英語教育に関するニュース

三木小学校英語授業1

東京都品川区の小学校では、小学1年生から区独自のカリキュラムで英語授業を行っています。
品川区の英語モデル校であった、三木小学校(みつぎしょうがっこう※1)の5年生の英語授業を取材したところ、授業は実に多様な活動内容でした。
45分間の授業の中で、ジェスチャーつきの歌から始まり、リタラシー学習(※2)で英語の音と文字の関係を学習し、ストーリー(英語版『浦島太郎』)を用いて、ジェスチャーをつけながら和訳なしで、リズミカルに多量の英語を口にしていました。
さらに、文科省教科書『We Can!1』を用いた、デジタル教材のリスニングやスピーキング、そしてルーレットを使って習った英語表現で子供同士でやりとりする活動等が行われましたが、子供たちは楽しそうにしっかりついていっていました。特に、英語版『浦島太郎』のストーリーの活動は、昨年度学習して言えるようになったものを1年ぶりに復習していたようですが、よく覚えており、喜んで流暢にアウトプットしていたのが印象的でした。

実は、このように活気ある英語授業は、アレンメソッドを取り入れた独自のカリキュラムによって行われています。
今回は、三木小学校の英語授業の工夫について、JTE(※3)の小林先生にお話しを伺いました。

※1 品川区立三木小学校:
1922年12月に開校した96年の歴史をもつ小学校。

※2 リタラシ―学習:
アレンメソッドの中では「英語を読み書きする力を伸ばすための学習」という意味合いで使われている。
リタラシ―(Literacy)とは、
元々、「書き言葉を、作法にかなったやりかたで、読んだり書いたりできる能力」を意味していた。広い意味では、「なんらかの分野で用いられている記述体系を理解し、整理し、活用する能力」という意味もある。

※3 JTE(Japanese Teacher of English):
日本人の英語の先生。


Q1.品川区の小学校の英語教育の特徴を教えてください。

Q2.アレンメソッドとはどういう教授法ですか?

Q3.アレンメソッドへの子供たちは反応はどうでしたか?

Q4.教科書はどのように活用されていますか?

Q5.子供の英語学習のために、家庭で保護者ができることはありますか?


三木小学校の先生たちの近影
白倉 直明校長先生(写真左)
5年生の担任教諭・林 美希先生(写真中央)
JTE・小林 悠先生(写真右)


Q1.品川区の小学校の英語教育の特徴を教えてください。

アレン玉井先生考案のオリジナル教授法

品川区の小学校では、かねてより1年生から英語の授業を導入していましたが、5年前の2012年より、青山学院大学文学部教授アレン玉井 光江先生(以下、アレン玉井先生)が考案した英語指導法(以下、アレンメソッド)のカリキュラムを取り入れています。このアレンメソッドを全展開した第1期の英語モデル校となったのが三木小学校です。
現在、品川区内の全小学校および義務教育学校前期課程でアレンメソッドを取り入れたカリキュラムで授業を行っています。

Joint Storytellingとリタラシー

全学年において、アレン玉井先生の開発したJoint Storytelling(お話を活用した学習)やリタラシ―(※3)を段階的に進めていき、卒業時には、英語の音にたくましく、かつ自力で英単語や英文を読もうとする初期リタラシ―能力が身につきます。

全授業が2名体制

品川区には、現在45名ほどのJTEがいます。区が採用し、全員がアレンメソッドを数日に渡りみっちりと研修を受けた先生たちです。
小学3年生以降は、こうしたJTEが全英語の授業に担任の先生といっしょに入ります。小学1~2年生は、ALT(※4)と担任の先生が共に授業をします。
このようにJTEまたはALTと担任による2名体制で全英語の授業を指導できるところは都内でもまだ珍しいかと思います。

※4 ALT(Assistant Language Teacher):
外国語を母国語とする外国人英語等教育補助員。小中高校などの英語授業で日本人教師を補助する。


Q2.アレンメソッドとはどういう教授法ですか?

フォニックス(※5)の前にアルファベットと音韻認識能力(※6)を育むリタラシ―指導と、誰もが知っている童話から英語を学ぶJoint Storytellingがアレンメソッドの特徴です。

※5 フォニックス:
英語の文字と音の関連性を学び、単語を音読できるように指導する方法。

※6 音韻認識能力:
英語の音に対する気づき。英語で話されている言葉がどのような音(音素など)で作られているかを知る力。

「音素体操」から学ぶフォニックス

「音素体操」とは、手の動きをつけながら、英語のアルファベットA~Zまでの名前を音素(※7)の単位に分解して言う活動です。
例えば、B, C, D, E, G, P, T, V, Zを音素の単位に分解すると、/b//ɪː/,/s//ɪː/,/d//ɪː/,/ɪː/,/ʤ//ɪː/,/p//ɪː/,/t//ɪː/, /vː//ɪː/,/zː//ɪː/となり、共通の母音/ɪː/には、横に長く引っ張るような「手を広げる動作」をつけて覚えます。
こうして体を動かしながらアルファベットA~Zを「音素体操」で言えるようになることで身につけた英語の音の感覚を活用してフォニックスへ移っていきます。
子供たちは、A~Zを音素単位ですでに正確な発音で言えるようになった段階で、共通の母音/ɪː/の発音を消すと、/b/,/s/,/d/など、正しい英語の発音でフォニックスをスムーズに学習することができます。

※7 音素:
音の最少単位。日本語で「か」という音は1つの音と認識されるが、/k/, /a/というようにさらに2つの音に分解できる。
英語は原則1音素に対して1文字が対応する言語であるため、文字を読み書きするためには音素が認識できる力が必須となる。

三木小学校英語授業2

耳と動作で英語のストーリーを学ぶ

同様に、Joint Storytellingでも英語のストーリーを耳と動作で学びます。『浦島太郎』や『赤ずきん』などの童話が、教材用に作られた基礎的な語彙や表現からなる台詞になっており、それを聞きながら、ジェスチャーもつけて、リズムや歌に合わせて口頭練習していきます。
英語学習をはじめたばかりの子供たちは単語、言えても短文程度しか発話できない中、アレン玉井先生が独自に考案されたジェスチャーを交えて物語を口述することで、より効果的、効率的に豊富な音声言語を聞いたり、言えるようになる画期的な教授法です。
ここで使われるジェスチャーは主にアメリカの手話が基になっており、英文の中でアクセントがおかれる箇所に動作を入れるなど配慮されており、緻密に計算されています。
このように体の動きを通して言葉を学ぶ教授法を、TPR(Total Physical Response:全身反応教授法)といいます。

三木小学校英語授業3


Q3.アレンメソッドへの子供たちは反応はどうでしたか?

英語力の基礎がしっかり作られる

一般的に、日本人の英語話者が英語の文字と音との関係を理解するには時間がかかります。しかし、その力が無ければ自力で教科書が読めず、中学で英語につまずいたり挫折したりしてしまう生徒も少なくありません。
中学以降のリーディング力を高めるためには、英単語を聞いたとき、どのアルファベットの音か理解できている必要があります。
それは数時間だけで身につくものではないので、長時間継続して意識的に繰り返し指導していく必要があると思っています。
今日の授業のなかでも、"well"(よい)や"smell"(匂い)という単語を担任の林先生が発音し、最初の"w"や"sm"を書かせたりしましたが、皆がきちんと書き取れるのは「音素体操」を基礎に、フォニックスが理解できるようになってきているからと思っています。

自力で中学の教科書が読めるように

英語の文字と音の関係を小学校卒業するまでには理解し、身近な単語や短い文を自力で読めるようにするのがゴールの1つであると考えています。
中学で教科書を開いたときに、半分くらい自力で読める、そんな英語力を目指しています。自力で読めるようになれば、家で自学もできますよね。

この5年間アレンメソッドのカリキュラムをやってきましたが、三木小学校に卒業生が遊びにきたときに、「英語の教科書をこんなに読めるよ」と誇らしげに見せてくれることも多々あります。こんな風に積極的に英語にふれてくれるようになったことがたいへん嬉しいです。

侮れないジェスチャー効果

ジェスチャーをつける良い点は、聞いてすぐにマネできないときには、手のジェスチャーだけで行なうこともできる点です。そのまま様子を見ていると、数回ジェスチャーをした後には口も動くようになり、英語を発話できるようになってきます。
姿勢を正したまたじっとしているより、手の動きがある方が英語の音も、歌も声に出しやすいようです。

英語の授業では、子供たちの知らない言葉への抵抗感をいかに取り除くかが大切です。
子供たちが無意識のうちに自分の気持ちにフィルターをかけてしまうと、本来入るべきインプットがうまくできません。
いかにそのフィルターを取り除くようにするかがポイントですが、ジェスチャーは一種のフィルター除去剤になっていると実感しています。
小学生くらいの年齢の児童にとっては、口が動かなくても手を動かすことで、授業に参加しているという感覚がもてることが大切です。

また、ジェスチャーを交えた記憶は思い出しやすいようです。
今日の授業で行った『浦島太郎』のお話は、1年前にやったことなのに、ジェスチャーを交えて少し復習しただけで、子供たちは手を動かしながら英語のストーリー全文を思い出せました。

三木小学校英語授業4


Q4.教科書はどのように活用されていますか?

教科書とアレンメソッドの相乗効果

もちろん指定教科書による指導も行っています。品川区はICT環境が整っているので、毎回時間をとって、デジタル教材を有効に使って教科書の内容を学ぶようにしています。
その際、時々教科書の内容をアレンメソッドで学んだストーリーと結びつけ、相乗効果がもてるようにしています。そのせいか、教科書だけではなかなか覚えられなかった単語や表現も、子供たちは自然に理解できているように感じます。

復習はゲーム感覚で

また、授業の冒頭で、教科書で学んだキーフレーズの復習をします。せっかく教科書で学んだことも、復習せず数ヵ月すると忘れてしまうのは、もったいないと思います。
最近では、ルーレットで会話のトピックを選び、その会話で用いるキーフレーズを復習して、子供同士でやりとりする機会をつくることで、記憶が定着し、徐々に「自分の言葉」になるように工夫しています。


Q5.子供の英語学習のために、家庭で保護者ができることはありますか?

子供が今できていることをほめよう

子供たちは、習った英語のストーリーや歌を、家に帰ってからも声高にそらんじたりします。
その時、子供が今わかっていること・できていることを大事にしてあげて欲しいです。
「ここ間違っているじゃない」とか「ここの意味わかる?」と言うのではなくて、「うんうん、すごいじゃない」とほめてあげてください。

英語ができる保護者ほど、「"a"が入ってない」「"s"がついてない」などと気になってしまうと思いますが、そういった点を気にするよりは、今できていることをすごいことだと認めてほめてあげて欲しいです。
子供が例え言葉に詰まってしまったとしても、「これだけ言えてすごいね」「もう1回聞かせて」というふうに励ましてください。

親子でいっしょに英語体験しよう

親子でいっしょに英語で歌ったり、英語を覚えたりした経験を、子供はずっと大切に覚えているものです。
少し発音が変でも、少しくらい間違っていても、親子でいっしょに体験したという思い出が大切なのです。
親と散歩したりドライブしたりながらいっしょに歌った英語の1曲などが、英語学習の一生のモチベーションにつながったりするのではないかなと思います。

三木小学校英語授業5

取材を終えて

三木小学校の5年生の英語授業を見学して、ジェスチャーを積極的に活用した授業の様子と、長文や新しい単語に対する抵抗感が無い児童たちの様子に驚きました。
子供たちの英語力の基礎を養うために、ジェスチャーを活用した英語授業は画期的な方法といえそうです。

なお、JTEの小林先生は、まるでネイティブのようにきれいな発音の英語で指導されていましたが、生まれも育ちも日本だといいます。幼い頃からディズニー英語システムを愛用していたこともあって、英語が好きだったそうです。子供の時期に英語を楽しんだ記憶が、大人になってからの英語力にしっかり結びついているんですね。

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