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英語教育に関するニュース

英語での中学入試を導入した桐朋女子中高を取材!「世界に通じることばの教育」を考える

今野淳一校長(写真 左)1988年より桐朋女子中・高の数学教師として勤務し、本年度より校長に就任。
今関光枝副校長(写真 右)英語教師、入試事務局長として「Creative English入試」作成に関わる。

2020年は小学校5~6年生で英語が正式教科になる節目の年です。これにともない、中学受験が変化しているのはご存じですか?
従来型の「国語・算数・理科・社会」の4教科入試や「国語・算数」の2教科入試に加え、「英語1教科入試」を採り入れる中学校が急増しているのです。

グローバル教育に力を入れる桐朋女子中学校・高等学校(調布市)では、2019年度より独自の形式による英語1教科入試「Creative English入試」を導入。どのような試験なのでしょうか。
また帰国生受け入れの伝統校としても知られる同校では、入試で見出した生徒の力を、その後も多彩な授業で伸ばしていく教育プログラムを展開しています。

多様化する英語入試と、特長あるカリキュラムへの取り組みを取材しました。


Q1.桐朋女子が2019年度より導入した「Creative English入試」について教えてください。

Q2.日英両言語で行う「デュアル・ランゲージ・プログラム(DLP)」とはどのようなものですか?

Q3.英語ができる子供には今後どのような恩恵があるのでしょうか?

Q4.家庭で子供のチカラを伸ばす秘訣とアドバイスをお願いします。



Q1.桐朋女子が2019年度より導入した「Creative English入試」について教えてください。

Q1.桐朋女子が2019年度より導入した「Creative English入試」について教えてください。

今野校長:まずはじめに、入試内容についてお話ししましょう。
本校では2科(国語・算数)の筆記試験と口頭試問、2科(国語・算数)または4科(国語・算数・理科・社会)の筆記のみの試験、そして記述型試験(言語分野・理数分野)など複数の入試形式を採用しています。

中でも2科の筆記試験と口頭試問(※1)からなる「A入試」は、すでに50年以上の実績がある本校のオリジナル入試のひとつです。筆記だけでなく、口頭による質問を行うことで「積極的に学習する姿勢」や「自分の言葉で表現する姿勢」、「間違えたときにも柔軟に粘り強く考える姿勢」などを見るのが狙いです。

新設した「Creative English入試」には英語のインタビューがあり、「A入試」の口頭試問をベースにしています。
英語の知識が多いか、少ないかを試すというより、積極性やものごとを粘り強く考える姿勢を評価するという点で「A入試」との共通点が多くあります。

「Creative English入試」を導入した背景には、ここ数年で「英語1教科入試」を実施する中学校が急増していることに加え、2020年から小学校英語が教科化されることで、英語に興味をもつ生徒や、英語でのコミュニケーションに意欲的な生徒にも多く入学して欲しいという思いがありました。10年後、20年後を見据えての導入です。

もともと帰国生の受け入れ校として60年の伝統がある本校には、現在25ヶ国100名以上もの多様な背景をもつ生徒たちが学んでいます。
新入試によって入学した生徒は、帰国生や一定の英語力がある生徒とともに、より発展的なカリキュラムを取り入れた上級コースで英語を学ぶことになります。

入試でのアドバンテージを活かしながら、入学後も英語力をしっかりと高められる学習環境を提供できるのは長年グローバル教育を推し進めてきた本校の強みでもあります。

※1 口頭試問
試験当日、授業形式やビデオ視聴などの準備時間があり、それをもとにしていくつかの課題に取り組みます。その後、受験生一人につき複数の教員が試問を行います。準備室での課題の答え、そこに至る思考の確認、新たな質問がなされます。受験生のもつ「授業を受けて育つ力」を公平な条件のもと複数の教員の目で確かめます。

参考サイト:A入試とは(桐朋女子中学校・高等学校)

小学校英語の教科化を見据えた2019年の「Creative English入試」

小学校英語の教科化を見据えた2019年の「Creative English入試」

今関副校長:第1回目となった2019年度の「Creative English入試」は、課題準備室での時間が約30分、インタビュールームでの時間が約10分。
受験者が取り組む課題の内容は、オーストラリアに住む少年・トムがこの夏、日本にいる「あなた」の家にホームステイをすることになったという設定です。

最初に問題文を読む時間が与えられ、次にトムの自己紹介画像を見ながら問題用紙に記された4つの課題に答えていきます。
トムに関する正誤問題、問題用紙のイラストを見ながらトムの家族や友達を選択する問題、さらにトムをもてなす「あなた」のアイデアを英文で作成する問題などが出題されました。
問題のレベルは、英検で言えば3級程度を想定して作られています。

その後、別室で一人ずつ行うインタビューでは、試験官である教員が各課題の解答や英作文に関する質問を英語で投げかけます。受験者が視聴した画像をもう一度見せたり、ヒントを与えたりしながら内容の理解度を確かめていきます。

途中で言葉に詰まっても、インタビューする教員が答えを引き出したり補ったりします。
求めているのは高いレベルの英語力というより、英語でコミュニケーションを取ろうとする意欲や姿勢です。受験者の皆さんにはリラックスして挑戦してほしいと思います。


Q2.日英両言語で行う「デュアル・ランゲージ・プログラム(DLP)」とはどのようなものですか?

今野校長:本校では「ことば」を思考の道具ととらえ、「ことばの力」を育てることで論理的な思考力を身に付けさせたいと考えています。
「デュアル・ランゲージ・プログラム(DLP)」は、「ことばの力」を日本語と英語の両方で高め、世界で通用する論理的思考力につなげるためのプログラムです。
このDLPに取り組むことで、生徒一人ひとりが日英両言語で自分の考えを正確に伝えるノウハウを学びます。

DLPは3つの柱「ことばの力の育成」「世界を読み解く力の育成」「高度な英語発信の実践」で構成されています。

DLP 3つの柱

「ことばの力の育成」は全生徒が取り組むDLPの根幹です。
国語の副教材「論理エンジン」を使った授業や、つくば言語技術教育研究所と連携した言語技術の授業を展開し、日本語の文章の基礎、分析と説明、文章の構成などを徹底的に学びます。
まずは母語である日本語の力を養い、それを英語でも活用できるようにつなげていきます。

高2・高3ではこれまでの集大成として世界の事象に目を向け、ネイティブ教師も交えて英語でのディスカッションやプレゼンテーションを行い、多様な視点にふれながら世界標準の議論へと近づきます。

「高度な英語発信の実践」では、英語を使った実践の機会が広がります。放課後の「英会話教室」や日本の大学に通う留学生との交流のほか、ニュージーランド・ターム留学や海外研修など、体験型の課外プログラムが多く用意されています。

"Dual Language"が示す通り2つの言語で分析・討論・発表を行い、高度な表現力を身に付けた生徒たちは、国籍や言語の垣根を超え、自信をもって自分の未来を大きく切り開いていけると考えています。


Q3.英語ができる子供には今後どのような恩恵があるのでしょうか?

Q3.英語ができる子供には今後どのような恩恵があるのでしょうか?

今野校長:異文化コミュニケーションがますます重要になるこれからの時代、英語ができることによるメリットは計り知れません。世界中の人と自由に会話することができますし、仕事をする上では職業の幅や選択肢が広がります。
また日本語にはない語彙を習得することで、ものごとに対して複数の見方ができるようになって思考が柔軟になります。

英語力が大切なことは言うまでもありませんが、英語でコミュニケーションする上で重要なのは、発音も文法も間違えずに完璧に話すことよりも、「間違いを恐れずに自分の考えを伝えようとすること」、「相手の言うことを理解しようとすること」だと感じます。

私も数年前、生徒の引率者として17日間の海外研修に同行した経験があります。ホームステイ先やレストランでは、最初はみんな相手の言っていることがわからない、自分の英語が伝わらないなど悔しい思いの連続でした。

しかし何度も会話を繰り返すうちに、だんだんと理解してもらえるようになるのです。たとえカタコトでも、臆せず自分なりの英語力を駆使して粘り強く相手と向き合えば、必ず思いは伝わり、真のコミュニケーションが可能になります。
そして自分の言葉で意思疎通ができたときの喜びは、大きな達成感につながります。

2021年からは新たにオーストラリア・シンガポールへの研修の導入を予定しています。失敗や間違いを恐れず、異文化への理解を深めて欲しい。多くの生徒に「ことばの力」がもたらす成功体験を味わって欲しいと考えています。

中高までに身に付けたい英語力と上達法とは

今関副校長:将来、英語で自分の意見を言えるようになるには、高校までに英語の基礎をしっかり学んでおく必要があります。あとはとにかく「使って慣れる」こと。

本校の英語の授業では中1の夏から英語のスピーチに取り組みます。自己紹介や自分が興味をもっていることを英語で伝えるスピーキング学習です。短い時間でもいいので、まずは人前で自分の意見を話す練習をします。

中2では、自分の夢や好きな言葉を英語で語る「My Dream」など徐々にレベルを上げ、中学のうちから数多くのスピーチに取り組みます。

「好き」をテーマにすることで生徒のモチベーションも上がります。正しい英語を身に付けるのは簡単ではありませんが、日々の地道な努力は必ず将来に役立つ大きな力となります。


Q4.家庭で子供のチカラを伸ばす秘訣とアドバイスをお願いします。

今野校長:小さなお子さんには「英語を話すことは楽しい」ということを、たくさん感じさせてあげて欲しいと思います。何かひとつでも英語を話したら、おおいに褒めてあげてください。

特に毎日のように新しい言葉を吸収していく3~4歳頃には「通じた」「わかってもらえた」という経験が大きな喜びにつながります。知識より経験が大事です。それが言語教育の第一歩ではないでしょうか。

私は学校教育においても子育てにおいても、まず子供の話をしっかり聞くことが大人の重要な役割だと考えています。子供が何を感じ、何を考え、何を欲しているのか。

思春期になれば親子の会話が少なくなることもあるかもしれませんが、そんなときこそお子さんの「声」をよく聞くことが大切です。日頃から親子で言葉のキャッチボールをすることで、子供は自ら考える力を自然に養い、伝える喜びを体験して成長します。

日々ボーダーレス化する今こそ、子供に多様性の概念を伝える工夫を

今関副校長:2020年を控え、暮らしの中の英語環境が急激に変化しています。電車の中や駅のホーム、デパートなどでは多言語によるアナウンスが流れるようになりましたし、海外からの旅行者と街の中ですれ違うことも多くなりました。

以前にはなかったグローバルな環境が身の回りにあふれています。これをチャンスと捉え、子供の頃から「ボーダーレスな視点」でものごとを考えられるように導いてあげてください。たとえば世界にはこんな国がある、たくさんの人種・宗教があり、さまざまな生活スタイルがある・・・。

多様性の概念を日々の暮らしの中でわかりやすい言葉で伝え、外に向かう豊かな心を育んであげてほしいと思います。

まとめ

桐朋女子では国籍や言語、文化や価値観が異なる生徒たちがともに学び、互いの違いを認めながら相手を深く理解する「グローバル教育」に取り組んでいます。
日本語と英語の両方で学ぶ独自のプログラムでは、世界で活躍する人材の育成に力を入れ、多くの逸材を輩出しています。同校が提唱する「ことばの力」を活かす教育を、子育てのヒントにしてみてはいかがでしょう。

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今野淳一校長(写真 左)、今関光枝副校長(写真 右)

プロフィール:
今野淳一(こんの じゅんいち)校長(写真 左)
1988年より桐朋女子中・高等学校に数学教師として勤務。生徒会指導部、進路指導部主任、副校長を歴任し、2019年より現職。帰国生受け入れのため海外出張も多数。

今関光枝(いまぜき みつえ)副校長(写真 右)
1989年より桐朋女子中学・高等学校に就職し、外国語科英語の教員として約30年間勤務。その間、ソフトテニス部の顧問として生徒の指導にあたる。2018年には教務主任と入試事務局長を務め、2019年より副校長と入試事務局長を務めている。

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