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英語教育に関するニュース

「インプット」から広がるチカラ「思いを伝える」豊かな表現力を身につける~ノートルダム学院小学校・田縁眞弓先生インタビュー~

京都市左京区にあるノートルダム学院小学校は、1954年の開校以来、最先端の英語教育に取り組む小学校として知られています。

2012年からは新たに"Notre Dame English(ノートルダム イングリッシュ)"を導入し、8年目を迎えました。長年にわたる小学校英語教育の研究結果をもとに構築されたこのオリジナル・カリキュラムを立ち上げ、指導にあたっているのが、同校英語科スーパーバイザーの田縁眞弓先生。文部科学省の英語新教材の開発や検定教科書著者、英語教員指導にも携わる小学校英語教育のエキスパートです。

「子供の心を動かす豊かな英語教育」をモットーに授業を展開する田縁先生に、その具体的な取り組みと、これからの子供たちに必要な英語力について伺いました。


Q1. 小学校英語教育に関わったきっかけについて教えてください。

Q2. "Notre Dame English"とはどのようなカリキュラムですか?

Q3. 小学校英語教育で「インプット」を重視する理由は何ですか?

Q4. 毎日英語にふれる"English Everyday Program"とは?

Q5. 家庭での英語学習において親が心がけるべきことはありますか?

Q6. これからの小学校英語教育はどう変わるのでしょうか?


Q1. 小学校英語教育に関わったきっかけについて教えてください。

Q1. 小学校英語教育に関わったきっかけについて教えてください。

英語に親しんできた子供たちのスキルを将来につなげたい

かつて夫の仕事の関係で、2人の子供とともにアメリカで暮らした時期がありました。3歳半と1歳だった娘たちは現地で英語を習得して帰国したのですが、当時の日本には、彼女たちが身につけた英語力を保てるような教育環境が整っていなかったんです。

私自身、もともと日本で外国出版社の英語教材開発やフォニックス(※1)の講師トレーニングなどに携わっており、早期英語教育にも興味をもっていたのですが、その当時は教員の経験はありませんでした。
そんなとき、たまたま京都ノートルダム女子大学で「第3回小学校英語教育学会」(※2)が開催され、これに参加したことをきっかけに本校に隣接する大学院で小学校英語教育の理論と実践を学ぶようになりました。子供のための英語教育を研究する機関が限られていた中で、第一線の専門家のもとで学べたことはとても幸運でした。それ以来、小学校現場で実際に指導に関わるようになり、17年以上になります。

そして2020年に小学校での英語教科化に先駆けた2年間の移行期間では、文部科学省で小学校英語の教材開発ならびに全国の小学校教員の指導にも携わってきました。

日本では今、幼児英語の早期化が急速に進んでいます。小さな頃から英語に親しんできた子供たちのスキルを将来につなげるために、これからの小学校英語はどうあるべきか。日々の授業や研修を通し、教員たちとともにその課題と向き合っています。

※1 フォニックス:英語の「発音」と「文字(つづり)」の関係性を学ぶ音声学習法。
※2 小学校英語教育学会:小学校における英語教育の理論と実践を研究し、小学校英語教育の発展に寄与することを目的として、2000年に発足した学会。

Q2. "Notre Dame English"とはどのようなカリキュラムですか?

Q2. Notre Dame Englishとはどのようなカリキュラムですか?

生涯英語教育の基盤となる「思いを伝える」豊かな表現力を培う

ノートルダム学院小学校で実践している"Notre Dame English"は、子供たちの未来を見据え、生涯にわたって英語を学ぶための"基礎力"を培うことを目標にしています。

文部科学省が掲げる外国語活動の3つの目標「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性」の達成を軸にしながら、先進的な小学校英語教育の理論と小学校教育に基づいた本校独自のカリキュラムです。
単に英単語や熟語を丸暗記させるようなテストのためだけの学習ではなく、言葉の学びとして思考力を深め、英語で「思いを伝える」ための豊かな表現力を身につけるのが狙いです。

子供たちが中学・高校・大学へと進むなかで、積極的にコミュニケーションを図ろうとする力、そして自分の言葉で発信するための英語力の基盤を小学校の6年間で習得してほしいと考えています。

CLIL(クリル)指導や手紙のやりとりを通した対話的な学びが学習の動機づけに

子供が自分の「思いを伝える」英語力を身につけるには、教員の教え方にも工夫が必要です。その1つとして、英語の授業にCLIL(クリル)(※3)も取り入れるようにしています。理科や図工など他教科の学びや絵本指導など、身近な題材を英語指導に取り込むことで、子供たちは単語を覚えるだけでなく会話の中身にも興味をもち、自然に理解を深めていくのです。

また、子供が主体的に「書きたい」「読みたい」と思う良い機会になっているのが、ネパールにある姉妹校の児童との手紙のやりとりです。実際に手紙を書くことで、文字は思いを伝えるためにあるということを体験すると同時に、活きた言語活動として英語学習への動機づけになっています。

語彙や表現を覚えるために練習したり、単語や構文を書き写したりする従来型の学習活動とは違った対話的な学びを通し、子供たちはわくわくしながら英語を学ぶ本来の意味と楽しさを実感していきます。

英語の授業には、英語専科教員とネイティブに加え、単元によっては子供たちのことをよく理解している担任も加わり、常に複数体制で活動を行っています。英語科チームが一丸となって一人ひとりの指導にあたるのも本校の英語教育の特徴です。

※3 CLIL:「Content and Language Integrated Learning(内容言語統合型学習)」の略。理科や算数といった教科や学習のテーマと外国語の学習を組み合わせた言語学習法。

Q3. 小学校英語教育で「インプット」を重視する理由は何ですか?

Q3. 小学校英語教育で「インプット」を重視する理由は何ですか?

英語を聞きながら文脈を"類推する力"をのばす

第二言語習得研究の知見からも、言語習得にはまず「聞く・読む」という英語の「インプット」が必要であることが明らかになっており、"Notre Dame English"でも「input first」(まず聞く・読む体験)を重視しています。

CDなどの音源を使ってチャンツ(※4)を繰り返したり、歌を歌ったり。また、子供の関心のあるトピックを毎日ネイティブ教師のスモールトーク(ちょっとした雑談)で聞くことなどにより、積極的に聞く力を養う学習に取り組んでいます。
少し上のレベルの単語やフレーズが出てくることもありますが、大切なのは完璧な理解ではなく、英語を聞きながら文脈を"類推する力"。耳で聞いて「こういう意味かな?」と、相手の伝えたいことや話の概要を類推することは、多読・多聴や長文読解にもつながるスキルの1つです。

日本語を介さず、オールイングリッシュによる大量のインプットを積み重ねることで、子供たちは「全部わからなくても大丈夫」という"曖昧さに耐える力"を習得していくのです。将来、間違いを恐れない、思い通りにならない状況や不安に耐える強い精神力を、思考が柔軟な小学校低学年までに身につけたいと考えています。

※4 チャンツ:英単語や英文を一定のリズムにのせて発音する英語学習法。

Q4. 毎日英語にふれる"English Everyday Program"とは?

日常的に本物の英語を聞き、発信する環境を提供

"Notre Dame English"としての授業時間数は週2コマですが、カリキュラムの一環として、英語の授業がない日でも毎朝10分弱、英語にふれる時間=English Everyday Programを用意しています。学校行事やその日の給食メニュー、天候といった情報を子供たちが英語で発信する校内放送「English TV放送」や、ネイティブ教師が作成したオリジナル絵本の読み聞かせ、フォニックスのルールを学ぶ音声ドリルなどを使って英語に親しめるように工夫しています。
児童の第二言語習得は何といっても頻度が大事です。日常的に本物の英語を聞き、発信する環境をできるだけ多く提供しています。

Q5. 家庭での英語学習において親が心がけるべきことはありますか?

Q5. 家庭での英語学習において親が心がけるべきことはありますか?

家庭学習では大人の声かけが大切なポイント!

子供が英語を好きになるために、家庭との連携学習は欠かせないと感じています。たとえば1年生ではアルファベットを使った授業をよく行います。そこで、学習をしたあとには、自宅にあるものとアルファベットを結びつけ、"B"=Banana、Bedなど、"T"=Tomato、Tableといった具合に同じ初頭音を探し、その写真を撮って発表してもらうオンライン課題をだすことがあります。
また、ネイティブ教師がお皿洗いなどの"お手伝い"をテーマにした撮影動画をオンラインで配信することも。ご自宅でもご家族を巻き込んで、お子さんといっしょに英語学習を楽しんでいただける機会を在宅学習の期間に発信しました。

そういったときに、子供の学びを深めるご家族の声かけが大切なポイントです。
けれども、単語やフレーズを聞いたあと「お皿って何て言うの?」「"wash"ってどういう意味?」などと確認するのは逆効果です。できれば親御さんもいっしょに"Let's wash the dishes!"という具合に英語での内容に興味をもたせ、英語で会話に参加してほしいと思います。伝わってうれしいと感じられる経験を家庭でも積み重ねてください。子供の心に英語のタネを蒔き、「英語が話せると楽しい!」という気持ちを耕してあげてほしいと思います。

Q6. これからの小学校英語教育はどう変わるのでしょうか?

Q6. これからの小学校英語教育はどう変わるのでしょうか?

自ら思考・判断・表現する英語力の素地を小学校英語で身につける

2019年より、これまで実施されていた「全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」に中学3年生を対象とした英語のテストが追加されました。文部科学省が推し進めている英語教育改革の一貫として、今後3年に1回程度実施される予定です。

初回となった昨年度は、先生と生徒の会話を聞かせ「あなたなら次にどのような質問をしますか?」と問う問題や、自分の夢について語る問題、また「学校」を表す2つのピクトグラム(絵文字)を見て、どちらがよりピクトグラムのデザインに適しているか、その理由をまとまった文章で述べさせるなど、思考・判断・表現力を測る高度な問題が多くだされました。

こういった最新のテストや入試問題の傾向を見ると、これからは、相手に自分の気持ちを伝えるコミュニケーション能力や状況を読み取って自分なりに判断し、表現する力がますます問われるでしょう。小学校では単なる中・高英語授業の前倒しだけではない小・中・高の連携による本質的な改革が求められていると感じます。

「言いたい、話したい!」という思いが国際社会でたくましく生きる大きな1歩に

現在の小学生が大人になる頃には、AIの進歩によって6割以上もの仕事がなくなるといわれ、AIがひとの知能を超えるとも予測されています。子供たちの未来に必要なのは、教養としての第二言語ではなく、自分の思いを伝えるツールとなる英語力です。

結果はすぐに目に見えるものではないかもしれません。10年後、15年後、自ら英語を学ぶ意味に気づき、さらに学び続ける子供たちを1人でも多く育てていきたいと考えています。
私たち英語科チームのみならず教員全員が、英語が話せることの楽しさと豊かさを実感しています。身近な大人が楽しそうに英語を使う姿は、子供たちの「言いたい、話したい!」という思いを膨らませ、国際社会でたくましく生きる大きな1歩になると信じています。

取材を終えて

"input first"を掲げ、日々の学習における英語のインプットを重視しているノートルダム学院小学校。「コップに水を注ぐように英単語やフレーズをためていき、子供の"話したい"気持ちを高めていく」と話す田縁先生。質の高いインプットを重ね、自然なアウトプットを導く指導は、生涯にわたって英語学習の原動力となり、間違いを恐れない強い心を育むというメッセージが印象的でした。10年、15年後をも見据えた"Notre Dame English"には大きな可能性が広がっています。


田縁眞弓先生

プロフィール:田縁 眞弓(たぶち まゆみ)先生
ノートルダム学院小学校の英語科ヘッドスーパーバイザー。25年以上の長きにわたり、小学生を対象とした英語指導をはじめ、外国出版の教材開発アドバイザー、私立小学校でのカリキュラム開発に関わる。元文部科学省新教材作成委員会メンバー(2017)、元大阪市教育委員会英語教育統括アドバイザー(2012~2017)。国立、私立大学の教職課程で小学校英語指導法などを指導。2012年より現職。

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