんとした文章で言えなくても、単語の細かな意味などが分からなくても良いのです。
ジェスチャーや顔の表情、声音など、いわゆる非言語的な要素というものを含めた形で表現してもかまいません。
大事なことは、自分の考えをどうにかして相手に伝えることです。

小学5・6年生になると文字の英語学習も入ってきて、英語の成績も教科として評価されます。この時、ペーパーテストだけで評価するのではなく、「パフォーマンス評価」も重視されるようになります。
例えば、児童がお店屋さんの設定でペアを組み、店員とお客さんの役割になって「英語で買い物を行う」という実演をしていることが評価されます。
正しい言葉を使ったかよりも、何が欲しいかを尋ね、商品の値段を聞き、金銭のやり取りを行う買い物というタスクがきちんと遂行できたかどうかが見られるのです。

これは、音楽や体育の評価と同様に考えると分かりやすいでしょう。「リコーダーで1曲最後まで吹けたらA。途中までならB。ぜんぜん吹けなければC」というような評価と一緒です。
「英語で買い物ができたらA、値段のやりとりができなければB」という風に評価するのです。
音楽の授業でプロの演奏家になるような高度な演奏を求めたり、体育の授業でオリンピック選手のような鉄棒の凄技などを求めたりしていないのと同様に、ネイティブのような英語を話せなくても、買い物という一連のパフォーマンスができれば評価されるのです。

入試改革で英語を「聞く」「話す」「読む」「書く」4技能の全てを評価

今回の英語教育改革の大きなポイントは、小学校・中学校・高校(・大学)の英語学習の接続や一貫性を重視しているところです。
小学校でデジタル教材を活用したり、ALTとの会話を促したりして、英語を使う機会が増えていきますが、中学校や高校でも小学校での学習を引き継いで、生徒自身が英語をたくさん使うような学習が増えていくのです。

英語学習の一貫性の重視は、入試改革にも通じています。
高校入試や大学入試で、英語を「聞く」「話す」「読む」「書く」4技能の全てが評価対象となってきたことがその表れです。
英語の全ての技能を統合的に使う授業が増えるわけですから、入試でも全ての技能がどれだけ使えるか判断しなければアンフェアだという考えですね。

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Q3. 小学校の先生は英語の授業でどんな役割が求められるのでしょうか?

①ファシリテーターとしての役割

新学習指導要領が始まる2020年以降は、小学校の担任の先生が急に英語の先生の役割も求められるので、不安に感じている先生や保護者も多いかもしれません。
しかし、担任の先生にネイティブスピーカーのように完璧な英語をペラペラ話すことは求められていないので、大丈夫です。
先生の果たすべき役割は大きくふたつあります。
ひとつはファシリテーター()の役割で、子供たちが英語で話し合ったりするときにサポートする「黒子」のような役割になります。
従来の授業スタイルでは先生が主体となって講義していましたが、これからは子供たちをどう動かし、活動させていくのかが先生に問われてきます。

※ファシリテーター(facilitator):
「促進者」を意味する言葉。1940年代後半のアメリカでカウンセリングの場などで使われ始めた。
現代の日本では、学習や議論の進行などを促進する機能を担う者を広く意味している。

②ロールモデルとしての役割

もうひとつは、ロールモデルの役割です。
「普段は日本語で話している先生が、英語の時間になったら当たり前の顔をして英語で話している」という姿を見せることは非常に重要です。
逆に「英語の発音が下手だから、文法が完璧じゃないから、話したくありません」という姿を先生が子供たちに見せてしまったら、「大人になっても英語を話さないでいい」という悪い見本を見せることになります。
先生が英語を使うことは当たり前で、普通にALTの先生とも話している姿を見せることがとても大事です。
先生は「英語の見本」ではなく、「英語を話す人の見本」なのです。

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Q4. 子供が英語力を身につけるために、家庭でできることはありますか?

英語を単純に楽しみながら話すクセをつけよう

例えば、日本語のアニメを見ている2~3歳児は、アニメの言葉や内容を全て理解していなくても楽しそうに笑って見ていますよね。
英語学習もそれと同じで、子供が喜びそうな英語の楽しい動画や絵本を見せていれば、喜んで見るものです。

また、幼児向けの英語イベントなどに参加してみるのもオススメです。
イベントに1回出たからといって、劇的に英語が話せるようになるわけではありませんが、英語が「楽しいな」「面白いな」と思うきっかけにはなります。
ある程度英語を学習している子供なら、イベントは英語を実際に使うチャンスでもあります。

ひと言の英語でも相手に通じれば喜びを感じ、「もっとやってみたい」とモチベーションも上がるでしょう。
幼児の方が英語に対する抵抗感がないので、その時期にたくさん話したり聞いたりするクセをつけておくことです。
単に知識を増やそうとするのではなく、英語にふれる機会を増やし、英語を話す習慣みたいなものを作れるとすごく良いと思います。

親も英語好きになって一緒に楽しもう

子供が英語を得意になるかどうかは、親がどれだけ一緒になって楽しめるかにかかっています。
小さい子供は何でも親の真似をしますよね。料理でも掃除でも親がやっていることを何でもやりたがります。
親が楽しそうに英語の動画を見ていたら、子供も見たくなるのです。
英語が苦手な保護者でも、英語で動画などを見ながら「あれ何だろうね。面白いね!」「これからどうなるんだろう」と、コミュニケーションをとりながら頻繁に英語を楽しみましょう。なお、その時の声がけは日本語でも構いません。そうすることで、子供は英語が特別なものと思わなくなります。

英語が勉強にならないように接しよう

また、子供が英語をお勉強的に捉えないように気をつけて接してください。
例えば、子供が覚えた知識を確認しようと、「リンゴは英語でなんていうか言ってごらん」「catって何?」と頻繁に聞いたりするのは好ましくありません。
覚えた知識をいちいち確認するより、親自身が英語を楽しんで、子供の良いロールモデルとなってあげてくださいね。

学校の先生が子供のロールモデルになるときと同じように、親も子供の前で英語を話して見せることで、「英語を話す人の見本」になることができます。
上手に話そうなどと思う必要はありません。英語の動画や英語イベントなどを親子で楽しむときに、親も積極的に英語を口にしてみてください!

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インタビューを終えて

AI時代を迎え、必要とされる英語力の質は大きく変わろうとしています。
学校教育で評価される英語力も、より高度な内容になっていきそうです。

また、子供が英語を好きになるためには、先生や保護者のロールモデルとしての役割が大切なんですね。
子供が小さいうちから英語をたくさん使うこと、英語を楽しいものと思わせることが鍵だと語る藤田先生。
大人が子供と一緒になって楽しめる英語イベントや英語教材を活用していくことで、家庭でも子供の英語学習を強くバックアップできるかもしれません。


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プロフィール:藤田 保(ふじた たもつ)

上智大学言語教育研究センター教授。
専門は応用言語学(バイリンガリズム)と外国語教育。
NPO小学校英語指導者認定協議会(J-SHINE)専務理事。公益財団法人日本英語検定協会理事。
主な著書に『英語教師のためのワークブック』、『先生のための英語練習ブック』(アルク出版)、『小学校英語 教科化への対応と実践プラン』、『よくわかる 小学校・中学校 新学習指導要領全文と要点解説』(共著・教育開発研究所)などがある。

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