デイビッド・セイン (著)
『もしもネイティブが中学英語を教えたら』
アスコム
中学英語は、ネイティブの表現とは少し違っている
中学校での英語教育は、「身近な話題についての理解や簡単な情報交換、表現ができる能力を養う」ことを目的としています。これが、「簡単な英会話は、中学英語で大丈夫」といわれる所以です。
しかし、その中学英語は、ネイティブが使っているものとはちょっと違っています。『もしもネイティブが中学英語を教えたら』という本は、そうした微妙な違いを分かりやすく解説してくれています。
本書は「ネイティブから見ても中学英語は英語のエッセンスが集約されている」と述べており、日本の英語教育そのものを否定するものではありません。
しかし、ニュアンスをきちんと伝えるためには、学校で習った英語表現では不十分な場合があります。
今回は本書で解説されているいくつかのフレーズの説明を紹介し、学校英語とネイティブの表現の違いを示してみたいと思います。
"Can you ~?"は能力を問うている
例えば、「英語を話すことができますか?」と聞きたい場合。
「~できますか?」という日本語につられて、"Can you speak English?"と言ってしまいがちです。中学英語なら、これで正解。
でも、実際に会話で使うと、ネイティブには、「あなたは英語を話せるだけの能力がありますか?」と聞こえているので、失礼な言い方になってしまっていたのです。
この場合は、"Do you speak English?"と言ったほうが、習慣として英語を話すかどうかをたずねることができるので、こちらの意図が伝わります。
CanよりCouldが丁寧
レストランなどで領収証をもらうときにも注意が必要。
「私に領収証をくれますか?」を"Can I have a receipt?"と言ったのでは、少しくだけた軽い印象を与えてしまうのだそうです。
実際の英会話での正解は、"Could I have a receipt?"。
いくら丁寧な態度で接したつもりでも、雑な言葉を使っていては、思いも伝わりにくいもの。
中学校で習った英語をそのまま実生活で使ってしまうと、相手の印象が悪くなることもありそうです。
この本では他にも、don'tとdo notのニュアンスの違いや、shouldは『~すべき』ではなく『~したほうがいいよ』という意味に近いことなど、誤って覚えがちな言い回しについて説明しています。
テストでは問題のない言い回しでも、実際の会話では間違ったニュアンスの感情が伝わってしまい、誤解を生む可能性もあるのです。
褒めたつもりが、伝わらないかも
例えば、「well」という副詞は、動詞などを「上手に」「うまく」と修飾するときに使います。
しかし、「彼女は歌がうまい。」と褒めたくて"She sings well."といっても、ネイティブにはきちんと気持ちが伝わらないかもしれません。
なぜなら、「well」には、「そこそこ上手い」というニュアンスがあるので、ネイティブが聞くと、「彼女は歌が(そこそこ)うまい。」と聞こえるのだそうです。
では、どう言えばいいのでしょう。
正解は、"She's a great singer."。「~is a great~」が、ネイティブの定番表現なのだそうです。
ちなみに、"She's a good singer."と言ってしまうと、「そこそこ上手い」というニュアンスが出るようなので、注意が必要です。
「本当に」「すごく」と伝えたいときは?
副詞「very」のニュアンスについても、この本では説明されています。
"I'm very hungry."は、ネイティブには「私は非常にお腹がへっています。」と聞こえ、会話の中で使うと、冷静すぎて不自然な印象を持たれてしまうのだそうです。
「very」は客観的な印象を与えるため、実際の英会話で使う場合は注意が必要です。
ネイティブが聞いても自然なのは、"I'm really hungry."。
会話の中では、「本当に」「すごく」という主観的な気持ちを伝えられる「really」を使いましょう。
例えば、"It's very cold today."(今日はとても寒いです)ではなく、"It's really cold today."(今日はすっごく寒いですね)と表現すると自然です。
ただし、「ご親切にありがとうございます。」は、決まり文句のため、"That's very kind of you."が正解です。
テスト対策だけでなく実際に使える英語力
本書では、上記で紹介したものを含め、学校で習ったまま使うと誤解を生むかもしれない64の例文が掲載されています。
基礎的な英文を頭に入れたら、こうした書籍を活用して英会話力をブラッシュアップするとよいかもしれません。