専門家の先生による、英語教育に関する記事

2歳でも英語の絵本が読める
今回の玉川大学 佐藤 久美子先生のエッセイでは、絵本を使った英語学習の可能性について伺いました。
また、『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』コーナーでは、日本語を覚える前から英語学習を始めても問題ないことを佐藤先生がしっかり説明してくれています!

絵本の文章を覚えてしまう2歳の子供

かがくい ひろし(著)の『だるまさん』シリーズの絵本は、1歳くらいの子供をもつお母さんに人気の本です。
この絵本をお母さんが毎日読んでいるという2歳の子供の様子を見て、私は驚きました。たった2歳の子供が自分でページをめくり、お母さんと一緒に声を出して絵本を読んでいるではありませんか!
お母さんに「すごい!もう本が読めるの?」とたずねたところ、「読めているわけではなく、覚えているんです。」という答えでした。
子供は毎日本を読んでもらっていると、2歳くらいからあっという間に正確に本の内容を覚えて文を暗記し、あたかも読んでいるかのように声に出して言うことができるのです。もちろん個人差もありますが、特に女の子は得意なようです。

実は、これは日本語の本に限ったことではありません。
ビル・マーチン(著)とエリック・カール(絵)の『Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?』という絵本があります。小学校の低学年~中学年の英語の授業でもよく使われている本ですが、この絵本も2歳児でもすっかり暗記して読むことができます。
最後のページには、本に出てきた動物がまとめられていますが、これを見て、正確に"Purple cat, white dog, blue horse...."(紫色の猫、白い犬、青い馬...。)などと言うことができるようになるのです。

小学校では、特別支援教育クラスに在籍する児童も、この本を声に出してみんなで上手に読んでいるのを拝見したことがあり、とても感激しました。「理科や社会の時間はそれほど興味を持たないのに、なぜか英語の授業は元気で張り切っていますよ。」と校長先生が話していました。この本は特に人気で、あっという間に読めるようになったそうです。

この英語の絵本が子供に好まれ、早く読めるようになったのは次のような理由があると考えられます。

1.絵の色が鮮やかで目を引くこと
2.動物が出てくる話で親しみやすいこと
3.歌やチャンツのように調子をつけて読むことができる文章であること
4.すべての文が同じ構造で反復されていること

こうした特徴を兼ね備えているので、子供たちはあっという間に覚えてしまうことができるのだと思います。

この絵本を読み聞かせるときは、"What do you see?"(何が見えるの?)という文のところで、手を目の上にかざして見ているジェスチャーをつけると、さらに子供は乗ってきます。また、動物の名まえを言った後で、鳴き声を英語で入れても喜びます。また、最後のページで動物の名まえを読み上げる部分では、"Brown bear(拍手×2), purple cat(拍手×2)..."というように、手を2回たたいて調子をつけて読み上げると、子供もリズミカルに覚えることができます。

子供は2歳前後から自分で文法に気がついていく

また、子供は、言いかえも得意です。
ドライブに飽きた子供が車窓から建物を指差して「○○ちゃんのおうちはどこかな?これかな?ちがうね!」と適当に節をつけて繰り返し歌っていたことがありました。すると、一緒にいた2歳の子供も「△ちゃんのおうちはどこかな?これかな?ちがうね!」と人の名前を入れ替えて歌い始めました。
子供は文のどの場所に、どんな単語を入れかえればよいかを自然に理解する力があるのです。

そこで、子供向けの絵本は、日本語でも英語でも、文の単語を少し入れ替えて繰り返す手法が取られています。
例えば、リザ・チャールズワース(著)の『First Little Readers: What jumps?』という英語の絵本では、次のような英文が使われています。

A grasshopper jumps. Wow! (バッタが飛んだ。うわー!)
             

A frog jumps. Wow!(カエルが飛んだ。うわー!)

この後に下線の部分の動物の名前を変えて、同じ構造の文が繰り返されるパターンになっています。このような英文に動物のイラストが添えられていれば、子供はあっという間に文を覚えて、声に出して言うことができるでしょう。

子供は2歳前後から文法に気がつき、急速に言語を獲得していきます。
英語圏の子供で言えば、名詞の複数形には-sがつく、動詞の過去形には-edがつくなどの規則を自然に覚えたり、規則に例外があることにも気づいたりしながら、言語を獲得していきます。2歳児は驚くべき力を秘めているのです。
保護者の方のちょっとした手助けで、子供たちが英語のリズムに親しめば、2歳で英語の絵本を声に出して読むことも夢ではありません。

『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』第13回:まだ日本語もままならない状態で、このまま英語学習を続けて良いのでしょうか?

英語教育お悩み解消Q&A第13回

◆DWEユーザーの方からのご質問◆

近頃は早期幼児教育で0歳児、もしくは胎児の内から英語教育を始めるご家庭が多くなってきたように思います。日本では小学校の授業内で外国語教育(主に英語)を教えるようになったのはまだ最近のことですが、ヨーロッパでは幼い内から2ヵ国語、3ヵ国語を学んでいる子供も多いとのこと。
しかしその一方で「英語よりまず母国語を教えるべき。両言語を同時に学んでいると、両方言語の発達が中途半端になったり、混ざったりするダブル・リミテッドの状態で成長してしまう」という意見も多く耳にします。
我が子は現在2歳でまだ日本語もままならない状態で、このまま英語学習を続けて良いのでしょうか?それとも、日本語を優先して教えた方が良いのでしょうか?


◆佐藤先生のご回答◆

言葉を獲得する環境には次の3つのパターンがあります。

① 両親ともに同じ言語を使い、かつ、周りの人々も同じ言語を使っている環境
② 両親が異なる言語を使っている環境
③ 両親は同じ言語を使うが、周りの人々がそれとは異なる言語を使っている環境

ご質問の方は、恐らく①に属していらっしゃるかと思います。
ご両親が日本人で、周りの人々も日本語を使っている①の環境で英語を少し学習した程度では、ダブル・リミテッドにはなりません。
以前のエッセイ()の中でお話ししたように、英語の反復力は日本語の反復力と関わりがあります。
英語を集中して音を聞こうとする習慣をもち、英語の反復力を高めることは、日本語にも良い影響が期待できます。

②の場合は、多少語彙量などにおいて遅れが見られることがありますが、恐らくそれも小学校を卒業するころには解消されると思われます。
③の場合は、しっかりと母語は身につきますが、成長するにつれて、周りの友達や学校で使われている言葉を選好する傾向もみられます。例えば、両親の母語が中国語のシンガポールの大学生は、小学校から英語で授業を受けているため、成人してからは英語を好んで使う傾向があるようです。

というわけで、第二言語として英語を日本で幼いころから学んでも、決して日本語に悪い影響は出ません。
むしろ、例えば他国から転校生がやってきても、進んで友達になれる資質を身につけることができると思います。

※以前のエッセイはこちら


佐藤先生近影

佐藤 久美子先生

玉川大学大学院 教育学研究科(教職専攻) 脳科学研究所 教授。
長年、子どもの言語獲得・発達の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。
2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの「えいごであそぼ」、「えいごであそぼwith Oton」の総合指導を担当。

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