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国際バカロレア

平成28年度から各大学では漸進的に国際バカロレアの制度が導入されます。国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)とは国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラムのことです。
国際バカロレアは、1968年にチャレンジに満ちた総合的な教育プログラムとして設置されました。
世界の複雑さを理解して対処できる生徒を育成し、責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付けさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格を与え、大学進学へのルートを確保することを目的としています。

この国際バカロレアはどのようなメリットがあるのでしょうか?またなぜ今、国際バカロレアが注目されているのでしょうか?

大学入試でのメリット

東京大学は、2016年度入学者試験より現在の後期日程試験に替えて「推薦入試」で100名の受け入れを行ないました。その推薦条件は以下のようになっています。

・英語に関する語学力の証明書(TOEFL、英検、IELTSなど)
・国際バカロレアや「SAT」など国際的な大学入学資格
・留学経験など、志願者が異なる文化的背景や価値観への理解を有することを示す資料

上記条件が含まれており、英語を中心とした語学力、および国際経験や、国際的な教育課程を経ている学生が求められていることが分かります。つまり、これからは今まで以上にグローバルに活躍できる学生を優先的に入学させようとしているという意図を読み取ることが出来ます。

推薦入学で有利になるだけではありません。国際バカロレアに関して、東京大学は2016年度からIB入試を実施しており、国際バカロレアDP(DP:ディプロマ・プログラム)取得者が有利に受験を進めることが出来るようになっています。入試でのDPスコアの活用や、単位認定の優遇を採用する大学は増加しつつあり、東大での導入が開始された2016年度を境に、導入する大学はますます増加していく流れにあると言えます。

中高の国際バカロレア校の増加

中学、あるいは高校で国際バカロレアのディプロマ・プログラムを履修し、授業と試験の評価(DPスコア)でディプロマ資格に合格すると、世界各国の大学の受験資格が得られます。つまりディプロマ資格の取得によってダイレクトに海外大学に入学できるのです。

これに対して文科省のカリキュラムで学ぶ日本人の学生は、国際的な教育基準によって学習を行っていないため、海外の大学に入学するためには、それに相当するような基準を別途1~2年の時間をかけて取得する必要があります。

逆に言うと、今までは国際バカロレアは海外の大学を志向する学生にだけにそのメリットが限られていました。しかし近年のグローバル化の流れによって、日本の大学入試において国際バカロレアが考慮されるようになり、その優位性がますます大きくなってきています。

実際に東京大学のように入試に国際バカロレアを考慮するようになったり、他大学においてもDPスコアを入学試験の点数として使用したり、履修科目を単位として認めたりするところも増えてきています。

それに合わせて日本国内でも中高の国際バカロレア校が増加しています。現在では全国の57校での国際バカロレアのプログラムが実施中および今後の具体的な実施が予定されています。

それに加えて政府目標では、2018年までに国内の国際バカロレア認定校を200校にすることを打ち出しており、国際バカロレアはこれから更に重要視されるようになると考えられます。

国際バカロレア(中高)のカリキュラム

国際バカロレアの対象は年齢によって以下のように分けられています。

PYP(Primary Years Programme)3歳~12歳を対象
MYP(Middle Years Programme)11歳~16歳を対象
DP(Diploma Programme)16歳~19歳を対象

多くの国際バカロレア校は国際教育基準である事に基づき、英語の活用に重きをおいて教育が行われています。授業も基本は英語で行われていますが、学校によっては英語と日本語のハイブリッドで行われているところもあるようです。

ディプロマ資格プログラムの必修要件(コア)

また最終学年のDPになると資格取得のために以下のようなコアを重視した学習が行われます。

課題論文(EE)では、英文4,000語の分量が課せられています。生徒は論文の作成を通して、自身が興味を持つ課題について調査し、大学レベルで望まれている個人研究のスキルやライティング技術を習得します。
様々な学問分野にまたがる知識の理論(TOK)コースでは、「知識の本質」について考え、「知識に関する主張」を分析し、知識の構築に関する問いを探求する。批判的思考を培い、生徒が自分なりのものの見方や、他人との違いを自覚できるよう促します。最低100時間の学習。
生徒は、創造性・活動・奉仕(CAS)プログラムを通じて、芸術活動やスポーツ、社会奉仕活動に積極的に参加し、それによって、学業以外の生活について自身の認識を高め、理解を深めます。

国際バカロレアの教育基準は、日本で一般に行われている教育方法である記憶中心の学習ではありません。問題に対しての正解を求めるよりは、むしろ正解がない問題に対して、自分の意見を持ち、自分で考えるプロセスをいかに表現できるかが重要とされています。よって論文が英語であったり、口述試験も英語を中心に行われるという特徴があります。

国際バカロレア校(中高)に入るためには

基本的に、多くの国際バカロレア校は入学時に英語力を求めています。入学面接も学校によっては英語で行われているようです。グローバル化を見据えて、子供の教育を行いたいと考えておられる親御さんであれば、幼いうちに英語を学べる環境を整えておくことは、国際バカロレア校を含め、将来の学校選択肢を拡大させることになります。これは後々の受験に有利に働くようになるかもしれません。

国際バカロレアの重要性が増す背景

グローバル化する社会の教育分野において、日本は出遅れてしまっている感があります。世界的な機関が発表する大学ランキングにおいても年々、日本の大学はランキングを下げており、欧米だけでなく、香港、インド、シンガポールと言った英語を使うアジアの他の国々からすでに遅れ始めているのが現状です。日本の教育評価が低下しているその大きな要因は、英語力が低いために国際的でないこと(日本人学生は海外に出てゆけないし、海外学生も日本で学ぶことは出来ない)、またそのために学生のグローバル人材の育成においても遅れていることが挙げられています。

こうした状況を政府は危惧しており、それを解消するために様々な取り組みを行っています。実際に以下のような具体的政策が取られています。

・国際バカロレアの導入、国際バカロレア校の設置 - グローバルな学生を育成
・トビタテJAPAN - 高校生、大学生の海外留学を推進
・小学校での英語教育全面実施

上記3つの教育に関する制度は、政府の成長戦略プラン、およびそのための具体的なアクションプランである「日本産業再興プラン」の中に組み込まれています。グローバルな人材を育成するには、英語習得がますます避けられないようになっていくでしょう。

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