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早期英語でトリリンガル育児成功の秘訣は?~ 『ダーリンは外国人』著者・小栗左多里さんインタビュー~

人気コミックエッセイ『ダーリンは外国人』で知られる漫画家の小栗左多里さん。アメリカ人の夫、トニーさんとのユーモアあふれる日常生活を描いてベストセラーとなり、後に映画化もされました。

トニーさんは多国語を自在に操る大の語学好き。2012年からの6年半は、お子さんとともに家族3人でドイツ・ベルリンでの生活を経験し、現地では英語・日本語・ドイツ語の3カ国語による子育てを実践しました。
国際ファミリーの早期英語教育と、トリリンガル育児成功の秘訣を伺いました。


Q1. トニーさんとの出会いと『ダーリンは外国人』執筆のきっかけは?

Q2. 書籍の中には「英語ができる」メリットも多く描かれていますね。

Q3. 日本人は英語が苦手?言語をマスターするコツは?

Q4. お子さまへの英語・日本語教育についてお聞かせください。

Q5. ドイツでは「3つ目の言語」をどのように習得したのですか?

Q6. 日本で子供の英語教育に関心が高い方へのアドバイスをお願いします。


Q1. トニーさんとの出会いと『ダーリンは外国人』執筆のきっかけは?

夫のトニーとは、多文化共生を研究するNGO(非政府組織)のイベントで出会いました。彼は英語のほかにスペイン語、フランス語、ドイツ語、中国語、日本語など数カ国語を話し、"言語オタク"と呼ばれることもあるほどの語学好きです。出会った頃は豊富な知識量に刺激を受け、新鮮な発見がたくさんありました。

一緒に暮らしはじめて何年後かに、友人の漫画家さんの妹である編集さんに私たちの日常のエピソードを話したことがきっかけで、後日「あのときの話を本にしませんか?」と正式に依頼があったのです。
結果的に2002年から2016年までに8冊ほど、関連のコミックエッセイを出版させていただき、2010年には映画にもなりました。

トニーさんとの出会いと『ダーリンは外国人』執筆のきっかけは?

Q2. 書籍の中には「英語ができる」メリットも多く描かれていますね。

英語と日本語の二言語に関していえば英語の情報量の方が圧倒的に多いため、インターネットを使うときなどにも断然有利だと思います。

たとえば2人でハワイやオーストラリアなどに取材旅行に出かけたときにも、日本語では調べられないようなことをトニーは事前にチェックしていて、英語ができる大きなメリットだと感じました。

また、海外取材で現地のコーディネーターを探す際も、現地語と日本語の両方ができるという条件だと選択肢が限られてしまいます。通訳がいらないくらいの英語力が私にあったら...と思うこともありましたね。

英語は人に頼らず、自分で理解できた方が良い理由

オーストラリアに取材旅行に行ったとき、通訳が手配できず、トニーが「僕が通訳するよ」と言いだしたことがありました。断崖絶壁からロープ1本で降りるというアクティビティに二人で挑戦するという企画で、これがめちゃめちゃ怖いんですよ。

練習を兼ねて、まず数メートルの岩から降りることになっていたのですが、最初にインストラクターさんから、ツアー参加者に注意事項の説明がありました。5分くらい話しているのに、「僕が訳す」って言ったトニーは全然訳してくれない。なので私から「なんて言ってるの?」って聞いたら、「んーと、"足もとに気をつけて"だって!」って3秒で終わったんですよ。

実際には、足を広げて足裏もかかともしっかり崖に密着させるとか、いろんなことを話していたようなんです。
「命、危なくない?」と思いましたね。

そういうことがありましたので、英語は人に頼らず、自分で理解できた方が良いなということは今も常々感じています。

Q3. 日本人は英語が苦手?言語をマスターするコツは

完璧を求めず、言語は徹底的に使ってこそ身につく

日本人の英語について、トニーは「完璧を求め過ぎない方が良い」とよく言っています。きちんと話そう、正しく言おうという気持ちを捨てる必要はありませんが、それにとらわれて英語を話さなくなってしまうのは逆効果と考えているようです。

トニーは言語習得について、徹底的に使うことが何よりも大切だと思っているようで、エスペラント語(※)を勉強しはじめたときも、たった3カ月でエスペラントの話者にいきなり電話かけてみたり、韓国語も流ちょうではないのに、電車で韓国語が聞こえてくると自分から話しかけたり。

タイレストランでは、「コップンカー」とタイ語で挨拶をし、「タイ語が上手ですね」と言われると「それほどでもないよ」というフレーズまで覚えているんですね。そんな彼の語学習得への前向きな姿勢を、私はずっと間近で観察してきました。

フランスに取材旅行に行ったときも、パリで無料のフランス語講座をやっている団体を見つけて、何回か通っていました。最初に「あなたのレベルでは受講は無理です」と断られても「無理じゃない」と言い張って、入れてもらっていました。「無理じゃない」って言い張る心の強さがすごいなと。気合いが違います。

※エスペラント語 母語の異なる人々の間でのコミュニケーションを目的に、130年ほど前にポーランドの眼科医によって考案された人工言語。文法法則がシンプルなため、誰もが学べる公平な世界共通言語として発展。現在エスペラント話者の人口は世界で約200万人ともいわれている。

「わからない!」を楽しむことが英語習得の醍醐味!?

実は私も今までさまざまな英会話スクールに通い、オンライン英会話の先生を探してマンツーマンのレッスンを受け、英語の本を読み、ラジオ英語を聞き...。英語学習に関しては、仕事も交えていろんなことをしてきました。
それでも英語にはつまづくので、「わからない!」というと、トニーは「わからないから面白いんじゃない」と言うんです。

使い方の間違いや文法の疑問、知らない言葉にぶつかることも含めて、使えるようになるまでの過程そのものを楽しいと思えれば、言語学習もラクなんだろうなと思いました。

Q4. お子さまへの英語・日本語教育についてお聞かせください。

Q4. お子さまへの英語・日本語教育についてお聞かせください。

日本の言語環境の中では、意識して英語を使う機会を与え続ける

息子が0歳のときから、私は日本語、トニーは英語で話しかけることを徹底し、家庭の中では日本語と英語の両方の使い分けを意識しました。ただ、日本の言語環境の中ではどうしても日本語が多くなりがちで、保育園に通っていた頃は息子の英語がのび悩んだ時期もありました。

それでもトニーは根気強く英語で息子に語りかけ、時間があると英語のイベントに参加したり、英語を話す友達と遊んだり、英語を使う機会をつくり続けたんです。
英語の本の読み聞かせは小学6年生になるまで毎日行っていましたし、英語を母語とするトニーであっても子供への英語教育には相当な努力をしていました。

息子が4歳のとき、3人でヨーロッパに取材に行った帰りにトニーと息子だけで1カ月間、ハンガリーの親戚の家で過ごしたことがありました。ハンガリー語がまったくわからない息子は、話せる相手が父しかいないからか、お互いの共通語である英語を話しはじめたようです。

そして帰国後には驚くほど英語力がのびていました。日本で生まれ育ちましたが、息子がハンガリーの小さな村で突然英語を話すようになったのも、もちろん乳幼児期から日常的に英語にふれていた基礎があってこそだと思います。

Q4. お子さまへの英語・日本語教育についてお聞かせください。

多言語でも混乱しないのは早期から英語にふれたメリット

息子は英語と日本語の切り替えがとても早く、たとえば彼がトニーと英語をしゃべっているときに、私が日本語で話しかけてもすぐに反応します。トニーも言語の切り替えはかなり早い方だと思いますが、英語で文章を書いているときなどに日本語で何か聞いても耳に入っていないようです。

日英両方の言語を同時に理解して使い分ける息子の様子を見ると、二言語の混乱は感じられません。

Q4. お子さまへの英語・日本語教育についてお聞かせください。

Q5. ドイツでは「3つ目の言語」をどのように習得したのですか?

いつか海外で生活したいと考えていたのですが、息子の小学校入学を機に、2012年から2019年まで6年半をドイツのベルリンで暮らしました。治安・医療・教育環境・公共交通機関が整っていたことが理由です。まず日本で1年、ドイツ語の幼稚園に通わせました。最初は戸惑っていたようですが、気に入ったドイツ語の歌があり、それがきっかけで少しずつ親しんでいきました。現地では英語とドイツ語の両方で授業を行う小中高一貫校に通いました。上級生に学校の送り迎えをお願いしたり、本を読んでもらったり、なるべくドイツ語で会話をする機会を増やすよう努めました。それでも本人の体感として日常会話に困らないようになるには、3年くらいかかったようです。

身につけた複数の言語がどれも中途半端にならないようにするのは簡単なことではありません。また、親の母語でない国で育つと、言葉は理解できるけれど話そうとしない「受け身のバイリンガル」に育ちやすいと聞きます。
そうならないようにと考えたトニーの熱心な言語教育と息子の頑張りで、今年17歳になった息子は英語と日本語、ドイツ語とエスペラント語をマスターし、フランス語にも興味をもっています。
今となっては、他言語を話せるような環境を与えてもらったことを感謝しているようです。

「言葉の力」は世界へ一歩踏みだす勇気と自信を与えてくれる

日本は安全で清潔で暮らしやすく、良いところがたくさんあります。でも、安心できる場所を離れてちょっと外の世界をのぞいてみると、人生にはさまざまな選択肢があることに気づかされます。

そのとき、英語やその国の言葉ができれば可能性はさらに拓け、一歩踏みだす勇気と自信を与えてくれるに違いありません。

ベルリンに住んだことで、もちろん世界のすべてがわかったわけではありませんが、私自身の視野も広がり、日本にいるだけではわからなかったことをたくさん経験することができたのは幸せだったと思います。

Q5. ドイツでは「3つ目の言語」をどのように習得したのですか?

Q6. 日本で子供の英語教育に関心が高い方へのアドバイスをお願いします。

子供が「英語嫌い」にならないために親の工夫が大事

幼児期に身につけた語学力は、将来その努力の何十倍にもなって返ってくることは間違いないと思います。

一方、子供の語学の習得には「適正」があるので、その子に合った方法を見つけてあげることが大切だと感じます。1つ与えるだけで10まで自分で発展させていける子もいれば、1のままとどまってしまう子もいるからです。

塾や英会話教室などに通わせても、子供が「楽しい」と感じなければその子にとって英語は苦痛でしかなくなってしまいます。

子供が興味を示すものを親子で探し、いっしょに楽しむ

うちでは、絵本やぬいぐるみ、洋楽やアメリカの古いコメディなどを子供といっしょに見たり聞いたりしながら楽しみました。ドイツでは、息子が大好きなボードゲームが語学習得のモチベーションにつながったことも。

日常生活の中で、いかに子供に「英語がしゃべりたい」「わかってうれしい」という経験をさせてあげられるかが大切かなと思います。

可能性は無限大!世界を視野に英語を学ぶ

英語ができれば、言葉の壁を感じることなくどこへでも行けて、世界の好きな場所で暮らすことができます。また、ドイツやハンガリー、オランダなどには英語で授業が受けられ、学費は無料または格安という大学もけっこうな数あります。語学力を身につけることで海外の大学で、むしろ日本より安く、良い教育を受ける選択肢も増えるんです。

「これからもっとたくさんの国をのぞいてみたい」。そう考えている私の英語力はまだまだです。というか帰国して、さらに落ちてきました。漫画を描くのはとても時間がかかるので、この職業と家事をやりながら英語を勉強するのは、私にとってかなり難しいんです。それでも、人と話すのはとても好きですし、広い世界を知りたいので、これからも諦めずにマイペースで続けていけたらと思っています。英語はやっぱり、今のところ一番の共通語。少しでもわかった方が、いいことがあるという気がします。

インタビューを終えて

日本語・英語だけでなく、もうひとつの言語を子供に身につけてもらいたいと願い、お子さまが生まれたときから多言語教育を意識し、生活の中に取り入れてきた小栗さん。父は英語、母は日本語の「一親一言語」を実践し、その後、海外での生活体験によってトリリンガル育児にもチャレンジ。子供の個性を尊重した言語教育と親子の努力は現在も進行中です。国際ファミリーの育児には英語教育のヒントがいっぱい!ぜひ参考になさってはいかがでしょうか。


早期英語でトリリンガル育児成功の秘訣は?~ 『ダーリンは外国人』著者・小栗左多里さんインタビュー~

プロフィール:小栗 左多里(おぐり・さおり)
漫画家。1995年、月刊『コーラス』(集英社)にてデビュー。夫でフリージャーナリストのトニー・ラズロさんとの国際結婚のエピソードを描く『ダーリンは外国人』シリーズ、『ダーリンは外国人 ベルリンにお引越し トニー&さおり一家の海外生活ルポ』小栗左多里/トニー・ラズロ著(ともにKADOKAWA メディアファクトリー)など著書多数。

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