英語学習を続けるお子さまの英語のレベルをはかるために、幼児期から英語資格・検定試験を受験するご家庭が増えています。
日本でもっとも長い歴史がある子供向け英語検定試験「JAPEC(ジャペック)児童英検」は、年々受験者が低年齢化の傾向にあるそうです。
児童英語教育の専門家によって構成された「児童英語技能検定委員会」が、児童英語の研究データに基づいて「聞く力(リスニング)」と「話す力(スピーキング)」を客観的に評価するJAPEC児童英検とは、どのようなテストなのでしょうか。JAPEC事務局長の日野瑞己さんに伺いました。
Q1. JAPEC児童英検とはどのようなテストですか?
Q2. 具体的なレベル設定と試験内容について教えてください。
Q3. 他の英語試験とJAPEC児童英検の違いは何ですか?
Q4. JAPECが開催している「国際交流プログラム」と今後の取り組みについてお聞かせください。
Q5. JAPEC児童英検を受ける方へのアドバイスをお願いします。
Q1. JAPEC児童英検とはどのようなテストですか?
「聞く力」と「話す力」を総合的に正しく評価するテスト
JAPEC児童英検は、一般社団法人日本児童英語振興協会(The Japan Association for the Promotion of English for Children)によって毎年10月1日から3月31日の期間に実施される試験で、「全国統一英語技能検定試験」を正式名称としています。
児童英語教育の専門家による当協会の「児童英語技能検定委員会」が設定した6レベルの到達目標に基づき、英語の「聞く力」と「話す力」を総合的に正しく評価・判定します。同委員会では、協会が発足した1978年より幼児から小学生の言語能力の発達状況、年齢別の相違や英語の習得技能や進度などを研究・分析し、時代に合わせて進化させながら検定問題を作成しています。
JAPEC児童英検は、英語4技能の中でもコミュニケーションに欠かせない「聞く力」と「話す力」に重点をおいたテスト構成になっている点も大きな特徴です。
1979年に第1回を実施して以来、全国各地の英語教室や塾など約500会場で試験が開催され、毎年およそ1万人以上の受験者が6~1級までの各レベルに挑戦しています。
2021年度に44回目の試験実施となるJAPEC児童英検は、日本でもっとも長い歴史をもつ児童向けの英語試験として、教育関係者や受験者、保護者の方々からも信頼されています。
Q2. 具体的なレベル設定と試験内容について教えてください。
リスニングとスピーキングを6レベルの「級」で判定
JAPEC児童英検は英語の習得レベルによって、初級者(6級)から上級者(1級)までの6つの級に分かれています。受験者は、自分の英語力に合った級を選んで受験することが可能です。
初級者レベルは3歳くらいから、上級者レベルは10~14歳の小学校高学年が平均的な受験年齢層となっていますが、あくまでも目安で受験する際に年齢制限はありません。
「リスニングテスト」ではCDを利用した筆記試験を行い、「スピーキングテスト」は担当教師との口頭試問で、絵が描かれたテスト用紙を見ながら英語の問題に答えていく形式になっています。
リスニングテストでは、ネイティブスピーカーが話す自然な速度の英語をたくさん聞かせるように工夫しています。その内容は子供たちがよく知っている物語や身近な話題を題材にし、なぞなぞやクイズなども取り入れて問題に興味をもちながら集中して取り組めるように構成されています。
また、自己紹介文や手紙文、メール交換など、児童期にぜひ覚えてほしい語句や表現を問題文にたくさん盛り込んでいます。
テストを通して楽しみながら英語とふれあう機会をつくる
一方、スピーキングテストは、6~1級までの全級において教師と1対1の対面方式を取り入れています。どの級もあいさつや簡単な質問からはじまり、テスト用紙に描かれた絵に関する質問に英語で答えていきます。
応答能力をはかるだけでなく、レベルに合わせた語りかけや質問内容によって子供たちの話そうとする意欲を高く評価します。
JAPEC児童英検は、ただ単に子供の英語能力を数値化するためだけのものではなく、楽しみながら英語とふれあう体験の1つであると考えています。
たくさんの英語が聞けるリスニングテストと、英語が通じてうれしいという気持ちを育むスピーキングテストは、すべての級において「楽しい英語の力だめし」です。英語資格・検定試験の入門として気軽にチャレンジできるのも、全国のお子さまたちに長く親しまれてきた理由です。
<JAPEC児童英検 6レベルのテスト概要>
級 | 平均的な年齢層と学習期間の目安 | 主なねらい |
---|---|---|
6級 | 3~7歳(幼児~小学校低学年) 約6カ月 |
・初歩的なあいさつができる ・名前や年齢などを口頭で答える ・絵を見てものの数や名前、色などに答える ・単語数:約350語 ※参考:「第43回6級のテスト問題と答え」 |
5級 | 5~8歳(小学校低学年) 約1年 |
・Yes,Noで答える疑問文、How many, Where, Whatではじまる疑問文を理解して答えを選ぶ ・絵を見ながら天候や時刻を口頭で答える ・値段・時刻・年齢を表す数が聞き取れる ・使用単語数:約600語 ※参考:「第43回5級のテスト問題と答え」 |
4級 | 7~10歳(小学校中学年) 1~3年 |
・音と文字の結びつきを理解し、アルファベットを正・ しく書く ・いろいろな場面での会話や自己紹介、童話などを聞いて内容を理解する ・How many, Where, Whatではじまる疑問文、orを使った名詞や動詞を選ぶ疑問文を理解する ・絵を見て人物の動作や様子を含んだ質問に口頭で答える ・使用単語数:約800語 ※参考:「第43回4級のテスト問題と答え」 |
3級 | 8~11歳(小学校高学年) 2~4年 |
・アルファベット、動作、感情、遊びなどの会話 ・いろいろな場面での会話、自己紹介、童話、手紙文などを聞いて内容を理解する ・自分の趣味や好き嫌いを口頭で答える ・Whoではじまる疑問文を理解する ・絵を見ながら、人物の動作や様子を含む質問に口頭で答える ・使用単語数:約1,000語 ※参考:「第43回3級のテスト問題と答え」 |
2級 | 9~12歳(小学校高学年) 3~5年 |
・道案内、手紙文、メール文、自己紹介、スピーチ、童話などを聞いて理解する ・3~7文字程度の単語の発音を理解、2~4文字程度の単語を正しく書く ・Howで始まる疑問文、orを使った動詞を選ぶ疑問文を理解する ・日常生活に関する質問に口頭で答える ・3~7文字程度の単語を音読できる ・使用単語数:約1,300語 ※参考:「第43回2級のテスト問題と答え」 |
1級 | 10~14歳(小学校高学年~中学生) 4~6年 |
・日記や旅行記などを聞いて内容を理解する ・4~8文字程度の単語の発音を理解、3~5文字程度の単語を正しく書く ・How long, How often, Whyではじまる疑問文を理解する ・絵を見ながら、絵の状況や人物の動作、様子などについて口頭で答える ・4~8文字程度の単語を音読できる ・使用単語数:約1,600語 ※参考:「第43回1級のテスト問題と答え」 |
※使用単語数は小学校で覚える単語の目標数600~700語(2020年4月より)をもとに算出。
※「第43回テスト問題と答え」は全て日本児童英語振興協会ウェブサイトの情報です。
<試験の時間>
級 | リスニング(筆記) | スピーキング(口頭試問) |
---|---|---|
6-5級 | 25分 | 5分(6級は2~3分) |
4-3級 | 30分 | 5分 |
2-1級 | 30分 | 5-8分 |
※ リスニングは全40問・スピーキングは全10問。
※ 合格基準は6級が60点以上、1~5級は70点以上(うちスピーキングテストは6級5点以上、5~1級15点以上あること)/合計100点満点。
Q3. 他の英語試験とJAPEC児童英検の違いは何ですか?
合否判定が英語学習の動機づけと継続につながる試験
児童向けの試験のなかには、リスニングに特化した検定内容になっているものや、受験級によってスピーキングのテストが設定されていない試験もあります。
JAPEC児童英検は、すべての級にスピーキングテストを設けているので、英語の学習期間に関わらず、お子さまの「話す力」を試してみたいという方にも多く受けていただいています。
また、試験の開催期間が6カ月間と長く設定されており、初回に不合格だったお子さまが同じ級に再チャレンジされるケースも少なくありません。期間中であれば何度も受験できるため、英語学習の継続にもつながります。また連続した級であればW受験も可能です。
結果はリスニングテストおよびスピーキングの採点と合わせ、JAPEC検定委員会が最終的に合否判定を行います。そして合格者には合格証を、また受験者の方全員に問題ごとの成績を示す「結果のお知らせ」、受験された回の問題と解答のすべてを載せた冊子を一括して、試験後1カ月程度で試験会場となった塾・教室に送付します。
受験者の方々からは「合格するとうれしくなる」「次はもっと上の級を目指す」といった声がたくさん寄せられ、英語学習の動機づけにつながっているようです。
Q4. JAPECが開催している「国際交流プログラム」と今後の取り組みについてお聞かせください。
サマーキャンプや短期留学を通じて「活きた英語教育」の普及を目指す
創立43年の歴史をもつJAPECでは、児童英検だけでなく、さまざまな国際交流プログラムを開催してきました。1985年の「ハワイ国際子ども交流キャンプ」以来、毎年海外の子供たちや外国籍のスタッフたちといっしょに国内外にてサマーキャンプやホームステイを実施しています。
2013年からはオーストラリア総領事館の協力を得て、タスマニアの学校と交流を深める短期留学ツアーをスタートしました。ホストファミリーの家に宿泊しながら活きた英語にふれるという体験型のプログラムは、学習の実践の場となるだけでなく、友情を育み、子供たちの視野を世界に広げる良い機会になっています。
JAPECでは、子供たちが歌や劇、英語落語などを披露するチャリティーイベントなども開催し、覚えた英語をアウトプットする場を多数設けています。
日本の英語教育が大きく変化している中、JAPEC児童英検の受験の早期化が進み、全体的に3歳児の割合が増加しています。ここ数年で受験者の英語のレベルも格段にアップし、各級の正答率も年々高まりをみせています。
早い時期から英語学習に取り組むお子さまたちのレベルに合わせ、検定試験の内容も現代の生活に合わせて少しずつ改変しています。英語を学ぶすべてのお子さまのために、これからも活きた英語教育の普及をめざしていきます。
Q5. JAPEC児童英検を受ける方へのアドバイスをお願いします。
失敗を恐れず楽しく英語にふれながら「英語の力だめし」を
JAPEC児童英検は、お子さまの成長や興味・関心の広がりに合わせて、級が上がるにつれて、問題の設定も身近な出来事から学校生活、さらには海外へと広がっていきます。
たくさんの語句や表現が使われていますが、単語を覚え込む必要はありません。絵をヒントに、自分の体験と重ね合わせながらイメージが自然に膨らんでいくような出題形式になっています。アルファベットを覚えたばかりという小さなお子さまでも十分理解できる内容です。
とくにスピーキングテストでは、言い直したり、言い方を変えたりしながら自分が話したいと思うことを、たくさん伝えてみてください。リラックスしていつもの力を発揮しましょう。
試験のために特別な予習は必要ありませんが、JAPEC児童英検のホームページにあるサンプルテストなどを参考に、出題形式に慣れておくと良いでしょう。
試験では失敗や間違いを恐れずに、楽しく英語の力だめしをしてみてください。
取材を終えて
創立40年以上もの歴史をもつJAPEC児童英検は、「聞く力」と「話す力」に特化した内容で、小さな子供にも受験しやすい英語検定試験の1つです。
また、児童期に英語を学ぶことが望ましいとする多くの識者たちの教育理念のもと、国際交流や国内外サマーキャンプなどを行なってきました。先々の試験に慣れるための力だめしとして、また将来の英語の種まきにもオススメの検定試験といえるのではないでしょうか。
プロフィール:日野 瑞己(ひの みずき)事務局長
JAPEC事務局長。2014年より一般社団法人 日本児童英語振興協会(JAPEC)に勤務。検定事業に従事するとともに、毎年夏に実施される国際交流サマーキャンプの企画運営ならびにオーストラリア・タスマニア州での学校体験ツアーの引率など、日本と海外の子供たちとの国際交流事業にも携わる。