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やってはいけない脳の習慣

川島 隆太(監修)・横田 晋務(著)
『2時間の学習効果が消える! やってはいけない脳の習慣―小中高生7万人の実証データによる衝撃レポート』
青春出版社

「がんばりなさい」と励ますだけでは、子どもの内なる「やる気」をひきだすことは難しいようです。
書籍『やってはいけない脳の習慣』から、脳科学者が導き出した「やる気」をひきだすヒントを見てみましょう。


やる気スイッチはどこにある?

ー中略ー

この章で取り上げるのは、やる気です。
「やる気スイッチって、どこにあるの?」という声をよく聞きますが、科学的にやる気を出す方法があるとしたら、知りたいと思いませんか?

勉強のやる気(学習意欲)についての科学的研究は、今まで心理学の「動機付け」の一分野として研究されてきました。
人は何かの行動をする際には、必ずその行動をするよう動機付けられていると考えられますが、どのように動機付けられているかはその人や状況により異なります。

例えば、「勉強をする」という行動の動機付けは、
「勉強すると、新しい知識やできなかったことができるようになるのが楽しいから」
という子どももいれば、
「入試で良い点数を取り、志望校に入学したいから」
「勉強しないと親や教師に怒られるから」
など様々です。

自己決定理論という非常に有名な動機付け理論を提唱したDeci & Ryanによれば、このような様々な動機は、「内発的動機付け」と「外発的動機付け」に大きく分けられます。
内発的動機付けとは、一言でいうと、その行動を行うことそのものから得られる満足感を理由として行動する場合を指します。先ほどの例で、「勉強することが楽しいから」という理由は内発的に動機付けられていると言えます。
一方で、「志望校に合格するため」や「怒られないようにするため」といった理由は、その行動をすることで自分への有益性や価値を得ることを理由として行動しており、外発的に動機付けられていると言えます。
わが子の場合はどちらのタイプだと思いますか? それぞれの動機付けの研究についてもう少し詳しく見て行きましょう。

★ 内発的動機付け――楽しいからやる、自分の成長がうれしいからやる

内発的動機付けは、さらに、
① その行動が持つ興味深さや面白さといったことで高まる場合
② その行動を遂行して個人の欲求が充足されることで高まる場合
この2つが考えられています。

② の「充足される欲求」とは何かといえば、有能感、自律性、関係性という3つの欲求が挙げられます。

有態感とは、その行動をすることにより、できる自分を感じることや、自信を得ようとする欲求を指します。
自律性は、自分でその行動を選択したという自己決定した感覚を得ること、特に、他の誰でもない自分の行動が結果を導いたと感じる欲求を指します。
関係性はだれかとつながっていたい、守られたいと思う欲求です。

① の動機付けの例を挙げると、純粋に勉強することが楽しい、新しいことを知ることが楽しいと感じられる場合です。
② の動機付けの例は、できないことができるようになりたい、もしくは、できる自分を感じられる場合(有態感の充足)、誰かから強制されたのではなく、自分から勉強することを選んだ場合や、テストでいい点が取れたときに自分が頑張ったからだと感じられる場合(自律性の充足)です。

一方で関係性の欲求は、有態感や自律性ほど強くはありませんが、個人が繋がっている、受け入れられていつと感じられる状況であるほど、動機付けが高まると考えられています。

外発的動機付け――賞罰、アメとムチによる

一方、人間の多くの行動は外発的動機付けによっています。
我々の日常生活では、真にやりたいことだけをやっているわけにはいかず、特に成長するにつれて、必ずしも自分の興味のない活動をやらされる機会が増えていきます。
その行動自体が内発的に動機付けられていない場合、人は、何か別の結果を得るために(外発的動機付けによって)行動をしています。
例えば、「親や教師に怒られたくないから宿題をする」「志望校に合格するために勉強する」という理由はいずれも外発的に動機付けられて勉強をしているといえます。

同じ外発的動機付けでも、この2つは質的に異なっていることに気づきませんか。
「親や教師に怒られたくないから宿題をする」というのは完全に自分以外の外的な強制力にしたがって勉強しています。

それに対し、「志望校に合格するために勉強する」というのは、自分の進路を考え、自主的に勉強していると考えられます。
このように、一口に外発動機付けといっても、"自主性"に応じて大きく4つの段階があるとされています。
最も自主性の低い外発的動機付けは、外的な調整です。
この段階では、外的な欲求を充足させるためや、外的に与えられる報酬を得る、もしくは罰を避けるために行動します。

「怒られたくないから宿題をする」という理由は、外的な欲求(勉強してほしいという親や教師の欲求)を充足させるためや、怒られるという罰を回避するためであると解釈でき、まさに外的に調整されている状態です。
 次の段階は、取り入れ的調整といわれるもので、外的ではなく、自分の考えを理由として行動しますが、罪悪感や不安を避けたり、プライドを守るために行動する段階です。

例としては、「みんながやっているから勉強する」といった理由が挙げられます。
3段階目は同一化調整といわれ、その行動に個人的な価値があると考えるために行う段階で、「自分にとって大切なことだから勉強しよう」という例が挙げられます。

最後の段階は統合的調整とされ、この段階では、同一化調整の段階での目的が完全に自分の価値観と一致し、自然とその行動を行うようになります。さらに、同一化調整の段階では、「自分のためになるから勉強しなくては」と、勉強することの価値を意識しなければなりませんが、統合的調整の段階では、もはやそのように考えるまでもなく、自然に勉強をすることができるようになります。このような統合的調整に裏打ちされた行動は内的動機付けによる行動と非常に似ていますが、どのようなレベルにしろ、何かを得るために行動するという点では内的動機付けとは異なるとされています。

このような外発的動機付けの段階の変化について、はじめは、外的な調整による他者からの報酬によって行動していますが、この活動をし続けることで、報酬ではなく、活動そのものの興味深さや価値を体感するきっかけとなり、段階があがっていくと考えられます。
また、高い段階にいる場合には、外的に強制しようとすると段階が下がってしまうことも知られています。

ここまでをまとめると、その子どもの自律性を重んじること、できたという経験をさせること、できた場合にはほめるなど肯定的に評価してあげることで子どもはやる気になるといえます。

最新の脳科学による知見では、「線条体」という脳の中心部に近い部分に位置する領域が内発的・外発的の両方の動機付けと関係しているとされています。
特に、内発的動機付けが高いほど線条体の活動が高くなることも示されており、この線条体が「やる気スイッチ」といわれる場所かもしれません。

「できた!」「やったね!」とポジティブな言葉をかけられるなど他者からの肯定的な評価を受け入れると線条体が活動し、この活動は、内発的に動機付けられているほど大きくなることが分かっています。

また、記憶や言語的な処理に関わるその他の領域の活動も動機付けの高低により活動が異なること、内発的動機付けが高いほど課題の成績がより良いことが分かっており、内発的動機付けを高めることにより、学習に必要となる脳領域を効果的に活性化できると考えられるのです。

(『2時間の学習効果が消える! やってはいけない脳の習慣―小中高生7万人の実証データによる衝撃レポート』p.86~93より抜粋)


監修者

川島 隆太(かわしま りゅうた)

東北大学加齢医学研究所教授。医学博士。1959年、千葉県生まれ。東北大学医学部卒。同大学大学院医学研究科修了。ニンテンドーDS「脳トレ」シリーズ監修。
日本における脳機能イメージング研究の第一人者として著書多数。

著者

横田 晋務(よこた すすむ)

東北大学加齢医学研究所助教を経て、現在、九州大学基幹教育院准教授。東北大学教育学部卒。同大学大学院教育学研究科修了。教育学博士。
MRIを用いた小児の脳形態、脳機能、認知機能の発達に関して、発達心理学と脳科学とを融合し、子どもの認知機能の発達を明らかにする研究を行っている。

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