ディズニー英語システム TOP > 乳児・幼児からの英語 > 英語教育に関するニュース > 小中一貫英語教育や「英語生活体験」で異文化に早くからふれる!杉並区の試みを済美教育センターに取材しました!

英語教育に関するニュース

英語生活体験(小学校)

杉並区の小学校での「英語生活体験」の様子

公立の小中一貫校が増えている中で、東京都杉並区はいち早く、全ての区立学校で小中一貫教育を進めています。小中一貫教育は、英語教育を行う上でも様々なメリットがあるようです。
今回は杉並区立 済美教育センター(※1)の平崎所長と寺本統括指導主事にお話を伺い、杉並区の小中一貫教育や英語教育の内容に迫ります!

※1 杉並区立 済美教育センター:
杉並区立学校における教育の充実・振興を図ることを目的として、1951年3月に開設された教育研究所が前身。2005年4月に現「済美教育センター」となり、区立学校の教育活動を総合的に支援する役割を担っている。


Q1.杉並区の小中一貫教育とは、どういうものでしょうか?

Q2.杉並区の小中一貫英語教育の特徴を教えてください。

Q3.小学1年生から英語教育を始めたことによるメリットは何ですか?

Q4.教員の英語研修はどのようにされていますか?

Q5.杉並区ならではのユニークな英語学習方法を教えてください。


済美教育センター1

杉並区立 済美教育センター
平崎 一美 所長(写真左)・寺本 英雄 統括指導主事(写真右)


Q1.杉並区の小中一貫教育とは、どういうものでしょうか?

中学校生活への不安感も軽減

杉並区の小中一貫教育は、義務教育9年間を通して小学校と中学校が連携し、地域と協働することで、全ての子供に「人生の基盤」を確実に築くことを目的としています。
小学校と中学校が連携することで、学びの内容や方法につながりを生み、一人一人が自分の夢に向かう活動を確実に積み上げることができます。地域と協働した教育活動は、いろいろな人と共に生きる素地として多様な関わりをもたらすだけでなく、ひいては、自分たちのまちを自分たちでつくることにも貢献します。
小中一貫教育の成果として、「小学生の中学校に対する不安感が軽減され、期待感が高まった」「学習のつながりを意識した授業が行われるようになった」「小学校と中学校、学校と地域といった垣根を超えて皆で教育のことを考えるようになった」と評価しています。学習のつまずきや学び残しが減少傾向にあることも大きな成果であると考えています。

2020年に施設一体型の小中一貫校も新たに開校予定

一般に、小中一貫教育の取組は、施設形態によって「施設分離型」「施設隣接型」「施設一体型」の3つに分けられ、杉並区の大半は「施設分離型」です。「一体型」では2015年4月に開校した杉並和泉学園があり、さらに2020年4月には、高円寺地域に2校目が開校する予定です。
しかし、最も大切なことは、先ほどの連携・協働を通して学びをつなげ、一人一人に人生の基盤を確実に築くことです。どの施設形態であっても、学校や地域の実情に根差した多様で個性的な教育活動があることに杉並の小中一貫教育の特徴があります。目的は同じでも、それぞれの学校・地域には、それぞれのやり方があるのです。

済美教育センター2


Q2.杉並区の小中一貫英語教育の特徴を教えてください。

小学校で基礎までしっかり養える小中一貫英語教育

杉並区では、小学校の5・6年生に外国語活動が導入される前の2008年度から、区内の全小学校・全学年で活動を始めました。その目標は、中学校において「世界大での絆・支え合いの大切さに自覚を深める」ことを見据え、「言語や文化の違いを超えて思いを伝え合うよろこびに気付く」ことを大切に外国語によるコミュニケーション能力を育むことです。
現在では、この目標の下、義務教育9年間を通した外国語教育の過程を以下の3つの時期に分け、各時期にあった学習内容や人材を配置しています。

  • 入門期(小学校第1~4学年)には、ALT(英語を母語、又はそれと同程度に運用する能力をもった外国人指導助手)を適切に配置し、異言語・異文化体験を主たる目的に「聞くこと」「話すこと」の活動を行う。
  • 基礎期(小学校第5・6学年)には、ALTに加え、自ら外国語を学び高い英語能力を身に付けたJTE(日本人指導助手)を核として配置し、教科化に対応し「読むこと」や「書くこと」を含む英語によるコミュニケーション能力の育成を目指す。
  • 充実期(中学校)には、異言語・異文化の理解を広げ深める交流活動のためにALTを必要最小限の時数配置し、「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」を統合したコミュニケーション能力の育成を目指す。


Q3.小学1年生から英語教育を始めたことによるメリットは何ですか?

異文化理解のための体験的な活動は、早ければ早いほど受け入れられやすい

杉並区のカリキュラムでは、国が定める学習指導要領よりも早く、小学校1年生から英語を通じて異言語・異文化と出会い、触れ合うことになります。
ここには、杉並区としての明確な「ねらい」があります。外国語教育というと、まず、「英語を聞いたり話したり、読んだり書いたりできる」ことが思い浮かぶのではないかと思います。しかし、もっと深く考えれば、「英語・外国語を使って"自分の夢をかなえる"」ため、そして、「言語や文化の違いを超えて"共に生きる"」ため、という外国語教育を行うことの最も大切な部分が見えてきます。
小学校1年生からの外国語活動は、このうち特に「後者」を重視するものです。異なる言語や文化をもった人々と共に生きることが「自然」であるような環境づくりを目指す。そこから得るものを人生の基盤の一つとして大切にしてほしい、夢はいろいろな人と共に生きる中でこそよりよくかなう。そんな「願い」が込められています。
実際、子供たちの様子を見ると、こうした環境に身を浸す経験が早ければ早いほど「違い」を自然と受け入れるようです。もちろんそこには様々な配慮も必要で、例えば違いを「怖い」と思ってしまわないよう、バーバル・ノンバーバルの両側面から英語をコミュニケーションの手段として捉え、「楽しく」活動することも大切です。
こうした取組の成果は、杉並区が実施している子供たちを対象としたアンケート調査(★)にも表れています。例えば、「異なる言語や文化をもつ人々と出会ったとき、互いの違いを認め、尊重できる」という質問項目に対しては、義務教育の終了学年である中学校3年生で9割近い子供が肯定的な回答をしています。
ですから、子供たちが英語をはじめとした外国語に興味をもったり、異文化を理解しようとするモチベーションを維持できたりすることが大切です。子供たちの気持ちの面で、早期からの外国語教育は意味があると思っています。

★平成30年度 杉並区「特定の課題に対する調査、意識・実態調査」のうち「学習・生活についてのアンケート」


Q4.教員の英語研修はどのようにされていますか?

大学と連携し、タブレットによる教員研修も導入

杉並区では、文部科学省の研修に加え、各学校で外国語教育推進の中核となる教員が区で実施する研修を受け、学校に持ち帰って広めるような研修の形をとっています。
また、指導技術は模擬授業などを見て習得できても、発音などはそうはいきません。そこで、教員自身の英語運用能力を高めるために、相互支援・協力を行う協定を結んでいる早稲田大学教育・総合科学学術院との連携によりタブレットPCを活用した研修を計画し、昨年より、希望する小学校の教員が、自分で選んだ場所で、自分で選んだ時間にタブレットPCを用いた発音学習ができるように試行しました。今後は研修内容を改善し、中学校の教員にも広げていく予定です。

済美教育センター3


Q5.杉並区ならではのユニークな英語学習方法を教えてください。

英語で伝える経験ができる「英語生活体験」を実施

義務教育9年間を通じた系統的・連続的な外国語教育を進めていく中で、ネイティブスピーカーをはじめとした異言語・異文化を背景とする多様な人々との交流活動をより充実させるために、「英語生活体験」を行っています。TGG(※2)などのいわゆる「英語村」を杉並区の外国語教育の方針に従ってアレンジしたもの。そんなふうにイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
具体的には、体育館に10の国のブースを作り、小学校第5学年の児童が4人ほどのグループで全てのブースを回っていきます。各ブースにはALTがいて、その国の説明を英語でしてくれます。
最初に実施した学校の学習では、ALTから説明を聞いて質問するだけでしたが、次に実施した学校では、子供たちもそれぞれのブースで日本の有名な場所や食べ物等についてALTに英語で伝える活動を取り入れました。
やはり、聞くだけでなく英語で伝える経験もする方が意義は大きかったようです。
伝える活動を取り入れた学習では、最初のブースから10番目のブースを回るまでに、子供の姿勢がどんどん変わっていく様子を実感しました。言語や文化の違いを超えて考えや思いが伝わることを実感し、その喜びによって自分たちの英語にどんどん自信がついているのです。
なお、中学校でも同様のイベントを開催しましたが、中学生たちはきちんとした文法で話そうと努力していたために、かえって英語でコミュニケーションを交わすことのハードルが上がっていたかもしれません。
小学校の低学年ほど、とにかく伝えようと楽しそうに英語を話します。「楽しい」という経験は、先ほども言ったように、異なる文化、あるいはその背景にあるものの見方や考え方の違いを理解し、自然と受け入れる素地となります。
異文化を理解し、認め合うための体験や学習を早期に始める重要さを、この活動の中でも実感しました。

※2 TGG(TOKYO GLOBAL GATEWAY)
東京都教育委員会と株式会社TOKYO GLOBAL GATEWAYが提供する、新しいタイプの体験型英語学習施設。

英語生活体験(中学校)

杉並区の中学校での「英語生活体験」の様子

取材を終えて

異文化を早くから体験することは、子供たちの英語学習へのモチベーションを高めるために大きな意味があるんですね。
杉並区が実施している、小中一貫英語教育や「英語生活体験」からは、区として英語教育に真剣に取り組んでいる姿勢が強く伝わってきました。

元々、杉並区は学校教育に対する区民の関心が高い地域で、区内の全小中学校に「学校支援本部」というPTAとは別のボランティア団体もあるほどです。こうした区民の関心や協力体制なども、杉並区が新しい英語教育を実現していくための大きな力になっているのかもしれません。

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